今回は前回の予告通り、
ことりちゃんが悠里の家に泊まる話です。
重要なキーワードが出たりするかも……
生暖かい目で読んでいただけると嬉しいです。
視点は、ことりちゃんになります。
それではどうぞ。
ゆーくんからのお誘いで、
私は自宅に戻って泊まる荷物を纏める為、
部屋で準備をしていた。
(これで大丈夫かな?)
必要な荷物を確認し終えた私は、
お母さんに書き置きを念の為に残す事にした。
一応、電話で事情を話したら凄く機嫌が良かったけど……
書き終わった後、玄関に向かう。
「準備終わったの?」
「うん、お母さんにもちゃんと連絡したから」
「なら大丈夫か。じゃあ行こっか」
ゆーくんと軽く話した後、
2人で彼の自宅に向かうことなった。
確か私の家から歩いて20分くらいだった気がする……
そんな事を考えてる内に、
ゆーくんの家に着いてしまった。
「ただいまー……って相変わらず誰もいないけど」
「お、お邪魔します……」
うぅ~、やっぱり緊張しちゃうよぉ……///
ゆーくんの家に来るのは3回目だったりする。
初めて来たのは去年の秋にやった合宿後の休日にちょっとした事がきっかけで穂乃果ちゃんと海未ちゃんの3人で泊まりに行った事。
そして2回目は、ゆーくんの誕生日に行ったのが最後なの。
「お茶、紅茶、コーヒーどれが飲みたい?」
「こ、紅茶で……」
「分かった。作ってくるから適当にくつろいでて」
「う、うん……」
私にそう言った彼は台所に向かう。
持ってきた荷物をその辺に置きソファーに座る。
「はい紅茶。砂糖とミルクは好みで入れてね?」
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。お嬢様……」
「ちゅん!?///」
お、お嬢様!?
そこはせめてお姫様って言って欲しかったなぁ……じゃなくて!!
「ん?、お姫様って言って欲しかった?」
「そ、それは……えっと、はぅ……///」
なんで私が思ってた事が分かるの!?
もしかして顔に出ちゃってたとか……
「顔に出てた。ことちゃんって意外と分かりやすいところあるから……」
やっぱり顔に出てたみたい……
なんだろ、なんか悔しい……
「ことちゃんが泊まりに来るのって初めてじゃない?」
「え、そうかなぁ?」
「ほのちゃん、みーちゃんと3人で僕の家に泊まりに来た時はあったけど、ことちゃん1人でっていうのは初めてだなぁと思って……」
ゆーくんは呑気に話す。
でもよく考えてみたら……
(こ、これって、ゆーくんを私が独り占めしてる状況だよね!?)
成り行きとはいえ、
好きな人の家に上がっている……
しかも遊びに来たんじゃなくて泊まりに来ているという嬉しすぎる状態だった。
正直、私の理性が保ってられるか不安でいっぱいだよぅ……///
「ゆ、ゆーくんは家に帰ったら普段何してるの?」
平静を保つために彼に質問してみる。
「僕?、気分次第だけど絵を描くくらいかな……」
「そうなんだ~、どんな絵を描くの?」
「色々だよ……後で見せてあげるよ」
「うん♪」
この後も色んな話をした。
気づいた時には夜の19時近くになっていた。
「ってもうこんな時間か……夕飯何が食べたい?」
「あ、それなら私が作るよ」
「でも、ことちゃんお客さんだし……」
「私だけ何もしないのは嫌なの!」
「でも……」
「ゆーくん、おねがぁい♡」
「はぁ……分かった。お願いしてもいい?」
「うん♪、とびっきりの作ってあげるね♪」
ゆーくんの家に泊まりに来てるんだもの。
私だけ何もしないのは嫌だもん!
それにこうでもしないと、ゆーくんは聞いてくれないし……
「じゃあ、台所を借りるね?」
「やっぱり僕も何か手伝おうか?」
「ダメです。ゆーくんは疲れてるんだから休んでてください!」
「は、はい……」
さて♪、ゆーくんに何を作ってあげようかな~?
そう思い冷蔵庫の中を開ける。
するとここでちょっとした問題が起きました。
それは……
「ゆーくんー?」
「どうしたの?」
「どうしたのじゃないよー、なんで冷蔵庫にある食材がこんなに少ないのかな~?」
そうなんです。
冷蔵庫にある筈の食材が明らかに少ないんです。
2人分を作るには問題ないんだけど問題は
ことりが見る限り食材は明らかに1週間あるかないかの量しかなかったんです……
「だって僕1人暮らしなんだし、問題なくない?」
「ふーん……じゃあちゃんと食べてるの?」
「ここ最近だと3日は食べてないです。はい」
「ちゃんと毎日食べなきゃダメって私達いつも言ってるよね……?」
やっぱりそうだった。
この食材の量から考えて1週間の内3日は食べないで、
残りはちゃんと作って食べるという計算になった……
ゆーくんの食生活を瑠菜ちゃん達に聞かさせて以来、
私達は、ゆーくんの食生活を気を遣うようになった。
特に海未ちゃんは2日に1回、ゆーくんに昨日は何を食べたかを聞く徹底ぶり。
今の内容を海未ちゃんが聞いたら怒るんだろうなぁ……
「もぅ……今日は見逃してあげるけど次はないからね?」
「はい。気をつけます……」
ゆーくんはそう言うと、
お風呂を掃除してくるねと言いリビングを後にしました。
(う~ん、卵があるしオムライスでも作ろうかな?)
幸い冷蔵庫の中に冷凍したお米と卵があったので、
オムライスを作る事にしました。
せっかくだからケチャップでハートマーク描いちゃおうかな……///
「ごちそうさまでした、美味しかったよ」
「はい♪、お粗末様」
夕飯を食べ終えた後、
私達は食器を片付けていた。
「それにしても、ことちゃんはいいお嫁さんになれるよ」
「ぴぃ!?、お、お嫁さ……///」
食器を洗ってる最中に、
ゆーくんがとんでもない事を発言した。
それを聞いた私は顔が真っ赤になっていく感覚になった。
この際だから、ゆーくんに聞いてみようかな……
「ゆーくん。あ、あのね?、相談があるんだけど……」
「…悩み事?」
「うん…。私ね?、好きな人がいるの」
「ほのちゃん、みーちゃんには言えない事?」
「2人には話したんだけど、やっぱり男の人の意見も聞きたくて……」
「僕じゃ参考にならないけど……とりあえず黙って聞くよ」
私の好きな人……それは隣にいる彼の事だった。
「その人はね?、自分の事より他人の事を優先するの」
「いい人じゃん、その人」
「体を壊してまで平気で無茶して損な役ばっかりする人なんだよ?」
「…それで?」
「私が分からないのはどうしてそこまでするのかなと思って……」
「…ことちゃんはその理由が知りたいって?」
「うん。だって人としてやってはいけない事をまでしてなんだよ……?」
「…要するに世間からは犯罪だって言われてるって事?」
「うん……」
私……ゆーくんになんて酷い事を聞いてるんだろ?
興味本位で自分から言ったとはいえ、これじゃ責めてるのと同じだよ……
やっぱり聞くんじゃなかった。
「これは僕の考えなんだけどさ」
「え?」
「多分その人はそれでもいいと思ってるんだと思うよ?」
それでもいいとは一体どういう意味なんだろう?
「周りから別に嫌われてもいい、犯罪者呼ばわりされても自分は間違った事はしてない。そんな感じかな……実際、国家の上層部だって都合の悪い事は権力で揉み消す。だから所詮、何が正しいなんて分かんないもんだよ?、まぁ僕だったら徹底的に相手を精神的に追い詰めるまで証拠を突きつけるけど……っと話が逸れた、僕が言いたいのは全てを失っても守りたかったからだと思うって事」
じゃあ、ゆーくんはそんな辛い思いをしてまで今までずっと私達を……
「こんな感じだけど参考になった?」
「うん、変な事聞いてゴメンね……?」
「気にしてないよ。あ、ことちゃんお風呂入ってきたら?」
「え、でもまだ片付けが……」
「残りは僕がやっておくから大丈夫だよ」
そんなこんなで私はお風呂に入る事にしました。
「はぁ……結局、肝心な事言えなかったなぁ……」
どうして私って、
ゆーくんの前だと言えないんだろう?
ただ『あなたの事が好きです』って言えれば……
(痛ッ!!、急に頭痛が……)
何故か急に鈍器で殴られたような頭痛が襲ってきた。
けどほんの一瞬だけであり、すぐに治まった……
「ゆーくん、お風呂上がったよ?」
お風呂から上がってリビングに戻ると、
ゆーくんが何かを作ってた。
なんだろう……?
「あ。上がったんだ?、2階にある僕の部屋で待ってて」
「え、いいの?」
「その間に僕はお風呂に入ってくるよ。本棚にある本は勝手に読んでもいいよ?」
それだけ言うと、
お風呂に行ってしまった……
(ゆーくんの部屋で待ってようかな……)
私は先に2階にある、
ゆーくんの部屋に行って待つ事にしました。
ーー悠里の部屋ーー
「ここが、ゆーくんの部屋……」
初めて入る彼の部屋は、
綺麗に整理されていた。
もしかして私がお風呂に入ってる間に部屋の掃除してたのかな?
少し慌ててた様子もあったし……
「これって写真かな?」
ゆーくんの机の上に置かれてたのは3つの写真立て。
1つめは、μ'sのみんなで撮った写真。
2つめは、ゆーくん、穂乃果ちゃん、海未ちゃん、瑠菜ちゃん、花怜ちゃん、ティアちゃん、そして私が写ってる小さい頃の集合写真。
そして3つめは……
(この子、誰なんだろう?)
写真に写っていたのは、
チョーカー型のペンダントを首に付けた女の子だった。
隣では、ゆーくんも一緒に写っていた。
写真を見る限りその子の表情は幸せそうなのが窺える……
(漆黒の長髪……私どこかで……)
どこかで見た事があった為、
思い出そうとしたが結局分からなかった私は
本棚に置いてある本を読んで待つ事にした……
「ゆーくんって、こんな本を読むんだ……」
私が読んでいる本は、
お金持ちの貴族達が絶海の孤島にある別荘で、
その貴族達が不可解な殺人事件に巻き込まれるという話。
しかも完全な密室で人間の仕業では不可能で本当は魔女の仕業なのでは?という内容になっている。テーマが『人間か魔女』ってのが面白い……
また『愛がなければ視えない』いう言葉も……
「戻ったよー」
本を読んでる間に、ゆーくんが部屋に戻ってきた。
なんだろう……お風呂上りのゆーくん、凄くイイかも///
「それ読んでたんだ。ことちゃん平気なの?」
「え、何が?」
「それ結構グロイ描写もあるからさ、大丈夫かなと思って……」
「うーん、平気かな?」
「なんで疑問形?」
「あはは……ことりも分かんない……」
ゆーくんはまぁいいやと言いながら、
私の隣に座る。
ち、近い、でも寧ろ嬉しい……///
「ことちゃん。僕、明日行かなきゃいけないところがあるんだけど一緒に行く?」
「ゆーくん、誰かに会いに行くの?」
純粋に気になった私が何気なく聞いてみると……
「うん、
その言葉は私が驚く理由としては充分だった。
だって去年の秋、ゆーくんの家に初めて行った日……
学校で穂乃果ちゃんがお母さんに……
『ゆうちゃんって妹いるんですか?』
『いいえ、悠里くんは1人っ子よ』
って言ってた筈。
それに仮にいたとしても妹のような存在の未柚ちゃんぐらいだって、
海未ちゃんも言っていた……
「ゆーくんの義理の妹……とか?」
「いや。れっきとしたごく普通の
「でも、お母さんがゆーくんは1人っ子だって……」
「あ……南先生に話すの忘れてた」
「…じゃ、じゃあ、お母さん、ゆーくんに妹がいるの知らないの?」
「話してないからね。だから近い内に話すよ」
未だに状況が追いつけない私。
ゆーくんに妹がいたという事実が余りにも衝撃過ぎたから……
当の本人は平然としている。
天然にも程があると思う……
「他に知ってる人はいるの?」
「4人かな……内2人は言えないけど、ルーちゃんと真姫ちゃんがこの事知ってるよ」
瑠菜ちゃんと真姫ちゃん?
でも2人に接点なんてあったかな……?
「詳しくは明日に話すよ」
「でも私なんかが一緒に行ってもいいの?」
「ことちゃんを1人にできる訳ないでしょ?」
「穂乃果ちゃんと海未ちゃんには今の事、話すの……?」
「ほのちゃん、みーちゃんの2人には落ち着いたら話すよ……」
それだけを皮切りに、
ゆーくんはそろそろ寝ようかと言った。
私はどこで寝ればいいの?と聞いたら……
「僕のベット使っていいよ。僕は床で寝るから」
「ダ、ダメだよ!、風邪ひいちゃうから一緒に寝よ?」
「ことちゃん、少し落ち着こうか?」
「ことりは落ち着いてるもん!」
「あのね、別に僕は倒れてもいいの。OK?」
「よくないよ!」
う~!!
ゆーくんの分からず屋!!
かくなる上は……
「ゆーくん、おねがぁい♡」
「一緒に寝ればいいんでしょ……寝れば……」
押し切ったよ!
ゆーくんは拗ねながらも私のお願いに応じてくれました♪
えへへ~♪
「電気消すよ?」
「うん♪」
部屋の電気が消され辺りは真っ暗になった。
しばらくすると彼の寝息が聴こえてた……
(寝てるよね……?)
気づかれないように背中に抱きつく。
今だけはこうしていたいと思ったから……
(ゆーくんって本当にバカだよね……私や穂乃果ちゃん、海未ちゃんに嫌われてもいいと思われてまであんな無茶までして、辛い事は誰にも話さないで1人で解決して……)
自分は落ちこぼれで恋愛する資格なんてないって言ってたけど、
そんな事ないよって言ってあげたい……
もし私が告白とかしても僕なんかじゃ釣り合わないって言うのが容易に想像ができた。まして犯罪者みたいな僕なんかより素敵な人が見つかるからと作り笑顔で言うのも……
(それでも私は……)
ゆーくんの事が好きだ。
誰よりも優しくて……
辛い時も私を支えてくれて……
私達に辛い思いをさせまいと全てを捨ててまで無茶をして……
挙げ句の果てに自分の事なんか忘れていいと言うくらいのバカな人……
本当に……
「ゆーくんのバカ……」
私には何ができるのだろう?
どうすれば彼の隣に立つ事ができるのだろうか……
分からない……
ただこれだけは言える……
(私、ゆーくんの事を嫌う事なんて絶対にないから……だって私の初恋の人だもん……)
読んでいただきありがとうございます。
次回は悠里の妹を出したいと思います。
この作品の最後のオリキャラが、
コホン!、失礼いたしました。今のは忘れてください……
次回も、ことりちゃん視点になりますのでよろしくお願いします。