蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第68話


お髭のダンディはお好きですか?

【プロローグ】

 

 

 

「そういやぁ凛よ」

「ん? 明弘さんどうかしたんだにゃ?」

「そのさ………“さん”付けは禁止にします!!」

「えっ!? だ、ダメだったかなぁ………?」

「いや、そういうわけじゃねぇんだよ。 俺は『凛』のことを『凛』って呼んでいるからさ、凛も俺のことをもっとフレンドリーに呼んでもらいてぇわけだよ」

「そっかぁ~! その方が親しく感じられるね!」

「だろぉ? それじゃあさ、頼むぜ~?」

「わかったにゃ! それじゃあ…………弘くん!!」

「おお~! なんかいい感じになってきたじゃないの!!」

「えへへ♪ 褒められちゃうと、なんだか照れちゃうにゃ~♪」

「へっへっへ、照れろ~もっと照れて、も~っとかわいい顔をみせろ~♪」

「にゃにゃ!? も、もう……からかわないでほしいにゃぁ……////////」

「よっしゃあー!!! ありがとうございます!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ 電柱の陰 ]

 

 

蒼「お前ら………朝っぱらから外で何やっているんだ…………」

花「凛ちゃんがあんな顔をするの、私初めて見たかも…………」

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

[ 大学内 ]

 

 

 

「よぉ~し、今日もこんなくだらねぇ教授の演説も終わったことだしよ、さっさと行こうぜ!」

「お前なぁ………そんなことを今日中の前で言ってみろ、単位を落とされるぞ………」

「へっへっへ、あんなヤツらの耳に俺の声が届くかってんだ! 大丈夫大丈夫、問題ねぇさ」

「はぁ………それならいいんだけどよ………」

 

 

 

 5月もあともう少しで終わりを告げようとする中、俺たちは来るべき定期考査に向けて勉強を行っているのだが、明弘は安定して講義中に爆睡!! もうすでに、いろいろな教授たちから注視されていて、入学してからたった2ヶ月でコイツの進級が危うい状態になりそうだと言われている。

 高校までだったならば、こんな学生がいたら即刻叩き起こされるか、成績に劣等生の烙印が押されてしまうところなのだが、この大学においては、定期考査で得た成績がものを言うらしく、未だに赤点を採っていないコイツに教授たちは手を出せないでいるのだ。 逆に言えば、赤点を採ってしまえば、いろいろと言うことが出来るらしいのだが………

 

 

 その阻止点に、俺のバックアップ(必勝ノート)が存在するためにコイツは安心していやがるんだ。お灸をすえるために、いっその事、ノートを渡さないということもしてもいいんじゃないか?

 

 

あっ………そうなると練習に影響が……うむむ………難しいことだなぁ…………

 

 

 

 

「んお? なんだ、メールか」

 

 

 スマホのバイブ機能が働いたのか、明弘はそれを取り出して画面をいじり始めた。 揺れ具合でメールだと判断したのか、一体、誰からの連絡なのだろうか?

 

 

「おお! 兄弟! 師匠から連絡が来てるぜ!!」

「謙治さんが!? ちょっと見せてくれ!!」

 

 

 

謙治さん。 本名は、伊達 謙治(だて げんじ)――――

 

 その人は俺の親父の古くからの友達で、個人の音楽スタジオを経営している。 俺は幼い頃から音楽家である母さんの練習に付き合うかたちで遊びに行っていた。 そこにはカラオケ機材も設備されていたので、よく歌を歌い続けていた記憶がある。

 また、謙治さんはレコーディングやミキシングの技術を持っており、その姿に惹かれた明弘が弟子入りして技術を手に入れていた。 それ故、μ’sのこれまでの楽曲のミキシングやリミックスが行えることができたのもそのおかげなのだ。

 

 

 俺たちにとっては、恩師に近い人からの連絡が来たと聞けば、居ても立ってもいられないのだ。 俺は来たメールの内容を覗き込んだ。

 

 

 

 

『室内及び機材を一新したので、よかったら来てみてね~☆

 

P.S.

お茶菓子も用意しておくからね☆』

 

 

 

 もうすぐ、齢50になろうとしているおっさんが書く内容とは思えないほどお茶目な文だが、焦らないでくれ、これが謙治さんなんだよ………

 

 

 ただ、この誘いを断る理由など何一つないのだ。 むしろ、このタイミングで連絡が来てくれたことに感謝したいものだ。 μ’sは9人揃い、ある意味で本格的な活動が始まろうとしていたのだから、ネットにあげる楽曲の収録などを行うのに最適な環境を探していたところだったのだ。 その場所を謙治さんが提供してくれるとなればうれしい限りだ。

 

 

 

「よし! 謙治さんに返信してくれ、『俺たち団体でそっちに行かせてもらいます』ってな」

「なぁ~るほど……よしわかった! そう返信しておくぜ!」

 

 

 早速、明弘はメール本文の作成を行い始め、俺が言ったことを素早く文章に起こして返信したのだった。 すると、すぐにその返事が来て、『OK!』と書かれてあった。

 

 

 

「これで今日の練習場所が決まったな」

「だな。 久々に師匠から技術でも教わりたいものだぜ!」

 

 

 

 俺たちはそれぞれの荷物を手に、すぐさま、穂乃果たちがいる音ノ木坂に向かって駆けだしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………大学の重要な連絡をすっぽかして……………

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

[ 音楽スタジオ前 ]

 

 

『おお~~~!!』

 

 

μ’sの面々は初めて訪れるこの場所に歓声を上げていた。

 

 

そう、この場所は謙治おじさんが経営している『スタジオGenji』だ。

 

 

「ほら、みんな突っ立ってないで中に入るぞ」

 

 

『は、は~い!!』

 

 

 

(キーンカラーン♪)

 

 

 ドアを開いて中に入ると、毎度おなじみの大小それぞれの金属のベルが店内に鳴り響く。 それと一緒に鼻の中に入ってくる木の独特の匂い。 それを嗅いだだけで心が落ち着いてしまうのは、この場所にそれほど愛着が湧いている証拠なのかもしれない。

 

 

『お、おじゃましま~す……』

 

 

 

 あとから入ってくる9人は畏まりながら恐る恐る店内に足を踏み入れている。 見たこともない場所に入っていくのは、やはり気が引けるものなのだろう。 穂乃果たちは、入ってすぐ近くの壁にまとまって立っていたのだった。

 

 

 

 

(コツ……コツ……コツ…)

 

 

 

すると、部屋の奥の方から足音が鳴り響いてきた。

 

 

 

「おやおや、蒼一くんに明弘くんはもう来たというのかい?」

 

 

 

 そう腹から響くような低い声が店内に響かせながらやってきたこの御仁こそ、俺たちの恩師である伊達 謙治さんだ。 その風貌は、50近くのおじさんにピッタリな小じわを口元から目じりにかけて出てきており、常に目を細めて口元を緩ませて微笑んでいる姿は、なんとも人懐っこい雰囲気を出している。 特徴的と言えば、やはり顎に沿ってもみ上げにくっつくまで蓄えた髭だろう。

 ちょうどいい長さに整えられているために、顔を見るだけで、いぶし銀の風格を漂わせてくるのだ。 これがいわゆる大人の漢というものなのだろう……そういうところでは、俺にとって憧れの存在ともいえる。

 

 

 

「謙治さん、お久しぶりです!!」

「師匠ぉぉぉ!!! お久しぶりですぅぅぅ!!!!」

 

「おお!! お前たち、本当に久しぶりじゃないか!!」

 

 

 その姿を見るなり俺たち2人は謙治さんの両手に握手を交わした。 ガッシリと鍛えられたその手を握るだけで、未だに力は衰えず健在であることを実感することができた。

 

 

「それで、キミたちが蒼一くんたちの言っていた団体さんかい?」

「は、はいっ! 私たち音ノ木坂学院でスクールアイドルをやっています、μ’sです! 本日は、よろしくお願いします!!!」

 

『よろしくお願いします!!!』

 

 

穂乃果が代表して挨拶をすると、みんな揃ってお辞儀をして挨拶を行った。

 

 

「はっはっは!! これはまた元気で礼儀正しい女の子たちが来てくれて、おじさんは嬉しいよ! しかし、スクールアイドルかぁ………ウチにも、ここいらのスクールアイドルたちが通い詰めているから、力になれることがあれば何でも聞いてくれても構わないよ?」

「ほ、本当ですか!!」

「ああ、キミたちのような女の子を助けてあげるのも紳士の役目と言うものさ。 そうだろう、蒼一くん?」

「ありゃま、お見通しでしたか………」

「ウチのようなスタジオに足を運んでくれるスクールアイドルというのは、大抵そういうのが多いから勘でわかっちゃうのさ。 これも年の功ってやつかな?」

「さすがです! 師匠!!」

「ただし、ちゃんと利用代金は払ってもらうからね?でも、蒼一くんたちだから安くしてあげるよ」

「あざっす!!」

 

 

 こうした優しい対応を行ってくれるのが、謙治さんのいいところだ。 今、こういうことを言っているけど、普段からいろんな人に対してこうしたサービス対応を行っている。 料金が安くなって維持費が問題にならないか心配になったこともあったのだが、とんでもない、逆にすごい利益を上げているのだから驚きなのだ!

 

 

謙治さん曰く―――

 

『商売も、経営も、そして、計画もすべて良い人間関係によって成功するものだよ』

 

と堂々と言っているのだ。 なんてすごい人なんだろう………

 

 

 

 

 

「それじゃあ、早速、ブース内に入ってもらおうかな」

 

 

 そう言うと、謙治さんはまた、店の奥の方に向かって歩き始めた。 俺たちはその後を追うように歩いていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

[ スタジオGenji内 ]

 

 

 

『うわぁ~~……すご~い………!!』

 

 

廊下を歩いていると、壁にはたくさんの色紙と写真が飾られていた。

 

 

 その中には、現在活躍している芸能人や歌手、アイドルのものから、現役から離れた人までのものだったり、スクールアイドルたちのものまでも一緒に飾られていたのだった。

 

 

 

「す、す、すごいです………!!!」

「な、何よ、この数………ハンパないじゃないの………!!」

 

 

 これらの飾りに誰よりも興味を引いていたのは、にこと花陽の2人だった。 2人揃ってアイドルオタクであるため、こうした数々の飾りは口から手が出るほど欲しくなる逸品であると言えるのだ。

 

 

 

「まだまだ、あるからね。今日だけじゃなくても次回来てくれた時にゆっくり見ておくといいよ」

「「はい!! ありがとうございます!!!!!」」

 

 

 

 目をキラキラと輝かせながら返事をする2人はいつもより生き生きとしていた。 大好きなものに囲まれるからそうなのだろうな………

 

 

 

「さあ、ここがブースになるよ」

 

 

 謙治さんが案内してくれたのは、店の一番奥にある部屋だった。 中に入ってみると、俺たち11人が入ると少し余裕があるくらいの広いスペースがあった。 しかも、ミキシング部屋と収録部屋のそれぞれに同じくらいのスペースがあるので、本当に俺たちにあった場所だと言える。

 

 

「いいですね、これでちょうどいいと思います!」

「そうかい? この店で一番大きな部屋だけど入りきるかどうか心配だったけど……まあ、大丈夫そうで安心したよ」

「お気遣いありがとうございます!」

「いいんだよ、別にそういうことをしなくたって構わないよ。 顧客にあったものを提供することも商売の一環なんだからさ」

 

 

そう言って、にっこりと笑いながら右手で髭をいじり始めた。

 

 

 

「それじゃあ、あとはキミたちに任せるとするよ。 私はお茶菓子の準備をして来るよ」

「はい! ありがとうございます!」

 

 

そう言うと、謙治さんは部屋から出て行ってしまった。

 

 

 

「それじゃあ、早速、練習を始めるとするか! 全員、収録部屋に入ってくれ!」

 

 

俺たちは、この場所での初めての練習を行い始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

「さあ、『スタダ』の次は、『これサム』をやっちゃうぞ! 絵里、希、準備はいいか?」

「いいわよ!」

「ええで♪」

 

 

 現在、μ’sがこれまでに発表してきた楽曲の収録を行っているところで、この2曲に関しては、まだ9人で歌い踊ったことが無かったので、この機会に歌だけは9人一緒に行いたいとして、こうやって収録しているところなのだ。 今のところ、まだ3曲(ボツもあわせれば4曲)しか発表していない俺たちにとって、いつでもライブが行えるように全員が複数の曲を歌えるようにだけはしておきたかった。

 

 

 

「さあ、途中のところを1人ずつ始めるぞ!」

「「は~い!」」

 

 

(~~~~♪~~~~~~~~)

 

 

「―――――――♪」

 

 

 音源を流し始めて、それぞれが歌う個所の収録を行う。 それと同時に、俺の脳内ではライブでの構成を、明弘の中では、どのような振付にするのかをそれぞれ思考していたのだった。

 

 

 

 

 

「―――――よっし! 収録完了だ! 一旦休憩をはさむからみんなこっちに来て」

 

『はぁーい!!』

 

 

 収録部屋からぞろぞろと出てきて、それぞれ設置されてあるソファーに座り込んだり、横になりながら、溜まった疲れを流し始めていた。 実際、およそ30分以上は歌い続けていたのだからそれなりに疲れは溜まってしまうものなのだ。 それを本番と同じように全力でやり続ければ必然である。

 

 

 

 

「おっ! みんな張り切っているじゃないか」

 

 

 そんなちょうどいいタイミングに、謙治さんが飲み物とお茶菓子を持ちながら部屋の中に入ってきた。 甘くて香ばしい香りが部屋中に充満し始め、穂乃果たちの嗅覚を刺激したのだった。

 

 

 

「さあ、みんなよかったら食べてみてくれないかな? おじさんの手作りクッキーだよ」

 

 

「わぁ!! ありがとうございます!!」

「それじゃあ、早速いただきまーす!!」

「穂乃果、意地汚いですよ」

「だってぇ~、モグモグ………んん!! おいし~い!!」

「ホントだわ、このクッキー美味しいわ!!」

 

 

メンバーの反応は良好だ。 確かに、これは美味しい! ホットミルクとあわせて食べたら最高かもしれないな。 ん? この生地の中に入っているのは………

 

 

 

「この味は………あ! 生地の中に紅茶の葉っぱを入れているんですね!」

「良く気が付いたね。そうだよ、香り付けと口に入れた時の触感を残すためにやってみたんだよ」

「へぇ~、今度試してみようかな♪」

「ほぉ、お嬢ちゃんもお菓子作りをするのかい?」

「はい! クッキーやケーキとかを休みの日に作っていたりしますよ♪」

「それはいいことだよ。 それを彼氏さんにあげると喜ばれるよ。 男と言うのは、女の子からの手作りものには結構弱いからねぇ~。 それでハートを掴んでみたらどうかい?」

「いやぁ~ん♪ おじさんったら、彼氏さんにあげるだなんてぇ~~~♪ もう、ことり困っちゃうなぁ~~~♡」(じぃ~~~~………

 

 

こっち見るな、こっち見るな…………

 

 

 

「(そ、そうかぁ………手作りお菓子か……こ、今度試してみようかな………?)」

「(あまり調理とかはしないのですが………ここは無難に肉じゃがで攻めるべきでしょうか……?」」

「(そうね……ここは前菜からデザートまでのロシア料理のフルコースを作ってあげるべきよね……)」

「(う~ん……どうしょうかなぁ~? ウチにピッタリのモノってなんやろなぁ~?)」

「(ふふん、にこのスペシャルな料理で蒼一の度肝を抜かせてあげるわ!!)」

「(やっぱり、日本人はお米ですよね! 私が蒼一にぃのために頑張っておにぎりを作ってあげたら喜ぶのかなぁ?)」

「(手作り………無理ね、私は何もできないわ………)」

「このクッキーおいしいにゃぁ~♪」

 

 

 何だろう………凛を除いて何故かみんなからの視線を感じてしまうのだが………これはいかに? いろいろと自分の身に危険を感じてきたのかもしれないぞ………何故だかわからないが、心が乱れ始めてきたような感じがする。

 

 

 

 

謙治さんが持ってきてくれた紅茶を口に入れて心を落ち着かせることにした。

 

 

 

 

 

 

あ~………これはいい紅茶だ…………

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

「今日はありがとうございました!!」

 

『ありがとうございました!!!!』

 

 

 今日行うべき収録をすべて終わらせ、後はこっちで編集を行ってからネットにあげる準備をしていく作業をしていかなければならない。 これから明弘と一緒に俺ん家で編集しないといけないな。

 

 

あ、そうだそうだ……今後のことについて謙治さんに話しておくべきだな。

 

 

 

「今日はこれで解散と言うことにするぞ。 穂乃果たちは先に帰っておいてくれ、俺たちは謙治さんに話があるからさ」

「うんわかったよ! それじゃあ、蒼君また明日ね!!」

 

 

 

 それぞれに挨拶をしてから店から返したのを見て、俺たちは謙治さんにあらためて話を行い始めた。

 

 

「さて、話と言うのは?」

「今後のμ’sの活動で、ここを何度も使わせていただきたいのですが、定期貸出しの手続きとかどうしましょうか?」

「ああ、そうだったね。 それじゃあ、こっちの書類に書いてある項目にすべてを記入してから話を勧めて行こうかな?」

 

 

そう言われて手渡される書類は、どこの契約書類と変わらないような内容だった。 ただ違うところと言えば、使用団体がスクールアイドルか否かというもの。 これは一体………?

 

 

「そこはどこの学校が関わっているのかを明確にするために行っている部分だよ。 最近は、いろんな人が出入りするようになったから学生たちが安心して使えるようにそうした項目も設けているんだ。 無論、是に記入してくれればサービスはしてあげられるよ」

「わかりました。 では、そのように記入しておきますね」

 

  

 サービスが使えて費用が下がることはこちらとしては嬉しいことだ。 俺は、謙治さんが話してくれた項目から最後の項目までのすべてを記入して、提出した。

謙治さんはそれを手にとって、髭をいじりながら眺めていた。

 

 

「なるほどね。 それじゃあ、まず金額は………このくらいにしておこうかな?」

 

 

「「やっすっ!!!??」」

 

 

 謙治さんが提示してきた金額は破格と言ってよいほどのレベルだった。 通常ならば、この3,4倍はくだらないうと言うのに、この値段はちょっとやり過ぎではないかと思った。 すると、小声でこう話してきた。

 

 

「音ノ木坂は今大変なんだろう? そのために頑張っているあの子たちのためだと思ってくれないか?」

 

 

 どうやらそこまで事情を知っての上でのこの値なのだということがわかった。 俺たちはそんな謙治さんの心遣いを無下にするわけにもいかず、これで承諾することにした。

 

 

 

「はいよ。 それじゃあ、今日から約1年間の利用ということにしておくよ?」

「「はい! お願いします!!!」」

「わかった。 じゃあ、これがここで使う利用カードになるから無くさないでね?」

 

 

 手渡されたのは、電子カードと変わらないくらいのもので、俺と明弘に1つずつ与えられたのだった。 どちらか片方しか来れない時でも利用できるようにしているようだ。 やっぱり、できる人というのはこういう気配りもできるというのか………

 

 

 

 

 

 謙治さんは書かれた書類をファイルにとじてまとめていると、ふと、こんな話をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、キミたちの大学の文化祭はあともう少しだったね。 暇になったら顔を出させてもらうよ」

 

 

 

 

「「あっ………………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時、完全に忘れていたことを今になってから思い出すことになってしまった自分たちの愚かさに苦悩する一方で、俺たちの大学の文化祭は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………あと、1週間程であるということに気付かされたのだった。

 

 

 

 

(次回へ続く)

 




どうも、うp主です。

 最近は冷え込みが酷くなってきているので、昼間でも防寒服を着ていなければやっていけません。もう、半纏は必需品ですね。

 さて、第2章も始まって早2ヶ月、ここでやっと新しいタグの力が発揮できそうです。

そのタグとは…………













『多重クロス』!!


 元々の構想の中で、『ラブライブ!』の他に、キャラを入れたいと思っておりまして、まずは自分の好きな作品からのクロスを始めていこうかなと思っておりました。ちなみに、もうすでにどんなキャラが出るのかは予想できている人もいるかもしれません。ここまでの話の中で、匂わせてましたから予想通りのキャラが出てくると思います。

 そういう意味で、第2章というのはこの物語に勢いを付けてくれる多くのキャラが出てくる重要な章となっていきます。また、キャラのみならず、自分が最終章に向けて必須となる話も入れているので、今後の展開に注目してください。


 今回初登場した、『伊達 謙治』も今後に欠かせない人となっていきます。一応、洋子と同じくオリキャラですが、ちゃんとモチーフにしたキャラはいます。そのキャラを見てくれたら、この人はそういう感じなのかなと思ってくれるでしょう。


 近々に、これまでのキャラの振り返りをしていこうかなと思います。その時に、オリキャラモデルについても話していきたいと思います。




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感想や質問など、こちらでも受け付けておりますので、気軽にどうぞ。

ID:@RIDENp

そして只今、投稿時間帯変更投票を行っていますので、よろしければこちらまでどうぞ。

https://twitter.com/RIDENp/status/795222517258424320



今回の曲は、

Bobby hutcherson/『Along Came Betty』

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