第85話
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[ 西木野家・門前 ]
『うわぁ~~~~!!』
現在、俺たちμ’sは真姫の家の前に揃って立っていた。
そのあまりにも大きすぎる家……いや、豪邸といった方がよかろうか? 十分すぎる大きさの二階建て住居とそれの前に広がる広大な面積を誇る庭は見る者を驚かせる。 そして、それらすべてを取り巻く、この高い柵とカメラ付きオートロック式の門がお出迎えとか……さすが、院長だわ…と感心してしまう俺。
そんな俺が何故、ここにいるかって?
そりゃあ、真姫を連れ戻しに行くためさ。
昨日、いずみさんの口から突然、真姫の退部を聞かされた。
一昨日の一件が原因だと感じた俺は、当初、真姫が退部することを口では容認していた。 だが、実際のところそうしてもらいたくなかった。 何とかしてやりたいという気持ちの方が強かったのだ。
んで、そんな俺の態度に見かねた明弘が俺のことを殴り、殴り、殴り………
………って、殴り過ぎじゃぁぁぁ!!!
しかも、すべてのパンチを顔面に対してやるって、おまっ!! えげつねぇよ! マジで死ぬかと思ったぞ!!!
でもまあ………アイツがああしてくれなきゃあ、俺はここに来ちゃいねぇし、助けてやりたいと行動することなんざしなかっただろうよ。
…………一応、感謝はしておいたつもりだ。
「それじゃあ……行くぞ………!」
(ピンポ~~~ン♪)
門の前に掛けられたインターホンを押すと、独特の電子音が耳に入ってくる。
しばらくすると、そのマイクを通して女性の声が聞こえてくる。
「あら、蒼一君。 待っていたわ、中に入って」
「美華さん、ありがとうございます」
俺の姿をこのカメラで確認してから話したようで、門のロックがすぐに解除され敷地内に入ることが許された。 事前に俺たちがここに来ることを伝えていたことで今のところスムーズに事が進んでいるかのように思える。
だが、ここからが正念場になるのやも知れない……。
そう思い、息をのんだ。
「さあ………行こうか………!!」
俺たちはそのまま玄関に向かって歩いて行ったのだった。
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[ 西木野家・リビング ]
「さあ、みなさん。 こちらに腰掛けていって」
『ありがとうございます』
俺たちは揃って、美華さんにお礼の言葉を掛けた。
玄関で美華さんに出迎えられ、そのまま、このリビングまで案内させてもらった。 そして、用意していただいたであろうソファーに、俺たちは順々に座り始める。
すると、俺と明弘の顔を見つめていた美華さんが話しかけてきた。
「蒼一君たちの顔………擦り切れていたり腫れあがっていたりしているけど………大丈夫? 何か持って来ましょうか?」
「「いいえ、大丈夫です。 唾でも付けておけば治りますんで」」
「そ、そう………? ならいいのだけど…………」
昨日の殴り合いで出来た痕が気になっていたらしく、心配していたようだ。
問題はない………とは言えないが、これはある意味、自業自得と言うべきか………当然の報いと言うべきか………ともかく、心配するようなものではないのだ。
「主人を呼んできますね」
そう言って、美華さんはこの部屋から出て行った。
それと同時に、俺はあの人が来るのを身構え始めた。
実際、あの人と会うのは美華さんと同じく7年ぶりとなる。 病院にいた時では、どういう人なのかを理解することができなかったので、どう対応しておけばよいのか正直分からないところ。
美華さんと接した時みたいにすればいいのだろうか………悩みどころである。
「やあ、待たせたね」
そう言って、あの人がこの部屋にやってきた。
それを見ると、俺たちは立ち上がって軽く会釈をする。
「本日は自分たちのためにお時間をいただいたことを感謝いたします」
みんなの代表ということで、俺が初めの挨拶をする。
すると、近寄って来て俺の手を握り締めた。
「大きくなったな、蒼一君。 元気にしていたかね?」
「はい、結樹さんのおかげで今日までやって来れました」
「それはよかった。 キミの話をじっくり聞きたいところだが………今日はそういう時ではなさそうだね」
「はい、俺たちは結樹さんにお願いがあってやってきました」
「聞いているよ。 真姫のことだね……ちょうど、キミたちにも聞きたいことがあったのだよ。 さあ、座りなさい」
俺たちはその言葉に甘えて腰を下ろす。 結樹さんも腰掛けると話しを始めた。
「知っての通り、私は真姫が部活をやることを辞めさせた。 理由は分かるかね?」
「それは……一昨日の件ですか?」
「そうだ。 だが、それだけではないのだよ」
「と言いますと?」
「キミたちは知っているかもしれないが、私は西木野総合病院の院長をしている。 真姫には、その跡取りとして立ってもらおうと考えているのだよ。 つまり…」
「つまりは、まずは医者になってもらわないといけないから、医学部のある大学に進学させたいって話ですかい?」
俺と結樹さんが話しをしている間に、明弘が入り込み、俺の代わりに話をした。
話す内容を先に言われたことに眉をひそませる結樹さんだが、一呼吸おいた後に話しを続けた。
「……そういうことだ……キミの名前は?」
「明弘です。 滝 明弘」
「明弘君か……そうだ、真姫には私が勧める大学に進学させなければいけない。 そのためには、並大抵な努力と時間が要するのだよ」
「だから、これを機に部活を辞めさせて、そこに費やしていた時間をすべて勉強に集中させたいって言う話ですかい?」
「そういうことだ。 これは私の願いでもあり、真姫の願いでもあるのだよ」
そう言って、結樹さんは淡々と話を進めていく。
当然、話しをした明弘は苦々しい表情で聞いていた……いや、明弘だけじゃなく、ここにいる全員がそんな表情で聞いていたのだ。
中でも、昨日から不満を抱いていたにこは、身を乗り出すような勢いで話し始める。
「ちょっと待ってよ! それって、真姫ちゃんが医者になるためだけに辞めさせられるみたいじゃないですか! 真姫ちゃんは……そこに真姫ちゃんの意志はあるんですか!?」
「にこっち、落ち着きや。 怒りに任せたらアカンて…」
強い感情を抱いて話すにこを抑えるように希が間に入る。 息を荒々しくしていたにこも我に返り、黙って座りこむ。
だが、結樹さんは腕を組んだ状態で表情をまったく動かさないまま聞き、にこが座ったのと同時に話しをする。
「確かに、キミの言う通りかもしれない。真姫の意志に関係なく、私自らの考えで事を実行したにすぎないからね。 否定はできない……」
「それじゃあ………!!」
「……だが、このままキミたちと活動をさせたことで、万が一、大学に入れないようなことがあってはどうするというのだね? 責任はとれるのかな?」
「そ、それは……!!」
「さらに言えば、今回の一件はキミたちにも関わってくるものでもある。 このまま一緒に活動させておけば、より一層、真姫を苦しめることになりかねないのではないかね?」
「うっ…………!!!」
「事と場合によっては、音ノ木坂から去ることも検討せねばならないのだよ」
『えっ!!!??』
結樹さんの最後の言葉に、全員青ざめた表情となり驚く。 音ノ木坂から去る、つまりは転校させるということも考えているのかということに、みな焦りを感じだす。
「そ、そんなこと絶対にダメですぅ!!」
「そうだにゃあ! 真姫ちゃんと離れたくないにゃ!!」
花陽と凛は口を揃えて反対する。 2人にとってもそうだが、真姫にとっても2人は大事な友達でもあって仲間でもあるのだ。 真姫だって同じ考えなはずだ! 誰もそんなことを望んじゃいない……共に同じ学校に通い、学び、そして、活動をすることを喜ぶのだ。
そう誰もが信じていたのだ。
「真姫ちゃんのお父さん」
誰も話さず、静まり返る空間に穂乃果の声が、すぅっと通り抜ける。
「ん、何かね?」
「私、高坂 穂乃果と言います。 音ノ木坂学院のスクールアイドル・μ’sのリーダーをやっています」
「ほぉ、キミが穂乃果君か……」
「はい。 真姫ちゃんのお父さん、お願いです! 真姫ちゃんが私たちと一緒に活動することを許してあげて下さい!!」
「………………」
「真姫ちゃんは音楽が大好きなんです!
ピアノを弾くことや歌を歌うこと、私たちμ’sのために曲を作ること全部全部が大好きなんです!
私は、真姫ちゃんが弾いてくれたピアノを始めて聴いた時、とっても感動しました。
とても純粋で…まっすぐで……そして、美しい音色でした。
私はそれを聴いて真姫ちゃんと真姫ちゃんが作ってくれる曲が大好きになりました!
私だけじゃない……ここにいる全員がみんな同じ気持ちなんです。
私たちには、真姫ちゃんが必要なんです!!
だから、お願いします! 私たちから真姫ちゃんを取り上げないでください!!!」
涙を流して泣くことを必死でこらえようとする穂乃果は、声を震わせながら嘆願した。
そして、穂乃果の思いは、ここにいる全員に伝わり、同じような気持ちを伝えようと表情に表わしていた。
言葉では伝えられないものが彼女たちから出てくる―――――――
俺は目を瞑って、それらの思いを1つ1つ紡いで束にし始める――――――――
そして、出来上がったモノをすっと胸の中に仕舞いこむ――――――――
何を話すべきなのか……俺は理解した――――――――
ここで迷うわけにはいかないんだ――――――――
俺は静かに立ち上がる。
「結樹さん、いいですか?」
「何かね、蒼一君?」
結樹さんの視線がこちらに向けられる。 鋭い刃のような目が俺を突き刺そうとしているかのようだ。 明らかにさっきとは違うようだ。 どうやら、あちらも真剣に出てきているようだ………体が震えてくる!!
俺は、一呼吸おくことで落ち着きを取り戻すと、俺が伝えたいことすべてを話し始めた。
「俺は今年の4月から音ノ木坂学院の臨時講師として呼ばれました。
目的は、ここにいるμ’sを指導することです。
何気ない気持ちで俺は引き受けてしまいましたが、そのおかげで俺は真姫と出会うことができました。
そして、真姫が7年前に俺が命を削ってまでも助けた少女だということも知ることができました。
しかし、それを知った代償として真姫を苦しませるような結果となってしまいました。
申し訳ございません………」
俺は結樹さんに対して深々と頭を下げる。
心の奥底から謝った。 真姫に辛い思いをさせてしまったこと、助けてあげられなかったことに関してすべてを挙げて謝った。 自分の無力さと愚かさが招いたことに言い訳することは無かった。
「………ですが、真姫がμ’sに入り、共に活動してきたこと事態に問題はないと考えています」
「……何?」
下げた頭を上げてこう断言しきると、結樹さんは眉をひそませ渋い顔つきになる。
俺は言葉を続ける。
「俺が音ノ木坂で再会した時の真姫は、暗い表情をしていていました。
ですが、俺たちと一緒に活動してからは徐々に表情に明るさが入ってきました。
それは大好きだった音楽をまたやり始めることができたこと、自分がやりたいと思ったことができることの喜びを感じていたからです。
そして何よりも、親友と呼べる人ができたからなんです!
結樹さん、ここ最近の真姫はあなたから見ても、とても輝いていたと思います。
自分の娘であったことを誇りに思えるほど、真姫はすごく輝いていました。
そうさせてくれたのは、ここにいる全員とμ’sと言う環境が彼女を変えたのです!
だからお願いします、真姫からやりたいことを奪わないでください!」
俺はもう一度、頭を下げた。 そして、ここにいる全員が共に頭を下げてお願いした。
その様子を見てなのか、結樹さんは目を瞑り、難しい表情をして、唸りながら考え込んでいた。 どうやら真剣になって考えてくれているように見られた。
すると、何かを思い出したかのように目を見開き、俺の方に視線が送られるとその固く閉ざされた口が開かれた。
「蒼一君の言いたいことは良くわかった。 確かに、ここ最近の真姫は輝いていた……これはキミたちのおかげなのかもしれないな………」
「で、では………!!」
「だが、今回の一件に関してはそうとは言ってはいられない。 真姫があのようなことになってしまったのだ。 元の状態に戻るまでは、休学させてもらうことにする」
『!!!!!』
あれだけ言っても結樹さんを説得させることができなかった。 そして、真姫の状態が良くなるまで休学させることになってしまった………クッ!! これじゃあ、ここに来た意味が無いじゃないか! 俺たち10人が来ても状況を何も変えることができなくなるだなんて、まったくお笑いな話しだ!!
俺が心の中で考え込んでいると、結樹さんは立ち上がった。
「これ以上、キミたちに話すことはもうない………お帰りなさい。 あとは、親の問題だ」
結樹さんは、俺たちを帰そうとしている。
この一件を親子だけの問題として終わらせようとしているのだ………ふざけるなっ!! こんなところで終わってたまるかよ!!!
「結樹さん!!!!!」
俺たちに背中を向け、この部屋から出ていこうとする結樹さんに向かって俺は叫ぶ。
それを冷静な態度で振り返り、俺を見る。
これが最後のチャンスだと心の中で察した。
だから俺はこの一瞬のために、全身全霊を持って応えようとした。
決意を持って、俺は口火を切る。
「結樹さん!!
確かに、真姫がああなってしまったのは、俺に責任があります!!
元をたどれば、俺があの時にうまく立ち回っていれば、真姫が今日まで苦しむことも哀しむこともせずに済んだかもしれない………
だが! 今の真姫を元に戻す方法をあなたは知っているのですか?
あなたが治療すれば治すことができるのですか?
それは、できないんじゃないですか!?
あなたは過去に、今の状態と同じような真姫を見ており、治療したはずです。
でも、完全には治せなかった!
心の病を完全に治し切ることができなかったからです!!
だから、真姫はあの時に助けた人が俺であることをまったく知らなかったんです!
さらには、その助けた人は死んでしまい、その責任は自分にあると決め込んでいるのです!!
それでは、完全な解決にはなりませんよ!!!」
結樹さんに差し迫り豪語する俺。 仮にも、医者でもある結樹さんに対して、真姫を治すことができなかったと素人の俺が語ったのだ。 これは結樹さんを侮辱する発言でもあった。 だが、そんなことを一々考えていることとはなかった。 俺は、何よりも真姫のことしか考えて話しをしていなかったのだ。
対する結樹さんは、唇をかみしめて怒りの表情を見せていた。
「………では、キミはどうするというのだね………?」
結樹さんからの問いかけに、俺はこう応えた。
「俺に、真姫のことをまかせてもらえないでしょうか!!!
真姫は未だに勘違いをしている………
その誤りを正すために俺自らが真姫と向き合って、その闇を取り払って見せますよ!!!
そして、必ずあの頃のような真姫を結樹さんの前に連れて来させますよ!!
さらに言わせてもらうなら、真姫が医者となる将来も約束いたしましょう!!
俺が真姫を導いて見せますよ……俺が持つ知識をすべて真姫に与え、結樹さんが勧める大学に必ずや入らせるようにして見せましょう!!
この! あなたに助けられたこの命に変えてお約束いたします!!!!!!!!!!!」
『!!!!!!!!!』
俺の叫び声が部屋全体に響いた。
俺が放った言葉に、誰もが驚愕した。 結樹さんも……μ’sのみんなも……それに、俺自身もだ。
どうして、あの言葉が出来てきたのかは分からなかった。 だが、必死になって叫び続けていたらこんな言葉が飛び出て来たのだ。 多分、これは本心だろう。 俺の心が偽りを持って話すわけがない、心がそうしろと叫んだのだ!
俺は、放った言葉を胸に堂々と立った。
迷うことなど………何も無いからだ!!!
「ふふ………ふははは……………ふっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!!!」
『?!』
どういうことだろうか、結樹さんが急に高笑いをし出したのだ。 だが、それは決して悪い意味でのものではなさそうだ。 とても穏やかな表情で笑う者には、悪いヤツはいないからだ。
笑い終えると、結樹さんはさっきまで座っていたイスに座り直し、俺たちの方を見た。
俺もあわせるように座った。
「いやぁ~……参ったねぇ~………あそこまで言われちゃあ、何にも言えないなぁ~」
「は、はぁ…………?」
さっきまでの真剣な表情が嘘みたいに無くなると思いきや、実に清々しい表情で語り始めたのだ。 その姿に俺たちは呆気をとられてしまったのだ。
「……実はね、私はキミたちを試させてもらったのだよ」
『た、試す???』
「キミたちに真姫を任せてもいい者たちなのか、そうでないのかを判断しようかと思ったんだよ」
「そう……だったのですか………?」
「ああ、そうだよ。 私は始めからキミたちに任せていたんだよ。 最近の真姫がとてもいい表情をしているのはキミたちとの活動がとてもよかったのだと思っていたのだよ。 しかし、今の言葉を聞いて私は感動したよ。 真姫は、実に良い友達に廻り合ったものだ。 よかったよかった」
「……最初からそんな感じで話そうとしなかったのは、そのためなんですか………?」
「キミたちがこの程度でたじろいでしまうようでは、真姫を任せられんよ。 だが、今回の話し合いでよくわかった。 真姫はこのままキミたちの活動の中にいさせるようにするよ」
『ほ、本当ですか!!!?』
「約束しよう。 その代わり、真姫を頼んだよ」
『はいっ!!!!!』
俺たちの中で、歓喜の声が湧き上がる。 真姫がμ’sを辞めるという危機は去ったことに安堵したのだ。
「蒼一君」
「はい、なんでしょう?」
「キミの言葉は私の中に強く響いたよ。 まさか、あの時の少年がここまで立派になるだなんて思いもよらなかったよ」
「すべては、結樹さんのおかげですよ」
「ふふっ……キミになら真姫を託しても構わないかもしれないな」
「はい? どういうことでしょう?」
「どうかね、私の娘を貰ってくれないかね?」
「はいぃぃぃ!!!??」
「はっはっは!!! 実に、いい反応だ。 答えはじっくり考えてきてくれたまえよ」
「はぁ……………」
急に、そんなことを言われるだなんて考えてもみなかった俺は、正直、焦りまくっていた。 まさか、そんな話しにまで転がってしまうとは考えてもみなかったからだ。
俺は頭を抱えて悩んでしまった。
「それはさておいて、今回の部活を辞めるという一件なのだが………」
結樹さんの表情が少し渋い感じなものへと変化すると、俺にだけ話をし出したのだ。
すると、驚きの言葉が出てきた。
「今回の部活を辞めることについて最初に話し始めたのは、真姫なのだよ……」
「えっ……!!?」
その意外な言葉に俺は衝撃を受けた。 まさか、真姫が辞めるだなんてことを言うとは思ってもみなかったからだ。
「私が直接聞いたわけではない。 美華が真姫から聴いた話によれば、これ以上、キミたちに迷惑をかけたくないからだと言ったのだよ。 その言葉を聞いた時は、ショックを受けてしまったよ………まさか、真姫自身からその言葉が出てくるだなんて考えてもみなかったからね」
「当たり前ですよ……誰だって信じたくないですよ、そんなこと………」
「それに……学校を辞めようとさえも言っていたようなんだが………美華の説得で、何とか部活動を辞めるところにまで押し留めさせることができたらしいのだよ………」
「なんですって……?!」
その更なる以外な言葉に背筋が凍ってしまった。 俺はてっきりこの家にいることで、多少は良くなっているものだと思っていたからだ。 だが、実際は違っていた………何かが真姫の心をさらに蝕んでいっていたのだ。
このままじゃ、真姫が危ない………!!
そう考えると俺は部屋を出てゆき、真姫が いる部屋を探しに行く。
1階すべてを見てもそれらしき部屋は無く、次に、2階へと登っていく。 廊下に面した扉を1つ1つ確認していくと、1つだけ鍵がかかっている部屋があった。 それに、この部屋から何か気配を感じ取ることができたのだ。
ここだ……ここに真姫がいる………!!
そう確信した俺は、真姫の名前を叫ぶ。 真姫が出て来てくれることを信じて、叫び続けたのだ。
だが、そこから返事はなかった……………
「真姫…………」
部屋の前で為す術もなく立ち尽くす俺に向かって、結樹さんたちがやってくる。
結樹さんが言うには、どうやら、今日の未明に急に真姫が叫び出して部屋に入ろうとしたら閉まっていたと言う。 中に入ろうと扉を開いても拒絶されてしまい、やむなく諦めることになってしまったそうだ。 それ以降、真姫がこの部屋から出てくることを確認しておらず、心配を募らせていたようなのだ。
穂乃果たちが必死になって叫び続けたが、部屋から聞こえたのは泣きうめく声…………
それを聞いた俺たちは、泣くことをグッとこらえながら待つことしかできなかった…………。
(次回へ続く)
どうも、うp主です。
氷点下1℃の中で、細々と更新しました……ううっ、めちゃさむッ!!
こたつが欲しくなってしまう今日この頃です。
そんな中での、
『哀しき幻想紅姫 Ⅱ ~for Answer~』
第7話でした。
親を説得するという外堀を埋めていくことが出来ましたね。
あとは、内堀を埋めてから本陣に直行させなくちゃいけませんね。
さて、予定ではあと4,5話で終わるのかもしれませんが、今度の生誕祭に間に合うことが出来なさそうな感じがします………………
すまねぇ、花陽!!
次回もよろしくお願いします。
更新速度は早い方が助かりますか?
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ちょうどいい
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もっと早くっ!
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遅くても問題ない