今回は少し暗さが入っています。
後半の視点は、ことりちゃんになります。
それではどうぞ。
1日を終えた僕は自宅に向かって歩いていた。
ほのちゃんは生徒会の仕事、みーちゃんは部活、ことちゃんは南先生に用事があると言っていたので今日は僕1人での帰宅だ。
(明日は代休だし、ゆっくりできそう……)
入学式の準備が4月1日の土曜日だったので、
代わりに明日の火曜日が代休になったのである。
これを聞いたほのちゃんは、今日の内に生徒会の仕事を終わらせようと
やる気満々になったのは驚いた。
手伝おうかと僕が聞いたら1人で出来るから大丈夫との事。
みーちゃん、ことちゃんが驚いていたのは余談である。
(それにしても……)
今日1日の中で気になる事が1つだけあった。
ことちゃんの事だった。
お昼ご飯を食べ終え、教室に戻る最中に……
『ねぇ、ゆーくん』
『どしたの?』
『私に何か隠し事とか……してない?』
すぐに言えなかった。
何故なら、ことちゃんが心臓をわし掴みするような鋭い視線を
僕に向けていたからだ……
『……ないよ』
『ふーん…また
という会話があった。
その後も何気なく、ことちゃんに話しかけてみても
いつも通りの反応だったので僕の勘違いだったのかなと割り切っている。
(いや……まさかね……)
だって
そんな事を考えていると帰りによく通る公園が見えた。
(そういえば小さい頃ここで遊んだよなぁ……ことちゃんとルーちゃんの3人で)
ことちゃんが必ずおままごとをやろうと言い出したのは覚えてる。
それでルーちゃんも便乗して本格的なやつをやろうと言い出す。
昔の事を思い出しながらそろそろ帰ろうと思い、
自宅がある曲がり角に差し掛かろうとした時……
「ゆーくん♪」
ことちゃんと遭遇した。
今帰りなのかなと一瞬思ったがここで疑問が浮かぶ。
それは帰り道のルートだ。
ことちゃんの場合、僕と同じルートで帰ってる。
しかし目の前にいることちゃんは音ノ木坂から遠回りのルートを使って
ここにいる。
それともう1つ……
「なんでその制服をことちゃんが着てるの?」
「んー?、試しに作ってみたんだ♪」
嘘だ。
目の前にいることちゃんが着ている制服は、
未柚ちゃんと心結が通っている
元々、藍音学院は特殊な学校であり一部の生徒しか通えない……
それに存在自体が世間では知られてない。
「似合ってるね、でも作ったなんて……嘘でしょ?」
「ふーん……どうしてそう思うの?」
「その制服自体、人の手じゃ作れないから」
ことちゃんは制服を
μ'sの衣装担当だった彼女なら何の違和感もないだろう。
ほのちゃん、みーちゃんが仮にこの場にいたら凄いねと絶賛するだろう……
だけど藍音学院の制服を自分で作ったなら話はガラリと変わる。
何故なら藍音学院の制服には特殊な加工が施してあるからだ。
まず材料自体が高級な物であり一般の高校生が買える代物じゃない。
更に制服自体が機械で作られている。
だから藍音学院の制服は人の手じゃ作れない……いや絶対に作れない。
「くすくす……」
何にも答えず笑うだけの彼女。
「ことちゃんも早く帰りなよ?、夜になると危ないんだから……」
そう言いながら彼女を通り過ぎようとした瞬間……
「ねぇ…どうして私から逃げるの?」
刃物を僕の首に突きつけながら問いかけてきた。
ちょっとでも動いたら頸動脈が切れる距離。
しかも背中から抱きついてる状態なので両腕はホールドされてるので動けない……
よく落ち着いてるなぁ……僕。
「答えてくれないの?…じゃあ質問を変えるね、どうして
今の言葉で確信した。
この子は
「…嘘って僕が隠し事をしてる事?」
「そうだよ♪、ゆーくん私に何か隠してるよね?」
耳元で囁くことちゃん。
いや、この場合は
とりあえず僕の首筋にある物騒な刃物をしまってくれると嬉しいんだけどな……
別にこのままでもいいんだけどさ……
「ゆーくんが正直に話してくれるなら離してあげる♪」
「…嫌だと言ったら?」
「この場で殺しちゃうかも♡」
「隠し事って訳じゃないけど信じてくれる?」
「うん♪、他の人は信じないけど私はゆーくんの話なら信じるよ♪」
「分かった。ちゃんと話すよ……」
そう言うと僕から離れ、
右手に持っていた刃物をしまってくれた。
仕込みタイプの刃物だったんだねソレ……
「最初に聞くけど僕の口から直接聞きたいんでしょ?」
「その方が信憑性が高いなーと思ったからかな?」
「随分と信用されてるね?、それで隠してた事なんだけど………」
彼女には嘘は通じない。
なら僕が思った事をそのまま話せばいい……
この時に気づくべきだったのかもしれない。
まさか背後で
sideことり
お母さんに頼まれて書類の手伝いが終わった私は、
穂乃果ちゃんと海未ちゃんに先に帰るねとメールを送った。
そして帰る途中にある公園の曲がり角で、ゆーくんの声がしたので
驚かせようかなと思った私は声がする方へ向かおうとした矢先……
(え…ど、どうして……)
ありえない……
自分が見ているのは幻なのかと思ってしまうくらい目を疑った。
何故なら、ゆーくんと話していた人物は……
(
それは去年の12月…ラブライブの最終予選の時に、
ゆーくんが情緒不安定になり自殺未遂を起こした後、彼を保健室に連れて行った時に彼女は現れた。瑠菜ちゃんに聞いたら体を乗っ取られる事もあるから無理しない程度に気をつけてねと忠告された。
その日以来、私は無理だけはしない事にしている……
「僕さ、今高校3年生でしょ?」
「何か気になる事でもあったの?」
ゆーくんはもう1人の私と何かを話している。
バレないように電柱に隠れながら私は2人の話を聞く。
「去年の修学旅行で沖縄に行った時に花怜ちゃんには先に話したんだけど、
……えっ?
「ゆーくんの夢じゃないの?」
「…この夢には続きがあるんだよ。そこから先、
「じょ、冗談でしょ……?」
もう1人の私は驚いていた。
そんな反応をよそに……
「だから万が一の事を考えてルーちゃん達にも話したんだ。最近ね……」
「ねぇ……もしその夢が現実になったらどうするの?」
「………………君なら分かるでしょ、僕の考えてる事くらい」
「嫌よ……そんなの絶対嫌よ!!!」
その声は泣き叫んでるようにも聞こえた。
何故だろう……聞いてて辛い。
それに胸の奥が痛い……
「ど、うして……ゆーくんはいつもそう、やって……っ!!」
「それは……」
「もぅ……1人は嫌……私を
ある光景が頭を過ぎる……
それは大雨に打たれて
「僕からも聞いていい?、君はもう1人の自分の事はどう思ってるの?」
「大嫌いよ、ゆーくんの事も考えもしない自分なんか……」
私の事を言ってる事は明白だった。
最初に現れた時から憎しみの感情をもう1人の私は
私に向けていたんだから……
「……7月」
「えっ………?」
「それ以上は何も言わない。もし君が納得のいく形にならなかったらその時は……」
ゆーくんがもう1人の私に
何かを伝えていた。内容を聞こうとしたけど、
7月という単語しか聞き取れなかった……
「………いつまで隠れてるの。ことちゃん」
私が隠れてるのバレてたんだ……
電柱から出ると、もう1人の私は既にいなかった……
「どこまで聞いてたの?」
「そ、その……最初から……ゴメンね。盗み聞きするような事して……」
「別にいいよ。僕だって気づかなかった訳だし……」
敢えてもう1人の私については話さないのは、
さっきの話を殆ど聞いちゃったからだと思う……
「ことちゃん今日は1人?」
「え……う、うん。お母さん今日は帰りが遅いって言ってたから……」
学校から帰る時に、
お母さんが私に帰るのが夜中になりそうだから
戸締りをして先に寝てなさいって言っていた。
「そっか。明日は代休で休みだし僕の家に泊まりに来る?」
「で、でも迷惑じゃないの?」
「1人暮らしだし迷惑だなんて思ってないよ」
「あ……///」
ゆーくんはそう言うと私の手を繋いできた。
「ことちゃんの家に先に行こっか、荷物の準備とかもあると思うし……」
「ねぇ、ゆーくん……」
「どうしたの?」
この事を聞いてもいいのかと思い、
不安になりながらも私は迷ったが………
「やっぱり何でもないの……ゴメンね?」
「別にいいよ。ことちゃんが言いたい時になったら言えばいいから」
「うん……」
今はこの時間を大切にしたいと思った私だった。
読んでいただきありがとうございます。
次回は、ことりちゃんが悠里の家に泊まる話になります。
頑張りますのでよろしくお願いします。