第62話
【プロローグ】
どうも、蒼一です。
さて、前回は何かとちゅんちゅんされる話でしたが、今回も今回で………
「蒼一、少し甘えさせてもらいます………」
海未なんだよなぁ……………
また、吐血するんじゃないかなぁ……?
―
――
―――
――――
[ 園田邸 ]
みなさん、こんにちは。園田 海未です。
本日はですね、私の家に蒼一が来てくださることになりまして、今は、迎える準備を行っているところなのです。
しかし、驚きました。 まさか、蒼一が私や穂乃果、そして、ことりに1人1回だけ私たちのお願いを聞いてくれると言うなんて思ってもみませんでした!
ですが、そう言われても、私自身は蒼一にお願いしたいことが特になかったのですが、ただ最近、蒼一と2人でいる機会が無かったので、本日、私の家に呼ぶことにしたのです。
部屋の掃除も行いました。 玄関口も廊下も、この家の隅々まできれいに清掃いたしました。
これならば、誰が来ても恥ずかしくないですね!
そして、服装も…………
い、いつもよりかは、良いものを選んでみたのですが…… どうなんでしょうか?
丈の長いワンピースを着て見たのですが、喜んでもらえるのでしょうか?
わ、私は、み、短いスカートなど破廉恥に思えて、普段では穿かないことにしているのですが…… 男の人と言うのは、やはり、短いものの方が好みなんでしょうか………?
(ピンポーン♪)
「!!」
はっ!そうこうしているうちに、もう蒼一がウチに来てしまいました!!
はわわ…… ど、どうしましょう…………
「海未~いるかぁ~?」
「は、ひゃい!!」
や、やってしまいましたぁぁぁぁぁ…………………
あまりの緊張と驚きにより、声が変な感じに裏返ってしまいましたぁぁぁぁぁ…………
ううぅ………… もう恥ずかしいです……………
あぁ、何と言うことでしょう…… 己の不甲斐無さに、私は膝をついて落胆してしまいました。
私としたことが、こんな失態を犯してしまうなんて………
か、各なる上は、蒼一に悟られる前に気持ちを切り替えなくては………!!
「………何やってんだ、海未?」
「そ、蒼一!!!!」
蒼一がいつの間にか、私の目の前に!!な、何故、ここにいるのですか!!
「さっき声かけたのに、返事が無かったから勝手に入らせてもらったぜ?しっかし、玄関の鍵が空いているなんて思ってもみなかったぜ。海未のことだから、てっきり鍵をかけているものかと思ってたぜ?」
「…………聞いたのですね?」
「……聞いたのですね!わ、私のさっきの声を!!!」
「えっ!?やっ、そ、それはだなぁ……………」
「どうなのですか!!ハッキリと答えてください!!!」
「えっと………とても、かわいらしい声だった………ね……?」
「はうわ……………」
き、聞かれてしまったのですね………………お父様、お母様……海未はもうダメみたいです………恥ずかしさのあまり倒れてしまいそうです………
………でも、蒼一にかわいいと言って貰えて、嬉しかったです…………
(……バタッ)
「う、海未!?」
私はそのまま倒れてしまい、気を失ってしまいました…………
―
――
―――
――――
「う、う~ん………」
こ、ここはどこでしょうか……?
目を覚ますと、私は自分の部屋のベッドの上に横になっていました。
どういうことなんでしょうか?先程まで廊下にいたはずなのに、どうしてここに?
「お!ようやく目を覚ましたのか!」
部屋のドアを開けて入って来たのは、蒼一でした。
蒼一がいると言うことは………あうぅ、私はあそこで倒れてしまっていたのですね………
「急に倒れちまったからさ、驚いたぞ?もしかして、お前………熱中症にかかってないだろうな?」
「えっ?い、いえ……そのようなものによって、体を害してなどいません!」
そう……そのようなものではなくてですね………違うのですよ…………
「?? そうなのか?ちょっと熱があるか確認するから頭出してくれよ」
「えっ?!」
そう言うと、蒼一が迫って来て顔を近づけてきました!
「どれ、ちょっと失礼するぞ」
蒼一は私の前髪をかきあげるように後ろに流しておでこを出させ、そして、蒼一も自分のおでこを出して私のおでこと重ね合わせてきました。
はわわわ!!! そ、蒼一が私の目の前に!! そ、それにこのように近いと、蒼一の呼吸も肌で感じることが出来て……… あぁ…… か、顔が燃えるように熱くなってしまいます……!!
「……ん? 急に熱くなってきたな…… やっぱり、熱があるんじゃないのか?」
「そ、そのような事は、あ、ありませんよ!!だ、大丈夫ですよ!!!」
心臓の鼓動が速くなり、呼吸も乱れてきました!
これでは、熱によって本当に倒れてしまいそうです……!
私は蒼一との距離を取るために後ろに後ずさりました。 そうしたら、次第と熱も引いてきましていつもの状態に戻りつつありました。
「う~ん、見た感じもあまり悪そうもないからな…… 俺の気のせいなのかな?」
「そ、そうですよ。き、気のせいなんですよ…… はい……」
倒れてしまったことや熱が上がってしまったのは蒼一のせいなのですよ! …とそのように言いたいのですが、心配そうに私を見つめているので、私は言うことができませんでした。
もう、そのような顔をされては何も言えないではないですか。 蒼一の意地悪です。
「熱とかでもないとなると…… 疲労が溜まっているんじゃないのか?」
「………え?」
「最近は、μ’sの活動で忙しかったからいろいろと疲れが溜まっていたんだろう…… それが体調を悪くしてしまったんじゃないのか?」
「そ、そのようなことは………!」
確かに最近は、いろいろと忙しく疲れが溜まることがあったかったかも知れませんが、今、このような事になったのは蒼一のせいなのですよ!
と蒼一に対して、そう言うことができない私は、少し不機嫌そうな顔をして見つめていました。
「仕方ない。 今回の海未のお願いは無しにするから、今日はゆっくり休みな」
「えっ……」
そう言うと、蒼一は立ち上がって帰り支度を行い始めました。
そ、そんな…… 今日は蒼一と一緒にいたいと思ってお願いしたのですよ……… 穂乃果やことりと比べて自分に自信が無いことや恥ずかしい気持ちが表に出てしまいがちな私が、自ら進んでこうした機会を手に入れることが出来たのです。
それがこのようなかたちで終わりになるのは…… 私は嫌です!!
この部屋から立ち去ろうとする蒼一を私は我を忘れたかのように、ただ必死になってその服を掴み留めようとしました。
「ん、どうした?」
触れたことに気が付いた蒼一はちょっと不思議そうな顔をしてこちらを見ていました。 そんな蒼一の顔を… いえ、蒼一の瞳をじっと見てしまうと、ドキッと胸が高鳴るのです。
その瞳から映って見えるのは、あなたを見つめている私の姿……… 今、あなたは私しか見ていない…… そう考えてしまうとこの高鳴りがどんどん強く響いてくるのです……!
嗚呼、この想い…… 止まらないで………………
「蒼一! ……あ、あのですね…… そのぉ………… お願いがあるのです……」
「え?あ、ああ…… なんだ?」
「あ、あの…… えっと……………」
一言ずつ言葉を口にするたびに鼓動が速くなっていくのが感じられます。 脈打つ度に呼吸が乱れ、伝えたいことが言えずに喉元に留まっています。 私は感情を抑えこむために力をぐっと込めるように服を握りしめました。 そして、あらためて私が願うことを思い返しまして、自分の気持ちに正直になることを心に決めました。
不肖ながら、私、園田海未。 押してまいります!
そして、この言葉を発したのでした。
「蒼一、少し甘えさせてもらいます………」
「……へ?」
蒼一は私が発した言葉を聞くと、きょとんとした表情となり上手く状況を飲み込めない様子でした。 私はすかさず掴んだ服を引っ張り、蒼一を私がいるベッドの上に座らせました。
「う、海未……! なにを………!?」
引きつった表情で見つめる蒼一に対して、私は抱いていた感情を露わにするかのように蒼一の体に触れました。
「ですから…… 少しの間だけ、甘えさせてください…………」
私の手は、そのまま肩を通り抜けて背中に触れ、体もそれに追い付いて行こうかとするかのように背中に回りました。 こうして間近に見る蒼一の背中は、歩いて見ていた時よりもずっと大きく…… そして、とても温かい……
私はその背中に顔をうずめるように寄り添いました。
――――どくん――――――どくん――――――――――
聞こえます。 力強い鼓動が私に伝わってきます。
脈打つごとに聞こえてくるこの音が、まるで赤ん坊をあやす母親の子守唄のように聞こえ心地よい気分となります。 蒼一から伝わってくる鼓動、温もりが私の疲れた体に沁み渡って行くのです。 あぁ、なんと良い気持ちなのでしょう、これが触れると言うことなのでしょうね。 穂乃果たちはいつもこのような気持ちになるために、蒼一に迫っていたと言うことを実際に触れて、感じてみてようやく気が付いたように思えます。
もっと触れ続けていたい…………
私は両手を蒼一の胸元にまで伸ばし、そこで交差させました。 この一時が続いてほしい、そうした思いが込み上がる中、私はぎゅっと言う音を立てるように蒼一を抱き締めて離れないようにしたのです。
「う、海未……? 海未ちゃ~ん……? こ、これはどういうことなんすか???」
上ずった声で尋ねてくる蒼一ですが、私はそれに対する返答をしないことにしました。 普段は堂々としているのに、こうやって戸惑いを示しているかわいらしい姿を見るのは私にとって大変貴重なわけなので… これは私のちょっとしたわがままということでやらせてもらっているのです。
「ふふっ、蒼一、今日のところは観念してくださいね♪」
「お、お前……絶対楽しんでいるな?」
正解です♪
今の私はとっても楽しんでいるのですよ。 滅多に起こることのない機会に私は心を弾ませるようにあなたに迫っているのです。
「さぁ~て、どうなんでしょうか?試してみますか?」
私は少し調子にのりまして、挑発的な言葉を口にしました。 今の蒼一ではどうすることもできないだろうと鷹を括っていたからです。
しかし、結果は私が思っていたのとは全く別のものでした………
「ほぉ…… ならば試させてもらうぞ……!」
「えっ……?」
蒼一の口から放たれた意外な言葉に私は呆気にとられていたその隙に、蒼一は抱きついていた私の片方の腕を掴みとり払い除けてしまいました。 そして、体を私の正面に反転させて、空いているもう一方の手で私の体をそのままベッドの上に押し倒したのです。
この一連の何一つ無駄のない動きの前に為す術がありませんでした。
さらに、追い打ちをかけるように蒼一が四つん這いになって私の上にいるではないですか!?
「どうした、抵抗しないのか?」
「!!」
私は何も言い返すことができず、ただ目の前に映り込んでいる現状から目を反らすことが出来ずにいました。 この状況のなかでは、蒼一が言うように抵抗することが正しい判断なのでしょうが、しかしながら、私の身体はそうした動きをとろうとはしませんでした。
何故なのでしょうか…… 男の人にこうも容易く押し倒され、抵抗することを行おうとせずに現状のままでいることを望んでいるのでしょうか? それに、この後に起こるであろう事柄が脳裏を駆け巡っているのに、この胸の高鳴りはなんなのでしょう…… もしや、この私がそうなることを望んでいるということなのでしょうか?い、いえ!そ、そのようなことは………!!
そのようなことを私は……………
望んでいます―――――――――――
私が自分に正直になったその瞬間から……… いえ、それ以前からそのように感じていたに違いありません。その証拠に、今の私は無抵抗な体を晒しているわけですし…… それに、苦しいほどに胸の高鳴りが大きくなっていくのを感じることができます。 ですが、実際には痛覚的な苦しみというのはありません。 むしろ逆であると言ってもいいでしょう………………
喜んでいるのです―――――――――
このような状況にあることを私は望み、喜んでいるのです。
私は穂乃果とことりがいつも蒼一に抱きついて行く姿をこの何年もの間ずっと見続けており、それに困っている蒼一を助けようと2人を叱りつけることもありました。 ですが、本当は違っていたようです。私は2人を叱りつけることをしたいのではなく、2人と共に抱きついて行きたいと心の中でそう思っていたに違いありません。 私自身に自信が無いことや恥ずかしい気持ちが表に出ていたために、大胆な行動を長く実行することが出来なかったためなのか、私は対照的な2人に対して嫉妬していたのかもしれません。
そして、今―――――私が望んだ状況が目の前にあるではないですか!
胸の高鳴りが次第に強く響いていくとともに、全身を行き交う血液の流れが速くなっていくので、頭の上から足の指先まで熱が上昇していき、火照ってしまうかのように汗が流れ出てきます。 呼吸も荒れ始め出しまして、最早、自らの力では制御することが出来ないほどになって行きます。
「さて………… 御仕置きだ………」
均衡した状態が続いている中で行動を起こし始める蒼一は、御仕置きと言って、私の顔に向かって顔を近づけ始めて来ました!
ゆっくりと近づいてくる蒼一の顔 ――――――
実際は、もっと早く近づいているのだと思いますが、私の視界の中では、1秒が現実よりも長く感じてしまう世界が広がっており、ゆっくりと近づいてくるように見えるのです。
蒼一の前髪が顔に触れた時、私はこれから起こることに耐えられずに目をつぶってしまいました。
暗い世界の中で、私はこれから起こるであろうほんのわずか先の未来を見ていました。
2人の瞳がお互いを見つめ合い―――――――――――
顔と顔を重ね合わせ――――――――
そして―――――――――――――
(ビシッ!)
「ひゃうっ!!」
眉間に強い刺激が走り込み、それが痛みとなって私の脳内に認識されました。
私は思わず両手で眉間を覆い隠しながら痛みが引くように撫で始めました。
視界が開かれるとそこには、なんとも悪巧みが成功したことを喜ぶ少年のような顔をした蒼一が体を起こした状態で私を見ていました。
「そ、蒼一……?」
「俺を試そうだなんてまだまだはえぇよ、海未。 御仕置きのデコピンだ!」
「え?えええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!??」
お、御仕置きって…… そのことだったのですか!?
私はてっきり…………… え、えっと… その……………
「は、破廉恥です!!!!!!!!!」
そっちの方を期待してしまった私も破廉恥ですぅぅぅ……………
「ったくよぉ、海未が先に仕掛けてきたのに、何で俺が怒られなければならないんだよ……」
「そ、それはやっていいことと悪いことがあるからに決まっているんです!!!」
「俺はただ最初っからデコピンするためにああやったんだけど? ……何か期待していたのか?」
「!! し、していませんよ、そんな事!!! だとしたら、蒼一も女心を弄ぶようなことをしないでください!!」
「はいはい、以後、気をつけさせていただきますよ。 そ・れ・と」
「な、なんですか?」
「トイレ貸してもらうぞ、いいか?」
「どうぞご勝手に!!」
「そりゃどうも♪」
そう言って、蒼一は部屋の外に出て行きました。
「………………はぁぁぁぁぁぁぁ…………………………」
急に体が重くなったと思ったら、口から大きなため息が出てしまいました。
「何をやっているのでしょう……私は…………」
そのような事を口にしてみて天井を仰ぎみて、これまでの出来事を振り返ってみていました。
「…………………………………………」
「うわああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!ばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかもどしてもどしてもどしてもどしてもどしてもどしてもどしてもどしてもどして、もどしてくださあああああああああああああああああああい!!!!!!!!!!!!!」
私はベッドの上で転がり、じたばたと悪あがきをするように、自らがやってしまったことに対する後悔の念に駆られてしまっています! ううぅ…… 自分でもどうしてあのような行動に出てしまっていたのかがよくわからないでいます………
どうしてこうなったのでしょう…… 何かが溜まっていたからでしょうか? 疲れ?ストレス?そ、それとも…… 欲求……? いやいや、そのような事は……… そのような事は…………
「ありえなくもないかもしれません…………」
私は、ただ欲求のためだけに一連の行動に取っていたと言うのですか?! もう…… 破廉恥を通り越した何かですよ!!
そして、このやるせない気持ちはそのまま蒼一に向けられることに…………
「覚えておいて下さいよ……… いつか必ずやり返して見せますからね………!」
一方、その頃―――――――――――
「………ぐふぉ………!! …………はぁ………はぁ……………ま、参ったなぁ……お、思っていた以上に吐血量が多い………ぐふぉぉぉ!!! ま、まさか……海未があんな大胆な行動に出てくるなんて思ってもみなかったぞ………こ、これも穂乃果たちの影響なのか………? 勘弁してくれぇぇぇ………あいつら2人だけでも大変なのに海未まで来られたら堪ったもんじゃないぞ………ごぼっ!! ど、どうやら……俺もやり過ぎちまったようだな………い、インガオーホー……慣れないことはするもんじゃないな…………」
トイレ内で、口から滝のように流れる血を吐き出していたそうだ――――――――
(※ギャグ補正がかかっているので、これでは死にません)
(次回へ続く)
どうも、お久しぶりです。うp主です。
およそ、1週間ぶりの話となりますね。今週からかなり忙しくなってしまうので、投稿するペースがかなり遅めになってしまうのが何とも言えない苦痛……
しかも、そこに追い打ちをかけるがごとく、そのすべてのことが終了する時には、絵里の誕生祭が目前にあるという笑えないシュチュエーション……
また、その次々週には、凛ちゃんの誕生祭……………
こ、殺しにかかってくる…………!!!
誕生祭が俺のライフポイントを削っていくぞ~~~(震え声)
今回の話だって、休日を貰えた今日の短い時間で書き終えたものですし……
はぁ、時間が欲しい……
そして、海未。今日は輝いていたぞ!(ドヤァ)
今回の曲は、
スフィア/『CHANCE!』
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もっと早くっ!
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遅くても問題ない