蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第73話





大学乱舞!!

 

 

 

【プロローグ】

 

 

[ 大学内・広場 ]

 

 

文化祭当日の朝―――――

 

 

 沙織さんが率いるオタクサークル『充電機関』は、この大きな広場に設けられたステージの前に集まった。 開催時間まで、あと2時間を切ったこの場所から、とてつもない期待と緊張感とが伴った重苦しい空気が辺り一面を覆い被さっているかのようだ。

 

 

 その場に集まったそれぞれの額から小さな雫が浸りだしている。 目がうつろになったり、手をモジモジと動かしてみたり、体を震わせてみたりと、落ち着かない者たちが俺の視界の中に次々と入ってくる。

 

 

 その中に一般人(モブ)の如く紛れ込んでいる俺だが、緊張と言えるようなものは感じてはいない。 すでに、そうしたものは捨て去り、期待しか抱いていなかったのだ。 横に立っている明弘も同じような雰囲気を感じた。 コイツも心の底から楽しもうとする気でいるのだろう、と横目で見ながらあの人の登場を待っていた。

 

 

 

 

 

 

 そんな時である……

 

 

 

 

 

 

「やぁ~やぁ~皆の衆、よくぞ集まったでござるよ~」

 

 

 この一週間で聴き慣れてしまったあの抜けたような声が広場全体に透き通るように響いた。

 

 

 カツカツと音を立てながらステージに上がっていくあの人の姿が見えると、全員の視線が一瞬にして彼女に集中した。 何かを彼女に期待する視線が彼女に向かって次々と突き刺さっていった。

 

 

 

 だが、それに怖じ気づくような素振りをまったく見せず、逆に、ニヤリと笑いをこぼしながらあの人……沙織・バジーナは語りだした。

 

 

 

「皆の衆……待ちに待ったこの日がようやく来たでござるよ………己の欲に耐えながら、この日のために全力を尽くしてきた皆の健闘に感謝する。 そして今こそ、その鍛えた技を披露する時であります!

だが、今ここに集まる者たちの中には、不安を抱く者がいることを拙者はよく知っているでござる………されど!! それは、ほんの一時に過ぎないことであります!! 皆は拙者が今立っている場所に身を置いた時、すべてが喜びに変わるであろうことを拙者は約束しよう!! さあ、奮い立て! 選ばれし29人の勇者たちよ!! 自らの道を拓くため、すべてのオタクたちにエールを送るために! あと一息でござる! 皆の力を拙者に貸していただきたい!! そして、拙者は……皆が示した証を世界中に届けるでござる!!!」

 

 

 

 

 

『うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!』

 

 

 

 

 沙織さんの言葉に心を打たれた一同は声高らかに奮起の叫びを空に轟かせた。 それらの声には、もはや何の迷いもなく、目の前にある現実に立ち向かおうとする決意が込められていた。

 

 

 

 

 

 

 

「さあ………拙者たちのメールシュトローム作戦の発令でござる!!!」

 

 

 

 

 

 沙織さんの最後の激が飛ばされると、また歓喜が湧きあがった。

 

 

 

 

 そして、俺たちの長いお祭りが始まりだしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

[ 大学敷地内 ]

 

 

 

 文化祭開催直後――――――

 

 

 

 

 

 

 

『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 大学の敷地のあらゆる場所に点在された、屋台やモニュメントなどに目をキラキラと輝かせているのは、μ’s一行だ。 彼女たちは開催時刻になる前から早く始まらないかとソワソワしながら待っていたようで、いざ始まり敷地内に足を踏み出すと、自分たちが今まで見たことが無い特別な光景に衝撃を受けていた。

 

 

 まっすぐに広がった道の両側には、多くの食べ物を扱う屋台や学生たちが作り上げたアクセサリーなどの小物を販売する店、そして、それらの店に詰めかけるお客たちの姿があった。 食べ物が焼ける音、老若男女問わずに飛び交う人の声、そこに拍車をかけるように響き渡るリズムの良い音楽が道全体に広がっていた。 まさに、お祭りのような賑わいが起こっているのだということを、彼女たちは肌身に感じ取っていたのだった。

 

 

 

「す、すごい……! これが蒼君たちの大学なの………!?」

「こんなにカワイイ小物もみんなここの学生さんたちが作っているんだ……!」

「まだ始まったばかりなのに、これだけの数の人がいるとは……!」

「いろんなものがあり過ぎて、目が回っちゃいそうだにゃ~……!」

「わあぁぁぁ!! 美味しそうなお店がいっぱいですぅ……!!」

「花陽、食べすぎには気を付けないといけないわよ」

「大学……何だかとっても楽しそうな感じがするニコ!!」

「その前に、ちゃんと受かるくらいの学力を付けんとアカンやろ?」

「ぬぁんですってぇ――――!!?」

「まあまあ、希。 今はそんなことを言わないことよ」

 

 

 

 これらの光景を人回り見たμ’sメンバーは、それぞれが思ったことを口に出し合っていると……

 

 

 

 

「そうですよ~、お祭りが行われている時は煩わしいことは忘れるものですよ~♪」

 

 

 

 μ’sメンバーの他にも、もう1人この一行についてきた、島田 洋子が絵里の言葉に付け加えるかのように希に話をしていた。

 

 

 

 また、洋子はこんなことを提案してきた。

 

 

「それにですよ、みなさん。 蒼一さんたちの演目までは、かなり時間があるようですし、時間になるまでの間は各自でいろいろなところに行くというのはどうでしょうか?」

 

「いいね、洋子ちゃん!! 私はそれに賛成だよ!!」

「うん! それじゃあ、私は穂乃果ちゃんと一緒にいろいろなところに行ってみたいよ!」

「では、私もお供しますよ。 穂乃果たちと一緒であれば安心できますので」

「じゃあ、凛はかよちんと真姫ちゃんと一緒に行くにゃぁ!」

「それはいい考えだね! 凛ちゃん、真姫ちゃん、一緒に行こうね♪」

「べ、別に、私はいいけど……」

「ふっふっふ、私も花陽たちと一緒に行こうかしら? 真姫ちゃんが寂しそうだし♪」

「さ、寂しくなんかないわよ!!!」

「私は希とどこか見に行きましょ」

「ええなぁ~♪ えりちがウチをしっかりとエスコートしくれるんなら嬉しいんやけどなぁ♪」

「もう、からかわないの」

 

 

 

 洋子が提案したことに全員が一致したようで、これからの時間はグループごとに分かれていろいろな場所に行き探索をしていくことが決まったようだ。

 

 

 

「あれ? 洋子ちゃんはどうするの?」

「私? 私はですね……………先に、会場に行って待ってていますよ…………」

 

 

 

 

 その時の洋子の顔は、目を光らせながらニタリと笑みをこぼしていたようで、それを見た海未は、また何かを企んでいるようです、と思っていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

[ 大学内・更衣室 ]

 

 

 

 

『どうも、ありがとうございましたぁぁぁぁ!!!!!!!!!』

 

 

 

 

 広場の方からライブを行っていたバンドの人たちの声がスピーカーを通して、この部屋にまで聞こえてきた。 その彼らの後に、ようやく俺たちのサークルの出番となるのだ。

 

 

 今は、その準備に取り掛かっている途中…………

 

 

 この部屋にいるのは、俺と明弘の2人だけだ。 他のメンバーたちは早々と着替えを終えてステージ裏やら、控室やらへと向かっていったのだった。

 

 

 そして、俺たちは着替えの間っ最中なのだ。

 

 

「しっかし、これを着るのは本当に久しぶりだよなぁ~。 なあ、兄弟?」

「まったくだ、最後に着たのはいつぐらいだったっけな?」

「ん~………1年前くらいのあそこでのコスプレイベント以来じゃね?」

「そっかぁ……もう1年も経つのかぁ…………割と短いもんなんだな」

「この1年はいろいろあったからよ、短く感じているだけさ」

「そんなもんか………」

「ああ、そんなもんよ…………」

 

 

 

 お互いの物置から取り出した懐かしい衣装に身を包ませようと袖を通し始める。

 

 

 俺たちの衣装は和製であるのだが、正確に言えばそれは間違いと言えるだろう。 なぜなら、俺の衣装には、半袖の黒のトップスと長ズボン、長めのベルトやブーツまである。 その上に、青調の波模様が入った羽織りを着るのだ。 和のテイストなんてこの羽織り以外に何もないのだ。

 

 

 明弘なんてもっとすごいぞ。 黒のベストとズボンにブーツがあり、首にはチョーカーを巻き付け、ロングコートを羽織っているのだ。 そのコートの下に着物を見に付けているので、何と言いうか……どちらかと言えば、洋モノだと言えなくもないのだ。

 

 

 だがしかし、これが和製であると豪語されるのは、これらの衣装の元ネタが日本の幕末期を舞台にしたものであり、その主人公が見に付けていたのだから和製であるとオタクたち、特に、腐女子と呼ばれる者たちから言われる所以なのだ。

 

 

 

 うむむ……日本って難しい国だな……………

 

 

 

 

 

 

「よし、これで終わりだ」

 

 

 衣装に袖を通し終えると、あらためて鏡の前に立って自分の姿を確認していた。360°回転しながらその衣装の出来栄えの良さに惚れぼれしながら、まるで、そのキャラになりきったような気持ちにもなってきた。

 

 

 

「おいおい、兄弟。 コイツを忘れてるぜ?」

 

 

 明弘が、ほい、と手渡してきたのは、銀髪の癖っ毛が立っているウィッグだ。 そうだった、これが無くては、ただ衣装だけを着ただけの男でしかなくなってしまうじゃないか。 このチャームポイントがあってからこそ、このキャラになれるのだ。

 

 

 

「……うっし、これでいいかな?」

 

 

 自分の黒い髪の毛がはみ出てこないように、ウィッグを慎重に頭に付けて完成させる。

 

 

 

「ふむ……問題はなさそうだぜ!」

「そのようだな………明弘の状態もいいようだな」

「そうか? それならよかったぜ♪」

 

 

 にひひっと笑みをこぼしだす明弘を見ながら、お互いの衣装にほころびが存在しないかを確認し合った。 何もないということで、俺たちは最後の仕上げとして、自分たちが持ってきた扇を服とベルトの間に挟み込んだ。 本来ならば、お互いに刀を帯刀させているのだが、それではまったく踊れないので却下である。 その代わりに、こうして扇を脇差のように挿しておくことで侍である雰囲気を残しているのだ。

 

 

 

 

「………そろそろ時間だな………」

「ああ、そんじゃ行くとしますか………」

 

 

 

 俺たちは、必要なものだけを手に取ってからこの場所に別れを告げて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

[ 大学内・広場 ]

 

 

 

「穂乃果! 早く行きますよ!!」

「穂乃果ちゃん! 早くしないと始まっちゃうよ!!!」

 

「うわぁぁぁん!! ちょっと待ってよぉ~!!!」

 

 

 

 サークル『充電機関』の演目が始まるまで、あと10分を切ったところであるにもかかわらず、穂乃果たちはギリギリまで学内を見回っていたために現地に辿り着くのに時間がかかってしまっていたのだった。 海未が穂乃果たちの先頭に立って道を切り開いているものの、人の大流に巻き込まれて思うように前に進めていなかった。

 

 

 

 

 

 

 そして、ようやくたどり着いた時には、開演時間の3分を切っていたところだった。 危うく遅れるところだった彼女たちは、先に来ていたメンバーたちに誘導されて席に座ったのだった。

 

 

 

 

「ふぅ……やっと着いたぁ………あついぃ…………」

「はぁ……何やってたのよ、開演10分前までには待機しておくことが当たり前なのに……」

「ごめん、にこちゃん。 ちょっと、いろいろなものを見てて………」

「何よそれ? アンタたちねぇ、蒼一と明弘が躍るのよ? アンタたち私たちよりもずっと蒼一たちと一緒にいる幼馴染なんだから、ちゃんとしないといけないでしょ!」

 

「「「ご、ごめんなさい………」」」

 

「まあまあ、にこっち。 そんなに怒らんでもええやろ?」

「そうよ、にこ。 穂乃果たちはちゃんと来ることができたんだから大目に見てあげなさいよ」

「むぅ~……希たちがそういうのなら仕方ないわね………」

 

 

 

 

 穂乃果たちの態度に何か思うところがあったのだろう、にこは怒りをあらわにして当たろうとしたが、希と絵里がなだめたことでこの場は収まった。

 

 

 

 

「そういうにこさんは、誰よりも早くここに辿りついていましたねぇ~。 いやぁ~本当に早かったですねぇ~」

「何よ、洋子。 何か文句でもあるのかしら?」

「いいえ~、別に何でもないのですが~……そんなに早く来ても蒼一さんには会えませんよ?」

「んな!? ば、ば、ばっかじゃないのぉ!! わ、わ、私がそんな気持ちでここに来ていると思っているのかしら!?」

「にこっち~動揺し過ぎやで~♪」

「にこちゃん、どうようしてるにゃぁ~♪」

「う、うるさいわよ、希! 凛!」

 

 

 

 

 洋子の機転によりにこを茶化したことで、暗くなった雰囲気を和らげさせることができた。 にこは、顔を赤く染めつつ前に向き直して始まるのを待っていた。 他のメンバーたちも同じように視線を目の前のステージに注いだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、開演をお知らせするブザーが広場中に鳴り響くと、それを待ち望んでいた100人以上にも及ぶ観客たちの中から歓声が湧きあがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

[ ステージ裏 ]

 

 

 

 

『~~~~♪~~~~~♪~~~~~♪』

 

 

 

 

 ステージ上に流れる音楽と観客席から湧き上がる歓声が裏方にいる俺の耳によく響いた。 また、1曲終わるごとに会場の熱気が段々と高まっていることも、歓喜によって起こる地響きが足を通してその盛り上がり様を伝えてくれる。

 

 

 

 一方、こちら裏方の方も慌ただしい感じがある。 さっきから、ここのスタッフたちとサークルメンバーの行き交いが激しくなっている。 次から次へと入れ替わるメンバーと楽曲や舞台照明など、計画→準備→実行の3手順が俺の横で、ものすごい速さで行われているのだ。

 

 

 

 俺たちも何か手伝う必要があるのだろうか?そう思い柴田先輩に尋ねてみたのだが、キミたちはキミたちのことを考えておけばいいんだよ。 ここは運営側である俺たちがしっかりしないといけないからね!と言われて待機させられたままだ。 けれど、出番まで何もやることが無いと暇なのだが………どう時間をつぶせばいいのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや! 御二方、もうこっちに来ていたのでござるか! ちょうどよかったでござる!!」

 

 

 

 さっきまで、文化祭運営本部まで足を運んでいた沙織さんが、俺らの姿を見つけるとすぐにこちらに向かって走ってきた。 何か問題でも生じたのだろうか?

 

 

 

 

「いやぁ~、大本営の方からちょいとばかし指摘を受けましてですね………御二方が躍る楽曲の使用権がですね下りなかったのでござるよ」

「「んな?! 本当ですか!!?」」

「そうなんでござるよ……事前の報告では問題ないと言われていたのですが、今になって、急に許可できないと言われたのでござるよ…………」

「そ、それで! 俺たちはどうすれば!?」

「今、代わりの音源を探しているのでござるが、どうもいいものが見つからないのでござるよ……」

「それじゃあ、間に合わなくなっちゃいますよ!!!」

 

 

 

 くっ……! なんてことだ………本番直前になってから問題が発生するだなんて、どうにかしているぜ……!! 運営めぇ……しっかり働いてくれよ……観客に最高のサービスを提供するのが俺たちの役割だというのに、大元がだめじゃあ、話にならねぇぞ……!!!

 

 

 

 

「俺たちの出番まで、あと1、2曲分しかないっすよ!! ヤバイでっせ!!」

「うぐぐ………ギリギリまで探すしかないでござるが………もしかしたら、()()()かもしれないでござるよ………?」

「そんなっ!?」

 

 

 沙織さんの言う“()()()”という言葉は、直訳すれば、プログラムから俺たちの部分だけ抜き取って、そのまま最後まで進めていくこと………つまりは、俺たちはステージに立てないということなのだ!

 

 

 

 ぐっ………!! 奥歯を力一杯噛みしめて、湧き上がってくる悔しい気持ちを抑えつけていた。 ここまでやってきたというのに、中途半端な状態で終わらせたくは無かった。 今回のステージは、俺にとって重要な意味を持つものになるのだと考えている………だが、その機会も失われてしまうとなれば、俺はこの先どうすればいいのかがわからなかった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや! まだ、希望はあるぜ!!!」

 

 

 

 明弘は、ハッと何かを思いついたかのように大きな声で叫んだ。

 

 

 

「沙織さん! 運営がダメだって言ったのは、()()()()()()? それとも、()()()()()()()()()?」

「そうでござるなぁ………確か、()()()()の方だったでござるよ?」

「よっし!! ちょいと待ってくだせぇ!!!」

 

 

 

 

 何かの確証を得た明弘は、ステージ裏から外に向かって出て行き、すぐに戻ってきた。 戻ってきた明弘の手には、CDとミュージックプレーヤーが握られていた。

 

 

 

 

「沙織さん、ボーカル部分が使えないという話なら、最初っから曲だけのモノを流せばいいだけの話なんですよ! このCDの中に、俺たちが踊る曲のoff vocal版が入っているんで、これを基にして流してくだせぇ!!」

「なるほど! それなら誰にも文句は言われますまい! ………しかし、そうなると歌はどうするでござるか?」

「御心配なく、ちゃんと考えていますよ………ところで、沙織さん」

「何でござるか?」

「ここに、()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「「!!!!」」

 

 

 

 

 明弘が言い放った言葉の意味を理解した俺と沙織さんはすぐに準備に取り掛かった。 俺はスマホで検索をかけた歌詞を読み始め、沙織さんは俺たち2人分のヘッドセットの用意をしてくれた。

 

 

 

 俺たちは早速、それを頭に付けた。

 

 

 

 

「どうでござるか?」

「大丈夫です、ピッタリ合ってますよ」

「同じくでさぁ!」

 

 

 

 マイクをできるだけ口元に近づけ、激しい動きを行ってもぶれることが無いようにきちんと固定処理を施した。 ワイヤレスの電源を入れて、音がちゃんと出るようになっているのかを音響の人と確認すると、さらに沙織さんに進言を行った。

 

 

 

 

「沙織さん、俺たちに少しだけ時間をください。 その代わり、2曲続けて踊るようにしますのでお願いします!!」

「うむ、こちらの不手際ゆえに生じたこと……心得たでござる! しかし、連続でやるのは辛くは無いでござるか?」

「いいえ、問題ないですよ! そういうのは慣れていますんで!」

「そうでござるか………あぁ、そうだったでござるな。 それでは、そうするということで調整して来るでござるよ!」

 

 

 

 

 そう言うと、沙織さんは柴田先輩のところに行き、内容変更のことを話し始めた。 柴田先輩は快く了承してくれて、早速、プログラムの変更を行い俺たちの後に踊るはずだったメンバーを先に踊らせるように取り計らってくれた。

 

 

 

 

 

 

 俺たちは、その間に待機して落ち続けていることに………

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、お前よくあんな機転を働かせたな」

「へへっ! 折角仕上げてきたのに、こんなヘッポコなケチをつけられて黙って引き下がるわけにはいかねぇよ! …………それによ」

「ん?」

「俺は……蒼一とまたステージに立って歌い踊ることができることを楽しみにしていたんだぜ? どっちかと言えば、こっちの方の思いが強いけどさ」

「明弘………」

「これは俺たちに与えられたいい機会だ……! ここで出来なければもう次はねぇんだ! お前だってわかってんだろう?」

「………何となく、だったがな。 だが、こうしてお前に言われてみるとそうかもしれないな。 ここでやらなければ次の機会はいつになるのか分かったもんじゃない………今ここで与えられた機会を十分に生かさないとな!」

「そうだぜ、生血を一滴すら残さない気持ちで取りかかるようにしないといけないな……!」

「フッ……ブラックな言い回しで例えるんじゃないよ」

「だが、わかりやすい例えだろう?」

「違いないな………」

 

 

 

 お互いの顔を見合わせると、ぎこちなくも見えないような笑いをし合った。

 

 

 明弘は、この時になるまでずっと待っていてくれていた。 俺のわがままで始めて、俺のわがままで止めてしまっていたこの活動が再開することを待ち続けてくれていたのだ。

 

 

 

 俺は………このパフォーマンスで、まず初めに明弘に伝えなくちゃいけないんだ。

 

 

 

 俺自身は大丈夫であること―――――

 

 

 

 この半年の間、迷惑をかけてしまったこと―――――

 

 

 

 そして――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――“ありがとう”という感謝の気持ちを―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ出番ですよ、宗方殿、滝殿」

 

 

 

 

 沙織さんに呼ばれて、俺たちはステージ裾に足を運んだ。 ステージ上は観客からの熱気によって炎のようにヒートアップしていた。 この中で俺たちは踊るのかと考えると、胸が高まるばかりだった。

 

 

 

 

「そう言えば、御二方はステージ上では、なんとお呼びすればよろしいのでしょうか?」

「そうですね……自分が今なっているキャラの名前でいいですよ」

「問題ねぇな、即席であだ名なんて考えられないもんな」

「わかりました! では、そのようにお呼びしますね♪………それでは、出番ですよ!!」

 

 

 

 

 俺たちの前に披露していたメンバーがこちらに戻ってきた。 それと入れ替わるように、俺たちはステージ上へと続く階段をのぼりはじめた。

 

 

 

 

 

 

「さあ、銀時! ここにいるヤツらに見せつけてやろうぜ!!!」

「ああ、トシ! 最高の10分間にしよう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

[ 大学内広場・ライブ会場 ]

 

 

 

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

 

 

 

 観客たちのボルテージは最高値に到達しようとしていた。

 

 

 充電機関メンバーがこれまでに踊り、披露した数々の曲に、目と耳、手と足、口までの全身全神経を使って熱狂していた。 ここに集まっている大半が、ここの学生や地元からの若者たちであふれ返っていた。 もちろん、その中には、音ノ木坂のμ’sメンバーの姿もあった。

 

 

 

 ある者は、サイリュームやタオルを振り回してコールを送ったり――――

 

 

 ある者は、それらの踊りや楽曲に見とれ、聴き惚れていたり――――――

 

 

 ある者は、自分たちのライブに取り組んでみたいことを見つけようとしていたり――――――

 

 

 見方は、千差万別であった。

 

 

 

 だが、そんな彼女たちの目的はただ一つ……蒼一と明弘が披露してくれるものを見ること。 これに関しては、彼女たちの思いは一致していた。 自分たちにどんなものを見せて感動を与えてくれるのか、彼女たちは2人の登場を今か今かと待ち望んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでは!!! 次のメンバーは………我が充電機関が誇る期待の新星の登場だぁぁぁ!!!江戸に突如と現れた天人(あまんと)に立ち向かい白夜叉と恐れられた幕末の志士!! 坂田 銀時!!!! そして、同じく幕末動乱の中、新選組の鬼の副長として幕府に忠義を尽くし、最後は1人の女のために生きた薄楼鬼!! 土方 歳三!!!!』

 

 

 

 

 紹介と同時にステージにのぼってきたのは、紛れもない『銀魂』の『坂田 銀時』と『薄桜鬼』の『土方歳三』の姿だった。 ステージの真ん中に、凛と立つ2人の姿を見た観客たちから歓喜の声が立ち上る。 特に、女性からの声援が激しく、男性に勝るほどの力強さを感じられた。

 

 

 

 

 

 

「あっ……! あれって…………!!!」

 

「もしかして……………!!!」

 

「蒼一………!! 明弘…………!!!」

 

 

 

 

 

 2人の姿を見て、ハッと気が付いた穂乃果・ことり・海未は、目を真ん丸にして見開き、それがいつも見ている彼らとは違って見えたことに衝撃を受けていた。 他のメンバーたちも、彼らが蒼一たちであることに気が付くと、穂乃果たちに続くように同じようなリアクションと衝撃を受けていたのだった。

 

 

 

 

 

『それでは、『番凩』、『Bad Apple!!』2曲続けてお願いします!!!!』

 

 

 

 

 

 紹介が終わると、辺り一帯のあらゆる音がピタリと止み、数秒間の静寂が覆った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(~~~~~♪~~~~~~~~♪)

 

 

 

 和琴などの和楽器がスピーカーから流れ出てくると、蒼一たちは動きを見せ始める。

 

 

 

 お互いの右手が腰に身に付けていた閉じた扇に手を掛け、抜き取る。 その動きに彼らの衣装が合わさることで、さながら、侍が抜刀するかのように思える。 抜き取った扇を右側に移すと、扇を開いて歌い始めた。

 

 

 

 

 

番凩(つがいこがらし)

 

 

〔かわいた木枯らし 〖そよそよと〗 〕

〖かわいた木の葉は 〔ひらひらと〕〗

〔相見える日を 〖待ちながら 刻を数え歩く〗〕

(つづ)る言の葉に 彩られ〖紅く色めき 刹那に踊る 紅葉一枚 手の平に滑り 語るは…〗〕

 

〔焼けた故郷に 別れを告げて 木の葉の手に引かれ 走り去る

未だ見ぬ未来への 不安など 感じる(いとま)など ありもせず〕

 

 

(~~~~~~♪~~~~~~~♪)

 

 

 女性パートを歌い始める明弘の声は、決して女性のような高い声ではないが、口から出てくる言葉の一つ一つがやわらかく、まるで歌詞に出るそよ風のような歌声で観客の心を安らかにさせる。

 また、その動きも指の一本一本までもが風のようになめらかで、そのまま、すぅーっとどこかへ吹き飛んでしまうかのような繊細さを感じさせる。 そこには、常に戦いに身を投じてきた鬼の副長の荒々しさが影も形もなく、弱々しくも美しく懸命に生きようとする女性の艶姿(あですがた)が垣間見えた。

 

 

 一方、男性パートを歌う蒼一は、ブレスのかかった渋い声で会場中を響かせた。 その強く勇ましいその声が聴く者たちの耳に闘う志士の姿を印象付けさせた。 動けば、明弘の手弱女(たをやめ)振りとは対照的な益荒男(ますらを)振りの猛々しさを肉体から繰り出す一挙一動と引き締まる表情がすべてを物語ろうとしている。 何かを護ろうと必死に敵に喰らい付いてきた白夜叉を彷彿させんとしているようであった。

 

 

 

 

 

 そして、1番から2番へと挿しかかる時、曲が一気に転調する―――――――

 

 

 

(~~~~~~♪~~~~~~~~♪)

 

 

 

〖かわいた木の葉は 〔ひらひらと〕〗

〔かわいた木枯らし 〖そよそよと〗〕

〖繋いだ手と手を 〔離さずに 刻を数え翔ける〕〗

〖普くヒトの命 背負い〔その小さき手で 何を紡ぐ ほんの微かな 綻びに 死ぬるこの世で〕〗

 

〖信ずる道を ただひたすらに 歩むお前の 支えとならん

(くれない)の剣を 携えて この身 木の葉と 吹かれて行こう〗

 

 

 

(~~~~~~♪~~~~~~~♪)

 

 

 

 

 1番のゆったりとした風が流れるような遅めのテンポから、相方の手を取り、走り去ろうとする早めのテンポへと転調し始める2番へと変わる。 テンポも変わると、踊りもあわせるように早くなる。 優雅で軽やかな動きをする明弘の踊りから、大胆かつ勇ましい動きをする蒼一の踊りが花開くように目立つ。

 扇を一振り二振りとはらう仕草は鋭い刃で斬り裂く姿に類似しているようだった。

 

 

 

 

 曲の最後に差し掛かると、明弘の舞がより一層、優雅さを振りまく――――――――

 

 

 

(~~~~~~♪~~~~~~~♪)

 

 

 

 

(そよ)ぐ 風となりて 数多(あまた)の 癒しとなり

生きとし生ける この世の者への 追い風とならん〕

 

〔〖紅、 黄金に 彩られ 揺れる 樹々たち 横切りながら 枯れ葉 共に 道連れに 翔け抜ける 木の葉と つがゐこがらし〗〕

 

(こす)れさざめく 木の葉と共に〕

〖翔ける 一陣の風と共に〗

〔〖留まる事なく (ひた)走る かわいた唄と つがゐこがらし〗〕

 

 

(~~~~~~♪~~~~~~~♪)

 

 

 

 早く走ってきた曲調も、段々とゆっくりと治まってくる。 走り抜いた2人の若人の顔には安堵の表情が見られた。 観客は2人が踊る間、何一つ話すことが無かった……いや、話すこと自体を忘れてしまっていたかのようだった。 先程までの出演者たちへと送っていたコールとエールは、2人が歌い踊り始めた頃には、すでに鳴り止んでいた。 その異常なまでの静寂の中で2人は舞い踊った。 観客はその姿に魅了され、それまで意識していなかった曲の世界へ心身共にいざなわれてしまっていた。

 

 

 

(故郷)を追われて走りまわる2人の男女――――

 

絶望と言う現実に打ちひしがれ力が抜け落ちる女――――――――

 

男は女の手を引き、あまねくものより護らんと刃を見せる――――――

 

走り、走り抜けようとも自分たちはどこへ向かおうとしているのか分からない―――――――

 

ただ、己が信じた道に突き進もうとする決意を示す――――――――

 

そこに何が待ち受けようとも、2人は手を離さず、走りだしていく―――――――――

 

 

 

 そんな一組の男女が人生の荒波にもまれながらも必死に生きて行こうとする物語に目を釘付けにして見守っていた。 その姿に惹かれたのは、この会場に集まった者たちだけではなかった。 ここを通り抜けようとした人々もその姿を一目見ると誰もが立ち止まり、最後まで見続けていたのだ。 当然のことながら、そこには大きな人の塊が出来、行き交おうとする人々の足を邪魔させるものであった。 だが、そんなこともお構いなしだった。 一瞬一瞬に、鋭く研ぎ澄ませてくる2人の姿に惹かれ目を奪われることに何の問題があっただろうか。 人々は心を震わせながらもその結末を喰らい付くように見続けていたのだった。

 

 

 曲調がゆっくりとゆっくりと落ち着き、最後の三味線の1弦の響きだけが木魂した後、会場が静まり返った。

 

 

 

 蒼一と明弘が扇をパチッと閉じ終えた微かな音が、観客席の前列に座る者たちの耳に入ると、あたかも、誰かが拍手をし始めたのだと思いこみ、それに続いて拍手をし始める。 そこから、中列、後列、立ちながらの見物客へと拍手が連鎖を起こして会場中にまたあの熱狂を呼び起こした。 だが、それは先程の比ではないほどの大きさだ。 地面だけではなく、空をも震わせるほどの熱い声援が飛び交い続ける。

 

 

 

 

 しかし、当の2人は何の反応も示すことなく、さっきの曲が終わった時と同じポーズをしたまま動かなかった。 その様子を見ている観客からは不思議と疑問に思える光景だったが、次の瞬間、それらはすべて吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

(~~~~♪~~~~~♪)

 

 

 

 スピーカーから空気を振動させるような鈍いベース音が響くと、その音に効き慣れている観客から歓喜の声が湧きあがる。 東方ボーカルの中で、もっとも有名な楽曲で、その踊りも有名中の有名なものだからだ。 観客らは体を揺らし、手を鳴らしてビートを刻みつける。

 

 

 

 楽曲と観客からのビートが重なり合わさった時、2人は動き始める!

 

 

 

 イナズマのような斬り裂く電子音が鳴りだすと、2人は激しく踊り始める。 複雑に動き続ける足のタップと、それに合わせて稼働する腕と上半身。 どれも素早い身のこなしで躍動する。 そこに2人の息の合った同じ動きが加わることで、一種の美しさを表しているようだった。 観客らは喜びがあふれる表情で手を鳴らし続けた。

 

 

 

 

 そして、2人の口が開く―――――――!!

 

 

 

 

 

『Bad Apple!!』

 

 

〔〖流れてく 時の中ででも 気だるさが ほらグルグル廻って

私から 離れる心も 見えないわ そう知らない?〗〕

〖自分から 動くこともなく 時の隙間に 流され続けて〗

〔知らないわ 周りのことなど 私は私 それだけ?〕

 

〔〖夢見てる? なにも見てない? 語るも無駄な 自分の言葉?

悲しむなんて 疲れるだけよ〗〔何も感じず 過ごせばいいの

戸惑う言葉 与えられても 自分の心 ただ上の空〗〕

〔もし私から〕〖動くのならば〗〔〖すべて変えるのなら〗〕〔黒にする〕

 

〔〖こんな自分に 未来はあるの? こんな世界に 私はいるの?

今切ないの? 今悲しいの? 自分の事も わからないまま

歩むことさえ 疲れるだけよ 人のことなど 知りもしないわ〗〕

 〖こんな私も〗〔変われるのなら〕〔〖もし変われるのなら〗〕〖白になる?〗

 

 

 

(~~~~~♪~~~~~~~~♪)

 

 

 

 

 一糸乱れぬ動きで躍動し続ける2人の姿に会場中の観客らの視線を釘づけにさせる。 ここまで、ずっと同じ動きを見せ続ける2人は激しく動きながらも息を乱すことなく歌い続けている。 普通ならば、踊ることだけに集中してしまいがちになるのが定石であると、ここに集まる多くの観客らは考えていただろうが、この2人を見てその定石は容易く崩れ落ちてしまった。 その意外性も含めて、観客らは彼らに熱い視線を送り続けるのだ。

 

 

 

〔〖流れてく 時の中ででも 気だるさが ほらグルグル廻って

私から 離れる心も 見えないわ そう知らない?〗〕

〖自分から 動くこともなく 時の隙間に 流され続けて〗

〔知らないわ 周りのことなど 私は私 それだけ?〕

 

〔〖夢見てる? なにも見てない? 語るも無駄な 自分の言葉?

悲しむなんて 疲れるだけよ〗〔何も感じず 過ごせばいいの

戸惑う言葉 与えられても 自分の心 ただ上の空〗〕

〔もし私から〕〖動くのならば〗〔〖すべて変えるのなら〗〕〔黒にする〕

 

〔〖無駄な時間に 未来はあるの? こんな所に 私は居るの?

私のことを 言いたいならば 言葉にするのなら 「ろくでなし」

こんな所に 私はいるの? こんな時間に 私はいるの?〗〕

 〖こんな私も〗〔変われるのなら〕〔〖もし変われるのなら〗〕〖白になる?〗

 

〔〖今夢見てる? なにも見てない? 語るも無駄な 自分の言葉?

悲しむなんて 疲れるだけよ〗〔何も感じず 過ごせばいいの

戸惑う言葉 与えられても 自分の心 ただ上の空〗〕

〔もし私から〕〖動くのならば〗〔〖すべて変えるのなら〗〕〔黒にする〕

 

〔〖動くのならば 動くのならば すべて壊すわ すべて壊すわ

悲しむならば 悲しむならば 私の心 白く変われる?

 

貴方の事も 私のことも 全ての事も まだ知らないの

重い目蓋を 開けたのならば すべて壊すのなら 黒になれ!!!〗〕

 

 

 

(~~~~~♪~~~~~~♪)

 

 

 

 2番以降からは、最後まで一気に走り抜けるように歌い踊り尽くした。

 振るう腕は、その指先にまで神経を研ぎ澄ませ、滑らかで素早い動きを体現させていた。 さらに、彼らはこの本番の真っ最中に、すでに完成されていた踊りに一層の磨きをかけて、さらなる高みへと望もうとした。 ただ、2人の絶え間なき努力とその執着心に気付くことができた者は誰1人いないだろう。 また、彼らの過去を知る者もいないだろう………

 

 

 観客らは、全体を通して見た2人のパフォーマンスに心を打たれ、彼らが見せた世界に引き込まれてしまったかのような気分に浸されていた。 曲が鳴り終わった頃に、ようやく現実世界へと引き戻されると、どこからともなく張り裂けるような拍手と会場全体を大きく揺るがす歓声が天高く轟いた。

 

 

 轟音としか言いようのない歓声をシャワーのように浴びながら、2人はステージから下りていった。 ステージに誰もいなくなった状態でも鳴り止まず、しばらくは治まるまで次のダンスを披露させることはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

[ ステージ裏 ]

 

 

 

『おつかれぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!』

 

 

 ステージ裏へと戻ってきた俺たちは、そこで待ち構えていたサークルメンバーたちからの温かい出迎えられていた。 男性メンバーからは、よくやった!!と声をかけながら肩や背中を叩いてくれたり、女性メンバーからは、すっごくよかったよ!!などと言って握手を求められていた。

 

 

 それらすべてを振り切って、自分たちの控え所に戻ることができたのはしばらく経った後だ。

 

 

 ステージ上で踊った時に溜まった疲れよりも、メンバーにもみくちゃにされた時の方がよっぽど疲れが溜まってしまい、イスに座ると、もうグッタリした状態となっていた。 女性からの対応に嬉しく反応していた明弘ですら、ぐでたま状態なのだ。 もう溜まったもんじゃなかった。

 

 

 

 そんな疲れ切った俺に、明弘は語りかけた。

 

 

 

「………やりきったなぁ、兄弟…………」

「ああ…………」

「……やっぱ、ステージで踊るのは楽しいなぁ………」

「ああ…………」

「……なあ………兄弟………」

「………ん?」

「また………やろうぜ………」

 

 

「………ふっ……わかった、約束しよう…………」

 

 

 

 

 

 俺と明弘は互いに拳を突き出し、ぶつけ合った――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちの長くも短い祭りは、一旦、閉じることとなった。

 

 

 

 

 

(次回へ続く)

 

 




どーも、うp主です。


前話から結構空いちゃったような気がしますが、みなさんにとっては問題ないのだろうと思います。私は問題ですが………!!

ん?これまでの時間、何をやっていたのかって?


はっはっは!!それはだね……………








番凩とBad Appleを歌い踊ってました…………



ひょ、表現するには実際にやってみないといけなかったからね!!
そ、それに、両方とも歌い踊ったことのあるものだったし、久しぶりだけどできたもん!!
よかったと思ってるもん!!



………次回からは真面目に執筆します。




とまあ、そんな感じの『大学乱舞!!』第5話でした。

今回は相当な時間を使って表現に力を入れてみることにしました。これも練習だもんね!(笑)
でも、また1万字を越えるようなことになっちゃって………
ある意味、3話分の文字数だよこれ! まったく、読者にやさしくないな!! 特に、スマホの人とか!


まあ………次回はそんなに多くないとは思います。

ちなみに、次回でこの編の最終話としますので、さあ、いろいろと楽しくなるぞ~♪


それに、この編が終わっても新編がすぐそこにまで迫っているという現実。


これやいかに!!!?



次回もよろしくお願いします。



今回の曲は、

作中にも出てきましたこれらの楽曲、

仕事してP/『番凩』

nomico/『Bad Apple!! feat.nomico』





【ツイッターで、いろいろとつぶやいてます】

→@RIDENp




【宣伝】
ここで宣伝をさせていただきます。

あと、一カ月ほどで終わる2016年………
そんな年末に、ライバーの皆さんで集まってみませんか?

2016年 12月28日(水)東京の亀戸にて、

今年の3/31、4/1に行われた

『μ‘s FAINALLOVELIVE』




その上映会を行うとのことです!!

参加費は、無料!!

詳細は↓のURLをチェックしてみてください。

[http://twipla.jp/events/224481]


もちろん、うp主も参加しますので、気になる方はどうぞ。

以上!!

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