蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第77話


頑張る子はできる子

 

【前回までのあらすじぃぃぃ!!!】

 

 

 例のユニットの件で、海未は詩を、真姫は曲を制作してくれたので、早速それを編曲だぁー!!…といったノリで真姫と共に編曲をすることになったわけなのだが………

 

 

『私たちも行くわ!』

 

『うぇぇ!!!?』

 

 

 何故か、メンバー全員が俺の家にやってくるという結果に………って!!!

 

 

「穂乃果ぁぁぁ!!! 何故、そのアルバムがここにあるぅぅぅ!!!?」

「ほぇ? どうしてって………おばさんの部屋からとってきちゃった☆」

「とってきちゃった☆ …じゃなぁ~い!!! 他の部屋に入るなと言ったろ! しかも、どうして母さんの部屋からピンポイントに俺のアルバムを抜き取ってくるんだよ!! というか、どうして保管している場所を知っているんだぁ!!?」

「おばさんが教えてくれたんだ~♪ いつでも見に来てもいいって言われてたし♪」

「かぁ――――さ――――ん!!!! よりによって、どうして穂乃果に教えたんじゃぁぁぁ!!?」

 

「でも、そのおかげで蒼一のカワイイ写真をたっくさん見ることで出来たで~♪」

「蒼一もあんな顔をするのねぇ~……うふふ♪」

「まあ、にこほどじゃないけど……かわいかったわねぇ~♪」

「今の蒼くんとは、全然違って見えたにゃぁ~♪」

「蒼一にぃのマシュマロほっぺ♡ おいしそうですぅ~♡」

 

「お~~~ま~~~え~~~ら~~~~………(震え声)」

 

 

 くっそぉぉぉ………俺の中で一番見られて欲しくないランキング・ベスト3に入っているアルバムをここにいる全員に見られてしまっただなんてぇぇぇ………恥ずかしい……羞恥の極みッ!!!

あ~~………穴があったら………

 

 

 

 

………掘りたいッ!!!

 

 

 

………違った、入りたいッ!!!

 

 

 

 

「え~っと……みんな何を見てそんなに興奮しているの?」

「真姫、お前は見なくていい。 見なくていいんだ! 見ちゃいけないんだ!! 今の俺だけを見ればいいんだ!!!」

「うぇぇ!?…ちょ、ちょっと!? そ、それって……ど、どういう意味なのよ?//////」

「お前には、知らなくてもいいことがたくさんあるってことだ。 さあ、編曲の続きにはいるぞ! 明弘! 予定変更だ、俺が全部指導するから後は頼んだ! そして、これ以上何もあさらせるな! 以上!!!」

 

 

 俺は真姫を連れて、そそくさと作業部屋へと戻っていった。

 

 

 アイツらには、もう俺の羞恥を知ってしまった……ならば! 唯一知っていない真姫だけには絶対に秘密にさせておきたい!!!

 

 

 そう決意しながら共に作業を進めてゆき、楽曲を完成させることができたのだが……案の定、アイツらは俺の部屋にある、ありとあらゆるものをひっくり返して見ていたようで………

 

 

 

……………何これ、もうイヤッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

[ スタジオGenji内 ]

 

「あっはっはっはっは!!! それはそれは、蒼一くんも苦労するねぇ」

「はぁ………笑い事じゃないですよ………俺の部屋にあるものほぼすべてをひっくり返され晒されてしまったんですよ? 普通だったら死にたいですよ………」

「初めての友人の部屋潜入調査!…みたいな好奇心から起こった衝動的行動なんだろうね。 はっはっは!! 私も若い頃に同じような事をして、君の親父さんに怒られちゃったこともあったよ」

「謙治さんも同じことを………」

「若い時はね、冒険をするものなのさ」

 

 

 髭をいじりながら俺と談笑する謙治さんにも、思いなしか、若かりし頃はそんな感じだったんだろうな。 しかし、それで俺の心の重みが軽くなるわけでもなく、悩みは増える一方だ……。 最近では、エリチカや希、にこまでもがちょっかいを出してくるように……もう、勘弁してくれよ……。 精神攻撃は基本だけど、まさか、それを喰らうこととなるとは思ってもみなかった……。

 

 

「さてさて、話しはこれくらいにしておいて……それじゃあ、ブースを開くよ」

「………お願いします………」

 

 

 今回、ここに来たのは、この前の楽曲に後ろに控えている穂乃果たちの歌声をいれることだ。 折角、早く出来上がったのだから、そのまま完成させておかないといけないよな。 それに、これの他にも海未たちにはストックしているものがあるって言うのだから、早めに先手を打たないといけない。 そして、それらを発表する時期も考えないとな………。

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

[ ブース内 ]

 

「それじゃあ、収録を始めるぞ~!」

 

 

 ブース内に用意されたミキサーの前に座った俺は、専用のヘッドフォンをかぶって準備に入った。 穂乃果たちもそれに合わせるように、ユニットごとに集まって歌詞や声の確認をしているところだ。

 

 

 さってと、最初はどこからやろうかな…………

 

 

 俺と真姫とで作り上げた3つ楽譜を手に取り、どれから行こうかと考えていると、先に名乗りを上げてきてくれた組が現れてくれた。

 

 

「蒼一、最初は私たちにやらせてほしいわ」

「真姫! お前たちのところはもう大丈夫なのか?」

「ええ、絵里とにこちゃんには、私が付きっきりで練習したんだからもう完璧よ」

「そうなのか? 絵里とにこも大丈夫と見てもいいのか?」

「ええそうよ、いつでも歌えるようにしていたから問題ないわよ」

「そうそう、にこはいつでも準備万端なんだからね♪」

 

 

 そう言うと、3人はそれぞれマイクの前に立ち、準備をし終えた。

 

 

 すると、にこの口からこんな言葉が飛び出てきた。

 

 

「さあ、蒼一。 私たち『BiBi』の実力を見せてあげるわよ!!!」

「ん? びび? なんぞやそら???」

「ふっふっふ……蒼一、聞いて驚かないことよ………これは、私たちユニットの名前なのよ!」

「な、なにぃ!? もう決まっていたのか!!」

「そうよ。 にこたちには、他のみんなとは違って見た目にこだわってるって言うかぁ~、美しさがあるみたいなぁ~そんな感じの思いを込めてつけてみたのよ~♪」

「美しさ……ねぇ…………絵里や真姫ならともかく、にこは………」

「何よ、何か文句でもあるの?」

「いや………どちらかと言えば、見た目カワイイ系だから似合わないような………」

「ぬぁんでよ!!!」

「まあまあ、にこ落ち着いて。 にこには、にこらしい美しさがあるんだからいいのよ」

「そうよ、にこちゃん。 にこちゃんには、可愛さと美しさの両方を持っているんだから」

「そ、そうかしら。 な、なら問題ないわね! にこのこの可愛さと美しさでファンの心を掴んで見せるわ!!」

 

 

 にこの自己完結的な発言に、ぽかんとしながら聞いていると、絵里と真姫がこちらにウインクして合図をしてくれた。 はぁ…どうやら助けられちまったようだな。 だが、このタイミングを逃すわけにはいかなかった。

 

 

「それじゃあ、気を取り直していくぞ。 まずは、曲名から頼むぞ!」

「それじゃ、はじめるわよ」

「ええ、いいわよ」

「タイミングは任せるわ」

 

 

「「「せぇ~のっ! ……BiBiで『ダイヤモンドプリンセスの憂鬱』」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

「………はいっ! 終了!! おつかれぇ!!」

 

「「「お疲れさま!」」」

 

 

 とりあえず、1組目は終わったことだな……それじゃあ、この調子で次の組も行っちゃうか……

 

 

「はいはいは~い!!! 蒼君、次は私たちでいいよね!!!」

「あ~もうわかったから耳元近くで、そんなに騒ぎ立てるんじゃない!」

「だってぇ~、待ち遠しいんだも~ん。 早く、歌いたいんだも~ん」

「穂乃果にしては、やけに積極的だな……まあいい、それじゃあ準備を始めてくれよ!」

 

 

「「「はぁ~い♪」」」

 

 

 3人は、やけに陽気な感じでマイクの前に立って準備を整えていた。 何か自信があるのか、それとも、ただ単に浮かれているだけなのか……その真意は分からないまま、こちらもすぐに収録することができるように準備を整えた。

 

 

「よっし……それじゃあ、始めるとするか………お前たち、準備はいいか?」

 

 

「「「いいよ~♪」」」

 

 

「わかった。 ちなみに、何か言いたいことはあるか?」

「はいは~い! あるよ、言いたいことあるよ!!」

「はいはい、わかったから部屋の中で飛び跳ねないの……」

「えっと~………確か……ぷら………ぷり………ことりちゃん何だっけ?」

「もぉ~穂乃果ちゃ~ん……『Printemps』だよぉ~」

「おお! そうだったよ!! 英語は得意じゃないから戸惑っちゃったよ」

「ほ、穂乃果ちゃん……これフランス語だと思うよ……?」

 

「おいおい……お前ら、ちゃんと話し合って決めたんだよな?」

 

 

 さっきのBiBiとは違って、やる気というか…意識の無さと言うべきか……何故、自分たちのユニット名を度忘れしちゃうのかなぁ………穂乃果だから仕方ないけれど………

 

 

 そう言えば、ことりはこのユニット名を『Printemps』と言っていたな。 確か……そう、意味は『春』だったな。 春? 一体何をイメージしたものなのだろうか? 春で連想されるものと言えば、新たな芽生えだったり、始まりの季節だったりと、いい意味だったりするな。

 

 

 あとは………温かい………気が抜ける………天然………ん、天然?…………天然ドジっ娘……天然癒しボイス……天然お兄ちゃんっ娘…………はっはっは、いやまさかそんなことは……ねぇ………?

 

 

 穂乃果、ことり、花陽の3人を見ていて、何となく名前の意味を理解したような気がした。

 

 

「はいはい、そんじゃあ、サクッと終わらせちゃうぞ~! 本番いくぞ!」

「うん♪ ファイトだよ!!」

「よ~し、がんばろー♪」

「が、がんばります!」

 

 

 

「「「すぅ~……Printempsで『sweet&sweet holiday』!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

「………よっし! おわりッ!! これもいい感じに録れたぞ!!」

 

 

「「「やったぁー!!!」」」

 

 

「花陽、よくできました。 最初と比べて歌がドンドン上達していって嬉しいぞ♪」

「えへへ、ありがとう♪ 私をこうしてくれたのは、全部蒼一にぃのおかげだよ♪」

「そう言ってくれると、お義兄さんはもっと嬉しいぞ~♪」

 

 

 花陽の素直な反応を見ていると、無性に撫でたくなる気持ちが湧いてきたので、俺は髪を乱さないよう頭を優しく撫でた。 撫で始めると花陽は、とてもかわいらしい表情と声を発していて、それを見ていると自然と癒されている自分がいた。

 

 ふふっ、こんなかわいい義妹がいる俺って幸せ者じゃねぇか♪

 

 

「ぶぅー……蒼く~ん、私たちには何もないの~?」

「ことりたちも蒼くんに撫でてもらいたいよ~」

「はいはい………ほら、よくできました」

 

「「えへへ♪♪」」

 

 

 花陽を撫でているところを横目で見ていた穂乃果とことりは、ほっぺたをお餅のように膨らませて恨めしそうに見ていたので、仕方なく2人のことも撫でてあげることにした。 こっちも頭を撫で始めると表情を緩ませて、まるで猫のように撫で続けられたがっているように見える。 こうして見れば、小動物系の天然癒しユニットみたいに思える。 そう言う意味では、あの名前は間違ってはいなかったようだな。

 

 

…だが、俺からしてみれば、内2人から癒しの要素がこれっぽっちも見つからないんだけどな。

 

 

 

 

「蒼一! いつまでじゃれ合っているつもりですか!! 時は金なりですよ、すぐに次に進ませてください!」

「おっと! あぶねえあぶねえ……無制限に撫で続けるかと思ったわ………」

 

 

 海未からの叱咤が飛ばされて我に返ることができると、2人の頭から手を放した。 すると2人は、何とも悲しそうな顔をして見てくるので、またあとでやるから今は休んでおけ、と言い残して次に進んだ。

 

 

「それじゃあ、間髪入れずに始めちゃうぞ」

「よろしく頼みましたよ、蒼一」

「ええよ! ウチはいつでもいけるで♪」

「凛もいつでも大丈夫にゃぁー♪」

 

 

 海未を先頭に収録ブースに入り込む彼女たちを見ていると、さっきとは打って変わって、自然と安心感を抱いてしまう。 やはりアレだろう、真面目な海未が希と凛をまとめてくれているおかげで、ユニット的にしっかりとしているといった印象を与えてくれているからだろう。

やはり、海未はいいなぁ……幼馴染3人の中でも、ダントツに安心と信頼を置くことができるのだから、もういてくれているだけでも本当にうれしい限りだ………やべっ、涙出てきた………。

 

 

 

「蒼一、いつでもよろしいですよ」

 

 

 マイクの前に立ち、準備ができたことを海未が告げてくれると、こちらも収録がすぐに行えるように、楽曲とデータのセットを完了させた。

 

 

 

「なあ、海未。 そっちも名前とかを考えたのか?」

「はい、希も凛も一緒に考えてくれまして、素晴らしい名前ができました」

「『lily white』って言うんだよ、蒼くん! とぉぉぉっても、きれいな名前だにゃ!」

「“lily”は花の百合で、“white”は白。 つまり、百合のように白く純白やって意味なんやで」

「ほぉ…これはまたシャレオツな名前だな。 百合の花言葉は、純粋。 確かに、海未たちにはピッタリな名前………名前………だよ………な?」

 

 

 言葉の意味について、考えながら視線を海未、凛と流していたら、希のところで立ち止まってしまった。 う~ん………希って、純粋だっていうイメージが…………

 

 

「ちょっとぉ~、またなんか失礼な事を考えておらん?」

「いいや、そんなことはないぞ~」

「嘘やね、ウチのことをじぃっと見とったのはわかっとるんよ。 ……あ! さては、ウチのことを見て、やらしいこと考えとったんやろ?」

「何でその結論にいっちゃうかな!? してないから! そんな目でお前を見てねぇから!!」

「ふふ~ん、どうやろなぁ~? この前、ウチの裸を見た時のことを思い出しとったんやないの? キャー恥ずかしい!!」

「うぉぉぉぉぉいいいいい!!!!! 何故に、このタイミングでそれを言っちゃうかな!!!? それに見てないし、覚えてもいないし!!!」

 

 

 

 

――――――ガタッ!!!!

 

 

 

――――――ビクッ!?

 

 

 

………今……後ろの方で、何やら殺気みたいなものを感じられるように………!! まて………振り返るんじゃあない、振り返ったら負けな気がする……………

 

 

 

「穂乃果? ことり? どうして立ちあがっているのです?」

「絵里ちゃんも真姫ちゃんもどうして立ちあがっているにゃ?」

「そ、そんなことより、さっさと始めるぞ!! さあさあ、始めた始めたぁ!!!!」

 

 

 背後から迫ってくるヤツらのことはよぉ~くわかった………やっぱり、振り返っちゃダメなようだな………アディオス! 昨日までの自分。 そして、こんにちは………絶望さん…………

 

 

 俺、この収録が終わったら、おいしい飯でも作って満足するんだ。

 

 

 やべ、これ死亡フラグじゃん…………

 

 

 はてさて、俺は無事に明日を迎えることができるのだろうか……?

 

 

 

 

「それでは参ります………」

 

 

「「「lily whiteで『あ・の・ね・が・ん・ば・れ!』」」です」

 

 

 

 

………これ、ケンカ売られているんかなぁ…………?

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

――― 海未たちの収録が始まる直前 ―――

 

 

「謙治さぁ~ん♪ ちょっといいかしら~♪」

「ん? どうしたんだいお嬢ちゃん。 何か、おじさんに用かい?」

「そうなんですよ~、謙治さんに聞きたいことがあるんですよ~」

「ほぉぅ、それは一体何かな?」

「えっとぉ~、蒼一のことなんですけど―――――――」

 

 

 

 

 

 

 

――― 少し前 ―――

 

 

「ええっ!? にこちゃん、謙治さんに直接聞いちゃうのぉ!!?」

「しぃ―――っ!! 声が大きいわよ、花陽!!」

「あっ! ご、ごめんなさい……で、でも、どうして謙治さんに?」

「私たちがここに始めてきた時に、蒼一と明弘が謙治さんと仲よく話していたじゃない? もしかしたら長年の付き合いじゃないのって思ったのよ。 それで、謙治さんに去年の蒼一たちのことを聞いてみようって思ったわけなのよ」

「そっか、もしそう言う付き合いをしていたら、いろいろなことが謙治さんのところにも流れ込んでくるんだね!」

「そう言うことよ。 それじゃあ、聞いてみるわよ!」

「うん、にこちゃん頑張ってね!」

「ん? 何、言ってんのよ。 花陽も来るのよ!」

「ええっ!!? わ、私も行っちゃうのぉ!? だ、ダレカタスケテ―!!」

「わかった、わかったから……もう、この私が一緒なんだから大丈夫でしょ!」

 

 

 

 

 

・・・とまあ、こんな感じで花陽と一緒に謙治さんのところに行って聞いてみることになったわけよ。

 

 

 今はまだ、希たちが収録をしているから蒼一はあっちに釘付けなはず、それに、今日は明弘がいないわ。 なんか用事があるからって、先に帰ってしまったわ。 まあ、それはそれで好都合なんですけどね。

 

 

 

 

 

 

 

――― 現在 ―――

 

 

「え? 蒼一くんが去年の8月頃にどこにいたのかだって? それはちゃんと覚えているけど、どうしてそんなことを聞くんだい?」

「そ・れ・は、乙女のヒミツですよ~謙治さん♪」

「うぉ? あっはっはっは!! こりゃあ参ったなぁ~、それじゃあ紳士は聞くことはできないなぁ~」

「うふふ、謙治さんもよくわかってるぅ~♪」

 

 

「………にこちゃん………キャラの入れ替わりがすごいよぉ……………」

 

 

 

 ふふん♪ ちゃんと見ておきなさいよ、花陽。 これがアイドルに必要なキャラづくりの真骨頂よ!! 今のスクールアイドルはこのくらいのことが出来なくっちゃやっていけないわよ!!

 

 

 私は、みんなに愛されるぶりっ子アイドルになりきって……いや、なって謙治さんに急接近して、蒼一のことを聞いてみようとしているの。 さあ、ダンディな謙治さんも私のかわいさにメロメロになっていろんなことを教えて頂戴にこ☆

 

 

 

 

 

「それじゃあ、教えてあげるよ。 確か、蒼一くんは…………」

 

 

「「ごくりっ………」」

 

 

 

 私と花陽は、謙治さんが今から話す言葉に耳を傾けて、じっくりと待ち続けたわ。 私の予想が正しいのか、それとも正しくないのか……ただそのことだけを考えていたら、胸がドキドキと早く鼓動してしまうの。 その瞬間だけ、1秒が長くも感じられそうな気がしたわ。 でも、そんなことよりも1秒でも早く答えが聞きたいと思うことが最優先されているの! さあ、教えて! 答えは………どっちなの?!

 

 

 

 

「………そう…………確か………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………うん、家族団欒の旅行に出かけていたね」

 

 

 

「「えっ………?」」

 

 

 

 その答えを聞いた時、肩にかかっていた力がストンと落ちてしまったわ。 まさか、海未が言っていたことと同じことを話すだなんて………いえ、わかってはいたはずよ………けど、そうじゃないかもしれないという1%の確率に期待をしちゃっていた私がいたのよ。 もし、怨むのならそんな期待をしちゃった私に対してしちゃいたいくらいよ…………

 

 

 

 

「………ん? どうしたんだいキミたち。 そんなにしょぼくれちゃった顔をしちゃって?」

 

「「い、いえ……何でもありません……あは…あははは……………」」

 

 

 

 私たちは、2人して心から笑っていない乾いた笑いをして、それなりの返事をしたわ。

 

 

 

「そうだ、ちょうどいいね。 キミたちにその時の写真見せてあげるよ」

 

「「え??」」

 

 

 

 そう言って謙治さんは、レジのところでしゃがみこみ、アルバムらしき分厚い本を取り出してきては、テーブルの上に置いて開き始めた。 真ん中から数ページめくったところで謙治さんの手が止まり、1つの写真に指をさした。

 

 

「そう、この写真だね」

 

 

 謙治さんが指したところを見ると、なんとも古い民家の前で写真を撮っている4人の姿が見えた。 1人は謙治さんと同じくらいの歳の男性と、その隣に女性が立ち、同じように2人並んで立っているのが、蒼一と涼しい顔をした青年の姿が立っていた。

 

 

 確かに、蒼一はそこにいた。 それじゃあ、ここに写っているのは家族なのだろうか?

 

 

「ねえ、謙治さん。 ここに写っているのって、みんな蒼一の家族?」

「ああ、そうだよ。 この歳くったオッサンが蒼一くんの父親の零治で、隣が母親の利奈さん、そして、蒼一の隣に立っているのが、兄の賢吾くんだ」

「そうなんですか………」

 

 

 そう言ってみれば、蒼一と比べて何かと面影があるようにも思える表情をしていた。 家族って、こんなにも似ているものなのね………そうなのね………

 

 

 

 

今の私と、パパとは似ているところがあるかしら―――――――――――

 

 

 

 

 ふと、一瞬だけそんなことを思いついた私は、首を横に激しく振って、すぐに我に戻ってきた。 今は、そのことについて考える時じゃないわ、目の前にことにだけ集中するのよ。 そう自分に言い聞かせて、謙治さんの話しを聞き続けていた。

 

 

 

「今思い返せば急な話だったねぇ。 何せ、利奈さんのほうから急に実家の方に戻るって言いだしたからねぇ。 家族そろって大声で叫んでいた時のことを思い出したら笑いが込み上がってくるよ」

「その……蒼一n……蒼一さんのお母さんって、実家はどこだったんですか?」

「利奈さんは、富山県にある興宮ってところなんだ。 その近くにね、白川郷ってところがあってね、江戸時代から受け継がれた昔ながらの合掌造りの民家がたくさんあるんだよ。 この写真は、その民家の前で撮った写真らしいんだ」

「白川郷! も、もしかして、雛見沢ですか!?」

「雛見沢? 花陽、何よそれ?」

「ほぉ! キミは物知りだねぇ、よくそんな別名を覚えているだなんて」

「はい! 雛見沢と言えば、約30年も前にダム建設計画が浮上したことでいざこざがあった場所で、そこでは様々な怪奇現象が起こって計画が中止になったって言うところですよね!」

「う~ん……確かに、説明は間違ってはいないね。 まあ、確かにそんな噂があったおかげでもあるけど、正確に言えば、国がその場所を保護しようしたからなんだよね」

「なるほど、だからあそこが世界遺産になったんですね! す、すごいですぅ!! 行ってみたいですぅ!!!」

「花陽……アンタって、そんなオカルト系が好きだったの?」

「い、いやぁ………た、ただ、お兄ちゃんからそんな話を聞いていただけで、こ、怖いものとかはダメですぅ………」

「そ、そうなのね………」

 

 

 まあ、そうだと思ったわ。 この前の学校での肝試しみたいな時でも相当怖がっていたみたいだし、そんなにオカルトに興味があるとは思えないわね。 あるとしたら、いつもスピリチュアル言っている希かもしれないけど。

 

 

 

 

「ともかく、蒼一くんたちは8月のほぼ丸々使ってあっちに行っていたんだよ。………それで、本当は何を聞きたかったんだい?」

「!」

「い、いや……そ、そのぉ………」

 

 

 謙治さんからの急な問いに、しどろもどろになる私たちは、どうしようかと思ってしまう。 けど、ここまで来たらもう何も包み隠さず話しておいた方がいいかもしれないわね。

 

 

 

 

「はぁ……もう降参だわ………」

「にこちゃん?!」

「謙治さん。 私たちはね、蒼一が何かを隠しているんじゃないかって疑っていたの」

「蒼一くんが隠している? それはどういうことかな?」

「それは………蒼一が、RISERのメンバーじゃないかってことよ」

「蒼一くんがRISERだって?………あっはっはっはっはっは!!!!!! ソイツは傑作だ!!! あっはっはっはっはっは!!!!!!!!」

 

 

 

 謙治さんは、私の真意を聞くと、急に大きな声で笑い出し始めた。

 

 

 

「はっはっは…………あー…苦しい………あぁ、ごめんね。 あまりにも可笑しすぎて大笑いしてしまったよ」

「い、いえ、いいんです」

「いやぁ………まさか、蒼一くんにそんなことを思っていたとはね………ということは、明弘くんはその相棒のエオスって言ってかな?」

「っ!! 謙治さんはRISERを知っているんですか!?」

「ああ、そうだよ。 というよりも、私は彼らに会っているからねぇ」

 

 

「「ええっ!!? ほ、本当ですか!!!?」」

 

 

「ああ、本当だとも。 その時にもらったサイン色紙もあるからこっちに来てごらん」

 

 

 そう言って謙治さんは、ブースに続く廊下の方に向かって歩き出し始めた。

 

 

 けど、まさか謙治さんがRISERに会っていただなんて………信じられないわ………。 でも、音楽スタジオを経営しているのだからここに通ってくるってこともありえなくもないかもしれないわね………。

 

 

 様々な憶測を飛ばしつつ、廊下を歩き進めると、謙治さんは止まってあるものに指をさした。

 

 

 

「あの色紙がRISERのサインだよ」

 

「「うわぁ~~~~!!!!!」」

 

 

 見上げると、そこには確かに、RISERとそのメンバー・アポロとエオスの名前が英語で書かれてある色紙を見つけて興奮していた。 というのも、私は彼らのサインを見るのが初めてだったからなの。 そもそも彼らは、あまり人前に姿を現すことも無く、ファンとの接触もしないので、彼らからサインが貰えるということ自体が本当に貴重なのよ。 それが私の目の前にあるだなんて…………はぁ~感無量だわ。

 

 

 

「ど、どこでこれを手に入れたんですか!?」

「うん、これはね、彼らがウチのスタジオに来てくれた時に手渡されたものだよ」

「と、ということは、謙治さんはRISERの素顔を見たことがあるんですか!!?」

「い、いやぁ……さすがに、仮面をかぶったままの対面だったから分からなかったよ」

 

「「そ、そうですかぁ………」」

 

 

 もしかしたら、正体を知っていたらと思ったけど、やっぱり、彼らはそこまで徹底していたわけなのね。 さすがとしか言いようがないわね………。

 

 

 

 

「しかし、キミたちはどうして蒼一くんたちをそのように思ったんだい?」

「それは、蒼一たちの歌と踊りの雰囲気が似ていたからです!」

「ほほぉ、でもそれだけじゃあ断定はできないね。 確かに、蒼一くんたちの歌と踊りはすごいと言えるね。 でも、彼らとは違うね」

「ど、どうしてそう言いきれるんですか?」

「それはだね、この前の蒼一くんたちの大学で行われていた文化祭ではっきりと分かるんだよ。 蒼一くんには、何かをふっ切らせる大胆さに欠けているんだよ」

「大胆さ?」

「そう、RISERは常に何かを打ち壊す大胆さを兼ね備えていた。 けど、蒼一くんにはそれが感じられなかった。 これが決定的差だと言えるね」

 

 

「「そ、そうなんですか………」」

 

 

 そう言われると、何だか納得できそうな気がしてきた。 だとしたら、私があの時に感じたのは、ただの思いすごしに過ぎなかったってことなのかしら? もし、そうだとしたら、私もまだまだなのかもしれないわね……

 

 

 

 

 

「さて、こんなものかな。 さあ、キミたちは蒼一くんのところに戻って収録しに行かないといけないんじゃないのかい?」

 

「「あっ………!!」」

 

 

 

 そう言われて時間を確認して見たら、確かに、ちょうどいい時間が過ぎていたところだったわ。

 

 いけないわ、早く戻らないと………

 

 私はそのままブースの方に向かって歩き始めようとした。

 

 

 

「あっ! ちょっと待ってくれないかい? これを蒼一くんに渡しておいてくれないか?」

「あ、はい?」

 

 

 謙治さんは、ポケットから封筒を1つ取り出して私に渡してきたわ。 これは何かしら?

 

 

「中身は蒼一くんが見れば良くわかるから、それじゃあ、頼んだよ」

 

 

 そう言い残して、店頭の方に戻って行ってしまった。 ……はっ! いけない!! 早く戻らないと!!

 封筒を手にしながら元いたブースに入って行ったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

[ ブース内 ]

 

 

「……………何やっているのよ、蒼一…………」

 

 

 ブースに入って見ると、そこには蒼一が穂乃果たちから羽交い絞めを受けて身動きが取れない状況になっていた。 …………えっ? どういうことなの???

 

 

「あっ、にこ! ちょうどいいところに来ました。 一緒に蒼一を折檻しましょう!」

「………海未、来たばかりの私に何をさせる気なのよ?」

「それがね、にこちゃん! 蒼君はね、希ちゃんを家に連れ込んで裸を見たんだよ!!!」

「んな!? ぬあんですって!!!!?」

「おいコラ穂乃果!!! いろいろと抜けているし! 俺は希の裸を見てないし!!!」

「でも、蒼く~ん。 希ちゃんを家に連れて来て、お風呂に入れたんだよね~?」

「そ、それは……希がシャワーを貸してくれって言うから仕方なく………」

「でも、それだったらどうして蒼一は希の裸が見えるような場所に居たのかしらね~?」

「それはだな絵里。 タオルの交換に来ていたところでだったからだよ……」

「だったら希が入る前にやっておけばよかったんじゃないの?」

「真姫、それは俺がやる前にさっさと入っちまったんだから仕方なかったんだよ………」

 

 

「「「「「ふ~ん………」」」」」

 

 

「なんだよ……その疑い深い目線は………」

「蒼君、絶対嘘ついてるよ………」

「そんな悪い子にはどうしたらいいんだっけ?」

「そうですね……やることはただ一つですね」

「決まっているわ、アレよ、アレ」

「………御仕置きね♪」

 

 

「お、俺は無実だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

「「……………………」」

 

 

私と花陽は、言葉にならない声を発してその光景に唖然としながら見ていた。

 

 

何よこれ? 私は地獄絵図でも見せられているのかしら? どうしてこんな状況になったのかは分からないけど、この状況を見て分かったことは…………

 

 

 

収録ブース内で、腹を抱えて笑っている希がまた、嘘をついてからかっていたんだなってことだけだったわ。

 

 

 

 

哀れね、蒼一…………

 

 

 

 

 

 

 

その後、蒼一の疑いは晴れたのだが、それが御仕置きで精根尽きる寸前に判明したことだったので、あまり効果が無かったらしい………

 

 

それと、謙治さんから貰った封筒を渡すと、その中身を見て、微かにニヤリとほほ笑んで見えたような気がした。

 

 

 

 

 

 

(次回へ続く)

 

 






どうも、うp主デス。


なんか、昨日投稿しようかと張り切っていたのですが、寝落ちしちゃっていたようで、申し訳ございませんでした!
最後の記憶は………そう、しぼんでいたはずのキウイがですね、ふっくらと膨らんでまして、これは食べ時だ!と思って食べたところまでは覚えているんですよ………一体、何があったのやら………



そんなこんなで、今日はユニットの収録話でした。
それぞれのファーストソングは何にしようかと考えていたらこのような結果となりまして、このようにさせてもらいました。どれもですね、自分が初めてユニットとして聞いた曲ですので、思い入れは深いものがあります。 特に、Printempsのsweet&sweet holidayは、格別な思いがありましたね。どのユニットの中でも一番初めに聴いて、感動した曲でした。そして、それがファイナルライブで聴くことができるだなんて…………


……おっと、この話しはまた今度にしよう。



さて、次回はちょっとした間休話となります。
みなさん、休憩できるのは次回だけですよ~………



では、次回もよろしくお願いします。



今回の曲は、

やっぱ、思い出の曲ということで!


Printemps/『sweet&sweet holiday』

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