ラブライブ!~忘れられた月の彼方~   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
久しぶりの投稿になります。

それではどうぞ。


第157話 託されたもの

「そういえば、ミスティ? メールにお忍びで来日って書いてあったけど……」

 

ミスティから警告を受けた後、悠里はメールの意味について訊ねる。

すると彼女は悠里の言いたい事を理解したのか……

 

「滞在予定ですか? 決めてませんよ」

「へー……決めてないんだー……」

「はい」

 

キョトンとした表情(カオ)で言った。

そして悠里もふーんと言いながら理事長である六華から出された紅茶を飲もうとした時、ある違和感に気付き……

 

「は、はぁ!?」

「「「「「っ!?」」」」」

 

これまでにないくらい驚きの声を上げる。

あまり聞かない悠里の驚きの声に千聖、彩、花音、紗夜、燐子は思わずビクッとしてしまう。

 

「ちょっと待って!? ミスティ、公務は!?」

「この日の為に全て終わらせてきました」

「何ドヤ顔で言ってるのさ!? 君、王女でしょ!?」

「王女以前に私は1人の女の子って言ってくれたのはユーリでしょう?」

「確かに昔言ったけど理由になってないよ!?」

「「「「「…………」」」」」

 

2人のやり取りに5人は唖然とする。

理事長である六華でもさえだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……こんなサプライズ……僕、聞いてない

「ゆ、ゆうりくん、げ、元気出して……?」

「そ、それで姫様? この後はどうなさるつもりだったのですか?」

「えっと……ユーリがここで短期バイトをしてると聞いたので、特にこの後は……強いて言うならユーリ次第かと」

「だそうよ? 悠里くん?」

 

気を取り直し、六華がミスティにこの後の予定を聞くと彼女は苦笑い気味に答える。

ちなみに悠里は燐子に慰められていた。

彼の心情は、どうしてこうなった状態であるが……

 

「えと……僕の予定だっけ? 終わったら南先生……僕が通わせてもらってる学校の理事長なんだけど、一度報告に行かなきゃいけないんだ。明日は羽丘女子学園ってところでバイトなんだけど……」

「じゃあ私もついて行きます♪」

 

悠里の言葉にミスティは答える。

なんでそうなると思った悠里だが彼の表情を見て……

 

「音ノ木坂学院の理事長ですよね? でしたら私も御挨拶に伺わないといけないと思って」

「……ちょっと待ってミスティ? 南先生の事なんで知ってるの?」

「数年前にアイリさん達と私の国に遊びにいらした事がありまして……そのご縁ですよ」

「えっ? じゃあ何? もしかして南先生、ミスティが今日来る事を知ってるとか?」

「それはないと思うわ。流石に南ちゃんも知らないと思うけど……」

 

まさかの予想にそれはないと言い切る六華。

 

「あ! そうそう! 羽丘女子学園で思い出したわ! 悠里くん、明日の事なんだけど授業は余りないと思うわ」

「…えっ? どういう事ですか?」

 

六華の言葉に疑問を浮かべる悠里。

 

「実は文化祭の準備中なのよ」

 

その言葉に更に疑問が浮かぶ。

 

「……文化祭? でも花女の文化祭ってもう過ぎたんじゃないですか? 5月の半ばかそのくらいでしたよね? 確か……」

「ちょっと悠里? なんでその事を知ってるの?」

「……え? あぁ……2年前に彩ちゃんが中間テストで行き詰まってた時に文化祭云々って愚痴ってたからさ。文化祭いいなぁって僕が言ったら、じゃあテストが終わったらおいでよって」

「そういう事ね。彩ちゃん……」

「あ、あはは……」

 

千聖の質問に答える悠里。

溜息を吐きながら千聖は彩を視線を向ける。当の本人は苦笑いだが。

 

「悠里くんが言うのも尤もなんだけど、実は今年は()()()()()()()()()()()()()()()()()で文化祭を行うの」

「……なるほど」

 

六華の説明に驚きながらも納得する悠里。

 

「そういえば、校門前にいくつか角材が置いてあったっけ……なら納得です。でも合同文化祭なんて初なんじゃないですか?」

「そうなのよ♪ 羽丘の生徒会長が提案したみたいで」

「そうなんですか。きっと陽気な感じの生徒会長なんでしょうね?」

「あ、あの、悠里さん……」

 

すると紗夜が悠里に声をかけてきた。

 

「紗夜ちゃんどうしたの? 何か言いにくそうだけど……」

「羽丘の生徒会長なんですが……その…()()なんです」

「……マジ?」

「はい。マジです……」

 

羽丘女子学園の生徒会長が紗夜の双子の妹と聞いて悠里は合同文化祭になった理由を納得してしまう。

否、納得してしまった……

 

「ユーリ、ユーリ、文化祭ってなんですか?」

「簡単に言うと、学校の生徒が学校内で開くお祭りだよ。ミスティの国で例えるなら……城下町で行われるお祭りかな。もっと簡単に言うと、僕らみたいな同年代だけで開催するお祭り」

「素敵です♪ 私も行けるでしょうか……」

 

キラキラさせた瞳しながら文化祭について悠里に聞くミスティ。彼女にも分かりやすいように悠里は説明する。

 

「それで? その合同文化祭っていつやるの?」

「6月8日と9日の2日間に決まりました」

「あ、あれ? まさかの早い日程……しかも土曜日と日曜日か」

 

6月に入って、いきなり大掛かりなバイト日程に不安になる悠里。まぁ文化祭気分が味わえるからいっかと考える。

 

「さて。そういう訳で悠里くん! 今日のバイトは終了になります」

「……あ。はい」

 

そして六華に今日のバイトは終了と言われ、悠里は返事をする。

 

「……というかミスティ。まさかその格好で出歩く訳じゃないよね?」

「ソ、ソンナコトナイデスヨー…………?」

「歩く気だったんだね………僕、職員室に戻って荷物取って来るから、私服に着替えておきなよ?」

 

さて。ミスティが着替えてる間、自分は職員室に置いてある荷物を取りに行こうとした時……

 

「ユーリ待ってください」

 

理事長室のドアに手をかけるとミスティが声をかけ、悠里の傍に寄って来た。

そして……

 

「これを……」

 

1枚の()()()()()()()を手渡した。

 

「……これを僕に渡したって事は、そういう事って解釈してもいいんだね?」

「…………はい」

「君が気を落とす事じゃないよ。僕だって分かってた事だから………」

 

2人の表情は、明らかに寂しそうだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

職員室に戻った悠里は、荷物を自分の鞄に纏めていた。

 

「…………」

 

ミスティから渡された薄緑色のカードを見つめる。

中央に藍色のラインが描かれており、裏側は藍色ではなく紫色のラインが描かれていた。

使い込まれた感があるにも関わらず、新品のように悠里には視えた。

 

(あ、あれ? おかしいな………目頭が熱い……)

 

よく見れば、カードを握ってる手元が微かに震えていた。

あぁ……そうか、自分は泣いてるんだと理解した……

 

「…()()()()()()()()……」

 

少年の泣き声が微かに響いていた……




読んでいただきありがとうございます。
次回も遅くなるかもしれませんがよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。

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