ラブライブ!~忘れられた月の彼方~   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
今回は非現実要素がほんの少し入ります。
とあるゲストさん2人?が出てきます。
更に悠里の秘密がちょっとだけ出ます。
ちなみに今回の話は別にスルーしても構いません。

※タグにも書いておりますが、最終章は『非現実要素』がありますので、それが苦手な方はブラウザバックしてください。
ちゃんとそれを守れる方のみ、お読みください。

それではどうぞ。



第145話 5月31日

「はぁ…」

 

ことちゃんと3人の知り合いからの手痛い説教から

解放された僕は自宅に向かっていた……

 

「今日の夕飯…何にしようかな? それ以前に材料の蓄えとかあったかな……」

 

最後に買い物したのはいつだったかなと考えながら

歩いていると、川沿いに何か黒い物体が視えた……

 

(アレ…なんだろ?)

 

気になった僕は川沿いに降りてみる事に。

だって気になって仕方ないんだもん……

 

「確か、この辺に……」

「に"ゃ~」

「…猫?」

 

目の前に黒い猫がいた。

もしかしてさっきの黒い物体は、この猫だったんじゃないだろうか?

遠目からで実際に分からなかった訳だし……

それにしてもこの猫… 尻尾に蒼いリボンを付けてるって事は誰かの飼い猫なのかな……

 

「にゃ~」

 

猫は僕を見つめた後、足元に擦り寄って来た。

 

(なんか食べ物…持ってたっけ?)

 

お腹が空いてるのかもと思った僕は、

その場にしゃがみ込み自分の鞄の中を漁る事に……

 

「…確か、この辺にキャットフードとめざしが……あった」

 

非常食用のキャットフードとめざしを見つけ、

食べやすいように細かく砕く……

餌を乗せる皿がないのでノートの1ページを破り折り紙の要領で簡易用の皿をその場で作り、餌を乗せる……

 

「…こんなものしかないけど」

「にゃあ~」

 

猫は尻尾を振りながら餌を食べ始めた。

今気づいたがどうやらこの猫は老描のようだ……

その証拠に食べる仕草がゆっくりな為である。

 

「…それにしても君って奇跡の魔女にそっくりだよね? 僕の気のせいかもしれないけどさ……」

 

撫でながら呟く僕。

何せ見た目がどこぞの奇跡の魔女と似てたからである……

実際のところ、あちらも正体が黒猫で尻尾に蒼いリボンを付けているという特徴がある…まぁ流石に、この猫は偶然かもしれないが……

 

「よっこいしょっと……」

 

しゃがみ続けるのも疲れるので、

その場に座りこむ事にした。

現在5月31日の18時……聴こえるのは部活帰りの学生の声と車の走る音だけ……

それ以外に聴こえるとしたら……

 

「にゃあ~」

 

餌を食べ終え僕におかわりを要求する猫くらいだ。

しかしこの猫はよく食べるなぁ……

相当お腹が空いていたんだろうか? それ以前になんか懐かれてる気がする。猫は基本的に気紛れな生き物の筈だけど……

 

(…ま、気にする程じゃないんだけどね)

 

家に帰ったら小説でも書こうかな……

小説を書いていると言っても二次創作だけどね?

自分が作ったキャラをどうやって原作に介入させるのかが難し過ぎるけど、楽しみの1つとして趣味で書いている。

ちなみに1話ごと完成させる度に妹の涼香に……

 

『お兄ちゃん、早く読んで』

 

と…せがんでくるので執筆する側としては少し恥ずかしかったりする。

何せ自分で書いたやつを妹に朗読するからだ……

 

「さてと……」

 

そろそろ帰ろうかなと思い、

その場を立った瞬間、ある違和感を感じた。

それは……

 

(時が止まってる?)

 

突如として何の音も聴こえなくなったのだ。

さっきまで目の前で流れていた川の流れが()()()()したかのように止まったのだ……

ここから視える人すらも動きが停止していた。

 

「にゃあ~」

 

ただ唯一、動いてるのがいた。

それは僕が餌をあげた猫だった……

 

 

「我が巫女よ、そこで何をしている」

 

 

声がしたのと同時に目の前の空間が割れた。

いや、そう説明するしかなかった……

そして割れた空間から不思議な巫女服を着た女性が現れた。

女性を見た僕は少し驚愕した。何故ならその人物は本来なら空想上の人物なのだから……

 

「私が何をしようが勝手でしょ?」

 

今度は猫が喋り出した。

すると猫は光だし徐々に人の姿を形成していく……

その正体は今月の半ば辺りに1度だけ逢った奇跡の魔女ベルンカステルだった。

 

「その割には随分と嬉しそうに見えたが?」

「…チッ!! あんたがこの世界(カケラ)を観測するなんてどういうつもり? フェザリーヌ・アウアウローラ」

「…アウグストゥス・アウローラと何度も言っておろう」

 

溜息を吐きながら自身の名前を訂正する女性…いや魔女なんだが……

 

「ほう…人の子よ……私を見ても驚かないのか?」

「…そこまでは驚かないですね。まぁ驚いたは驚きましたが……」

 

ぶっちゃけ言うとこれが僕の正直な感想だ。

終活中に空想上の人物に逢えるとは思ってもいなかったし……

しかも相手は"尊厳なる観劇と戯曲と傍観の魔女"と来たもんだ。

世の中何が起こるか分かったもんじゃないね……

 

「…その大アウローラ卿が僕に何か御用ですか? それとも彼女に御用で?」

 

流石に言葉には気をつけないと殺されるし……

フェザリーヌは"物語の書き手"でもあるから、その気になれば僕を殺す事だって簡単だろう……

もしも予想が合ってるならだけどね……

 

「そう身構えずともよい。私と同じ()()()()()()に少々いくつか訊きたいと思ってな……」

 

僕がフェザリーヌと同じ物語の書き手?

いきなり何を言い出すんだか……アレ? 意外とフェザリーヌって超パァな魔女なの?

…そうだったらなんかやだな。 ミステリアスな17歳魔女だと思ったのに……

 

「…僕の答えられる範囲でいいなら」

 

そう答えるとフェザリーヌは指を一振りした。

すると突如テーブルと椅子が目の前に現れた……

これが魔法かー……

 

「立ち話もなんだ。座るとよい」

「…では失礼して」

「猫よ、そなたも突っ立ってないで座るとよかろう」

「……チッ!!」

 

舌打ちしながら椅子に座るベルンカステル。

確かこの2人って仲が凄く悪いらしいけど……どうやら本当のようだ。

と言ってもベルンカステルがフェザリーヌの事を嫌ってるの間違いだが……

そんな事を考えていたら紅茶が現れた。

 

「…あ、この紅茶美味しい」

「気に入ってもらえたら何よりだ♪」

…ったく、相変わらず紅茶の趣味だけは認めざるをえないわね

 

それにしてもほんとに時が止まってるだなぁ……

実際にスマホの時計の秒数までが止まっちゃてる訳だし……

魔女ってやっぱり凄いなー

 

「…で? 悠里があんたと同じ物語の書き手ってどういう事かしら?」

「猫よ、そんなに急く事もなかろう」

 

それにしても奇跡の魔女と観劇の魔女のやり取りを生で見れるなんて、

人生の幸運をいくつ使ったんだろうね?

魔女のお茶会に誘われるのを含めてもだが……

 

「私だって暇じゃないんだけど?」

「…ほう? 何か楽しみでもあるというのか?」

「少なくともアウアウ、あんたには関係ない事よ」

「どうせ穹とイチャイチャするのであろう?」

「あ、あんた……それ何処から聞いたのよ!!」

「羅奈からだが?」

「あの風船女ァァァッ!!!」

 

なんか僕……凄く空気な気がするが気にしてはいない。

あっちにも色々と事情があるのだろう……

僕みたいなニンゲン如きが突っ込む事でもないし……

 

「っとすまぬな。そなたを放置してしまって」

「…いえ、気にしないでください。それで僕が物語の書き手というのは?」

 

僕が訊くとフェザリーヌは、

1冊の本を取り出し目の前に差し出してきた。

 

「あんたそれ…穹の物語の一部じゃない……無断で持ち出したんじゃないでしょうね?」

「心配するな。ちゃんと穹には許可をもらっている」

「…あの、読ませてもらっても?」

「うむ。ちゃんと借りた本人からも許可はもらってある」

「では失礼して……」

 

本の目次まで捲る……

どうやらこの本はクロスオーバー系の物語らしい。

簡単な説明をしとくとクロスオーバーとは異なるアニメを別のアニメの世界観にぶち込んだ、お祭り系で合ってたかな…? まぁ人によって好みがあるから何とも言えないけど……

 

(…あれ? この主人公とヒロイン…それにこの文章……まさか……)

 

少し気になった僕は、

鞄の中に入っている『二次創作小説設定』と書かれたノートを取り出す。

何故こんなものを持っているのかというと、物語の設定や主人公やヒロインの関係また、こんな恋愛がしてみたいという僕の妄想系が入った……簡単に言ってしまえば黒歴史ノートみたいなやつである。

そして先程フェザリーヌから渡された本の人物の中に聞き覚えのある名前を発見したのだ……

 

「…それでこの本が何か?」

 

敢えて問いかけてみる。

なんでそうしたかって? その方が面白いと思ったからだ……

 

「私はいくつもの物語を書いたり観劇したりしたのだが、その本の物語は中々に興味深い。推理小説でもないのに書き手は何を思って書いたのかが気になって何度も読んだものだ……」

 

確かフェザリーヌって退屈に1分1秒にも耐えられないんじゃなかった気がする。

その大魔女様が興味深いと言ってくれるというのは何ともね……

 

「あんた、悠里に対して何が言いたいわけ?」

「巫女よ… あの物語の書き手が誰だが分かるか?」

「逆に訊くけど、あんたは分かるわけ? アウアウローラ」

「そなたが初めてこの世界(カケラ)に散歩しに来た事を聞かされた時に私は確信に変わったがな……」

 

そこまで説明したフェザリーヌは、

とあるページを開く……それは『登場人物』だった。

そしてある2人の人物を指差し僕の目を見て……

 

柚深月穹(ゆみつきそら)緋未月羅奈(ひみつきラナ)の2人を生み出したのは……悠里、そなたなのであろう?」

 

そう言った。

はぁ…バレちゃったか……

 

「参考に何故分かったか訊いても?」

「1つめは穹と羅奈の過去に、そなたを示唆する文章を見つけた」

「他には?」

「2つ、名字か名前に"月"という字があった」

「…他には?」

「これが一番の極めつけだが、そなたの妹が登場している事だ」

 

なんかまるでクイズの答え合わせをしてるみたいだなぁ……

でもまぁ…悪くはないかな。

 

「悠里が……穹と羅奈の生みの親」

「猫よ、正確には創造して生み出された1人の登場人物だ。穹と羅奈も言ってたであろう? 創造主は一体どんな想いで自分達を生み出したのかと……」

 

魔女達の世界での2人はそんな想いをしてたのか……

僕が何を想って2人を生み出したのか…か……

 

「貴女方が僕に訊きたいのは穹と羅奈を生み出した事……ですか?」

「そうだ。こればかりは物語の書き手で創造主であるそなたに訊くしかないのでな。答えたくないなら別に無理に言わなくてもよい」

 

別に隠す事じゃないと思った僕は……

 

「多分…僕のワガママかもしれません」

「「ワガママ?」」

 

意外な答えだったのか2人の大魔女は綺麗にハモった。

その光景に苦笑いしつつも話の続きをする……

 

「…貴女達2人ならご存知でしょう? これから僕に起こり得る運命に。僕は世間からは落ちこぼれという存在です。今は友人のお陰で()()()()()()()いますが、死にかけ状態という事には変わりありません…… だから小さい頃からやりたかった事をやる事にしました。」

 

「それが物語を書こうと思ったきっかけ?」

 

「…うん。だけど物語を書くといっても()()()()という未来が確定してるから、長くは書けない。もし物語を書いてる途中で僕が死んだら、その物語はどうなると思う?」

 

「魔女の世界のルールで言うならば、物語の書き手が執筆中に死んだ場合、その物語は自動的に消滅……と言ったところか?」

 

赤き真実も生で拝めるものなんかラッキーだなぁ……

 

「仰る通りです。だから僕は穹と羅奈を生み出す際に特殊補正を与えました。それがそちらの世界で言う世界(カケラ)の旅です。穹と羅奈が誰にも縛られないように、書き手が死んでも行動を可能にさせた…という事です。それに2人には自由に生きて欲しいから……」

 

物語を初めて書く時に決めてた事……

それは自分が描いた登場人物を愛情を込めて生み出すこと。

バカバカしいと思われてもいい…自分がやりたかった事だから……

だから僕は2人を……穹と羅奈を生み出した。

 

「…これが僕が2人を生み出した理由ですね」

 

「なるほど……猫よ、帰るぞ? 早く帰って、この世界(カケラ)の結末を共に見ようぞ♪」

 

「全く…勝手過ぎる主ね……」

 

僕の答えが納得したのか、

2人の大魔女は割れた空間に入り込む……

 

「私達が去れば時間は再び動き出すから安心するがよい♪」

 

「は、はぁ……」

 

「もしそなたが魔女になった私は歓迎するぞ♪」

 

「アウアウ…あんた調子に乗るのもいい加減になさい。キムチを口にぶち込まれたくなかったら少し黙ってなさい」

 

僕が見たやり取りはこれが最後だった。

気がついた時には元に戻っていた……

スマホの時間を確認すると時刻は18時10分だった……

 

(さっきのは夢…だったのかな?)

 

そう思いつつ足元に目を向けて見ると、

何やら手紙らしきものが落ちていた。

封筒を開封して呼んでみると……

 

 

『キャットフードとめざしをくれてありがと。

 

 

 貴方は猫に好かれてるのね♪

 

 

それと食生活にキャットフードは程々になさい?

 

 

 貴方の幼馴染みに怒られるわよ

 

 

それから……穹と出逢う機会をくれてありがとね

 

 

 気が向いたらまた遊びに来るわ』

 

 

奇跡の魔女直筆の手紙だった。

…夢じゃなかったんだな、さっきの時間は……

手紙を鞄にしまい自宅に向かい歩き出す。

 

 

 

明日から6月……

 

 

 

 

 

 

最初の確定した未来が起こるまで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと1ヶ月……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
またやっちゃったZE☆
次回からタグに書いてある通り少しずつ非現実要素が
少しずつ入ります。
本日はありがとうございました。

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