ラブライブ!~忘れられた月の彼方~   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
前回の予告通り、少し暗めです。

それではどうぞ。


第156話 目覚めと再会と警告と

「うっ……」

 

目が覚めると、知らない天井だというのは誰もが思う事だろう。

瞼をゆっくり開く。漂う薬品のような匂い……

 

「…もしかしなくても……ここって保健室?」

 

身体を起こし、辺りを見回す。

何故自分は保健室にいるのだろうかと疑問に思った悠里が考えようとした時、保健室の扉が開いた。

 

「「「あっ……」」」

「…あ、えっと……」

 

彩と千聖と花音だった。

起きるタイミングを間違えてしまったのか、固まってる3人を見て、なんと声をかけていいか分からなくなる悠里……

 

「お、おはよう……?」

「おはようじゃないわよ!! このバカッ!!」

 

悠里がそう言うと、真っ先に怒鳴ったのは千聖だった。

俯いている為、表情は分からない……が声が若干震えていたので長年の付き合いである悠里には分かってしまった。

 

"また彼女に不安な思いをさせてしまった"……と。

 

「悠里くん、校舎裏で倒れたんだよ?」

「私も花音ちゃんから聞いてびっくりしたよ。近くにいた理事長先生と一緒に校舎裏に行ったら、悠里くんが倒れてたんだもの……」

 

花音と彩の説明に納得する悠里。

聞けば、その後、理事長が他の生徒が騒がないように内密に悠里を保健室に運んでくれたらしい……

 

(後でお礼を言わないと……)

 

そう思った時、保健室の扉が再び開く。

 

「失礼します! 悠里さんはいますか!?」

「し、失礼……します……ゆ、ゆうりくんは……」

 

紗夜と燐子だった。2人共、走って来たのか肩で息をしていた……

 

「紗夜ちゃん、燐子ちゃん。悠里くんなら今起きたところだよ?」

「「えっ?」」

 

花音の言葉に紗夜と燐子が顔を上げると、心配かけてゴメンとジェスチャーをする悠里の姿がそこにはあった。

それを見た2人は、へなへな~と座り込んでしまった。

 

「悠里、 紗夜ちゃんと燐子ちゃんも貴方が倒れたって聞いて心配してたんだから反省してよね?」

「……はい」

 

千聖に言われ、なんも言い返せない悠里なのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そういえば……2人共、生徒会は?」

「今日は来客が来るとかで特にありません。大事な書類等は、昨日の内に終わらせましたので」

 

悠里の質問に紗夜が答える。

紗夜は風紀委員、燐子は生徒会長をやっているのである。

最も彼が驚いたのが、燐子が生徒会長をやってるという事だ。彼女は人混みや人前で何かをするのが苦手な事を知っていたので、初めて聞かされた時は何があった!?と思った程である……

 

「そ、それで松原さんから、ゆうりくんが倒れたって聞いて……」

「……ごめんなさい」

「ううん。でも……なんともなくて良かった……」

 

こればかりは謝る事しか出来ない悠里。

 

「紗夜ちゃん、さっき来客が来るって言ってたけど誰なの?」

「いえ……私も理事長から聞かされたばかりなので、誰かまでとは……ただ……」

「ただ?」

「理事長だけじゃなく先生方も慌ててたので、凄い偉い方がいらっしゃるのかと……」

 

彩と紗夜のやり取りを聞いた悠里は、ある事を思い出す。

 

「悠里? 顔色が真っ青だけど……どうかしたの?」

「いやぁ……紗夜ちゃんが言ってた"来客"という言葉に凄い心当たりがあって……」

「もしかして、悠里さんのお知り合いですか?」

「…うん。多分そう────」

 

そうだと思うと悠里が言おうとした瞬間、スマホが鳴った。

まさかなと思いながらも、スマホを操作すると、予想通りの相手だった。

メッセージを確認した悠里は5人に向かいながら……

 

「…その"来客"からメールなんだけど、今理事長室にいるみたい。みんなも来る?」

 

溜息交じりに言った。

その表情は、来れば分かるといった感じであると5人は察したそうな……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…僕が誘った後に言うのもなんだけど、みんなこの後の予定とか大丈夫なの?」

「私と彩ちゃんは今日はオフだから。仕事も入ってないし」

「バイトのシフトも入ってないから、今日はゆっくりできるんだ♪」

「…花音ちゃんは?」

「今日は練習もないから、大丈夫だよ?」

「…紗夜ちゃん、燐子ちゃん。Roseliaの練習は?」

「私達の方も今日は練習はありません」

「友希那さんが……休息も大事だって……」

 

理事長室に向かう途中、悠里は5人に放課後の事を訊ねた。

5人共、色々と忙しい身の為、もしも予定が入ってたらどうしようと内心、不安であったのである……

しかし、そんな事は無かったようだ。

 

「…さてと。そろそろ理事長室に着くかな……って……」

 

理事長室が視えたと同時に違和感があった。

それは……

 

「あの黒服の人達……誰だろう?」

「こころちゃんのところの黒服さん……かな?」

「……と思うでしょ? 実は違うんだよ、これが……」

 

ドア前にいた2人の黒服の女性である。

彩と花音が疑問に思ってるところに悠里は違うと答える。

そして黒服の2人に近づき……

 

「…すみません。もしかして六華さんと────って中にいます?」

「少々お待ちくださいませ……」

 

何かを話した後、黒服の女性は一度中に入って行った。

 

「悠里、貴方何をしたの?」

「えっと……中に入る許可」

「普通にノックをすればいいんじゃないんですか?」

「ああ。それはね────……」

 

先程のやり取りを見た一同。

そして千聖と紗夜の質問に悠里が答えようとした時、黒服の女性が戻って来た。

 

()()()。是非中へ入ってほしいと仰っています」

「……どうもすみません」

(((((悠里様?)))))

 

黒服の女性が悠里への呼び方に疑問を抱いた5人だったが、『ご友人様』も中へどうぞと言われたので、悠里に続き、5人も中に入る事にした……

 

中に入ると、理事長である六華の他に後ろ姿でよく視えないが、金髪の少女が来客用のソファに座っていた。

2人共、楽しそうに話している。そして悠里が頃合いを見て……

 

「…えっと……ミスティ?」

 

遠慮がちに言った。

すると呼ばれた少女は声がした方に振り向く。そして悠里の顔を見ると……

 

「っ!! ユーリ♪」

 

嬉しそうな声を上げ、悠里に抱きついた。

これを見た他の5人はというと……

 

(後で悠里とオハナシしましょ♪)

(うわぁ~、なんか映画のワンシーンみたい……)

(ふ、ふえええ~~~!?)

(ゆ、ゆゆゆ……悠里さんになんで抱きついてるんですか!?)

(わ、わたしも……混ざりたいな……)

 

反応は様々だった。

ただ1人、六華だけは『あらあら♪』と言いながら、この状況を楽しんでいたそうな……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一同が落ち着いた後、六華は悠里達6人をソファに座るように促し、悠里達は促されるままにソファに座る。

それを確認した六華は、先程の金髪の少女を座らせ自分も対面のソファに腰掛けた。

 

「さて♪ 何か質問はあるかしら?」

「あ。えと……私いいですか?」

「はい♪ 丸山さん、どうぞ♪」

 

のほほんとした表情で言う六華に対し、恐る恐る手をあげる彩。

 

「えっと……その子がドレスを着てるのはなんでかな~って……」

 

彩の質問は、他の4人の代弁でもあった。

それは金髪の少女の容姿だった。女子校には場違いのフリル調のドレスを身に纏っているので場違い満載だった。場違いという意味なら、悠里もだが……

 

「ああ♪ それね? 悠里くん説明よろしく♪」

「…ちょっ!? 待てよ!! ……失礼しました。僕が説明ですか?」

「あら♪ そのネタ、藍里ちゃんも昔やってたわね~♪」

「…あぁ……そうですか……」

 

うちの母は何をやってるんだと思いつつも悠里が、金髪の少女に視線を向ける。彼の言いたい事が分かったのか、頷いた彼女はソファから立ち上がり……

 

「皆様、初めまして。私、ミスティリーナ・メル・フィアーティムと申します。先程は驚かせて申し訳ありません。どうぞよろしくお願い致します」

「「「「「ど、どうも……」」」」」

 

上流階級のような仕草で5人に挨拶をした。

 

「…えっと、ミスティがドレスを着ている理由だっけ? 燐子ちゃんに問題です」

「えっ!? わ、わたし!?」

「NFOで一時期、高アイテムドロップ率の上昇イベントの名前は? ちなみに12月1日から12月10までのイベント」

 

NFOとは、悠里と燐子が趣味でやっているオンラインゲームである。

ちなみに紗夜も偶にやっている。

 

「えっと……その期間のイベント名は……『プリンセスキャンペーン』だよね?」

「正解。じゃあ、その由来は?」

「えっと……イベント限定で登場する、お姫様のクエストを達成すると、高アイテムのドロップ率が上昇……」

「……じゃあ最後の問題。その"お姫様"の名前は?」

「えっと……」

 

悠里の課した問題を考える燐子。

そしてある答えに辿り着く。それは……

 

「お姫様の名前は確か……『ミスティリーナ・メル・フィアーティム』……え、えっと……ゆうりくん……もしかして……」

「白金さん? 手が震えてるけど……」

「ひ、氷川さん。わ、わたしは夢でも見ているのでしょうか……」

「夢? 何を言ってるの?」

「じ、実は……そのお姫様のキャラ、とある王女様がモデルになってるんです……」

 

燐子の一言に紗夜、千聖、彩、花音は考える。

今の説明だと、そのモデルとなった人物は実在しているという事になる。となると、ある説が浮上する。しかも子供でも浮かぶ説だった……

 

「えっと……悠里? もしかして……この人がドレスを着てる理由って……」

 

千聖が悠里に確認を取る。

すると彼はこう言った……

 

「…かおちゃんの言葉を借りるなら、つまりそういう事だよ」

 

 

その言葉に5人は理解した。

 

 

 

つまり……目の前にいる金髪の少女の正体は……

 

 

 

 

本物(ガチ)のお姫様だった……

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「…それでミスティが来日したのって?」

「……反逆者がこの国に逃亡したんです」

「あら。反逆者? 姫様の国でそんな奴等いたかしら?」

 

悠里がミスティに来日した理由を尋ねる。

すると重々しい口調で彼女は答えた。その言葉に六華も真面目な表情で首を傾げる。

 

「……穏やかじゃないね? まぁこんな事で警察が……動くわけないか。毎度の事だけど」

「ですね。この事はティアにも手紙で前から伝えてあるのですが……」

「…あぁ、ティアちゃんが言ってた異変の1つって、この事か……」

 

突然の重い話についていけない5人……否。

 

(何かしら……なんかとても嫌な予感がする。さっきの事もそうだけど……)

 

千聖だけは、悠里達の会話になんとなくだが理解しつつあった。

彼女は校舎裏で悠里が倒れた時に彼の手首が透けてるのを目撃してしまってるので、それとはまた別な事を危惧していた……

 

「それから……ユーリ」

「……えっ?」

 

心配な表情をしながらも真剣な表情で悠里を見つめるミスティ。

 

「貴方の事ですから、私が言っても無駄かと思いますが……()()6()()()()()()()()()()()()

 

彼女のその言葉は心配というより、警告に近かった。

 

「……うん。分かってるさ。僕には…もう……時間がないんだから……

 

彼のその表情はどこか悲しげだった……

 




読んでいただきありがとうございます。
今回登場したオリキャラの紹介になります。
こちらがプロフィールになります。

本名:ミスティリーナ・メル・フィアーティム

年齢:悠里と同い年

容姿イメージ:『甘城ブリリアントパーク』のラティファ・フルーランザ

身長:155cm

誕生日:12月10日

血液型:A型、いて座

一人称:私

次回もシナリオが纏め終え次第になりますので、
少し遅れたりするかもしれません。
次回もよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。

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