ラブライブ!~忘れられた月の彼方~   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
今回は少し……?暗めです。

それではどうぞ。


第155話 異変

「ふぅ……」

 

無事に午後の授業を終え、掃除の時間になり、箒を持ちながら1人で掃き掃除に勤しむ悠里。

彼の持ち場は校舎裏だ。

職員室に戻った際に、女性教師から『この場所、最近あまり掃除してなかったから、お願いしてもいいかな?』と頼まれたのである。

 

中学時代。悠里は掃除を押し付けられる日々が毎日あったので、学校内の清掃範囲は、ほぼ把握している。別に嬉しいとは思わないが……

 

(ほのちゃん達、今何してるのかな……)

 

ふと、穂乃果、海未、ことりの顔が浮かぶ。

3人には、バイトに行くしかメールで連絡をしてないので、詳しい内容は教えていない。

 

「…あ、そういえば……」

 

メールで思い出したのか悠里は、内ポケットからスマホを取り出す。メール欄に入ってた、まだ見てない新着メールを確認する事にした。

掃除中にスマホを弄るのは良くないが、せめて確認だけでもしておこうと思ったのだ。

 

送り主を確認すると、相手はとある国の王女からだった。

しかも内容にはこう書かれていた……

 

『夜分遅くに失礼いたします。数年振りに日本にお忍びで来日する事になりました。明日、国を出発します。空港に着くのは2日後になります。着いたら花咲川女子学園で理事長をしているリッカさんにご挨拶に伺おうと思っています』

 

あまりにも突然な内容だった。

メールが来た時刻を確認すると、届いたのは2日前。もし悠里の予想通りなら、彼女が来るのは今日という事になる……

しかも花咲川の理事長である六華と知り合いという事に驚きである。

 

(とりあえず簡単で且つ詳しい返信をしないと……)

 

それよりも今は彼女への返事だ。

まさか彼女もバイトとはいえ悠里が女子校にいるとは思わないだろう。もし万が一の事も考えて悠里は慣れた手つきでスマホを操作し、文章を作成して送信ボタンを押す。

 

「…とりあえずはこれで大丈夫でしょ……」

 

そう言いながらスマホを内ポケットにしまう。

ちなみに悠里が送った文章は『6月の終わりまで、今日から花咲川で短期バイトをする事になったよ。もし学校で逢えたら詳しく説明するね?』という内容だ……

これなら彼女も納得してくれる……筈……

 

さて。掃除の続きをしようと思い、ゴミ袋を捨てに行こうと近くに置いておいたゴミ袋を持とうと手をかけようとした時────

 

「えっ……」

 

自分の体がぐらぐら揺れる感覚に陥った。

 

(な、なに……これ!? 急にめまいが……)

 

しかも周囲がぐるぐると感じるだけでなく、頭痛も襲ってきた。頭痛は偶に感じる程度で痛みも一瞬なのだが、今回はその比じゃなかった。鈍器で殴られ続けられる痛さだった……

 

(い、痛い……!! だ、誰か……)

 

助けを呼ぼうにも、あまりの痛さに声も上げれない。視界も上手く定まらない。めまいもさっきより酷くなってると自分でも嫌でも分かってきた……

 

「「────!?」」

 

視界が定まらない中、誰かが自分を呼んでる気がしながら悠里は倒れた……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「花音、大丈夫? 重くない?」

「うん。このぐらい大丈夫だよ」

 

割れ物注意と書かれた段ボール箱をお互いに1箱ずつ持ちながら廊下を歩く千聖と花音。

2人の掃除場所は化学室付近だったので、古くなった実験道具を校舎裏近くにあるゴミ捨て場に向かってる最中だった。

 

「それにしても……これちょっと重いわね……」

「そ、そうかな? 私はドラムをしてるから平気だけど……」

「私も少し力つけようかしら……」

 

軽々と段ボール箱を運ぶ花音を見て自分も少し力をつけた方がいいかと悩む千聖。

 

「そういえば悠里くん、先生に何か頼まれてたよね?」

「あぁ……確か校舎裏の掃除を頼まれたって言ってたわよ」

 

花音の問いに件の少年が言ってた事を思い出す千聖。

その際にどことなく寂しそうな表情をしてたのが気になったが……

 

(また私に隠し事かしら?)

 

そう思いながら校舎裏に着いた時だった。

竹箒が横に置いてあった。近くにはゴミ袋も置いてある。それを見た千聖は何故か違和感を感じた……

普通なら、その光景を見ておかしいとは思わないのだが、直感的に()()()()()()()と感じたのだ。

 

「なんだろう……? これ……」

 

花音も自分と同じ事を思ったのか、現場を見て呟く。

ふと、悠里の顔が浮かぶ。そういえば、彼は校舎裏の掃除を頼まれた筈だ。もしかしたら近くにいるのではないかと思った千聖は段ボール箱を置いて、もう少し奥に行ってみる事にした。

花音もそれに続き、千聖の後を追う。

 

歩いて直ぐに違和感の正体に気づいた。

悠里だった。しかし何やら様子がおかしい……

2人がそう思った次の瞬間、悠里の体がふらつき始め、しまいには倒れてしまった。

 

「「悠里(くん)!?」」

 

突然の事に千聖と花音が悠里の元に駆け寄る。

軽く悠里を揺さぶってみるがピクリとも動かない……

 

「ち、千聖ちゃん……ど、どうしよう!?」

「落ち着いて花音! この場は私がいるから花音は誰か呼んできて!」

「う、うん! 急いで誰か呼んでくるね!」

 

千聖に言われた花音は急いで誰かを呼びに走って行った。

残された千聖は、他にどこか異常はないか悠里の手首を握るが……

 

(悠里の手首が……透けてる……!?)

 

そう。()()()()()()()

握っている感触はあるが、千聖から見て、明らかに悠里の手首が透け始めているのだ。普通の人間なら絶対に有り得ない現象が今ここに起きてしまっている……

 

「悠里……もしかして……また……なの……?」

 

彼女の小さく震えた声だけが、この場を支配していた……

 




読んでいただきありがとうございます。
次回も少し暗めです。
本日はありがとうございました。

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