機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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どこからがデート?

 

「一矢の坊主、動きが良くなってきてるじゃねぇか」

「うん、調子が出て来たみたいだね」

 

 GGF博物館でのバトルは白熱し、現在もユウイチ達はプラモスケールの作業ブースをモデルにしたステージでバトルを行っていた。

 立ち並ぶ塗料瓶やプラモデルの箱を障害物代わりに利用しながら上空に舞うゲネシスブレイカーを見やりながら、マチオとユウイチは笑う。

 

「あの頃の翔以上じゃないか……!?」

 

 ガンダムブレイカー隊の一員であるユーゴが駆るHI-νガンダムカスタムのフィンファンネルとゲネシスブレイカーのスーパードラグーンが飛び交うなか、次々破壊されていくフィンファンネルを見てGGF時代の翔を思い出しながらユーゴは焦っていく。しかしその間も覚醒状態のゲネシスブレイカーが迫る。

 

「み、見事だな……。しかし、自分の力で勝ったのではないぞ。そのガンプラの性能のおかげだという事を忘れるな!」

「……負け惜しみを……って言うべきなのか?」

 

 ビームライフルの引き金を引くも、追従を許さぬような高機動を持ち味とするゲネシスブレイカーには当てるどころか捉えることは出来ず、あっと言う間に眼前に迫ったゲネシスブレイカーにすれ違いざまに切断されるなか、ユーゴは悔しそうに叫ぶが溜息交じりに一矢は答える。

 

「──中々やるじゃない!」

 

 HI-νガンダムカスタムを撃破したゲネシスブレイカーだが一息つく暇もなくアラートが響き、反応しようとするも近づいた紅蓮の閃光が迫る。回避行動を取ろうとするも機体が掠り、GNソードⅤが弾かれ、落としてしまう。

 

「今度はアタシが相手になるわッ!!」

 

 そこにはアカネが操るフレイムノーベルの姿があった。

 すぐに鋭い回し蹴りが放たれ、ゲネシスブレイカーが飛び退くなか、フレイムノーベルがとったのはファイターであるアカネが体得した真龍館での空手の型だ。

 

「……お願いします」

 

 GNソードⅤを落とした今、ゲネシスブレイカーも右手を突き出し左拳を引くことによって覇王不敗流の構えをとり、アカネと一矢の口元に笑みが浮かぶと、すぐさま二機は拳を突き出してぶつかり合う。

 

「アナタ良いわね、熱くなってきたわッ!」

 

 フレイムノーベルとゲネシスブレイカーによる身一つのぶつかり合いが続き、拳と脚部がそれぞれ幾度となく交差し、肉弾戦のようなバトルが繰り広げられる。

 

「ッ……!?」

「ほらほら、そんなものじゃないでしょ!」

 

 しかしやはり一矢も覇王不敗流を習った身とはいえ、アカネとは練度が違うのか拳を交合わせる度にゲネシスブレイカーの損傷が目立っていき、高揚するアカネのフレイムノーベルは更に怒涛の勢いを見せて行く。

 

「当前……ッ!」

「やるわね……ッ!」

 

 だが一矢も決して諦めた訳ではない。放たれたフレイムノーベルの腕部を掴んだゲネシスブレイカーはそのまま身を回転させ、旋風竜巻蹴りに繋げるとフレイムノーベルの機体は竜巻の中で翻弄されていくがアカネの口元にはまだ笑みが浮かび上がる。

 

「アタシのこの手が真っ赤に燃えるッ!」

 

 するとフレイムノーベルは両腕を広げると同時にEXアクションであるゴッドフィンガーを両手に宿し、竜巻を打ち消すとそのままゲネシスブレイカーに突撃したのだ。

 対するゲネシスブレイカーも両腕にバーニングフィンガーを纏って真っ向から立ち向かう。

 

 ゴッドフィンガーとバーニングフィンガーがぶつかり力が拮抗する中、周囲は暴風雨のような衝撃波が巻き起こる。互いの腕部に亀裂が走っていくなか、最初に壊れたのはフレイムノーベルの方であった。そのままゲネシスブレイカーの両腕がフレイムノーベルを貫き、このバトルを制する。

 

 ・・・

 

「久しぶりに熱くなれたわ。他流との手合わせはいい勉強になるわね」

「流石、世界チャンプってところか」

 

 バトルを終えた一矢はアカネとユーゴと対面していた。

 二人とも悔しくはあるが晴れやかな笑みを浮かべている。

 

「……正直、皆さんとバトルをする時は最初から覚醒しなきゃ危ういです。最後だって覚醒がなかったら……」

「覚醒があったから勝てたって? でもそれだってアナタの実力よ。誇れこそすれば下を向く必要はないわ」

 

 とはいえ一矢はそうではないのか、暗い表情を浮かべている。

 というのも最後のゴッドフィンガーを制したのも覚醒状態であったからだろう。もし覚醒してなければどうなっていたか分からない。だが俯く一矢にその頭を優しく撫でるとアカネは一矢の顔を上げる。自分達に勝った相手が俯いていてほしくはないのだ。

 

「今度、真龍館にいらっしゃい。アナタの技、粗がある部分があるもの」

「えっ……? いや、俺は別に……」

「なーに遠慮してるのよ!」

 

 それはそうと格闘技を習う者として気になる部分はあったのか、真龍館の住所が載った名刺を差し出すアカネに名刺は受け取るものの身体を動かすのが根本的にあまり好きではない一矢はやんわりと断ろうとするが、それを遠慮と捉えたアカネは一矢の背中をバンバンと叩いている。

 

(……あぁ、過去の翔を見てるみたいだ……)

 

 それでも断ろうとするが嫌がっている事に気づいていないアカネは遠慮をするなと絡んでいく。その一矢とアカネの姿を見つめながら、ユーゴは過去にアカネによってしごかれて悲鳴をあげていた翔の姿を思い出しながら苦笑するのであった。

 

 ・・・

 

「へえ、じゃあ一人で日本に?」

 

 イラトゲームパークではミサや夕香達だけではなく、ウィルの従者であるドロシーがいた。ただ談笑するだけではなく、ミサ達の前のテーブルにはドロシーが持ち込んだであろうティーカップやアップルパイやケーキなどの洋菓子類が所狭しと並べられていた。

 

「はい、久しぶりに休暇をいただきましたので。この国は興味深いことがたくさんあって退屈しませんね」

「……なんで休暇でもその恰好なの?」

 

 ソーサーの上に載ったティーカップを取って一口飲みながら答えるドロシーは一人で日本に来たようだ。しかしもっともミサにとっては何故、休暇なのにも関わらず普段と変わらぬメイド服を着用しているのか気になるところだが。

 

「普段着ですから」

「そうなの? てっきりウィルの趣味かと思ってた」

 

 ミサの疑問に当然のように答え、ミサは意外そうに驚きながらでも悪戯っ子のような笑みを浮かべながら話す。

 

「そんなに特殊な趣向は持っていませんよ、坊ちゃまは。少々中二病を患っておりますが」

「まあ、それも良さっちゃ良さなんだろうけどねー」

 

 ウィルが実はメイド好き……と言うのは面白そうではあるが、一応、主である為、誤解ないように、それでもドロシーらしい訂正をすると夕香も用意されたケーキを口に運びながら軽く笑う。

 

「ウィルと夕香ちゃんってどこまでいったのー?」

「どこにもいってないけど」

「えぇー? ほんとにー?」

 

 今度はウィルをフォローするような発言をした夕香に絡み始める。

 世界大会の本選の合間、(ウィルに連れてこられた形ではあるが)ずっとウィルと一緒にVIPルームでの観戦をしたり、ウィル自身にも夕香に気があるような節も見られる。

 しかし夕香にとっては特に意識をした事がないのかあっけらかんとした様子で答えるが、ニヤニヤと笑みを浮かべたミサは夕香に顔を近づける。

 

「ミサさんはどうなのですか? 今日はおひとりのようですが」

「え? わたし!?」

 

 夕香とミサの話を横目で見ながら、「……なるほど、そういうご質問ですか」と話の流れを理解したドロシーは面倒臭い親戚のようにずっと夕香に絡むミサに声をかけると、まさか自分に話題が振られると思わず素っ頓狂な声を上げる。

 

「その後もひと目もはばからずイチャコラしてらっしゃるのですか?」

「ま、まさかガンダムSEED16話の再現をしたと言うんのですの!? 不健全! 不健全ですわ!!」

 

 話の流れを理解し、言い出しっぺであるミサに尋ねる。

 一矢とミサの関係はこの場で世界大会のリマッチをした際に集まっていた者は皆知っている。すると話を聞いたシオンは何を思ったのか頬を染めながら騒ぎ始める。

 

「ちょっ、なに言ってるの!? 無い無い! なにも無いよ!」

「うーん、まぁないのは知ってるけど……」

「それもないのですか……」

 

 なにを想像しているのか、顔を真っ赤にして「いけません、いけませんわ!」と両手で顔を覆って首をブンブンと振っているシオンにミサは慌てて特に如何わしい真似はしていないと叫ぶが裕喜は苦笑交じりにミサのある部分を一瞥し、ドロシーもアップルパイを見ながら嘆息する。

 

「それ“も”ってどういうこと!?」

 

 も、とはどういう意味なのか、ミサは片眉をヒクつかせながらジーッと夕香達を見るが夕香達は乾いた笑みを浮かべながら誤魔化す。

 

「ミサちゃん、こんにちは」

「ヴェルさん! それにカガミさんも!」

「こんなところでなにを……?」

 

 何やら誤魔化す夕香達に納得はしていないものの、またまた来店客が訪れ、見てみればヴェルとカガミの二人が。

 柔和な笑みを浮かべて軽く手を振って挨拶をしてきたヴェルにミサは喜んで出迎え、二人を近くに座らせる。ドロシーがヴェルとカガミの紅茶を用意するなか、ゲームセンターでお茶会を開いているようなこの妙な状況にカガミは顔を顰めている。

 

「それでそれで、ヴェルさんとシュウジさんってどこまでいったんですか!?」

「うえぇっ!?」

 

 今度の標的はヴェルとなったのか、ミサが食い付くようにズイズイとヴェルに近づきながらシュウジとの関係について尋ねると、先程までドロシーが用意していた洋菓子類に目を輝かせていたヴェルは慌てふためく。

 

「と、特になにも……。わ、わたしとシュウジ君はプラトニック的なそのっ……」

「ヴェルさんは、そちらはないんですね」

「なんで私と違って、ヴェルさんだけ、“は”なの!?」

 

 途端にしおらしくなってしまったヴェルにドロシーが彼女のとある部分を見やりながら呟くと、その言葉にミサは反応するが、適当にあしらわれてしまう。

 

「二人とも、なにもないって言ってるけどさー。デートとかしてないの?」

 

 不満顔をしているミサといまだに恥じらっているヴェルに今度は夕香が尋ねる。

 それぞれ一矢とシュウジがいる彼女達。なにもないとは言うが、カップルらしい行動はしていないのだろうか?

 

「いつも一緒にいるけど……」

「デートになるのかな……?」

 

 ミサは一矢とよくガンプラバトルなどチームとして世界大会が終わった後も頻繁に一緒にいる。今まで特に気にした事もなかったが、これらはデートと言えるのだろうか?

 ヴェルも同じようで、シュウジと一緒にいる事はあるもののはっきりとデートと言える程の出来事はなかったのか、ミサと顔を合わせて首を傾げてしまっている。

 

「私はシュウジ君と一緒にいれるなら……。でも……」

「まぁ、どうせだったら……」

 

 二人とも想い人と一緒にいられるという状況に特に不満がなかった為、意識したことがなかったが、デートが出来るのであれば、デートをしてみたいという気持ちはあるのだ。


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