【プロローグ】
みなさん、お久しぶりです。宗方 蒼一です。
先週、うp主がほぼ毎日投稿を行ったために、そのフィードバックで死に体となり果てて、その休養で1週間ほど投稿を停止しておりました。
その期間中に、「信長の野望・創造PK」の群雄割拠編で2回天下を統一しちゃいました。
……………が!!
現在、俺はとんでもない状況下に置かれていることに戦慄しているッ!!!
そう!その状況と言うのは………!!!!
(ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ……………)
「そうくぅぅぅぅぅぅぅん!!!このひよことぉぉぉってもカワイイよぉぉぉぉぉ!!!」
「………うむ!!」
かわいいひよこに囲まれて、俺は悶え死にしそうです。
[ ※蒼一は極度のカワイイもの好きである。特に、ネコ好きである ]
―
――
―――
――――
[ 南邸 ]
「ふふ~ふふん♪ふふ~ふふん♪ふふふふ~ふふ~ん♪」
明るい緑色のちょっとアンバランスな感じにフリルがついた丈長のスカートに、白のソフトTシャツ。それに、髪を結ぶリボンを新しい色のいいモノに変えて、小さなカバンを持ってと。
「よしっと!準備で~きた♪」
うふふ、今日はいつもよりもがんばってオシャレしちゃった♪
蒼くんは喜んでくれるかなぁ?
全身を映すことができる鏡の前に立って、セットしてみた衣服をみて見る。
今の季節にあった色の服を選んでみたんだけど、どうなんだろう?ちゃんと、着こなせているかなぁ?鏡の前で、1回、くるっと回ってみて何かおかしいところが無いかもう一度確認してみる。
「うん!コレに決まりだね!!この服が今日の私の勝負服です!!」
いつもと違う私を見て、蒼くんはなんて言ってくれるのかなぁ?やっぱり、綺麗だよ、ことりって言ってくれるのかなぁ!!?
きゃぁ―――!!もし、そうだとしたら私困っちゃうよぉ~~~!!!
どんな反応が返ってくるのかを想像しちゃうと、いろいろなことが思いついちゃって大変だよぉ~!あ!でも、想像の中の蒼くんよりもやっぱり本物の蒼くんに言われたいよぉ~~~!!
ハッ……!!そうこうしているうちに、もう時間が来ちゃった!!
い、いけない!!待ち合わせの時間に間に合わなくなっちゃうよぉ!!!
私はカバンに必要なものを詰めて部屋を出た。そして、そのまま玄関の方に向かって走っていると、お母さんがリビングの方から出てきた。
「あら、今から出かけるの?」
「うん、帰りは遅くなりそうだけど、いい?」
「ええ、構わないわ。それにしても……ウフフ、その服装なら大丈夫そうね♪」
「そう!?お母さんがそう言ってくれると安心しちゃうよ」
「そうね、それなら蒼一君もイチコロよ♪そのまま、ウチに呼んでもいいのよ?」
「お、お母さん…///// そう言うと、なんだか恥ずかしいよ/////」
「ウフフ、まだまだ青いのね。さあ、早く行かないと待たせちゃうわよ?」
「あっ!!そ、それじゃあ、いってきまーす!!!!」
私はあわてて玄関の戸を開けて走り出しました。今から走って間に合うのかなぁ???
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あらあら、そんなに急いじゃって」
いずみはあわてて出ていくことりの姿を見てほほえましい気分浸っていた。
「つい、この間まで小さな子供だったのに、いつの間にか、あんなに大きくなって男の子とデートをしに行くなんてね」
昔の幼かったころのことりの姿を思い出しながら、今のことりと重ね合わせて、月日が流れる速さを実感していたのだった。
いずみはそのまま自分の部屋に入って行き、そこに飾られてある写真に向かって話し始めた。
「和幸さん、ことりはあなたが知らない間にこんなにも大きく育ちましたよ。そして今日は、あなたが一目置いていた蒼一君とのデートなんですって。そのまま、ことりと交際して結婚までしてくれたら私は嬉しいと思いますが、身勝手なお願いなんでしょうかね?」
そして、いずみは両手をあわせてその写真の男に祈り始めた。
「和幸さん。どうか、今日もあの子が無事に過ごすことができるように助けてくださいね」
そう祈り終えると部屋を出て、残りの家事を終わらせようと働き始めた。
いずみの部屋に飾られてある、男の写真――――
その男の名前は、『南 和幸』―――――
10年ほど前に病で倒れ若くしてこの世を去った、いずみの夫であり、ことりの父親である。
そして、音ノ木坂学院の前理事長であった――――――――
―
――
―――
――――
[ 動物園内 ]
「わあああぁぁぁぁぁ!!!!!蒼くん、見て見て!!!ライオンさんがいるよ!!!!」
「はしゃぎ過ぎて、はぐれないでくれよ?」
「大丈夫だよぉ~~~~!!!」
もう、蒼くんったら心配性なんだから、私は簡単には離れませんよぉ~だ。
だって、今日1日は蒼くんと自由に過ごしてもいい日なんだから、
私が納得するまでずうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっと一緒なんだからね!
今日と言う日を迎えることができたのは、先日、蒼くんが私と穂乃果ちゃんと海未ちゃんに向かって、1人1回だけ私たちの言うことを聞くって言ってくれたんだ。
それを聞いた時、私、驚いちゃったけど、それ以上に、やったぁー!!!って思っちゃった!
だって、あの蒼くんが私の言うことを聞いてくれるんだよ!?そんな夢のようなことが出来るなんて、もう心臓のバクバクと波打つ鼓動が止まらないよぉ!!!
それで、私は蒼くんと動物園に行きたい!ってお願いしたらすぐにOKしてくれたんだ!
ん~~~!!!今日をどれだけ待ち望んだことだろう、蒼くんと一緒にいることができるって思うと、興奮し過ぎちゃって眠ることが難しかったよ!
だから、今日もちょっと寝不足気味かな?てへへ☆
でも、蒼くんと会った時には、もう眠気がどっかに吹き飛んじゃった!
普段よりもとってもカッコいい姿で登場するんだから、もう見ただけでクラクラしそうだったよ~………それに、私の服装を見た時に……
『今日もとてもかわいい服で決まっているじゃないか、ことり。いいセンスだ。特に、そのスカートがことりによく似合っているから余計にかわいく見えるぞ』
………って、言ってくれちゃって/////////////////////
きょ、『今日も』って言っていたよね?と、ととということは、蒼くんは私のことをいつもカワイイと思って見ていてくれているんだね?
………はわわわわ………も、も、もう……お腹いっぱいです………
「どうした、ことり?」
「ふぇ!?な、なぁに蒼くん?」
「急に立ち止ったから、何かあったのかって思ってさ?」
「ううん、何でもないよ。何でもない………」
「?? そうか、ならいいんだけど」
い、言えないよぉぉぉぉぉ………蒼くんのことを考えていたなんて、そんなことを本人の前で言えるわけないよぉぉぉぉ…………
「ことり」
そう言って、蒼くんは右手を差し出してきた。こ、これって、まさか………!!!
「はぐれると困るからさ、手をつなごうぜ?」
「うん♪」
もちろんだよ、蒼くん!!でも、私がするのは…………
(ギュッ!)
私は差し出したその腕に抱きついちゃった☆
そして、私の胸をもっとぎゅぅぅぅっと押しつけて、蒼くんを困らせちゃいます!
「!! 手をつなぐ方じゃないのかよ!?そ、それに、何かが当たっているんですけどぉ!?」
「こっちの方が離れなくって安心だよぉ~~~。そ・れ・に、蒼くんの言う、ナニかが当たっちゃうっていうサービスも付いちゃいますよ♪」
「くっ……!!ガッチリと掴まれて身動きが………!!」
「さあ、早く行こ♪」
「………絶対、楽しんでいるだろ?」
「とぉぉぉぉっても、楽しんでま~す♪」
「はぁ……もう好きにしなさい……」
蒼くんは、しぶしぶと腕の力を抜いて私に身をゆだねてくれました。
うふふ、蒼くんのそういう困った顔を見るのも私は大好きです♪
「さあ!日が暮れる前に動物さんたちをいっぱい見にいこ!!」
「はいよ、ことりの好きなように誘導してくれよ?」
「は~い♪それじゃあ、れっつごー!!」
こうして私たちの動物園デートが始まりました!
―
――
―――
――――
「ねえ!!あれ見て!パンダだよ!!!パンダが見えるよ!!!」
はわぁ~~~~、パンダさんだ!!こうして見るのは久しぶりかなぁ?
ライオンさんのところから歩いて、ゾウさんやキリンさん、そして、カバさんのところにも回って、カワイイ姿を見てきました♪
その中でも、私の目の前にいるパンダさんが今とってもカワイイと感じてるの♪
「あー!!笹を食べてるよ!!あ~ん、カワイイ♡」
パンダさんのあのキュートな姿を見ると心が癒されちゃう!それにあのモフモフの毛がとっても柔らかそうだよ~。触ってみたいなぁ~………。
「あのモフモフ感たまらなそうな気がするッ!触りたい…!直に、触ってみたいッ……!!」
うふふ、蒼くんも私と同じことを考えてる。蒼くんもああいうモフモフなものに触りたいのかな?
そう言えば、この前貰ったニャンコ先生もすっごいモフモフだったなぁ~。
はっ……!もしかして、蒼くんは私と同じカワイイもの好きなのかなぁ?
だったら、私、いい場所を知っているよ!
「蒼くん、次にいこ♪」
「ん?あ、ああ……もう少し見ていたかったなぁ………」
大丈夫だよ、私がもっとかわいくって、モフモフな世界に連れて行ってあげるよ!
この先をまっすぐ進んで行くと…………
「はーい、着きましたー!!」
「こ、これは……!?」
(ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ……………)
「なっ……!?ひ、ひよこ………だと………?!」
「そうです!ここはひよこ牧場なんです!!」
膝までの高さの壁に囲まれたこの空間には、ひよこさんしかいないんです!!
しかも、その数は100匹もいるんだって!!
動いている様子を見るだけでもカワイイのに、モフモフな体を触って、小さな鳴き声を聞くこともできるんだよ!こんなに嬉しいことはないよ~~~♪
(ピヨ♪)
私に近づいてきた1匹のひよこに、おいで~って手を伸ばしたら、ぴょんって跳ねて私の手に乗ってくれたよ!!わあぁぁぁぁ!!!すっごいモフモフするよ~~~~、こんなに小さいのにこんなにあったかいよ~~~♪♪
「そうくぅぅぅぅぅぅぅん!!!このひよことぉぉぉってもカワイイよぉぉぉぉぉ!!!」
そう言って、蒼くんの方を振り返ってみると、すごいことになっていたよ!!
「………うむ!!」
蒼くんはズボンが汚くなることも関係ないって感じで地面の上に座っていたよ!し、しかも、蒼くん目がけてたっくさんのひよこさんたちが集まって来ているよ!!
「うわあぁぁぁぁぁぁ……!!いいなぁ~~~!!!」
いつの間にか、蒼くんを取り囲むようにひよこさんたちが集まって、蒼くんの足に跳び乗っているひよこさんたちも何匹かいるよ!
………あっ!よく見たら頭の上にも1匹乗っているよ!!!
あんなに集まってくれるなんて、羨ましいなぁ~………でも、ちょっと心配かも……?
「蒼くん、大丈夫?」
「ああ、問題ないぜ。この子たちのおかげで癒されまくっているわ~♪」
ふふっ、蒼くんの体に乗っている子たちは蒼くんのことが気に入っているんだね。
この子たちも蒼くんのことが好きだから集まって来ているのかな?
そうだとしたら、私と一緒だね♪私も蒼くんのことが大好きなんだ~♡
でも、こんなに集まるなんて、ちょっと嫉妬しちゃうな。
「あっ!穂乃果のヤツまた昼寝しちゃったよ……」
「えっ?!」
え??どこかに穂乃果ちゃんがいるの???それにこんなところでお昼寝って……
だめだよ、風邪ひいちゃうよぉ………
「蒼くん、穂乃果ちゃんはどこにいるの?」
「ん、ここにいるよ」
「え???」
蒼くんが指さしたのは、足に乗っているひよこさんでした。
「どういうことなの?穂乃果ちゃんはひよこさんじゃないよ??」
「ん?あ、あぁ~………これは、俺が勝手に付けた名前だ」
ひよこさんに名前を付けていたの??それにどうして穂乃果ちゃんの名前なんだろう?
蒼くんは寝ているひよこを手の平に乗せながら話してくれたよ。
「この今寝ているこの子は、さっきも寝ていたんだ。あまり動かないでぐーたらしていたから穂乃果って言っているんだ」
「へぇ~確かに、穂乃果ちゃんは授業中でもよく居眠りしているからね……よく海未ちゃんに叱られていたよ」
「海未もいるぞ」
「ええっ!?」
うそ!?穂乃果ちゃんだけじゃなくって、海未ちゃんもいるの?!
私が驚いている間に、蒼くんはまたもう1匹を手のひらに乗せて話し始めたよ。
「この子は寝ている穂乃果に対して、くちばしで突いて起こすんだ。そして、起きたところで穂乃果に向かってピーピー大きい声で鳴くんだ」
「ふふっ、まるでお説教をしているみたいだね」
「そう、だから俺はこの子を海未と命名したんだ!ちなみに、体に乗っているのには全部名前を付けたぞ」
「えええっ!!?」
この短い時間で体に乗っている10匹全員に命名しちゃったの?!
「まず、このグルグル駆けまわっている子は凛ちゃんで、それを追いかけようとして座り込んでいるのが花陽ちゃん。隅っこにいて俺から距離を取っている意地っ張りな子は真姫、自分だけ目立とうと背伸びしようとしているのがにこ。2匹でくっついていて強気な子が絵里、優しそうな顔をしている子が希だ。そして、この子たちにちょっかいを出している子が明弘ってわけ」
「うわぁぁぁ……蒼くんすごいね。みんなの性格をちゃんと見ているんだね!」
「そりゃあそうだ。みんな同じひよこだけど、それがこの子たちの名前じゃないだろ?1匹、1匹にちゃんと個性があって、同じ子なんてのはいないものなのさ」
「へぇ~、あれ?それじゃあ、私はどの子なの?」
「あぁ、俺の頭の上に乗っかっている子だよ」
「そうなんだ!でも、そんなところにいたら危ないよ?私が降ろしてあげるよ?」
そう思って手を出してみたんだけど、まったく動こうとしないの。それに、掴もうとすると、声を出して威嚇してきたの!突然のことだったから、少し驚いちゃった!
「ははは……この子はどうやら俺に懐いちまったみたいだな。頭を揺らしても、俺の髪の毛を引っ張って降りまいとして頑張っていやがる………まったく、どっかの誰かさんにそっくりだ」
「むっ、それって私のことだよね?蒼くんは私をそういうふうに見ているの?」
「おやぁ~?違うって言うのか?それじゃあ、もう俺にくっつくことはしないってことだな?」
「んも~!蒼くんのイジワル!私が蒼くんから離れることなんてあり得ないんだから!!」
「あはは、風呂まで一緒ってのは、さすがに勘弁してくれよ?」
「うふふ、お望みとあれば体を綺麗に洗っちゃいますよ♪」
「か、勘弁してくぇ………!!」
うふふ、もう蒼くんったら顔を赤くしちゃって~、もうカワイイんだから♪そうだ!今度、蒼くんの家に行った時にご奉仕しちゃおうかなぁ?バイト先で使っているメイド服を着て、『お帰りなさいませ、ご主人様』って言ったら喜んでもらえそうだよ♪善は急げだね!
「そう言えば、蒼くんはどうしてこの子達の名前を私たちμ’sのみんなの名前にしたの?」
私はそのことにちょっと疑問に思ってたの。蒼くんがこの子たちに名前を付けることに驚いたけど、その名前がごく一般的なのじゃなくって、私たちの名前だったから余計に驚いちゃったの。
蒼くんは含羞かんだ顔で答えてくれました。
「この子たちを見ていて、すぐに思いついたのがことりたちだったからさ」
「私たちが?」
「そうさ」
蒼くんはそう言うと、頭に乗っていたひよこさんに、おいで、と言って手の平を近づけると、ひょいとその上に乗っちゃった。ひよこさんがその上で楽しそうに鳴いていると、蒼くんもそれにつられたかのように楽しそうな顔をしていたよ。
「さっきも言ったように、この子たちの個性がことりたちによく似ていたからその名前にしたんだ。もっと単純な名前にしようかと思ったが、やっぱ、こっちの方がより身近に感じて良いと思ったんだ」
「それはどうしてなの?」
「さあな、わからないや……」
「えっ!?わからないって………?」
「ふふっ……なんでだろうな。ただ、ことりたちのことを思うと、どうしても何とかしてやんなきゃいけないなって感じてしまうんだ。このどこに行こうとしているのかわからないひよこたちのようにな……それが重なって、そう呼んじまったのかもしれないな………」
そう言って、手の平に乗っているひよこさんを見つめている蒼くんは、普段私たちに見せているような顔をしていませんでした。穏やかで優しいその顔はどこか懐かしいものを感じました。
私の胸の奥に仕舞ってあるとても大切な思い出…………
それが私の中で、とくんって音を立てて響いたのです。
「なあ、ことり。お前たちがあの講堂でのライブで歌った『START;DASH!!!』の始めの歌詞を覚えているか?」
「うん、確か…〔うぶ毛の小鳥たちも いつか空に羽ばたく 大きな強い翼で飛ぶ〕だったよね?」
「ああ、そうだ。今のお前たちはこのひよこのような存在だ。生まれたてで、空を飛ぶ羽も力もない。そして、いつか育てた者の手から羽ばたき、あの青く広い大空を1人でも飛べるくらいに成長する………多分、俺はその姿が見たいんだと思うんだ」
「私たちが成長していく姿を?」
「俺はお前たちから誘われてから今日に至るまで、ずっとお前たちの成長ぶりを見てきた。そうしているうちに、俺の中で、お前たちがどんな姿に成長してくれるのか楽しくなってきたんだ。教える側だからなんだろうな、俺が持っているものを他人に渡したらどんな人になるのだろうかって…そして、いずれは俺の支えが必要にならないくらいになるんだろうなって、考えたりもするんだ。
………って、そこまで考えたら限がねぇな」
まただ……また私の中で、とくんって音を立てて響いているの…………
今の蒼くんを見ていると、私の思い出の中にあったあの人のことを思い出すの…………
そう、それは私にとってとっても大切だった家族のことを………
「ふふっ、なんだか蒼くんがお父さんみたいに思えるよ………」
「和幸おじさんに?」
「うん……小さかった頃の私によく見せてくれた顔を蒼くんがしているからそう感じちゃったの………」
「……そうか……俺が和幸おじさんに………」
すると、蒼くんは体に乗っていたひよこさんたちを地面に降ろしてから、パンッと手を叩いて散らしちゃいました。どうして散らしちゃったの?そう言おうとした時、蒼くんが先に口を開いたのです。
「これはことりに話したかな?……………和幸おじさんが俺に託したことを………」
「えっ……」
お父さんが蒼くんに……?
その言葉に、私は一瞬だけ体が固まってしまいました。私は今日まで蒼くんの口からお父さんからの言葉を聞いたことがありませんでした。そんな中で、突然、お父さんのことを話し始めるから驚きを隠すことができませんでした。
蒼くんは続けてこう言いました。
「和幸おじさんが亡くなる2日前に、俺は入院していた病院に呼ばれたんだ。その時のおじさんは、ベッドの上で横になっていて、かなりやせ細くなり元気だった頃の面影が何一つ無かった……そんなおじさんに会った瞬間に俺のこの手を握り締めたんだ……!バットのグリップと同じくらいに細くなったあの腕で力いっぱい握りしめた……!どこにそんな力があるのかってくらい力強く握ったんだ………!!」
蒼くんは右手を前に出して、手の平をじっと見つめていました。
多分、この手がお父さんが握り締めた手なんだろう………
私もその右手をじっと見続けました。
「そして、おじさんは俺をじっと見ながらこう言ったんだ……………
『ことりを頼む……!!!』
………その一言だけを言って、おじさんは手を放して眠っちまったんだ………」
「!!!」
………そ……そんな…………そんなことがあったなんて………私は………ううっ…………
私は初めてお父さんの最後の言葉を聞きました………
お父さんは死ぬ間際に、何も言わずに息を引き取ってしまったから、何か思い残すことがあったんじゃないかってずっと思ってたの………でも、それが今日ようやく聞くことができた…………
私の大切で大好きなお父さんの言葉が、大好きな蒼くんの言葉となって届けてくれた…………
………ありがとう………蒼くん………………
泣き崩れそうになった私の体に蒼くんが優しく触れて支えてくれた。
そして、囁くように小さな声でこう語りかけてくれました。
「………ごめんなことり………おじさんからお前のことを頼まれたって言うのに、お前を残して命を散らすようなことをしちまってよ………あの時は奇跡的になんとかなったから、今日、ことりに会えることができた。この前も、奇跡が起こってくれたから、今日、ことりとこうして一緒に過ごすことができた………」
「そう………くん………」
「……もう俺は無茶はしない………ことりを……そして、みんなを悲しませるようなことはしない………俺はことりたちを必ずあの大空を飛べるように成長させてやる………!!約束だ………」
蒼くんは右手の小指を出して、約束の証を示そうとしてくれました。
私もそれに応えるために小指を出して、2人で指切りをしました。
「約束だよ、蒼くん………嘘ついたら赦さないんだからね………?」
「ああ、約束だ………」
―
――
―――
――――
動物園からの帰り道。
私たちは手を繋ぎ合いながら歩いています。
大きいなぁ……こうやって蒼くんと手を繋いで歩いたのはいつ以来だっけ?
私も覚えていないくらい前だったような気がする。でも、この手から伝わってくる温もりだけは覚えているの。温かくって、優しくって………私を包み込んでくれるようなこの感じ………
離したくない………ずっと、このままでいてほしいって思いました。
でも、時間がそれを赦してはくれません………
太陽が沈みかけた時には、もう私の家の前に立っていました。
「ことり、家に着いたぞ」
蒼くんは優しく語りかけてくれるのですが、私は離れたくないって思っているのです。
もう少しだけ、このままにさせて………
流れていく時間に私はお願いをしました。
「あら、蒼一君。ことりを連れて帰ってきてくれていたのね」
後ろを振り返ってみると、お母さんが荷物を持って買い物から帰って来ました。
晩御飯の買い出しにでも行っていたのかな?
スーパーのレジ袋から出ている野菜を見ていると、そう思ってしまいます。
「いずみさん、御無沙汰しております」
「もう、そんなに畏まらなくてもいいんだって。学校の外なんだから縛られなくってもいいのよ?」
「はあ……そうさせてもらいます」
お母さんと蒼くんが楽しそうに話し合っているの見ていた時、お母さんが何かを持っているのに気が付きました。あれは…………お花かな?
「お母さん、そのお花はなぁに?」
「ん?あぁ、これね。これは、リンドウよ」
「リンドウ?」
「そうよ。これはね、和幸さんが大好きだった花なのよ」
「お父さんが……!」
小さくって、青紫色をしているこの花がお父さんの大好きなお花だったなんて知らなかった……
お父さんがこの花のことを好きになった理由があるのかなぁ?
「この花って、あの時の病室にも飾られていましたね」
「ええ、ずっと近くで見ていたいって言ってね、病院の人に無理を言って飾らせてもらっていたのよ」
「そうだったんですか………よっぽど大事に思っていたんですね……」
「ええ、なんてったって愛する娘なんですから………」
「???」
お母さんと蒼くんが話している内容がわからない………どうして、そのお花と私が関係あるの?
すると、お母さんがほほ笑みながら話してくれました。
「ことり。この花はね、あなたの誕生花なのよ。和幸さんはことりの写真と一緒にいつもこの花を眺めていたの。入院していた時もこの花をことりと思って、小さく咲く花の姿を見て、今日もことりは元気なんだねって言って安心していたのよ」
「そう………なの………?」
「だから、ことり。これを和幸さんの写真の前に飾って来て頂戴。ことりが持って行くと、とっても喜んでくれると思うから………」
そう言って、お母さんから持っていたお花を手渡されました。
きれい…………
近くで見ると、余計そう思えるような気がします。
お父さんは毎日このお花を見て私のことを思っていてくれていたんだね………
ありがとう………お父さん
「いずみさん、俺、和幸おじさんに挨拶したいんで、入ってもいいですか?」
「ええ構わないわよ。あ!ちょうど、晩御飯の準備をするんだけど、食べて行かない?」
「おや!いいんですか?それだったら御馳走になります!」
「ウフフ、いっぱい食べていってね♪」
「それじゃあ、手始めにその荷物を持ちましょうか?」
「あら、いいの?それじゃあ、お願いしちゃおうかしら♪」
「おまかせを!ついでに、料理の手伝いもしましょうか?」
「あらあら、そっちの方はいいわよ。蒼一君はことりのことをお願いするわ♪」
「「えっ!?」」
「ウフフ、2人で声が被っちゃって。もう、仲がいいんだから……♪」
えっ!?それって………蒼くんとまだ、もう少しだけ一緒にいてもいいってこと?
お母さん……ありがとう!!
そう考えると、何だかとっても楽しくなってきちゃった♪
久しぶりに食卓が賑やかになりそうだよ!
「蒼一君」
お母さんが蒼くんに声をかけて来ました。
その声にこたえるように蒼くんもお母さんの方を見ました。
「前にも言ったと思うけど、和幸さんからのお願いよ。ことりのこと、頼んだわよ」
「もちろん、任せてください」
えっ?!お母さんはどうしてそのことを知っているの?
その言葉はお父さんが直接、蒼くんに言った言葉じゃ……………あっ……!
私は思い出しました。あの時のお父さんは自分の力では起き上がることすらできなかったことを………それなのに、どうして蒼くんを呼ぶことができたのか…………
その答えは簡単でした。
その空間の中には、お父さんと蒼くんの他に、お母さんも居たんだってことを…………
「ことり、さあ行こうか」
蒼くんが空いた手を伸ばしてきました。私は尽かさずその手を握りしめました。
右にはお母さん。左には蒼くん。
えへへ、こうして並んでみると、なんだか昔のことを思い出すなぁ。家に帰る時は、いつもこうして並んで帰っていたっけ?
うふふ、なんだかとっても嬉しい気分になっちゃった!
「どうしたの、ことり?」
「ん?どうかしたか、ことり?」
2人の疑問を含んだその顔を見ていると、もっと嬉しくなっちゃった。
だって、なんだかみんな家族みたいなんだもん!!!
「ううん、別に何でもないよ♪さあ、早く入ろう!!」
私は蒼くんの手を引っ張って、家の中に入ろうとしました。
その前に、お母さんが家の鍵を開けて扉を開いてくれました。
私はお母さんの後に続いて中に入りました。
「ただいま!!!」
お父さん、私は元気で過ごしています。
最近は、練習がキツくって辛い時もありますが、私を支えてくれる友達と仲間、そして、蒼くんがいるから大丈夫です!
見ててお父さん、私、お父さんがびっくりするくらいのスクールアイドルになっちゃいますよ!
だから、私の成長ぶりを遠くから見ていてくださいね!
(次回へ続く)
どうも、うp主です。
1万文字超えしたけど、ちょうどいい内容となっているんじゃないでしょうか?
では、ここであらためて言わせていただきます。
誕生日おめでとう、ことり…キミは前に、自分には取り柄が無いって言っていたね。
でも、キミは多くの衣装を作ってμ'sを支えてくれた。これはキミにしか出来ない、キミの取り柄だ。
自分を誇りに思ってくれ…俺はそんなキミに出会えてよかったって思っているよ
そして、キミも穂乃果たちと一緒に俺たちを笑顔にしてくれ……!!
ことり、生まれてきてくれて、ありがとう。
更新速度は早い方が助かりますか?
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ちょうどいい
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もっと早くっ!
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遅くても問題ない