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――
―――
――――
『―――――!!!』
『――――!!』
『―――の容態は?!』
『深刻なじょ――――!』
『―――の失血が酷いです!このままでは――――!!』
ここは………?
俺は何をしているんだ?
商店街にいるアイツらが俺が来るのを待っているんだ………
………行きたいのに体が言うことを聞かない………
………重い………だるい………それに痛みも感じてきた………
『先生!!患者が目を覚まそうとしています!!!』
『いけない!今目覚めればショック症状を出して命が危うくなる!早く麻酔を!!』
『はい!…………………今投与しました!』
『よろしい、では、患者を手術室まで運んでください!』
『わかりました!』
………手術?
ということは、ここは病院なのか?
どこかケガをしたのか………?
うっ………感覚が麻痺してきた…………!
い、意識が…………
『――は――娘を助け―――は私がキミ――ける番だ――』
………うっ…………うう………………
―――その後、俺は深い眠りについた―――
―
――
―――
――――
………
…………………
…………………………………
……………………んっ…………………………
長く眠っていたようだ。
目の前に見えるのは真っ白な部屋。
全く何もない。
そんな部屋の床に俺は眠っていたようだ。
俺は横たわっていた体を起こして、その場に立とうとした。
「あれ?体が……………重くない?」
眠る前はあれほど体が重く、だるく、痛みを感じていたのに、今はそういったことを全く感じさせない。
腕を回したり、脚を上げ下げしたり、体を大きくひねらせてみても何も感じない。
全く問題ないように感じられた。
だが、違和感があった。
痛みが全く感じない、いや、感じなさすぎる!
体をまたひねらせてみた。
いつもであれば、ある程度のところまできたら痛みを感じるのだが…………
「痛く………ない?!」
試しに通常ならばありえないところまでひねらせてみたが、それでも痛みを微塵も感じることができなかった。
「どういうことだ…………?」
《それはこの空間が特別なところだからだよ》
「!!!」
どこからか声がした。
男……?いや、女の声にも聞こえたぞ……?
それに、老いているのか、幼いのかはっきりとしない!!
どういうことだ?
《こっちだ、少年。右を向きなさい》
その声の指示通りに右を向いたら、全身を布のようなもので覆った人らしき者がそこに立っていた。
「お前は誰だ?!」
《誰と言っても私には正式な名前は無い。………そうだな、強いて言うならば……“はじめ”とでも呼んでもらおうか?》
「【はじめ】………?」
《そうだ、そしてこの空間は私の仕事部屋みたいなものだ》
「仕事部屋?この部屋には何にもないのにどうやって仕事をするんだよ」
《うむ、初めてここに来る者はいつも同じようなことを言うね。まあ無理もない。
「待て!!俺たち人間だと!?だったら、お前は何者なんだ!!」
《待て待て、では、順番に説明させてもらうよ》
【はじめ】は何かを持つように両手を広げて前に出した。
すると、そいつの手が白く光り出し………一つの分厚い本を持っていた。
《まずは、私の仕事について話させてもらうよ》
【はじめ】は俺の近くに寄って来た。人一人分の距離を保ちながら語り始めた。
《私はキミたちの運命を管理する者、アドミニストラジオと呼ばれる役職についている者。そして、この本は人間の運命を書き記したものだ。こうした本を私が一つ一つに目を通し確認をしてからこのように別の空間にこの本を送って保管しているのだ》
【はじめ】が手に取っていた本は、さっき出てきたのと同じように白く光りながら消えていった。これが別の空間に移動させるということなのだろう。言っていることの意味は、だいたいではあるが理解はできた。
だが、
「!?」
なぜ、今、俺が考えていたことを言い当てたんだ?!顔に出ていたとしても、俺の考えていることを一言も間違えずにどうしてわかったのか?謎だ………コイツはいったい何者なんだ……!?
《そう考えるよりも、まずは私の顔を見て、話を聞いてほしい》
【はじめ】の言うように俺はアイツの顔だろうところに目を向けた。全身が布のように覆われているから、どこが頭なのかがはっきりと理解することができない。ただ、アイツの体の中で一つ上に飛び出ているものがあったので、それが頭なのだろうと感じ、それを見ていた。
《そうだ、それでいい。………では、この本を見てくれ》
【はじめ】は、さっきと同じように光の中から本を取り出した。しかしそれは、さっきの本とは比べ物にならないほどの分厚い本だ。………さっき、ああいった本には、誰かの運命が書き記されていると言ってたっけ………だとしたら、誰の本なんだ?
《興味があるようだな。これがいったい誰の運命が書き記されている本なのか気になるのだろう?》
俺は小さくうなずいた。あんなに分厚い本なんだ、かなりすごい運命がその人に待っているんだろうな。
《ふっふっふ……………》
「?」
【はじめ】が急に変な笑いを出した。それは呆れたようにも、また、哀れむようにも聞こえる変な笑いだ。
いったい何がおかしいのだろうか?
《興味があってもこれが誰の運命なのか、まだ、気付かないようだね………》
「???」
気付かない?………どういうことだ?……俺はその本の運命が誰のものかを知っているのか?
誰だ………?
俺の親か?兄貴か?それとも、明弘………リトルチームの仲間か?穂乃果たちか?
………いや………どれも違う………………
………コイツが言おうとしているのは…………
《キミだよ、宗方 蒼一くん》
「!!!!」
…………俺自身だ。
「なぜ、それが俺の本なんだ?!なぜ、そんなに分厚い!!さっきの本と比べても数倍もの厚さだ!!!いったいなんだって言うんだ!!!?」
あの分厚い本が俺のだとわかってから俺の中で何かがうごめいた気がした。それは何と言ったらいいのか………ドロッとした固い液体………油………いや、まるでスライムのようなべっとりと何かにまとわりつくような感じだった。
それを感じ取ってから衝撃的な焦りを感じるようになった。
なんだ………何かが………俺の中で起ころうとしているのか…………?
《落ち着きなさい、少年。焦ったからといって何かが今変わるわけではない》
「ぐっ………!!」
【はじめ】は、俺を制止させるように右手を前に出した。
わかっている……焦ってもどうすることもできないことぐらい。だが、じっとしていられないのだ……!
《この本がなぜこのように分厚くなっているのかと言うと、
「んなっ!?なぜ、そんなに存在するって言うんだ!!!」
《私にもわからない。だが、一つ言えるとしたら
「どういうことだ………?」
《一番いい例が、キミが先ほど少女を助けたことだ。
「………じゃあ、あの子を助けなければ、自分の運命は変わらずに済んだ………ということなのか?」
《その可能性はあった。だが、そうでないということもできる》
「………運命はわからないというのか?」
《その通りだ。………いや、この役職にとってはそうであると困る》
「なぜ?」
《運命を管理するものにとって、運命が数多にあり定まっていないというのは前例がほとんどない。どうにか定めるために私自身が介入して修正を加えなければならない………》
「ならそうすればいいんじゃないのか?」
《私も初めはそう思った、だが、キミを見て興味が出てきた》
「何がだ?」
《この数多の運命から、キミはどのような運命をたどるのか?私はそれを見てみたい》
「只単に面倒なだけじゃないのか?」
《ふふっ、確かにそうかもしれない。だが、様々な人間の運命の結果を知る私にとって、結果が分からないキミは、どういった運命をたどるのか、それを考えるのがとてもおもしろく思えるのだ》
「俺を娯楽か何かのネタにする気なのかよ…………」
《無限と続く時間の中では、そうした刺激は新鮮なのだよ。……私を楽しませてくれ》
【はじめ】は、今度は楽しそうな声で笑っていた。
くそっ!俺を見て楽しむってことかよ………なんか腹が立つな。
《………そろそろ、キミをもとの場所に返してあげないといけないな》
「っ!そうだ!俺はあの後どうなったんだ?!」
《キミはあの少女を助けた後、倒れて病院に運ばれたのだよ。助けた際に倒れてきたものが背中に当たって、多くの血が流れ出た。幸いにも、
そういうと、【はじめ】は手を俺の目の前に出して何かを喋った。
すると、俺の目の前が白く光った。まるで、さっき本が光の中に包まれて別の空間に送られたあの状況のようだ。
《3つだけ、キミにいいことを伝えてあげよう》
急に何かを言い出した。なんだ?
《1つ、キミの運命が変わろうとする時、現実世界でも何らかの形でその兆しが見えるだろう。そう………例えば、
ノイズ?ラジオとかでよく聞く、あの砂嵐のような音か?
《キミ自身の耳でその音を捉えることは難しいかもしれないが、その瞬間、キミの運命は異なった方向へと進んでいくだろう》
運命が変わる………そう言われても、あまりピンとこない。自分自身でもどういう運命を辿っているのかですら分からないのだから何とも言えない。
《次に、私の友人が気まぐれで、キミの体にとある力を与えてしまったようだ。だが、その力は今後の役には立つものになるだろう》
力???しかも、それを勝手に付けるって…………神様か何かの悪戯じゃないのか?
《身体能力を向上させるものだそうだ。それをどのように使うかはキミ次第だ》
身体能力をか………それは、ありがたいかもしれないな…………!
その力があれば、夢に向かって大きく前進が出来る!!!
《…………最後は、キミの運命はこの後も大きく変わるだろう。それが良いものなのかまでは言えないが、そこには
娘?それは女の子のことを言っているのか?
《その娘たち………いや、“
女神…………?それが俺の運命を決める?
お前は一体何を………!!
そう思った時にはすでに目の前は真っ白な光に包まれた。
そして、何かに引き込まれるような感覚がした。
次の瞬間、俺は…………真っ白な天井をじっと眺めていた。
(次回へ続く)
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