蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第二章 “過去”を転じて“今”と為す
Act.2


 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

[ ??? ]

 

 

 

 

― …………………。

 

 

 

― 私は【はじめ】から手渡された本、『宗方 蒼一』という男のことが書かれた本を記載されているページまでを読み終えた。

 

 

 

 

― 【はじめ】から指定された場所から読み始めたが、この『蒼一』という男は何とも掴みどころのない人物のように感じてしまう。

 

 

 

― 喜怒哀楽といった感情を表に出してはいるものの、私から見れば、その表情は仮面を被った偽りのものでしかない。

 

 

 

 

 

― あの男はいったい…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《実に不思議な存在だと思わないかい、【アル】?》

 

 

 

 

 

 

― 【はじめ】は、実に陽気な声で私に話しかけてきた。

 

― 何がそんなにおもしろいことなのか、私には理解することは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

― しかし、不思議と言えば不思議な男だ。

 

― 掴みどころがないと言うことの他に、あの男には何か特別なものを感じ取ることができる。

 

― それは人徳と言うものなのだろうか?

 

― 確かに、人を惹き付ける才能は持っているように思えるが、それだけではない。

 

― もっと別の……既存の言葉では言い表せない何かを備えているように感じる………

 

 

 

 

 

 

《ふふっ、【アル】はそのように考えるのですね。既存の言葉では言い表せない……か……》

 

 

 

 

 

 

― 【はじめ】は、意味がありそうなことを口に出そうとしていたが、途中で思い留まり、語るのをやめてしまった。

 

― いったい、何を………?

 

 

 

 

― そう言えば、【はじめ】は、さっき“運命を狂わす”などと書かれていたもの書き残していたが、あの男が、『絢瀬』と言う女を助ける時に、生じた不可解な現象のことを指しているのだろうか?

 

 

 

 

 

― 『蒼一』は、『絢瀬』を救う力を願った。

 

― すると、どうだろうか……現世の空間が歪み、今、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

― そして、そこに浮かんでいたカケラを手に取った………

 

 

 

 

― その瞬間、それまで書かれていた内容がまた書き換えられる現象が生じた。

 

 

 

 

 

― そして………『蒼一』は手にした力で駆けだし、『絢瀬』を救った。

 

 

 

 

 

 

 

― 書き換えられる前、()()()()()()()()()()()()()()()を『蒼一』は変えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 『蒼一』とは………人間なのだろうか………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ふむ、その見解も実に興味深いな。確かに、【アル】がそのように感じてしまうのは当然かもしれない。だが【アル】、彼は紛うことない人間なのですよ。ただ、特殊な人間(アブノーマル)なだけなのだよ》

 

 

 

 

― 特殊な人間(アブノーマル)………?

 

 

 

 

《そう、彼のような『身体強化』を意図的に行えることや、運命を狂わす………いや、『運命から抗う力』を行える人間のことを言うのだ》

 

 

 

 

― それは1人の人間が2つも人非ざる力を手にする稀な人のことを指すのなのだろうか?

 

 

 

 

《いや、そうではないのです。1人の人間が1つ持つのが常であった。だが、彼はそうした特殊な人間(アブノーマル)の中でも、力を2つも持つ人間。それに、彼が元々持っていたのは、『運命から抗う力』しかない。もう一つの『身体強化』は後付けされたものにすぎない》

 

 

 

― 後付け……?

 

 

― 人非ざる力は後から手に入れることができるものなのか?

 

 

 

《それは可能です。過去に一度だけ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もある。それも特殊な人間と呼ぶことができた。だが、今はその能力はすべて取り上げられて、その子供たちは、今は普通の人間として生活しているはずだよ》

 

 

 

 

― 過去にそんな事例があったことが問題のように感じることが普通なのだろうが、私が立つこの空間自体がすでに問題の塊みたいなものであるため、その事例がとても小さきことのように思えてしまう。

 

 

 

― となると、その事例のことを含めると………

 

 

 

 

 

 

《『先天性』と『後天性』の2つが存在するなかで、『蒼一』はその両方をパターンを持つ、故に、特殊な人間(アブノーマル)の中でも稀な事例である。そう言いたいのですね?》

 

 

 

 

 

 

― ……………………………。

 

 

 

 

― ………人が考えていることを見透かされるのは、気分がよいものではないものだ。

 

 

 

 

 

 

 

《そして、『運命から抗う力』と言うのは、我々、運命を管理する者(アドミニストラジオ)にとってとても厄介な存在なのだ…………》

 

 

 

 

― 厄介?それはどういうことなのだろうか?

 

 

 

 

 

《人間には、すでに決まっている『運命』が神より与えられている。だが、その『運命』を自らが変えると言うことは、神の力や業を必要としない存在となる。つまり、神と同等の存在となるということだ》

 

 

 

 

― !!!

 

 

 

― 私は耳を疑った、神と同等の存在となる?そんなおかしな話が存在するのか?

 

 

 

 

 

 

《故に、我々は彼()見張り続けているのだ………》

 

 

 

 

 

 

― そう言うと【はじめ】は、本を手にとって一度閉じてから最初のページをめくり始めた。

 

 

 

 

 

【 199Ⅹ年 12月 16日  宗方 蒼一 誕生 】

 

 

 

 

 

 

― 私の目に最初に飛び込んできたのは、その1行だった。

 

― このページは、まだ読んでいない個所だ。

 

 

 

 

 

― ここに、あの『宗方 蒼一』のすべてが書かれてあるのだな………

 

 

 

 

― 私は、自然とこの男に興味を抱くようになっていた。

 

― 彼がこれまでに歩んできた道を私は見て見てたいと感じていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《このページをめくれば、キミの知らない彼のことがたくさん書かれている。生い立ち、性格の形成、そして、()()()()()()()()………》

 

 

 

 

 

― 一瞬、【はじめ】の声に弾みが無くなり、暗く落ち込むように語っていた。

 

 

― 何か思うところがあるのだろうか?

 

 

―それほど、何か悪いことでもあったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

《あの日………彼は、自らの運命を変えてしまった。輝かしい未来を捨て、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……なんと、痛ましきことなり……》

 

 

 

 

 

― 【はじめ】は、開かれたページを指でなぞり始める。

 

― その口から出るその言葉は、なんとも重く、苦しいもののように聞こえた。

 

 

 

 

 

 

― 十数ページめくったところで、【はじめ】は手を止めた。

 

 

 

 

 

 

 

【 200Ⅹ年 10月 XX日 交差点にて―――――― 】

 

 

 

 

― そのページに書かれていたのは………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― ()()()() ()()()()()()()()()()()()――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(次回へ続く)

 

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