機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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始まりがあった場所

 東京お台場……。かつてここではとあるイベントが開催された。

 

 “ガンダム・グレート・フロント”

 

 機動戦士ガンダム歴代シリーズにまつわる数多くの展示物やグッズ販売、そしてなにより世界で初めてガンプラバトルシュミレーターが稼働した場所。

 

 そのイベントの跡地にはその後、GGF博物館という施設が作られた。

 この週末、博物館がオープンした記念日にかつてのガンプラバトルステージを一部体験できるイベントが開催されるという。

 

「うおおお、懐かしいなぁっ!!」

「当時のステージを一部復元したらしいよ。機体の挙動は今風になってるけどね」

 

 その会場には一矢、そしてユウイチ達の姿があった。早速、かつてのジャブローを模したステージを舞台に一般プレイヤーに紛れて、ゲネシスブレイカー、セピュロス、猛烈號、ジェスタ・コマンドカスタムの姿があった。

 かつてGGF(ガンダムグレートフロント)でプレイしていたマチオは見覚えのある懐かしいステージに興奮した様子だ。そんなマチオを含めて、今回のイベントステージの説明をユウイチが軽く話す。

 

「懐かしいわねぇ。選抜プレイヤーに選ばれようとして……」

「子供みたいにのめり込んでたなぁ」

 

 森林に隠れ、迫るザクⅡ達を狙撃するジェスタ・コマンドカスタムを操るミヤコも懐かしんでいると同意するように豪快に敵ガンプラを殴り飛ばしながらマチオも思い出を振り返る。

 

「……ああ、すまないね。オジサンたちだけ盛り上がって。一矢君、今日は一緒に来てくれてありがとう」

「あ、あぁ……いえ……」

 

 かつての思い出を懐かしんでいるユウイチ達だが、一人無言で敵機体を撃破しているゲネシスブレイカーに気づき、ユウイチは通信を入れると、一矢の様子はどこかおかしく緊張でもしているのか上擦ったような声で返答する。

 

「キミがいてくれれば、どんなステージでもクリアできると思ってね。年寄りの相手はつまらないと思うけど、よろしく頼むよ」

「ちょっとぉ、年寄りってほどの年じゃないでしょ!」

「いいから、早く始めようぜ!」

 

 何故、彩渡商店街の大人達に紛れて一矢だけがいるのか。

 それはユウイチが一矢をこのイベントに誘ったからだ。ユウイチの冗談交じりの言葉にそこは年齢関係に関してちゃんと否定したいのかミヤコが通信を割り込んでくると、再度出現した敵機体に気づいたマチオも通信に割り込み、急かしてくる。

 

「そうだね、行こうか!」

「は、はい……」

 

 急かすマチオに苦笑しながら、ユウイチは一矢に声をかけると、緊張して上擦った様子のまま頷くと共にセピュロスとゲネシスブレイカーは先陣を切るのであった。

 

 ・・・

 

「なんだかこうして見ると懐かしいな」

 

 GGF博物館には翔の姿もあった。

 後ろに一本に纏めた髪を揺らしながら博物館内に展示されているかつてのGGFで行われたバトルの映像を感慨深そうに眺めていた。

 

「GGFもGWFもつい最近みたいだよな」

「本当に時間が経つのは早いですよね」

 

 そして翔だけではなく、傍らにはナオキやあやこもおり二人もかつての自分達のバトルの映像を見て、懐かしむ。

 今日はGGF博物館のオープンと言う事もあり、GGFで名を馳せたガンダムブレイカー隊の面々が特別に正体されているのだ。

 

「あっ、翔君達、こっちよ!」

 

 オープン日と言う事も相まって今日は人で混雑している。人混みに紛れながら施設を散策していた翔達に呼び声が聞こえて見てみれば、同じくガンダムブレイカー隊のアカネが手を振って翔達を呼んでいた。

 

「ほら、ルミカちゃん達のトーク始まってるよ」

「今回は事務所の後輩とキャンペーンガールに選ばれたという話だ」

 

 呼ばれるままアカネと合流すると近くにはソウゲツ達もおり、ネバーランドでも再会したとはいえ久方ぶりに会った事により皆笑顔を浮かべている。するとアカネが特設ステージを指差し、ガンダムブレイカー隊の中で広く世間で認知されているであろうルミカの事を話すと、補足するようにソウゲツも付け足す。

 

「そう言えばぁKODACHIちゃんのお兄さんもガンプラファイターなんだよねっ?」

「はいっ、前のジャパンカップにも北海道代表で出場したんですよっ!」

「でも、初めてガンプラバトルをした時はこんなに流行るとは思わなかったなー」

 

 特設ステージの上にはキャンペーンガールに選ばれたルミカとコトの二人がコスチュームに身を包んでトークを弾ませている。特設ステージでのトークと言う事も相まって、ステージ近くは彼女達のファンで埋め尽くされており、翔達も遠巻きでしか見る事が出来ない。

 

「……毎回思うんですけど、ガンプラ系のイベントのコスチュームって妙に露出が高いですよね」

「あぁ……そう言えば、そうだな……」

 

 特設ステージの上にいるルミカとコトを眺めながら、ふとLYNXが感じた疑問を口にし、翔も同意する。思い返してみると、GGFもGWF2024も、そしてジャパンカップなどでMCを務めたハルなどどこか露出度の高い衣装を着ている傾向がある気がする。現にルミカもコトもスタイルが強調されるようなコスチュームだ。

 

「そう言えばよー。例の一矢君だっけか? 彼もここにいるらしいよな」

「確かにそんな話が聞こえてきますね」

 

 ルミカ達のトークも終わり、集まっていた観客達が散り散りになっていくなか、ナオキが一矢の話題を出すと、流石にワールドカップ優勝者である一矢もバトルをしていれば多少なり注目を集めるのか、ちらほらと道行く人々の会話からバトルをしているゲネシスブレイカーの名前が聞こえてくる。

 

「ガンダムブレイカーの名、使ってんでしょ? 興味あるのよねぇ」

「俺としてはあのガンプラの作り込を評価したいところだな」

 

 やはりガンダムブレイカーの名前は良くも悪くも注目されてしまうようだ。

 アカネが楽しそうに指を鳴らしながら闘志を燃やしていると、バトルは得意ではないダイテツはモデラーとしてゲネシスブレイカーを評価している。

 

「一矢君も大変ですね。これじゃあ他の人達にも狙われてるんじゃないですかね」

「まぁ俺達も例外ではなさそうだがな……」

 

 一矢とバトルをしてみたいのはアカネだけではなく、他のガンダムブレイカー隊も同じように感じる。その様子に苦笑しているあやこは翔に笑いかけると、翔も先程から注目を集めている状況にため息をつく。

 やはりGGFからガンプラバトルシミュレーターに携わっていたこともあり、ガンダムブレイカー隊の名は知られている。自分達もバトルに参加すれば例外ではないだろう。

 

「そう言えば、風香ちゃんは? 確か一緒に来てましたよね?」

「アイツなら碧ちゃんと一緒に限定ガンプラを買いに行ってる。“限定品は風香ちゃんの可愛さ並みに貴重”とか言ってたな」

 

 ふとあやこは周囲を見渡して風香の名前を出す。風香も碧と一緒にこの会場に来ているようだ。あやこの問いかけに別れる前に風香から言われた言葉を口にしながら答えると、風香ちゃんらしいですね、とあやこは苦笑していた。

 

「まぁなんであれ楽しもうか。ガンプラファイターはめぐりあう。そのうち、風香や一矢君達にも会うだろう」

 

 話もそこそこにい合破目の前のGGF博物館を楽しもうとする。別に無理に一矢達を探さなくとも、バトルなどをしていればそのうちに会う事はあるだろう。翔の言葉に頷き、ガンダムブレイカー隊の面々は施設を散策し始めるのであった。

 

 ・・・

 

「よーし良い滑り出しじゃねえか!!」

 

 ガンプラバトルを終えたマチオ達は近くのフードコートで休憩を取っていた。

 先程、PGガンダムを撃破した一矢達は幸先の良いスタートに注文した料理にかぶり付きながらマチオが豪快に笑う。

 

「この調子で次も行けると良いわねぇ」

「久しぶりのこの感じ……。楽しくなって来たね!」

 

 同じテーブルで食事をとっているミヤコやユウイチもどこか興奮を感じさせる様子で話す。きっと食べ終われば休憩もそこそこにすぐにでもまたガンプラバトルシミュレーターに向かっていくだろう。

 

「おら、坊主! どんどん食え食え!」

「え、ええ……」

 

 とはいえ一人だけ疲れ切った様子の一矢は突っ伏しており、目の前のパスタにいくらも手を付けていない。そんな一矢に気づき、マチオが食べるように促すと一矢は力なく答えながら食事を再開する。

 

(……彼女の親と出かけるってハードル高すぎない?)

 

 チョロチョロとパスタを食べながら死んだような目を浮かべる一矢。

 元々、ボッチ気質の一矢は友達と遊んだ経験など碌にない、そんな一矢がミサではなく、よりにもよってその親であるユウイチと出かける事になったのだ。もはや手探り状態で気疲れが半端ない。

 

(大体からして俺は話の引き出しだってないしなに話せばいいんだよ。あれでも俺、ユウイチさんのこと何て呼べばいいの? 将来のことを考えてお義父さん? いやまだ早いか。先走り過ぎとか思われたくないし。そもそもお義父さんと言われる筋合いはないなんて言われたらどうすれば。俺、そんなこと言われたらその場で押し黙っちゃうんだけど。っていうか今の俺もまずいよな。気が回らない奴とか思われたくないし、でも気が回るってどう気を回せばいいんだ? やっぱりこの場を盛り上げるような奴か?いや俺盛り上げられねぇよ。でもずっと黙ってるってのもヤバいよな。ここは何か一つ何か話を振ってみるべきか。いやでもなに話せばいいんだ?いきなり話して滑ったら嫌なんだけど。あぁこういう時にミサがいてくれれば。ミサに会いたい。とっても会いたい)

 

 他にも人はいるとはいえ、彼女の親と出かけるという状況がこの男には荷が重すぎたようだ。もはやオーバーヒートしそうな頭を表すようにパスタを巻いたフォークをずっと回し続けている。

 

(うっぷ吐きそう……)

 

 そしてついには緊張のあまり青ざめた表情で口元を覆っている。変に余計な気を回し過ぎて、勝手に自滅しているのであった。




前作との繋がりを考え、ミスター同様に年数が設定改変されておりますのでご了承くださいませ

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