ラブライブ!~忘れられた月の彼方~   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
穂乃果編もクライマックスです。
今回は前回の予告通り
かなり暗い展開です。

それではどうぞ。




第49話 散りゆく三日月の少女

嘘だと思いたかった・・・

僕は今の状況に追いつけなかった。

だが、それを否定するかのように

花怜ちゃんは切りかかってきた・・・

 

 

ーーガキンッ!!ーー

 

刀同士での火花が鳴る・・・

 

(・・・真剣だから重すぎる!!)

 

花怜ちゃんと剣戟して

分かった事があるのだが

僕が使っているのは、あくまで模造刀であり

剣圧が軽い。

だけど花怜ちゃんのは純粋な刀であり

本物である為、一撃が重い・・・

 

「フハハ!、良い気分だ!!」

 

黒い服を着たリーダーが高笑いをしていた・・・

 

「カレンに一体何をしたのよ!!」

 

ティアちゃんの問いに男は・・・

 

「ちょっとした洗脳をしただけさ。」

「何ですって・・・!?」

「しかも一度かかった者は2度と解除できない代物さ!」

「ふざけないでよ!!」

 

ルーちゃんが怒りながら男に飛び掛かるが

神田明神の鳥居の上に逃げられた・・・

 

「君達3人に敬意を表して、2度と会う事もないだろう」

「「「!?」」」

 

男が言った事に耳を疑った・・・

 

「これでも国家の一員なのでね。」

 

つまり国の上層部のエージェントみたいな人って事?

 

「そんな話、私達が信じられると思う?」

「お嬢さん、部下の失態はリーダーが取るものでね」

「失態なんかしたかしら?」

「『デマ情報を流せ』なんて指示した覚えはないね」

 

するとルーちゃんが・・・

 

「つまり独断での行動って事・・・?」

 

男は正解と言うかのように・・・

 

「そういう事だ。ではサラバだ!」

 

煙玉のような物を出して男は消えた・・・

 

「・・・そんな事より!!」

 

どうやって花怜ちゃんを助ければ・・・

 

「・・・。」

「ユーリ、後ろ!!」

 

ティアちゃんの叫びに気づくと

花怜ちゃんが僕の背後に回り込んでいた・・・

 

「・・・くっ!?」

 

危なかった・・・

ティアちゃんが教えてくれなかったら

確実に首を切られていた・・・

 

「・・・っ!?」

 

すると僕の頬から血が流れた。

一体なんで・・・

 

(・・・まさか今のが三日月流?)

 

対象に攻撃が当たらなかったら

何かしらの自然現象によるダメージが襲うって

小さい頃に花怜ちゃんが言ってたのを思い出した・・・

 

「・・・。」

 

すると花怜ちゃんが消え始めた。

気配を探ると上から殺気がした・・・

 

 

ーーガキンッ!!ーー

 

 

「カレン・・・。目を覚ましなさいっ!!」

「ティアちゃん!?」

 

花怜ちゃんの攻撃を受け止めた

ティアちゃんだったが・・・

 

「・・・。」

 

花怜ちゃんが空いた左手を使い・・・

 

 

 

 

ーーヒュッ!!ーー

 

 

「っ!?」

 

拳圧でティアちゃんを吹き飛ばした・・・

 

「も、もう・・・!!。やめてえー!!」

 

泣き叫びながら花怜ちゃんに飛び掛かる

ルーちゃんだが・・・

 

「・・・。」

 

花怜ちゃんは刀の()()()()()()()()()を使い・・・

 

 

 

 

 

ーーガドッ!!ーー

 

 

 

「あっ・・・!?」

 

鳩尾に当て行動不能にした・・・

 

「・・・嘘でしょ?」

 

今の花怜ちゃんは完全に自我がない。

その証拠に目のハイライトが消え、表情も

いつもの明るさでは無く冷徹さが漂っていた・・・

 

「・・・。」

 

そして再び僕に切りかかる花怜ちゃん。

だがしかし・・・

 

「・・・!?」

 

花怜ちゃんの動きが急に止まった・・・

しかも表情も苦痛に満ちた表情になっている。

 

「カレン、まさか自力で洗脳を解こうとしてるんじゃ・・・?」

「それって・・・」

「わたしもティアちゃんと同意見・・・」

「ルーちゃん、大丈夫!?」

「ルナもなの?」

 

ふらふらになりながらも

ルーちゃんは根拠を説明し始めた・・・

 

「わたしに攻撃した時、()()()()()()()で攻撃したんだよ」

「そういえば・・・」

 

確かにルーちゃんをカウンターする時、

若干だが花怜ちゃんの手が震えてた気がする・・・

 

(体が花怜ちゃんの意思で拒否反応したって事?)

 

なら僕達の声が届けば・・・

僕が思いついた瞬間・・・

 

 

ーーヒュッ!!ーー

 

もの凄いスピードで

花怜ちゃんが近づいて来た。

あの移動方法は、対象の懐に入り込む

ゼロ距離での攻撃・・・

 

「ルーちゃん、ティアちゃん離れて!」

 

2人が離れると

僕は模造刀を逆手に持ち

花怜ちゃんの攻撃を受け止める準備をする。

失敗したら確実に僕は死ぬ!!

 

(タイミングは一瞬だけ!)

 

そして花怜ちゃんが僕の懐に入り込み

刀を構え、振り上げた瞬間・・・

 

 

 

 

ーーガキンッ!!ーー

 

 

「捕まえた・・・」

「・・・!?」

 

花怜ちゃんの表情が変わった!

伝えるなら今しかない!

 

「花怜ちゃん!、帰ってきて!」

「・・・っ!?」

「カレン!!」

「花怜ちゃん!!」

 

ルーちゃんとティアちゃんも叫ぶ。

すると花怜ちゃんは・・・

 

「・・・ゆ、ゆう、り君。」

「花怜ちゃん!」

 

一瞬、元に戻りかけたが

次の瞬間・・・

 

「うぁ、あああああっ!!!」

 

発狂したかのように

僕に刀を振りかぶった・・・

 

 

 

 

ーーガキンッ!!ーー

 

 

 

「・・・くっ!」

 

さっきと違い剣圧が重くなっている・・・

花怜ちゃんの腕力が圧力をかけていた。

 

「これ以上・・・」

「花怜ちゃん・・・?」

 

花怜ちゃんが小声で

何かを伝えようとしていた・・・

 

「ゆうり君達を傷つける前に・・・」

「・・・えっ」

 

花怜ちゃんは泣いていた・・・

そして僕に懇願するかのように・・・

 

「ゆうり君、花怜を・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、花怜、ちゃん・・・?」

 

今、何て言った・・・?

 

「カレン!!、何バカな事言ってるのよ!!」

「花怜ちゃん!!、冗談やめてよ!!」

 

ルーちゃんとティアちゃんが

花怜ちゃんに怒鳴りながら叫んだ・・・

 

「もぅ。花怜の意思じゃ、どうにも出来ない・・・」

 

花怜ちゃんが泣きながら

ポツポツと呟いた・・・

現に刀を持っている右手も震えていた。

 

「このままじゃ花怜は穂乃果ちゃん達まで・・・」

 

・・・じゃあ

どの道、花怜ちゃんは助からないって事?

なんで、なんで!!

 

「花怜がこうやって正気のまま喋れるのも・・・」

 

恐らく『あと僅か』って言いたいんだろう。

花怜ちゃんの言葉が僕には分かった・・・

 

(だったら僕は・・・)

 

僕が花怜ちゃんに伝える事は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユーリ!?」

「ゆうくん!?」

 

分かってるよ・・・

だけど、このままじゃ花怜ちゃんは・・・

 

「ゆうり君、ありがとう・・・」

 

花怜ちゃんは笑っていた。

泣きながらも優しい笑顔で・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side花怜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最低だな花怜は・・・

だけど知らない誰かに殺されるくらいなら・・・

 

(・・・ゆうり君に殺されたい)

 

こうやって喋れるのも

今日で最後・・・

頭が乗っ取られる感覚が近くなってきていた・・・

 

(ゆうり君、本当にゴメンね・・・)

 

本当だったら一緒に高校に行きたかった・・・

穂乃果ちゃん達とまた遊びたかった・・・

瑠菜ちゃんに裁縫のやり方を教わりたかった・・・

ティアちゃんの怖い話を聞きたかった・・・

 

(何より・・・)

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()・・・

 

 

 

 

 

そして花怜は意識を失った・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は覚悟を決めた・・・

一番辛いのは花怜ちゃんなんだから・・・

 

「うっ、うあああああっ!!!」

 

そして泣きながら僕に突撃する花怜ちゃん・・・

 

「・・・サヨナラ」

 

僕は花怜ちゃんに

別れの言葉を呟き・・・

そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーズバッ!!ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花怜ちゃんは糸が切れた人形のように

静かに倒れた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あ、れ?」

 

僕が泣きながら花怜ちゃんを

抱えると正気に戻ったのか

目を覚ました・・・

 

「か、花怜ちゃん、ぼ、僕・・・」

 

正直ショックが強すぎて

なんて声をかけていいか分からなかった・・・

 

「ううん、ゆうり君は、悪くないから泣かないで?」

「カレン!、傷が深いんだから喋らないで!!」

「今、傷の手当てするから!!」

 

ルーちゃんの言葉に花怜ちゃんは

首を横に振り・・・

 

「・・・も、う。いいよ、どの道、助からないし」

「い、嫌だ!!。花怜ちゃん死なないでよ!!」

「・・・ゆ、うり、君。」

「な、なに・・・」

 

花怜ちゃんは僕の目を見ながら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・だ、い好き。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後に

花怜ちゃんは僕の腕の中で息を引き取った・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皮肉にも日付変更線になった今日は

音ノ木坂中学の卒業式だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




花怜が死んでしまった回です。
悠里が『友達殺し』という罪を
背負い込んでいた理由は、これが原因です。
次回で穂乃果編は最終回です。
頑張って執筆しますので
よろしくお願いします。

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