第89話
【プロローグ】
彼と彼女の唇が重なり合った――――
彼は彼女に息を吹きいれる――――
運命ある彼が、運命亡き彼女へと
吸った息をゆっくりと彼女の肺の中に入れる。
それと共に、彼の口から何かが現れ、彼女の中に入っていくのを感じた。
一瞬だけ見せられたのは、燃えたぎる炎のような深紅の光――――
運命の息吹だ――――
それが彼女の口の中に入り、喉を通り抜け、肺に入り、そして――――
―――――――心に至ったのだった。
―
――
―――
――――
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―――ん? 暗いわね……ここはどこかしら――?
目が覚めると、そこは見えるものすべてが真っ暗で、私がどこに向かっていこうとしているのかもわからなかった。 ただ、私の体だけは良く見えた。 手の指先も、足のつま先もだって見えた。
変なの……何だか薄気味悪いような感じがする。
―――うっ!! 何かしら……頭の中で何かが響いているような痛みがくる――!!
ズキズキと痛み出すその頭を抱えると、その拍子で抜け落ちていた記憶がよみがえってくる。
そう………私は死んだのね――――
生前の記憶を見返してようやく私の立ち位置を理解することができたわ……。 つまり、ここはその死の世界……ってヤツなのね………
………暗くて……何も見えなくて……寒くて………怖い…………
こうしたところで記憶を見返していると、生きていた時よりも辛く感じちゃうの………。
孤独……ってヤツかもしれないわ…………
私も以前はそうだった……あの事故の後、外に出ることが怖くなった。 パパとママが一緒に行こうと誘っても、私は一向に出ることを拒み続けた……また誰かを傷つけてしまうから、と………
だから、私は1人になることが多かった……いえ、1人だったの。 誰とも会うことも話すこともしなかったのだから……私に関われば不幸になるのだから近寄らないで欲しいと願っていた私がいた。 辛辣な言葉で相手を引きつけようとはしなかった。 すべては私に関わろうとする人のため、そして、私のためでもあった……!!
その結果………
周囲からは無愛想な子だったり、高嶺の花などと言われて避けられてきたわ……当然、小学校・中学校時代で、友達なんて1人もつくれなかった………声をかけに来てくれる人もいなかった……無視されていたのよ……定期テストの順位表に私の名前が1番上に記載されても、私個人と言う存在はいなかったのよ………
慣れていたわ。 何年もあんな息の詰まるような空間の中で生き続けてきたのだから、嫌でも慣れてしまうわよ……そう、平気なつもりだったわ…………
でも、時々ふと思い出すことがあるの……あの時、私を抱きしめて助けてくれたあの人の温もりを……やさしく包み込んでくれたあの温もりと私を慰めてくれたあの言葉を………
私はあの温もりとやさしさを求めていた……いいえ、欲しかったのよ……! ずっとずっと欲しかったのよ……!! 傷つくのはイヤ! やさしくしてもらいたかったのよ……!!
………でも、自分でもどうすればいいのかわからなかったのよ……!
私がそれを求めたら誰かを傷つけてしまうというしがらみが私を囲っていたから、私から進んで行こうすることもそれを受け入れようとすることも出来なかった…………
なんて無様なんだろう……そうやって私のことを卑下してきていたのだから………
でも……そんな私を彼が変えてくれた――――
颯爽と現れては、楽曲を作ってほしいといろいろな事を言って私を言い包めようとしたわ。 少しだけ不快に思うようなこともあった…けど、間違ってはいなかったし、嬉しかった部分もあった。 そして、私が傷つけてしまうような言葉を言っても、突き放そうとする態度をとっても、彼はやさしく受け入れてくれた。
そんな彼に私は惹かれて行った――――
そして、私はしがらみから抜け出してμ’sに入った――――
凛と花陽と友達になれた。
穂乃果や海未、ことり、絵里、希、にこちゃんとも仲良くなれたわ。
毎日が本当に楽しかった。
今までにないってくらいの楽しい時間を過ごした。
でも……もうみんなとは会えない……こんなところにまで来ちゃったら、後戻りなんて出来ないものね……みんなゴメン……最後にみんなと会えなくて……勝手にいなくなっちゃってゴメン…………
私は膝を抱えるようにうずくまり、涙を流しながらその場に留まった。
この後に起こることに身をゆだねたまま、時間を過ごした――――
―――すると、何かがやってくるような気がした。
そう思って顔を上げると、そこに小さな赤い光が浮いていた。
光は私の目の前に来て、まるで私を見ているかのようにじっとしていた。
私もこの光を見つめようとしたその時――急に強い光が目の中に飛び込んでくる。
あまりの眩しさに目を瞑り、しばらくして開くと、そこに1人の少女が立っていた。
その少女を見た時、ハッとした気持ちになった。 まさかと思いながら見つめていると、その子は口を開いてこう言ったの。
『久しぶりだね、おねえちゃん』
私のことをおねえちゃんと呼ぶこの少女は、昔の私だった。
―
――
―――
――――
「あなた……どうしてこんなところに………?」
『うふふ♪ おねえちゃんに会いたかったから来ただけだよ』
「それだけの理由でここに来たの………?」
『そうよ。 それ以外に何か理由があるかしら? それとも、来たら迷惑だったかしら?』
「……迷惑だわ。 だから、ここにこないでよ……!!」
私はこっちに来ようとするもう1人の自分を跳ね退けようと言葉で威圧した。 こちらの世界に入って、何もすることができなくなったと悟った私は、自分が嫌で嫌で仕方がなかった。
こちらの世界に来る――つまり、死ぬことを私は自分の意志で決めてしまっていたのだが、こちらに来てから考えると、どうしてそうしてしまったのだろうと後悔している部分がある。
μ’sのみんなのことを思うと、とても申し訳ない気持ちになるとともに、みんなが悲しそうな顔をする姿を思い出してしまう。
……可笑しいわね……誰かを傷付けたくないから私はこうしてこの場所に来たのに、ここに来ても誰かを傷つけてしまってる……
結局、私は誰かを傷つけなくちゃ気が済まない性格なのかしら……?
パパとママを傷つけて、みんなを傷つけて……あの子を殺して……考えれば考えるほど、私がやってきた罪が呼び起こされる…………
「蒼一………」
そして、私が最後に見た光景は……蒼一が私のために涙を流して泣いている姿だった………
誰よりも信頼していた蒼一にですら、あのような悲しい表情をさせてしまった……
もう、私はどうすればいいのかがわからなくなっていた。
どう償えばいいのかがわからなかった……私はもう死んでしまった………死ぬことでその償いをしたつもりだったのに、死んだことで余計に苦しませてしまうことになってしまった………
私には、もう何もすることができない……この世界にたった1人だけで過ごして行かなければいけない………
それが私に与えられた罰なのよ………
私はさらにふさぎ込むように顔を体に向けてうずくませる。 何も見えないくらいに顔をくっつけ、黙って座り続けていた。
(すっ………)
「!!!」
私の頭を抱き締めるように、何かに包まれたような感じがした……。
触れられた瞬間は、嫌だと思って跳ね退けようとしたけど、触れられ続けると次第に、何かが温まっていくのを感じた……すでに、心臓が止まって、体中に血液が流れなくなっていたので、体に熱なんて帯びていなかった……
でも、触れられた瞬間、まるで私の心臓が再び動き出したかのように、体中に温もりが戻ろうとしていた。
どうしてなのだろうか……?
今の私には到底理解することができないことだった。
塞ぎこんでいた心が解れるように、自然と顔が上を向くようになる。
するとそこには、もう1人の私の姿が………そして、私をやさしく包み込んでくれていた………
『大丈夫だよ………大丈夫……おねえちゃんは1人じゃないよ………私がついているんだから心配しないで………』
まるで、小鳥がさえずるようなやさしい波長が耳に触れると、心を蝕んでいた負の感情が和らいでいくように感じた。 何気ないその一言が私を安らかにさせてくれる。
慰めてもらいたかった――――
以前、蒼一に慰めてもらった時に私が思ったことだ。
すっと、自分を傷つけて…卑下して……心が本当にボロボロになるまで自分を傷つけていた……
けど、それらの傷を丁寧に包み込むように癒してくれたのは、蒼一だった………それが今、その同じ感じをこの子から感じ取る。
どうしてなんだろう……どうしてこの子から――もう1人の私から感じ取れるのだろう……? 何だか変な気もする……でも、やさしい………ずっとこうしていたい…………
『おねえちゃん。 私ね、おねえちゃんがよく知っている人からね、頼まれてここに来たんだ』
「私が……知っている人……?」
『うん……私も知っている人でね、ずっとずぅ~っと前から私たちのことを知っている人なんだよ!』
「ずっと前から……私のことを知っている………?」
そう言われても、誰であるかなんて見当もつかなかった。 私のことをずっと前から知っている人と言われても思い付く人なんてパパとママくらい……あとは、1度か2度くらいしか会っていない人ばかり………それも私には関係のない人ばかり………
それじゃあ、一体誰なのだろう……?
考え込もうとしていた時、この子は私の頭を抱えていたその手を放して私の前に立ち、満面の笑みを浮かべて話し続けた。
『それでね! その人はね、私のことを助けてくれた人でね、とぉ~ってもいい人なんだよ!
私ね、その人と初めて会った時から思い続けてたの!
……でも、ずっと会えなかったんだ……私って他の人から見えないし、それに行く場所も決まってて、会いに行けなかったの………
でもでも! 最近になってね、その人がやって来てくれたの!!
私ね、すっごく嬉しくってね! 跳びあがっちゃったの!
だって、それくらい嬉しかったんだから……!』
この子が話す言葉には勢いがあり、本当に跳び上がってしまうんじゃないかってくらいに躍動していた。
一体どんな人なんだろう……?
私がずっと思い続けていた人と言うのは、どんな人なんだろう……?
私はもう会っているのかしら……?
跳び上がってしまうほど嬉しい人なのかしら……?
次第に、この子が話す人に、私の関心がいっていた。
「あなたは、もうその人とお話ししたの?」
『うん! その人もね、すっごく喜んでいたよ! それも泣いちゃうほどにね!』
「泣いちゃうほど……?! そのくらい嬉しかったのかしら……?」
ここまで話されてもこの子の言う人の姿かたちが想像することができない。 一体どんな人なんだろうか? ますます関心が高まるばかりだ。
『ねえ、おねえちゃん』
何かを含ませたような表情で話しかけてくると、私はそれに反応するかのように応えた。
「何かしら?」
『会ってみたい? おにいちゃんに……?』
「えっ…?!」
その言葉を聞いて、心臓が揺れ動いたような気がした。
会ってみたい…? その言葉が意味することに私は自然と考え始め結論を見出していた。
私が出した結論―――
そう、それは私がこの世界から抜け出し、生の世界へと舞い戻ることを意味している……!
そんなことが可能なのだろうか?! 死んだ人間を蘇らすだなんてことは、今まで聞いたことが無いわ! 出来るはずがないわ!
断言するくらいの勢いで結論を打ちだそうとする私に、真剣な眼差しを向けてくる。
『おねえちゃん……おねえちゃんは会いたくないの……?』
「えっ……そ、それは………」
その眼差しを見てしまうと、考えが止まってしまった。
どうやら、私が考えなくちゃいけなかったのは、こっちではないようだ。 本当に考えなくちゃいけなかったのは――――
会いたいか……それとも、会いたくないのか………
この2択以外に答えは無かったのだ。
『おねえちゃん………?』
時間が迫られているかのような、この緊迫したわずかな一時。
答えなんて、もうすでに出ているようなものだった―――
「会いたい……私はその人に会ってみたいわ……!」
『………そう………』
私のその言葉に、まるで初めから分かっていたかのような微笑みを向けて小さく頷いた。
すると、白い小さな光が視界に入ってくる。 何かが動き出そうとしていた――――
『あ! おにいちゃん!!』
そう言うと、この子は小さな光に向かって走り始めた。
おにいちゃん……って誰なんだろう……? さっきもあの子が話していた人のことをおにいちゃんと呼んでいたけど、一体誰なんだろうか……?
『おにいちゃんを連れてきたよ!』
あの子はそう言って、その人よりも先にやって来て私の手を握った。
すると、遅れてその人がやって来る――――
「!!!?」
私はその姿を見て絶句した。 なぜなら、私の前に現れたのは――――
―――あの死神だったから―――
私は、またしても全身が震えだしてしまった。 まさか、こんなところにまでやってくるとは思わなかったからだ。
「に、逃げるわよ!!」
そう言って、この子と一緒に逃げようとした!
だけど、この子はこの場から離れようとはしてくれなかった!
『待ってよ、おねえちゃん! どうして離れようとするの!?』
「あなたには分からないの?! あのおぞましい姿をしたものが何だか分からないの?!」
『おぞましい……? 違うよ! おねえちゃんは何かと勘違いしているよ! あれは、おにいちゃんなの! 私が言う、おにいちゃんなの!!!』
「違う……違うわよ……そうじゃないわ、いいえ絶対に違うわ!! あんなのは違うに決まっているわ!!!」
私は張り裂けるような声で叫んだ。
だって、すぐそこに私の命を奪ったアイツがいるんだもの! 落ち着いていられるものですか!! 私は必死になってこの場から離れようとするも、この子がそうさせてくれなかったわ!!
『そうか……そうだったね……おねえちゃんは、まだ勘違いをしていたんだ……それが目を曇らせていたんだ………』
この子は何かをつぶやくと、私の背中に飛び乗り、そのまま私の目を手で塞いでしまったの! そのおかげで、何も見えなくなってしまったわ!!
「な、何するのよ!? 放して……! 放しなさいよ………!!」
私は力を込めてこの子の手を退けようとしたけど、まったく離れようとはしなかった。 早くしないと……アイツがまた私を襲いに来る……!! 嫌よ……そんなの絶対に嫌なのよ!!!
心を取り乱しながら、私は必死になっていた。
『落ち着いてよ、おねえちゃん!!!』
「!!」
耳元で鳴り響く声に、私は心を奪われてしまう。 その一瞬だけ、何も考えずに、ただその場に立ち尽くしていた。
そして、この子の声が耳元に聞こえてくる――――
『おねえちゃん、落ち着いて……おねえちゃんは、これまでもずっと間違ったモノを見ていたんだよ』
「間違った……モノ……?」
『うん……そうだよ……おねえちゃんがね、おにいちゃんのことをそう言う風に見ちゃうのはね、おねえちゃんの勘違いがそうさせているんだよ……』
「私の……勘違い………?」
『でも、今のおねえちゃんじゃ、その勘違いを治すことはできないよ………だからね―――
――私がおねえちゃんの目になるよ』
「えっ……!? それはどういうことなの……?」
不意に言われたその言葉に、私は驚きを隠せない。 疑問が渦巻きそうになる前に、この子は話を続ける。
『今からね、私はおねえちゃんと1つになるから……そして、おねえちゃんが勘違いしていることを正しくさせるから……そしたら、おねえちゃんにも見えるようになるよ……おにいちゃんの姿が………』
「ま、まって……!!」
この子は言い終えないうちに、背中からいなくなり、目を覆っていた手も退かれたのを感じた。 私はまだ、目を瞑ったままでいたため、感じることしかできなかったが確かに感じることができた。
すると、私の中に何かが入り込んでくるような感じがした。
それは、目を瞑ったままでも感じることができるし、見ることができた。
その時、私の目に映ったのは……暗闇の中に向かって、1つの小さな赤い光が入って来て、そこに居座ったのだ。 そして、光は強くなって全体を明るくさせた。 それはあまりにも眩しすぎて耐えられなかった。
そしたら、目が見開けてきた――――
目から何かがこぼれ落ちるかのような感覚に陥ったのだ――――
次第に、目蓋が開こうとしていた。
視界に眩しい白い光が差し込んでくる――――
まるで、夜明けに射す暁のような光だ――――
それを見ただけで、たじろいでしまいそうにもなるが、何かが私を支えてくれているかのように感じた。
『安心して……私はいつも側にいるから………』
―――――ドクン―――――
止まっていたはずの心臓が動き出し始めた。
あの子が……もう1人の私が動かしてくれたのだ………!!
―――ドクン―――ドクン――――!!
胸を叩く力強い鼓動が私を勇気付けてくる。
私を怯えさせていたものが何だったのかすら、忘れてしまいそうな力強さが体中に行き巡り出す。
『大丈夫……あなたは私……私はあなたなんだから……!!』
私は重いまぶたを開いた―――
「!!!」
そこには、驚きの光景があった。
死神の……白骨化されていた部分に、人の表面部分が上書きされるかのように肉付けされていく。 脚から順々に上がってゆき、手の指先から胸の部分、首の部分まで肉付けされた。
残すは……顔だけだった。
その様子を私は凝視した。
……と同時に、やさしい感じが肌身伝わってきた。 あの体から発せられているものだと思うのだが、それが何ともやさしく温もりに満ちたものだろうか……
私はこの感じを最近、感じたことがあった。
それは、私が想う人から発せられたものと同じだった………
「まさか……!!」
その予想は心を大いに躍らせるものだった。
もしそれが本当なのならば……!! もしそれが真実ならば………!! 私はどうして見落としていたのだろうかと後悔してしまう!!! だとしても、私はその真実に感謝したかった……!!
顔がかたち創られていく―――
あたたかい言葉が出てくる唇―――
誰をも笑顔にさせてくれる頬―――
自信と信念があふれ出す瞳―――
そのすべてが完遂された―――
「あ……あぁ…………」
その全体像が完成された時、私は涙を流した―――喜びのあまり、涙を流した。
そして、私は彼の名前を呼ぶ――――
「………蒼一………?」
それに応えるように、微笑み始めた。
そう、私がよく知る――――私の大好きなあの笑顔―――
たまらなく愛おしく―――
ただ、愛おしいその顔に、私は涙が止まらなかった――――
彼の口元がゆっくりと開く。
その唇からあの温もりのこもった言葉が流れ出す―――――
「………待ってたよ、真姫」
「~~~~~っ!!」
長い間、悪い夢でも見ていたかのようだった。
私はずっと、彼のことを死神だと思い込んでしまっていた。
でも違ったの、彼は死神じゃなかった……ずっと、私を見守っていたんだと……それを私はずっと見間違えていたんだということにやっと気が付いたの……!!
ごめんなさい―――ごめんなさい―――ごめんなさい――――
何度謝っても足りないくらいだわ………
でもあなたは、こんな私をやさしく見ていてくれる――――
こんな罪深い私をその腕で抱きしめてくれる――――
涙で濡れた顔をその手でぬぐいとってくれて、笑顔にさせてくれる――――
そして―――――
あの時、私を助けてくれて――――ありがとう―――――
「そういちぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
涙があふれんばかりに流れ落ち、声を震わせた喜びに満ちた声が辺りを響かせた。
彼と彼女は、互いに抱き締め合う――――
ドクン―――ドクン――――ドクン―――――!!!
互いの鼓動が1つとなり、彼女の体に注ぎ込まれる―――!!
命が再び輝き始める――――
一度、失ってしまった尊い命が、その一瞬の奇跡によって輝こうとするのだ―――!!
その光を飲み込むことも、包み隠そうとすることができるものは何一つなかった――――
全体が白く光りはじめた―――――
―
――
―――
――――
[ 西木野家・真姫自室 ]
彼の唇が彼女から離れた。
彼女の中に、あの子から貰った
彼自身に掛かる代償は決して少なくはなかった。 死人を生人へと変えることは生半可なことではないのだ。 それも承知の上で、彼は
もう少しで、彼女が目醒める―――――
彼が心から望んだ世界が広がり始めようとした。
そして―――――――
「――――そう―――いち―――?」
「――――おかえり―――まき―――――」
「――――会いたかった―――すっと――会いたかったよ――――」
「――――俺もだ―――ずっと―――会いたいと思っていた―――それが現実になった――――」
「――――うん――――」
「――――真姫――――」
「――――なに―――?」
「――――また勝手にいなくなったりしたら――――承知しないぞ――――――?」
「――――大丈夫―――もういなくならないからね―――約束―――」
「――――ああ―――約束だ―――――」
《悲しみと涙が過ぎ去った―――見よ、新たな喜びが満ちあふれた――――》
〈ジジジ……ザ…………ザザ―――――――――――ザッザッ!!!〉
(次回へ続く)
どうも、うpです。
早めの投稿をと思いながら頑張らせてもらいましたが、結局、今日になってしまいました。すみません………。
何度も書き直しをしていたらこのありさま状態でした。
ハイ、今回でようやく一段落が付けそうな感じがいたします。
そんな、
『哀しき幻想紅姫 Ⅱ』
第11話でした。
もっといいものを創ろうと気構えてもいいものはできませんね……
自分の中では、この話でいいと思いましたが、納得できない方もいらっしゃるとは思いますかな……?
そんなブレブレな感じで今日まで書いていましたが、大丈夫なのだろうか……?
心配になりますね。
次回で、この編はおしまいになります。
シリアスばかりで、疲れたとか言う人がいるかもしれない………
それに関しては、おいおい考えさせていただきます。
それでは、次回もよろしくお願いします!
今回の曲は、
TVアニメ『四月は君の嘘』より
Goose house/『光るなら』
更新速度は早い方が助かりますか?
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ちょうどいい
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もっと早くっ!
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遅くても問題ない