前回の予告通り、昼休みの内容になります。
それではどうぞ。
職員室に戻った後、
僕はプリントの採点に取り掛かっていた。
(ここは○で、ここが×……)
採点を久しぶりにやってみて思ったけど、個人的にかなりの神経を使う。
こいつ何言ってんの?と思うかもしれないが、実際は脳をかなり酷使するからだ。単純な作業程、重労働な物はない……
「お、終わった……」
30人分のプリントの採点を終え、家から持って来たハチミツ飴を口に入れる。
本当はチョコレートかクッキーが良かったのだが、いかんせんバイト先。更に言うなら、学校……更に更に言うなら、女子校でそんなモノを食べる訳にはいかない。なので、万能糖分補給の飴にしました。
「次の授業クラスは……あれ? ないや……」
次の授業を担当するクラスを確認したところ、特になかった。
これには僕もちょっと意外……。まぁ…あくまでバイトでやらさせてもらってるので、その辺は気にしない事にした。
(宿題の続きでもやってようかな……)
このままボーっとして過ごすわけにもいかないので、先程の宿題の続きをやる事にした。えっと……次は数学か。
ーーー ーーー ーーー
そして、宿題を黙々とやっていると……
キーンコーンカーンコーン♪
学校の予鈴が鳴った。
時刻を確認してみると、4時限目の終わりのお知らせだった。
もうそんな時間かと思ってると、授業を終えた先生方が続々と職員室に戻ってきた。
「水無月君、昼食はどうするんだい?」
「あの……昼食って事はいわゆるお昼休みなんですか?」
「そそ。今から1時間30分が、この学校のお昼休みだよ。購買で買う生徒もいれば、学食で食べる生徒もいるね」
購買かぁ……。シナモンロールあるかな?
あぁでも買い過ぎると、みーちゃんに注意されちゃうし……。
この学校の学食にも興味あるけど、バイト初日なので行く自信がない。というか、お弁当を持って来ているので、その心配はないんだけどね……
「水無月君~、君を呼んでる生徒が来てるよ~」
「えっ? あ、はい」
そう思ってると、数学担当の先生が僕を呼んだ。
誰なんだろうと思いながらも入口付近に向かうと……
「丸山さん?」
何の用なんだろ……いや、だいたい予想はつくんだけど……
「悠里く、じゃなくて先生、今時間は空いてますか?」
「あ、はい。空いてますよ?」
「良かったら、一緒にお昼ご飯でもどうですか?」
予想通り、お昼ご飯のお誘いだった。
証拠に彩ちゃんは手にお弁当を持っている。
まぁ…後は、全校集会の時に僕が
「お弁当を持ってくるので、ちょっと待っててください」
それだけ言った後、急いで鞄から、お弁当を取り出す。
あんまり待たせるのも悪いからね……
ーーー ーーー ーーー
「ところで丸山さん? 今からどこに向かうんですか?」
「…その前に敬語禁止。後、ちゃんと名前で呼んでよ」
頬を膨らませながら訴えてくる彩ちゃん。
「はぁ……で? 彩ちゃん、今からどこに向かってるの?」
「中庭だよ♪ 千聖ちゃんと花音ちゃんも一緒なんだ」
呼び方を変えた途端、
さっきの表情から打って変わり、上機嫌で僕の質問に答えてくれた彩ちゃん。それにしても中庭かぁ……。ここに着いた時にちょっとだけ見たけど、音ノ木坂学院と同じくらいの広さだった。ただ違うのは、空気の美味しさかな。
そんなこんな考えていると、中庭に着いた。
てか、生徒がたくさんいるじゃん……。そりゃそうだ、生徒の憩いの場だし……
すると、レジャーシートに座っている千聖ちゃんと花音ちゃんを見つけた。
「千聖ちゃんー、連れてきたよー」
「彩ちゃん、お疲れ様。悠里、スーツ姿似合ってるわよ?」
「…からかわないでよ。まぁ…世辞でも受け取っておくよ」
靴を脱いでレジャーシートの上に座る。
「そ、そんな事ないよ? スーツ姿の悠里くん、凄く似合ってたよ」
花音ちゃんも千聖ちゃんと同じ事を言う始末。
いやいや、ほんとに似合わないんだけどなぁ……。はぁ……
「そうだ。悠里くんって、どうして
「えっと…まぁ…一言で説明するならバイトだよ」
「「バイト?」」
彩ちゃんの質問に僕が答えると、千聖ちゃんと花音ちゃんは疑問の声を上げる。もちろん、質問をしてきた彩ちゃんもだ。
「これからの資金源を少しでも貯めようと思って、6月の終わりまで働ける短期バイトはないですかって、僕が通ってる学校の理事長に相談したら、教師のバイトはどう?って言われて今に至るって訳」
「それを引き受けた悠里もどうかと思うけど……」
「…ちーちゃん、その辺は僕も自覚してるよ。だけど、理事長もその案件には困ってたんだよ?」
だって南先生もその案件には、かなり困ってたんだもん……。基本的に僕は、南先生の頼み事は聞く質だ。ただし内容にもよるけどね……?
「なるほどね。あと悠里? ちーちゃんって呼ぶの止めて……。恥ずかしい……///」
「…え? 別にいいじゃん、こっちのほうが僕は呼びやすいんだけど……」
「悠里が良くても、私が気にするのよ!」
しょうがない。ちーちゃんの為にも、話題を変えてみるか。
花音ちゃんは僕ら2人のやり取りに気づいたみたい。現に今もニコニコしている……
「そういえば彩ちゃん、僕の個人的な見解なんだけど……昨日か一昨日辺りに寝不足したでしょ?」
「えっ!? なんで分かるの!?」
「やっぱり……。全校集会の時にあくびを噛み殺してたのが見えたから。それで僕は思った。彩ちゃん、また寝不足したんだなって……」
そう言うと彩ちゃんは目を逸らした。
しかも分かりやすいくらいに。本人は隠してるつもりなんだろうが……
「彩ちゃん? 悠里が言ってる事は本当かしら?」
「うっ……。き、昨日はちゃんと寝たよ……?」
「彩ちゃん、正直に言いなよ。僕、怒らないから」
「は、はい。一昨日は寝不足しました……」
「全く……。肌荒れするから気をつけなよって、僕言ったじゃんか……」
「で、でもちょっとくらいならいいかなーって……」
すると、花音ちゃんが疑問に思ったのか……
「あれ? 悠里くんと彩ちゃんって知り合いなの?」
僕と彩ちゃんを交互に見ながら訊いてきた。
「うん! 悠里君は、私のマネージャーなんだ♪ 」
「「ええええええっ!?」」
彩ちゃんの答えに驚く、千聖ちゃんと花音ちゃん。
「彩ちゃん、説明が足りないよ。2人共、正確には元・マネージャーだから。と言っても、もう2年前の話だけどね……」
「2年前っていうと……悠里と彩ちゃんが高校1年の時って事?」
「うん。まぁ…そんな感じ。マネージャーらしい事なんてしてあげられなかった気がするんだけど……」
「そんな事ないよ! 私の体調管理とか気にかけてくれたり、危ない人から守ってくれたりとかしてくれたでしょ!」
「そりゃ……まぁ…うん」
個人的な見解なんだけど、
マネージャーっていうよりボディーガードの仕事が多かった気がする。
主に彩ちゃんを狙う不審者の撃退とか………
「でも悠里? どうして、その流れになったの?」
「会長に電話で呼び出されて、直々に頼まれたのがきっかけなんだ。ほら…一時期、事務所が慌ただしかった期間があったでしょ?」
「あぁ……あの時ね。確かにスタッフさんが慌ただしかったわね」
千聖ちゃんに簡単に説明すると納得したと言わんばかりに頷いた。
結局、慌ただしかった理由は教えてくれなかったが……
「まぁ…そんな感じで、数ヶ月の間だけ、彩ちゃんのマネージャーになったって訳。積もる話は、お昼ご飯を食べながらにしよっか」
そんな感じで、お昼ご飯を食べる事になった。
この後、昔の話とかをする羽目になってしまった……
それから、明日は羽丘女子学園のバイトに行くと僕が話したら、3人の驚く声が中庭に響いたのは余談である。
読んでいただきありがとうございます。
次回は午後の授業の内容になります。
本日はありがとうございました。