機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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第八章 サヨナラへのカウントダウン
蘇る古強者達


「いやー素晴らしいバトルだったね! 私も現役時代を思い出して熱くなってしまったよ」

「ミスターの現役時代ってどんな感じだったんですか?」

 

 一矢とウィルの激闘も終わり、その後の騒動も落ち着いた後、再びミスターとハルによるマイクパフォーマンスが行われ、その話題はかつてのミスターの現役時代について触れられる。

 

「……輝いていたね」

「は?」

 

 自分の世界に入ったかのようにどこか遠い目をしながらかつてを思い出してじみじみと呟くように答えるミスター。しかしいきなりの変わりようにハルは思わず間の抜けた声を上げてしまう。

 

「あの頃は輝いていた。何もかもが……。世界中でバトルし勝利し、またバトルをする……。そんな輝きに満ちた日々でだった……。多くのスポンサーが付き、ミスターガンプラと呼ばれだしたのもこの頃だ」

 

 もはや自分の世界から戻っては来ず、ハルをそっちのけで一人語り始める。

 その姿はない筈のスポットライトがミスターだけを照らしているようにさえ見えてくるほどだ。

 

「ある時、私はアメリカで開催された大会に参加し、そこでウィルという少年に出会った」

 

 そしてそのままどこか聞き覚えのある話がまたミスターの口から出てくる。

 集まった者達が半ば置いてけぼりになるなか、ミスターのウィルとの出会いに関する話は一人続いていく。

 

「彼とのバトルは私が久しく忘れていた互角の相手と戦う高揚感を思い出させてくれた……! 年の差なんて関係ない、新たなライバルとの出会いを心から喜んだ!」

「ミスター? あの……そろそろ……」

「お互いがお互いを高め合い、戦っている間もさらなる成長をしていく……。そして素晴らしい時は瞬く間に過ぎ……私は彼に──!!」

 

 かつての熱き日々を思い出しているのだろう。

 どんどんと熱が籠っていくミスターにハルが置いてけぼりにされ、ちらほらと退屈している観客達を見かねて、ミスターをやんわりと止めようとするのだがまだまだミスターの話は続きそうになる。

 

「……ミスター。帰ってきてください」

「……あぁ、すまない! 昔を思い出すとついね」

 

 ハルに嘆息しながら声をかけられ漸く我に返ったのか、ミスターは周囲の雰囲気を察し、どこか照れ臭そうな様子で話す。

 

「チャンプ、恥ずかしいから人前で昔の話をするのは止めて欲しいんだけど」

 

 勿論、ミスターが一人熱く語っていたウィルとの思い出話は当のウィルにも被害が及び、ニヤニヤとからかうようにウィルを見ている夕香から恥ずかしそうに顔を逸らしながらどこか恨めしそうに話しかける。

 

「はっはっは、すまんすまん! ところでウィル、君は5年前のあの機体、捨ててしまったのか?」

「……いや、まあしまってあるよ」

 

 軽く笑い、そんなウィルに謝りながらどこか真面目な様子でかつてアメリカでバトルをした際にウィルが使用していたガンプラについて触れると、一応、この場にも持ってきてはいるのか、歯切れが悪いながらも答える。

 

「私も同じだ。捨てられなかったが使うには辛すぎた。君もそうだろう?」

「チャンプ、恥ずかしいからそういうの」

 

 あの時使用したガンプラを見れば、様々な思いがこみ上げる。だから捨てられなかった。だが、かといって使う事も出来なかった。ミスターに指摘されたのは事実ではあるが、それをわざわざ口に出されるのはウィルにはどうにも気恥ずかしい。

 

「そうだ! 折角、これだけのファイターが集まったのだからバトルロワイヤルといこうじゃないか! 私とウィルは5年前の機体で出よう!」

「えー……なんで僕まで?」

 

 妙案を思いついたとばかりに提案する。バトルロワイヤルそのものは非常に魅力的な提案ではあるのだが、何故わざわざミスターに付き合って過去の機体で出なくてはならないのかとウィルは不満そうだ。

 

「ウィル、君もファイターなら分かる筈だ!」

「なんでもかんでも【ファイターなら分かる】で片づけるのはチャンプのダメなところだよ?」

「ガンプラファイターとはそういうものだ!」

 

 またも聞いた事のある言葉でウィルを納得させようとするミスターではあるが、そこまで単純ではないウィルは呆れたように指摘するが寧ろ開き直っているかのように力強く言い放つ。

 

「ふむ……面白そうだな」

「翔さん?」

 

 顎先にか細い手を添え、今まで成り行きを見ていた翔は不意に口を開くと、一体、どうしたのかと近くにいた風香が見るが、翔はそのまま前に出る。

 

「なら、それに俺も便乗させてもらおうか」

 

 そう言って翔が持参したケースから取り出したのはガンダムブレイカーネクストではなく、ガンダムブレイカーであった。

 かつてGWF2024で使用し、ブレイカーネクストを使用するまではブレイカー0と併用して使用していたこのガンプラで翔も参戦しようと言うのだ。

 

「一矢君、ゲネシスガンダムは持ってきているか?」

「まあ……持ってきていない訳ではないですけど」

 

 そのまま翔は近くにいた一矢に声をかけると、一応、今日のガンプラバトルのイベントの為にミーティアなどが収められたケースを持ってきていた。ゲネシスガンダムも此処に収められているのでこの場に持ってきてはいる。

 

「では、俺はガンダムブレイカーで。一矢君はゲネシスガンダムで出よう。どうかな、一矢君?」

「翔さんがそう言うなら、俺は別に構いませんが……」

 

 ミスターとウィルがかつての機体で出撃するのであれば自分達もその土俵に立とうと考えた翔に一矢も自分のかつての機体が同じかつてのミスターやウィルの機体に通用するのか興味はあるのだろう。翔の提案に了承する。

 

「さあ、我こそはと思うファイターは出撃してください!」

 

 翔と一矢、そしてミスターとウィルが向き合いながらもう既に火花を散らすなか、盛り上がりを見せ始めるイラトゲームパーク内を察知したハルが早速ファイター達に促すと、ファイター達はそれぞれ己のガンプラを取り出す。

 

「ならあえて言わせていただきますわ! 我こそは、とっ!!」

 

 真っ先に名乗り出たのはシオンであった。いつもの自信に満ち溢れた表情でバァーンッと効果音が似合いそうな程、高らかにシオンが見せつけたガンプラは黒い特徴的な脚部に身の丈以上のドリルランスを装備した騎士……ガンダムキマリスヴィダールであった。

 

「じゃあじゃあ私も! 作ったのよ、新しいガンプラ!」

 

 今度は裕喜も両手を挙げながら、自身がガンダムグシオンリベイクフルシティに代わる新しく作成したガンプラであるフルアーマーガンダム(サンダーボルトver)を取り出して周囲に見せつける。

 

「フルアーマーガンダムっ! つまりFAG! 勝利オーライだよ! 因みにコ○ブキニッパーで作っ──」

「裕喜、それ以上はいけない」

 

 最初こそフルアーマーガンダムを見せていた裕喜だが、段々と違うFAGに話が移りそうになっていき、見かねた秀哉が後ろから口を塞ぐ。

 

「じゃあ折角だし? アタシも参加させてもらおうかねぇ」

 

 俺も俺もと次々にファイター達がシミュレーターに向かっていくなか、夕香も参加するつもりなのだろう。自身にとっての相棒ともいえるバルバトスを取り出す。しかし、そのバルバトスは今までと大きく異なる外見をしていた。

 

 その大型化したマニビュレーターや何よりはその背部に装備されたテイルブレード。狼の王を意訳することの出来る名を持つバルバトス。ガンダムバルバトスルプスレクスであった。

 

「夕香ちゃん、バトルになっても恨みっこなしだよ!」

「ミサ姉さん、本当の義姉さんになったとして手加減はしないよ」

 

 バルバトスルプスレクスを持っている夕香にミサが新たなアザレアを取り出しながらこれから行われるバトルロワイヤルに楽しみを隠せず話しかけると、夕香も待ち望んでいるとばかりに笑い、夕香とミサもシミュレーターに向かっていく。

 

「俺達も行こうか、一矢君」

「はい」

 

 もう既にファイター達はちらほらと出撃している。

 翔はゲネシスを持つ一矢に声をかけると二人もそのままシミュレーターに乗り込む。

 

「ガンダムブレイカー、如月翔」

「ゲネシスガンダム、雨宮一矢」

「「出る!」」

 

 シミュレーターに乗り込んだ翔と一矢はかつての愛機をセットし、モニター越しにカタパルトが表示されたのを確認すると、口を揃えて出撃するのであった……。


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