蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第63話


あなたを包み込むひかり

【プロローグ】

 

 

 

………………あ、どうも、蒼一です………………

 

 

 

 

 

最近、貧血気味で少々体調が危ういことになっているのですが、今回も外に連れ出され……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんと………地上約80mの高さにいるんですけどぉぉぉぉぉ!!!!?

 

 

 

「あははは!!高い高い!高いよ蒼君♪♪」

 

 

 

ちょっと待ってくれよ……………

 

 

 

ジェットコースターって、こんな感じなの? こんな高いところから急降下しちゃうの?? ……じ、人生初の搭乗に不安しか脳裏に過らないのは間違っているのだろうか???

いや、俺は正しい判断をしているんだ。誰が好き好んでこうしたことを…(ガタン!!!)

 

 

 

 

するというんだあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!

って、わああああ!!わあああああああああ!!!!!わあああああああああああああああああ!!!!!!!!???

 

 

 

(蒼一の絶叫レベルMAX!!!)

 

 

 

 

果たして、生き残ることは出来るのだろうか? ――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

 

「ふ~ふふん♪ふ~ふふん♪ふ~ふふ~ふ~ふ~ん♪♪♪」

 

 

いつもよりも軽やかなリズムにステップを効かせて、より楽しい気持ちでいろんな人が行き交う歩道を歩いています。

 

 

なんてったって今日は!! 蒼君との!! デ・エ・ト♡ なんだもんね~~~!!!

 

 

蒼君がなんと! 私と海未ちゃんとことりちゃんに何か一つお願いを聞いてくれるって言う約束をしてくれたんだよ!! 最初に聞いた時は耳を疑っちゃったよ、だってだって! いつも私からの猛烈なアピールに見向きもしてくれなかったあの蒼くんがだよ!? 誰が聞いたって驚くことは間違いないと思うよ!

 

 

それでね、蒼君に遊園地に行こう!って約束したんだ~♪

 

もうね、今日のことばかり考えていたら夜も眠れないし、勉強も全然進まなかったよ~。

あ! でもでも、寝不足とか疲れとか全然ないからね! そういった体調管理だけはちゃんと気を付けていたから問題ないんだもんね! さぁ~て、蒼君はどこにいるのかなぁ~??

 

 

 

「待ち合わせの場所は、ビルみたいにとっても大きいホテルの前にある石のオブジェの前だって言っていたけど、う~ん……もしかして、あれかなぁ~?」

 

 

 

少し歩いてみると、それらしきものが見えてきたよ! でも、その周りにたっくさんの人だかりができちゃっているよ! 休日の日だから結構人がいるんだね~、これじゃあ、どこにいるのかわからないや…………

 

 

 

(ドンッ!)

 

 

「キャッ!?」

 

 

 

急に後ろから何かがぶつかって来たようで、私は前に向かって体制を崩し始めてしまいました。

 

 

あわわ!! こ、このままじゃ転んじゃう!!

 

 

体制を立て直すことができず、足を踏み外してしまって前に向かって倒れ始めました!!

 

 

 

 

も、もうだめぇ……………!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…トスン)

 

 

 

「え?」

 

 

 

そのまま地面に倒れ込むのだと思っていた私の体は何かに受けとめられました。

 

この感じは………人……? でも、この感じ……何だかすっごく落ち着いちゃう………

 

 

あ! この温もりはもしかして………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っとぉ……! あっぶねぇ、もう少しで顔面直撃だったんじゃないのか?」

「そ、蒼君!!!」

 

 

やっぱり蒼君だったんだ!! 私のピンチにちゃんと駆けつけてくれるなんて、まるでヒーローみたいだよ!! でも、今日は私の王子様だよね!

 

 

 

「えへへ、やっぱり蒼君の腕の中は気持ちがいいねぇ~♪」

「っておいおい、公衆面前でお前は一体何をしているんだよ!!」

「私、高坂 穂乃果は蒼君の胸の上で顔を埋めて、スリスリとしています!」

「なに平然とドヤ顔で言い放っているんだよ! それと顔を埋めるな、スリスリするな、めっちゃ熱い!!」

「え~!? いいじゃん別に、私たちはそういう仲だもん。このくらいは普通だと思うよ!」

「そういう仲って何? 初耳なんだけど?」

「蒼君もう忘れたの? この前、一緒に渋谷に行って、そこで蒼君はタキシードを私はウエディングドレスを着て、抱き合った仲だもんね!! これってつまり、結婚したも同じ……だよね……///////」

「あーれーはー!!! お前が着たいと言うから着ただけであって、俺の方は店側から頼まれただけじゃないか!! それにあれで既成事実を捏造しようなんてするんじゃない!! そして、自分で言っておいて顔を真っ赤にして恥ずかしがるんじゃない!!!!」

〔※第42話『ほのかなひかり』参照〕

 

 

「ちぇ~、蒼君ちゃんと覚えているなんて……あともう少しだったのにぃ………」

「自分の首を自分で絞めるようなことはしたくないからな!!」

 

 

むぅ~……てっきり忘れているのかと思っていたのに、もう上手くいかないなぁ……

う~ん……蒼君が記憶喪失とかになったら……もしかしたら…………!

 

 

 

 

 

 

「おーい! 早くしないと置いていくぞ?」

「え? あっ! ちょっとまってよぉー!!!」

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

「さあ、蒼君! 着いたよ!!」

「……着いたよって…………しょっぱなからこれかよ………」

 

 

 

私が真っ先に来たのはここ! じゃ~ん! ジェットコースターで~す!!

 

 

ジェットコースターっていいよね! ビルと同じくらいの高さからすごい速さで真っ逆さまに落ちていって、コースを駆け回るんだよ! その時に、私の肌にぶつかってくる風がとっても気持ちがいいの♪ 私の家にある扇風機じゃ絶対に無理だからね、ここでしか味わうことが出来ない力強い風を目一杯に感じ取ることが大好きなんだ♪

もちろん、スリルも好きだよ。 コースターに乗ってゆっくりと高い所まで昇っていく時のドキドキも堪らないよ! あの早く走りださないかなって今か今かと待ち望んでいる時って、何だかライブが早く始まらないかなって待っている時と同じ気持ちに似ているの! ライブが始まった瞬間に感じる喜びと嬉しさを感じる時のことを考えていると、とってもドキドキするの!

 

 

みんなも同じような気持ちになるのかな?

 

 

 

 

「穂乃果よ……それは誰に向けてのアピールなんだ?」

「えへへ、秘密だよぉ~♪ それよりも早く行こうよ~♪」

 

 

 

私は蒼君の腕をグイグイと引っ張って、入口に向かっていこうとしました。

すると、蒼君がこんなことを言い始めました!

 

 

 

「ほ、穂乃果………お、俺は……ジェットコースターに乗ったことが無いんだが………これは、大丈夫なヤツだよな? 事故とか起こんないヤツだよな??」

「ええっ!? 蒼君はこれに1度も乗ったことが無いの?!」

「……無い……と言うか、遊園地自体あんまり行ったことが無いから分からないことばかりなんだ……」

「へぇ~~……そうなんだぁ~………♪」

「なんだぁ? その意味ありげな言葉は?」

「別に何でもないよ♪ それじゃあ、不安がたっくさんあって困っている蒼君のために、今日は私が頑張っちゃうからね!」

「ガキか俺は! そこまで不安に思ってねぇし、そもそも、お前は一体何を頑張るってい…「それじゃあ、コースターに向かってレッツゴ―!!!」…ひぃ~とぉ~のぉ~はぁ~なぁ~しぃ~を聞けぇぇぇぇ!!! そして、腕をそんなに強く引っ張るなぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

うふふ♪ これで蒼君を本当の意味で独り占めすることが出来るね!!

 

 

 

 

 

 

――――― そして、プロローグのアレになったと言うことである。

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

「………ぜぇ……ぜぇ…………」

「あはは♪ 蒼君楽しいね♪♪」

「……あぁ……マジで楽しいわー………(棒)」

 

 

 

もう、蒼君ってばだらしないよ。 まだ、ジェットコースターを8回とコーヒーカップを7回、ウォータースライダーを5回……(その他諸々)……しかやってないのに、もうそんなにへばっちゃったの? 私はまだまだいけるよ!

 

 

 

「蒼君、早く行こうよ~~~」

「そんなに急かさないでくれよ……つうか、お前の服の濡れているぞ? さっきのところで水がかかったんだろう?」

「ん~、大丈夫だよ。 肩だけが濡れただけだし問題ないよ」

「そうか? それならいいんだが…………」

「それよりもさ、今度は観覧車に乗ろうよ!!」

「観覧車かぁ……けど、これに乗るともう他のアトラクションに乗れなくなっちまうぜ?」

「あっ、そっか……もうそんな時間だったんだね………」

 

 

遊園地内にあった時計を見てみると、もう夕方になりかかる時間に針が指していた。 これが1周するのは15分くらいだって言っているけど、それから他のところに行こうとすると帰りが遅くなっちゃうなぁ……

 

 

 

 

………でも、そんなことで私は諦めたりしないんだから!!

 

 

 

「いいよ、蒼君! 私ね、1度でいいから蒼君と一緒に乗ってみたかったんだぁ~♪ いいでしょ?」

「いいでしょ、って言われてもなぁ……今日の俺には拒否権が無いからなぁ。 穂乃果がいいと思うのならそうすればいいと思うぜ?」

「……ぃやったぁぁぁぁ!!!! 蒼君ならそう言ってくれるって信じていたよ♪」

 

 

 

私は蒼君の首まわりに向かって腕を回すように抱きついちゃった。 えへへ、嬉しさのあまり体が動いちゃったんだ♪ 私は言葉で表現するよりも行動で表現する方が得意だから、こういうふうにやっちゃうんだ☆ でもね、ただ嬉しいだけじゃないんだ。 私は蒼君のことが大好きだから、大好きっ!!って言う気持ちも込めてこうやって、ぎゅっ!っと抱きしめたくなっちゃうんだ♪ てへっ♪

 

 

 

「……穂乃果よ……そんな抱きついた状態では、動くことが出来ないのだが………」

「むぅ~、だったらこの状態のまま私を連れて行ってよ~」

「なんて面倒な事を躊躇なく言ってくるんだよ………」

「私のお願いを聞いてくれるんでしょ? だからこう言っているんだよ♪」

「むぅ……まいったなぁ…………」

 

 

 

あっ! 今、蒼君が困ったような顔をしている♪ いつもキリッとしていてカッコいい顔をしている時も好きだけど、こういう時々しか見せない顔もいいなぁって思うの。 なんて言うのかなぁ……そう………愛おしいってことかなぁ? ことりちゃんが持っていた漫画の中に書いてあったんだけど、胸がね…こう、きゅん!ってなる感じが愛おしいってことなんだって。 私もね、今の蒼君の顔を見た時、きゅん!ってなったの。 多分、これが愛おしいってことなんだと思うの。 どういう意味なのかってところまでは分らないけど、この感じだと悪い意味の言葉だとは思わないよ。 だって、こんなに嬉しいんだもん!!

 

 

 

 

 

 

 

「しょうがない、もうちょっとだけ頑張りますか…」

 

 

 

そう言うと、蒼君は少ししゃがみこんで私の膝裏あたりに左腕を回し入れてきたよ。 そしたら、そのまま私を腕を回したあたりから持ち上げ始め出したの!

 

 

 

「きゃっ!?」

 

 

 

突然のことに驚いた私の口から上ずった声が飛び出て来てしまっていた。 蒼君はそのまま何事も無いかのように私の体を横にしながら宙に浮かせ、私の上半身を胸元にくっつけた。

 

 

 

こ、この状態って………お姫様だっこじゃないの?! は、はうぅぅぅ………ま、まさかこの状態で運んで行こうとしているの!? そ、それは……!! なんというか……恥ずかしいよぉぉぉ……////

 

 

 

「首に回している腕の力を緩めるなよ? そうすると、頭から落っこちることになるぞ?」

「う…うん………」

 

 

 

さすがに、遊園地に来ているいろいろな人達から視線を向けられることに恥ずかしさを感じた私は、何とかしてこの状態から元に戻りたいと思っていたけど、その一言を聞いた瞬間に、もうこのままでいようかな……と諦めを感じていたよ。 前回のお出かけの時も蒼君に抱きついた状態をいろんな人に見られて恥ずかしかったけど、今回はそれ以上の恥ずかしさを感じちゃっているよ///////

 

 

ほら見てよ! もうすでにいろんな人達が私たちの方を見ちゃってるよ!? 誰かが写真をとっているよ!? う、うわぁ~ん!! もう降ろしてぇ~~~!!!

 

 

 

 

「蒼君、降ろしてよぉ~~!!」

「何を今更な事を言っているんだよ。 抱きついたまま運んでくれって言ったのは穂乃果じゃないか?」

「で、でも!! この状態で運んでくれだなんて言ってないよぉ~!!!」

「運ぶ時にはどうしてもお前を浮かさなきゃいけなかったし、一番持ち運びがしやすかったのはこの状態なんだから少しは我慢してくれないか?」

「我慢も何も、乙女の心をくすぐるような状態になっていたら、そんなことが出来るわけが無いよぉ~!! は、恥ずかしいよぉ~……/////」

「日頃から抱きついてくるお前がこんなところで恥ずかしいだなんて言葉が出てくるとは思わなかったぜ! んなもん、微塵にも無いと思っていたぞ?」

「あるもん!! 私だってそれくらいあるも~~~ん!!!」

「あっはっは、それなら今日から立派な乙女となれるように、こうして運んで行ってやろう。 恥ずかしさ満点でな」

「ううっ……鬼! 悪魔!! 木偶の坊!!!」

 

 

 

そう言っても、蒼君は私を降ろそうとはせず、笑い飛ばしながらカツカツと歩き出しちゃったよ! ううっ……どうしてこうなっちゃったんだろう……… 私の言ったことが裏目に出ちゃってこんな気分を味わうことになるだなんて……… あぁ、さっきから私のことをジロジロと見ている周りの視線が痛すぎるよぉ………

 

 

 

 

 

 

「穂乃果、周りの視線が気になるなら目を閉じていろよ」

「えっ?」

 

 

蒼君は私の方に顔を落とすことなく、前だけを見つめ続けながら私にそう話しかけてくれました。

 

 

そして、こんなことも…………

 

 

 

 

 

 

「………もし、それでも気になるなら…………俺だけを見ていろ。 周りのことなんか気にするんじゃない。 ただ、俺だけを見ていろ………俺がちゃんと目的地にまで連れて行ってやるから………」

 

「そう……くん……!!」

 

 

 

胸がギュッと強く締め付けられたかのような気持ちが体中に走った。 嬉しいって気持ちかな……? うん、確かにそうなんだろうと思うのだけど………もう一つ何か違った気持ちが湧いてきているって感じられるの。 ……そう、前に私に対して言っていた時も同じような感じがしたの………何なんだろう…………

 

 

安心するよ………? 安心するんだけど…………何だろう、それとは比べものにならないほど小さなことなんだけど………

 

 

 

 

…………不安に感じるの…………

 

 

 

 

目的地にまで連れて行くって言っているけど、それは私が今行きたいと思っている場所なの? それとも、違った場所なの………?

 

 

 

 

 

 

遠くの方を見つめ続けている蒼君の顔を、私はただ見つめ続けることしかできなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

[ 観覧車内部 ]

 

 

 

「…………………」

「…………………」

 

 

 

蒼君に抱かれたまま観覧車に乗りこんだ私たち。

 

 

お互いに向かい合って座っているんだけど……うぅ……何を話したらいんだろう……

 

 

 

どうして抱いたまま入ろうとしたの!? 私、とっても恥ずかしかったよ!!!

 

そう言って、突っかかってみようかなと、思ったけど…………思い返しただけで、か、顔が熱くなってきちゃった!!! こ、この話は無しにしよう!!

 

 

 

 

蒼君……さっきの言葉なんだけど………あれは……いったい………?

 

 

 

だ、だめだめぇ~~~!!! 今、この雰囲気で言える言葉じゃないよね!! 折角、楽しむためにここに来たんだからもっと明るい話をしたいよ!!!!

 

 

 

 

 

 

蒼君……………私を……………もっと、抱き締めて……………♡

 

 

 

 

 

 

ど、ど、どうしてそっちの方向に行こうとするのかなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!???

 

いきなり難易度が跳ね上がったよ!? 楽しくなっちゃうだろうけど! 明るい話なのかな!? なんか、変な雰囲気に変わっちゃうかもしれないよ!!!?

 

 

あ、い、いや……嫌じゃないけど……どちらかというと、してもらいたいなって………そう思っていたりはしているんだけど……………こういう時に、大胆になれない私がいる………

 

 

情けない………情けないよ………私……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くしゅん」

 

 

私は体を震わせると、小さくくしゃみをしちゃった。

肩にかかった水のせいで冷えちゃったのかなぁ? そう思ったら、背中から体中に寒気がしてきちゃったよ。

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

 

蒼君が心配そうに尋ねて来てくれた。

 

 

「うん、大丈夫だよ…」

 

 

私は何か答えようと思って返えした言葉が少しぎこちなくなっていたように思えた。 そんな私を見て何かを感じちゃったのかな、立ちあがって私の隣に座って来たの。

 

 

そして、羽織っていた上着を脱いで私の肩に掛けてくれたの。

 

 

 

「あ、ありがとう…」

「まったく、強がるんじゃないぞ。 お前は俺と違って体が弱いんだから、無茶やって体調を崩さないでくれよ」

「……う、うん……」

 

 

 

頬を染めながら返事をした時の私は、ちょっぴり恥ずかしく、嬉しい気持ちになっていた。 肩に掛けられた上着から感じられる温もり…… まるで、私を包み込んでくれているような気分になっていたの。 隣にちゃんと本人がいるのに、今はこっちだけでいいかなって思っちゃっている私がいるの。

 

 

だめだな、私……いつものように抱きついていきたいと思っているのに、いざ蒼君のことを意識しちゃうと何だか恥ずかしくなっちゃって……顔も熱くなっちゃって……ぜ、絶対変な顔になっているよ……! そう思っちゃうと、顔を合わせることを躊躇っちゃうの。 だから……今はこれでいいの。 不器用な私に出来ることは、上着をこうして顔を隠すように、体に押し付けるように着て、隣で温もりを感じていることなの………

 

 

ただ、それだけで今の私には十分なの……………

 

 

 

 

観覧車が一番高い所まで昇った時、ビルとビルの間からわずかに顔を出している、オレンジ色の夕日がゴンドラの中に差し込んできた。 ほのかに感じられる夕陽の温もりも私のことを優しく包み込んでくれているように思えると、私は静かに目を閉じて感じ取ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目を開いた時には、夕日はビルの陰に隠れてしまっていた。 また、それは蒼君といる時間が終わってしまうことをお知らせしているようにも感じられた。 次第に、私を包み込んでいたほのかな温もりが離れ去ろうとしていた。

 

 

 

終わりたくない…………もっと、一緒にいたい………

 

 

 

そう思っていても、時間は刻々と過ぎ去っていく。

1秒ごとに迫ってくる終わりの時が来ることを思うと、寂しい気持ちと寒気をまた感じるようになってきた。 私は隣に座っている蒼君の様子を見ようとして、目を横にした。

 

 

 

 

 

すると、蒼君はとある方向に視線を向け続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

とても、悲しそうな顔をして―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

観覧車から下りた私たちは、そのまま帰ろうと出入り口付近まで歩いていた。

 

 

 

 

でも、私の中にモヤモヤがあることに気がついてしまった時、私は脚を止めてしまっていた。

 

 

 

 

「どうしたんだ?」

 

 

蒼君は不思議そうな顔をして私に尋ねてきた。

 

けど、私はすぐに返事をすることが出来なかった。 私自身もどうすればいいのかが分からなかったの。 私が感じているこのモヤモヤとした気持ちが何を指しているのかが分からずに止まっていたの。

 

 

私は胸に手を置いて、どうすればいいのかを考えた。 手をぎゅっと握りしめながら考えた末に出した答えは、その答えを探しに行くことだった。

 

 

 

「……行こう、蒼君」

 

 

 

私は蒼君の手を握って走りだした。

 

驚きながら話しかけてくる蒼君の声に耳を傾けることなく走っている私は、何故か必死になっていた。 やらなくちゃいけない……そんな気がしたんだ。 だから、私はこうして答えを探しに行こうとしているの。

 

 

 

それが蒼君の望まないことだとしても……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

走ること数分の時間が流れて、ようやくたどり着いた場所は―――――――

 

 

 

 

 

 

 

「アキバ………ドーム………」

 

 

 

蒼君は目を見開きながらそう言った。

 

 

そう、観覧車の中で蒼君が見ていたのはアキバドームだったの。 この場所をそんなに悲しそうに見ているのか、私には不思議で、モヤモヤとした感情となっていた。 私はその答えが知りたくって、ここに連れてきちゃったの。 嫌だとわかってはいるけど、それでも知りたいと思ったの! ずっと一緒にいるのに、私は蒼君のことを知らな過ぎなの。 副会長さんのことや絵里先輩のこととか……どれも、近くで起こっていたことなのに知らなかった。 知っていれば、力になれたかもしれなかった。 でも、私は知らなかった……いや、知ろうとしなかったの。

 

いつも、私は私のことばかりに気がいっちゃっていて、周りのことをちゃんと見ていなかった。 大好きなはずの蒼君のことですらちゃんと見ていなかった……… そう思うと、私のことが嫌に思えてくるの……… 私は蒼君のことをそのくらいにしか思っていなかったの? って、考えちゃうとおかしいと思うの。 だって、蒼君の良い所や悪い所、嬉しいこと、悲しいこと、辛かったこと……これ全部を含めて大好きって言えないんだもん! 私はまだ、蒼君のすべてを知らないんだもん!! 蒼君が今まで何をして、何を思って過ごして来たかなんて全く知らないんだもん!!

 

私は………私は……蒼君が嬉しい時、悲しい時、辛い時、寂しい時………どんな時でも一緒にいていたいって思っているの。

 

ごめん……でも、教えて……私に蒼君のことを教えてほしいの。 お願い―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「蒼君」

「……なんだ?」

「蒼君は……どうして、そんな悲しそうな目でここを見ているの?」

「…………………」

「……ごめん、辛い事なんだと思うけど……私は知りたいの、蒼君が何を思っているのかってことを」

「…………………」

「私は蒼君のことが好き……大好きって胸を張って言えるの。 ……でもね、私は蒼君のことを本当の意味で知らないの。 悲しかった事とか、辛かった事とか………… お節介だってことは分かっているけど、それでも知りたいと思っているの……… 蒼君の力になりたいなって、思っているの! こんな私でも蒼君のために役に立ちたいの!」

「穂乃果……………」

「……どこにも行かないで……すっと、一緒にいて………ね………?」

 

 

 

話し続けていると、蒼君がいなくなりそうになった時のことを思い出して、次第に声が震えてきちゃって、目もうるんできた………

 

()()()()を思い出すと、今でも胸が張り裂けそうになる。 あんなに悲しいと思ったことは、今でもなかった。 そして、これからも在ってもらいたくなかった。 私はそう思いながら蒼君にしがみついて、ただただ、泣きそうになっている顔を見せないようにした。

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果………ありがとう…………」

 

 

そう言って、私の頭に手を置いてくれた。 優しい言葉で触れられたことで、私の心は落ち着きを取り戻そうとしていた。

 

 

 

そうした中、蒼君の口が開いて話をし始めた―――――――

 

 

 

 

 

「………俺はな、野球選手になりたかったんだ。 誰よりも輝いて、このドームに集まってくれた観客たちを魅了させて、大歓声を響かせられるすごい選手に成ろうと決めていたんだ………… でもな、あの時、事故で負った傷が原因で、俺は夢も野球をやることすらも諦めさせられちまったんだ………… 悲しかった……ただただ、悲しかった………… 全力でやり続けてきたことが一瞬で泡と化して消えてなくなっちまったんだからさ……笑っちまうぜ………」

 

「……………………」

 

「………本当だったら、今の俺はここで活躍していたんだと思うんだ……… だって、俺は……そのために頑張ってきたんだからよ………」

 

「……………………」

 

「そんな俺に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 それはかなり無茶な話しだった。 体が十分に機能しなかった俺に野球をやっていた時よりも激しい動きを要求させられることをやれと言うのは、当時の俺にとっては無茶としか言いようが無かった……… だが、それでも俺はやった。 あのリハビリを耐え抜き、人となりの生活が出来るようになって、体が激しい動きをしても耐えられるほどに強くなって………… そして、数多の者たちから認められるほどに大きくなった。 かたちは違えど、ここに立つことが出来るだろうと、思っていた……… だが、そんな時にすらも、運命は邪魔をしてきた……… その邪魔のせいで、俺はまた夢を諦めなくちゃいけなくなった………… 悲しすぎるだろ? 夢を2度も絶たれちまったんだぜ? ………もう、俺には夢が無い……… ここに立てる日はもう無くなったんだ………… 俺はもう………見ているだけの観客にしかなれないんだよ………………………」

 

 

 

蒼君は口をつぐんだ。話が終わったことを悟った私は立ち尽くしていた。

 

 

想像以上の残酷すぎる話に私は激しく動揺していた。

 

 

 

これが蒼君の過去………私が知らなかった、蒼君の過去…………

 

 

 

聞いたことを思い返すと、涙があふれそうになってくる。

 

 

 

どうして、蒼君がそんな目に合わなくちゃいけないのか? どうして、蒼君の夢を奪っちゃうのか? どうして、蒼君がこんなに悲しい顔をしなくちゃいけないの………?

 

 

 

思えば思うほど気持ちは膨らんでゆき、胸が張り裂けそうになった。

 

 

私は後ずさりするように、この場から逃げたいと思っていた。 私が言い出したことなのに、こんな辛いことを思い出させてしまうだなんて………私って、最低だ………… それに私も分かっていれば、ここに来ようだなんて言わなかったのに…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………でも、このままじゃいけないよ。

 

蒼君の悲しいこと、辛いことを知っていて、それでも一緒にいてあげたいと思っているんだもん! 私は私の悲しい感情に負けたくなかった。 悲しんでいるのは蒼君なんだよ! 今、蒼君を助けてあげられるのは、私しかいないんだから負けるわけにはいかないよ!!

 

 

 

私は、私に負けないと言い聞かせて、私が出来る最大限の考えと想いをぶつけたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

「蒼君!!!」

 

 

 

私は大声で名前を呼んだ。

 

 

蒼君は、驚いた顔をして私を見つめた。

 

 

 

私は言葉を続けた――――――

 

 

 

「ごめん、蒼君……… 私、馬鹿だったよ……… 蒼君がこんなに辛い思いをしちゃっていたのに、それを思い起こさせるようなことをしちゃって……… 悲しい気持ちにさせちゃったよね………ごめんね……ごめんね…………」

 

 

「………………………」

 

 

「………でもね蒼君、私は逃げないよ。 どんなことがあっても、私は蒼君から離れない……… 蒼君の役に立ちたい、その気持ちはさっきと変わらないよ」

 

 

「………………………」

 

 

「蒼君、私はね……もう一度、蒼君に夢を持ってもらいたいと思っているの。 そして、その夢をかなえてここに立てるようにしたいの!」

 

 

「………夢………? それは一体何なんだ……?」

 

 

「それはね………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………私たち、μ’sをラブライブ!で優勝させて!」

 

 

「………………!?」

 

 

「私たちがラブライブ!で優勝すれば、ファンも大勢増えるだろうし、ライブをやる機会も増えるかもしれない。 そうしたら、大きなところでライブをしなくちゃいけなくなるでしょ? そうしたら、ここで……このアキバドームで私たち、μ’sがライブをやるの!! そして、そのライブに蒼君も一緒に立つの!! 私たちの指導者としてじゃなくって、μ’sのメンバーとしてみんなで立つの!! そこには、弘君も一緒に立つの!! 私たち11人がここで歌って踊るんだよ!! これって、すごいことじゃない?! すごい夢だとは思わない!!?」

 

 

「………ここで……俺たちが………歌って踊る…………?」

 

 

「そうだよ!! 私たちと一緒にここのステージを駆け回るんだよ! 来てくれたファンのみんなを魅了させることが出来るんだよ!! 考えただけで、もう楽しくなってきちゃうよ!!」

 

 

「………楽しい………ああ、そいつは楽しいだろうな…………」

 

 

「でしょ?!……… それに、蒼君と一緒に歌って踊ることは私の夢でもあるの。 μ’sが出来てからずっと思っていたの。 いつか、蒼君と一緒にステージで歌って踊りたいって………… だからお願い、これを蒼君の新しい夢だと思って! 蒼君は私たちを支えて、私たちはそれに応えて全力で蒼君の夢をかなえることが出来るように頑張るから!!!」

 

 

「………俺の……新しい夢…………!!」

 

 

「そうだよ! だから蒼君も頑張って!! 一緒に頑張って行こうよ!! 私たちならきっと出来るよ! だって、私たちには蒼君がいるんだm「穂乃果!!!!」…きゃっ! そ、蒼君!?」

 

 

 

私が話をしている時に、蒼君がいきなり私のことを抱き締めてきたの! 強く抱きしめられてきたから苦しく感じているけど………なんだかとっても嬉しかった………

 

 

 

 

 

 

「穂乃果…………ありがとう………俺のためにそう言ってくれるなんて…………ありがとう………ありがとう…………」

 

 

 

 

 

…………どくん……………どくん………………………

 

 

 

 

蒼君の言葉と、心臓の音が私の体を通して伝わってくる。 力強い音が私の中に入り込んでくる。 私は心を澄ませてその音を静かに聴いた………

 

 

 

 

 

 

 

 

………泣いていた。

 

 

………蒼君が泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が見てきた蒼君の姿の中には、泣いている姿はなかった。 たぶん、これが初めて見る蒼君の泣いている姿………………

私と向いている方向が違うため、その顔を見ることは出来ないけど……… 感じるの、背中から………耳から………胸から……………心から…………………

 

 

蒼君が強く抱きしめてくる程に、その悲しい気持ちが私に伝わってくるの……………

 

 

 

………あぁ………わかったよ………………わかったよ、蒼君…………!

 

私、ようやく蒼君の気持ちをわかったのかもしれないよ………!

 

蒼君は、いつもこんな悲しい気持ちを抱き続けながら私たちと一緒にいてくれたんだね?

私たちのために、動いていてくれていたんだね?

 

 

 

 

 

 

ありがとう………蒼君。

 

 

 

 

 

私は両手を蒼君の背中にまわしてぎゅっと抱きしめた。

 

 

蒼君に負けないくらい、いっぱいいっぱい強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

「蒼君。 蒼君が辛くなった時、悲しくなった時も私が支えてあげる。 だから、もう1人で悲しまないで………私が側にいてあげるよ……」

 

「穂乃果………あぁ、頼むな………その時は、頼むな…………」

 

「うん! 私に任せといて………!」

 

 

 

 

 

 

だって、私は―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――― 蒼君のことが大好きなんだから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕陽に染まる街は、いつしか夜空に輝く星々のように変化していた。

 

 

その輝きが、時を忘れて抱き締め合う2人を優しく包み込んでいるようにも見られた。

 

 

 

 

 

 

 

東京の街は今日も優しい光の温もりに包まれていた―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(次回へ続く)

 




ドウモ、皆さん。お久しぶりです、うp主です。


およそ、一カ月もの間、ずっと仕事が忙しく、こちらに費やす時間が全くないと言うほどひどい状況でした。………地獄や……地獄や…………


しかし!! ようやく、その束縛から解放される時が来たッ!!!

やっふー! 久しぶりの執筆やでぇ~~~♪


そう意気込んで、やってみたらこのありさま…………



文字数、(およそ)1万と2000文字ッ!!!(アクエリオンかな?



いくらブランクがあるからって、どうしてここまで文字数が増えるのさ!?
ありえないんですけど!?


まったく、読者にやさしくない小説だな!!(特大ブーメラン アベシッ!?




しかし、なんやかんやありましたが、これでようやく通常活動が行えそうですよ。
そんじゃ、明日から頑張ら………っと、その前に、もちっとだけ仕事が残っておるのじゃよ。 そう言うことで、次回投稿がエリチカ誕になりそうです。


それまでに、いい話でも考えておきますか♪


それでは、また!!



今回の曲は、

TVアニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』より

Lil'B/『つないだ手』

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