・・・あれは嘘だ。
蒼一『ダニィ!?』
第4話だ、始めるよ。
<前回までのあらすじ!!!>
穂乃果から音ノ木坂学院が廃校になってしまうかもしれない、という連絡を受け、
蒼一は穂乃果自身が廃校にならないためにはどうすればいいのかを考えるようにすることが大事であることを伝えると同時に穂乃果を助けることを約束した。
そして今は・・・
腹が・・・・減った・・・・・。
そう言い残して倒れてしまった!
さて、蒼一の運命はいかに・・・!? 早くも主人公がゲームオーバーなのかぁ!?
(実況者:滝 明弘)
誰のせいだよ・・・・
―
――
―――
――――
(ぐるるるるるるるるるるる・・・・・・)
あぁ・・・・腹が・・・・減ったぁ・・・・
明弘による音ノ木坂学院に対する、ありがた~い説法は6時間以上続いた。
つまりだ、昼飯もおやつも食べられず、
ずっっっっっっっっっっっっっっっっっっと、聞かされていたってわけさ!!!
おかげで、空腹のあまり倒れちまったじゃないかぁ!!!どうしてくれるんだよ!!!
しかも、俺をおいて一人で帰るってどういう了見だよ!!!ぷざけるなぁ!!!
(ぐるるるるるるるるるるるるるるるるるるるr・・・・・・・)
あぁ・・・怒るのもしんどくなってきたわ・・・・
その後、なんとか立ち上がり、家路へと向かうが・・・
さすがにやばいな、空腹で足がふらふらしていやがる・・・
どこかで、何か食べないと・・・駄目だ・・・店が無い・・・
あったとしても、すごく高い値段で出されるモノしかない・・・
今日はそんなに金を持ってないんだぞ・・・
世の中は・・・残酷すぎる!!!
あぁ・・・神様、仏様、女神さまぁ・・・御恵みをぉぉぉぉぉぉ・・・・
「・・・あれ?蒼一?こんなところでどうしたん?」
ふと、呼ばれた方へ振り向くとそこに立っていたのは、
穂乃果たちとは違ったもう一人の友人で幼馴染の東條 希だった。
「・・・おぉ・・・希かぁ・・・お前こそここで何してるんだ?」
「ウチか?ウチはさっきまで明神様のとこでお手伝いをしとったんよ。
今はその帰りや」
「そうか・・・」
関西弁を話す希は始めて会った人からすると、関西人?と思う人はいるだろう。
だが、希は根っからの東京の千代田人、関西人ではないのだ。
なぜ、そうしたしゃべり方なのか、それはみんなと親しみやすくするためだということで
今はこういう風にしゃべっている。
人にはいろいろと事情があるんだよ。
「そんで、蒼一はどうしたん?」
「俺は大学の帰りだ・・・今日入学式があったばかりなんだよ・・・」
「へぇ~そうなん!ウチも今日始業式があったんよ!学校の友達と久々に会えるんは楽しかったで!」
「そうか・・・希にも友達ができたのか・・・おじさん、うれしいよ・・・」
「んもー!からかわんといて!そのくだり、前にも聞いたことあるんだけど?」
「ははは・・・わりぃ。昔のことを思い出したら、今の状況はありえねぇって思ってよ・・・」
「えー!ひどーい!蒼一の意地悪!!」
「はっはっは・・・・」
そう、俺が知っている限りでは希はずっと友達がいなかった。
希の両親が仕事の関係で転勤することが多く、しかも、その場所に留まっている期間が短い時もあったため、友達をつくる機会が無かったのだ。
俺が希と会ったのが小学校の頃で、学年は違ったが授業の関係で一緒に勉強したのが最初だった。その時から、すでに何回か転校をしていたから友達はいなかった。
そんな希に声をかけ、一緒に遊び始めて友達になった。
希にとって、俺は小学校時代における唯一の友達だと言っていたが・・・
それはそれで問題だろう・・・
そんな過去を知る俺にとって、希の口から俺以外の『友達』の言葉が出てくるのに感動を覚えてしまうのだ。
うんうん、成長したんだな・・・
「・・・おおっと・・・!」
やべぇ!空腹でふらふらしていたのを忘れてた!!まずい、このままではまた倒れてしまう!
それだけは何としても避けたい!!
そこに・・・
「蒼一!?」
希が近寄ってきて俺の体を支え始めた。ありがてぇ・・・・もうだめかと思った・・・
「どうしたんよ!なにかあったん!?」
「いや・・・大したことじゃないんだけど・・・ちょっとな・・・腹が減ってるんだ・・・」
「えっ!?どうして!?・・・もしかして、御昼食べてないん?」
(こくり)[うなずく]
「よし!ウチに任せといて!!ウチが美味しいご飯作ったるで!!!」
えっ!マジですか!・・・やべぇ・・・希が今、女神に見えてきたぞ・・・!
ありがとう・・・俺の女神さまぁ・・・!!!
「・・・頼む・・・希の・・・一番いいものをください・・・」
「任せといて!!!」
そう言って、俺の肩を組みながら希が住むマンションへと向かっていった。
あれ?希って結構、力があるんだね?知らなかった・・・
あっ、でも言ったら怒られそう・・・
希自身もか弱い女の子です、と言っているので、こんなことを言ったらどうなるか、
わかったもんじゃねぇな・・・普段から怒らない子ほど怖いものは無いって言うからな・・・おぉ・・・こえぇ・・・こえぇ・・・
「・・・なんか言ったん?」
「いえ、なにも」
やべぇ、気付かれるところだった・・・・!
―
――
―――
――――
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
あぁ~うまかった・・・カレーを食べたのは久しぶりだったなぁ~。
しかし、黒いビーフカレーとは・・・希、なかなかやるじゃないか!!
「美味しかったぜ!俺の胃袋を完璧に掴んだのはお前が初めてだぜ!」
「そうなん?そう言ってもらえるとうれしいわ~作った甲斐があったわ~」
実際に食べてみて本当においしかったのだ。黒く濃厚なルーには煮込みの時に抽出されたであろう野菜のうまみエキスが沢山出ており、また、具材として入れている牛肉からの肉汁がルー全体をまろやかにしてくれている。ご飯ではなく、パンで食べても・・・あぁ、うまそうだなぁ。
注文通りの一番いいものを用意するとは、やるな希。
「希はいい嫁になりそうだな~」
「ブフッ!!!な、何言うとんよ!は、恥ずかしいわ!!」
そういって、顔を両手で覆い蹲ってしまった。
あっ、顔が赤くなってる。おもしろいなぁ~(にやにや
「まあ、冗談は置いといて。希に聞きたいことがあるんだ。」
「んも~!何なん?」
「希が通っている音ノ木坂学院のことなんだが・・・」
「っ!」
音ノ木坂という言葉を発した途端に希の体が少し動いた。
あの様子だと最後まで言う必要はないようだな・・・
「・・・そんなに悪い状況なのか?」
そう声をかけると、希はこちらに顔を向け真剣な表情になり話しだした。
そこにはいつもの希ではなく、音ノ木坂学院生徒会副会長 東條 希がそこにいた。
「・・・正直言って、とてもまずい状況やね。ウチらの学校に入学してくれるだろう希望者が全くというほどにおらんのよ・・・ここ数年、入学希望者がだんだん減っていたということもあってな、理事長は難しいと判断して・・・廃校にしようってことになったそうなんや・・・ウチら生徒会はもう少し待てへんやろかと理事長にお願いしたんやけど・・・それでも、今年の学校説明会までが限界やって・・・」
「・・・・」
希はしゃべっていくうちに俺の顔を向いていた目線がだんだんと下の方に向いて行き、仕舞いには顔が下を向き、しゃべりにも力がなくなっていくのを感じられた。
「これも時代の流れってやつなんやろうな・・・駅前にできよったあないきれいな学校がウチらの古い学校よりもええんやろうなぁ・・・廃校に追い込まれるのも・・・仕方ないことやったんやろなぁ・・・」
この時、希が不思議な行動をとった。
視線を左に逸らした・・・?
何故逸らす必要があったのか・・・?
そんな疑問が俺の頭の中でぐるぐる回っていた。
そして、俺の中にある一つの答えが思い浮かぶ。
それは・・・
「・・・希・・・それはお前の本心か?」
「っ!!」(びくっ)
俺が放った言葉を聞いて体を一瞬だけ震わせていた。そして・・・
「ど、どうしてそない思うんや?」
少し声を震わせて俺に問いかけてくるが、希は明らかに動揺しているようだった。
「お前は自分に嘘をつく時、よく視線を逸らす癖があるだろ?今だって、顔を逸らしながら話しているところがあった。それはつまり、自分の本心から出たものじゃなく、偽りの自分から発せられたもの、自分にそう言い聞かせて、この現実を無理やり受け入れさせようとしているんじゃないのか?」
「・・・・・」
希は黙っていた。
下を向いて、ただ黙っていた。
しばらくの沈黙があった後、希の口が開いた。
「・・・蒼一は何でもお見通しなんやね・・・・・そうや・・・ウチは自分に言い聞かせとったんよ、この現実を・・・いつか廃校になるんやろうとは去年から思っとったけど、それが今年からなんて・・・考えもせえへんかんった・・・生徒会で話し合ったり、理事長と直接話をしても状況は何も変わらんかった・・・せやから、受け入れようと思ったんよ・・・これが現実やって・・・」
下を向いたままの希の言葉に重々しいものを感じた。怒りや憎しみとは違う別の感情・・・
『哀』
・・・その感情がそのまま言葉となって俺にひしひしと伝わってくる・・・。
「・・・けど・・・・けど・・・・・けど・・・・!!」
発する度に大きくなる声、そして、希が俺の顔を向いた時、
彼女の瞳から大粒の涙がぼろぼろと流れ落ちていた・・・
「ウチは嫌や!!ウチの学校が無くなるんなんて考えとうない!!!」
希から発せられた哀しみのこもった叫びが部屋中に響き渡った。
「・・・ウチにとってあの学校は初めて入学から卒業を迎えることが出来るんやと思っとる場所なんや!!ウチにとって、大切な・・・大切な思い出の場所なんや!!!
ウチから思い出をとらんといてぇ!!!!」
そう絶叫しながら抱きついてきて泣き崩れた顔を俺の胸に押し付ける。
彼女の哀しい気持ちが直接俺の心に伝わってくる。
希の両親が仕事の関係で希自身も各地を転々としなければならなくなったため、
思い出と呼べるような場所は希の中には存在していなかった。
唯一、自らの意志で見つけた場所があの音ノ木坂学院なのだ。
それが無くなる・・・いや、この世からその存在が失われてしまうということは、
なんとも悲痛なことだろう・・・
俺自身もその哀しみに圧倒されてしまいそうだった・・・
だが、俺には・・・彼女を・・・希をその哀しみから解放させなければならなかった。
俺は彼女を抱きよせ、右手で頭をなでながら「大丈夫、大丈夫だ」と何度も励ましを送った。
そして・・・
「心配するな、俺が何とかしてやる。だから、もう泣くんじゃない」
その言葉を聞いて、希は泣きやみ、俺の顔をじっと見つめた。
「俺の幼馴染・・・いや、お前の後輩がお前んとこの学校を廃校になるのを阻止するために何か策を講じているところだ。そして、俺はその策を全面的にバックアップして、成功させてやるって約束しているんだ。お前だけじゃない、いろんな奴が廃校にならないようにするために考えているんだ。もちろん、その中には俺も含まれているけどな。・・・だから、お前一人で抱え込む必要なんてないんだ。お前には、まず、俺というダチがいるだろ?そのダチに少しは相談して、抱えている重荷を減らすようなことをしろよ。抱え込むと辛くなるだけだからな・・・」
「~~~~~~!!!!!」
そういうと、希はまた泣き出した。
俺に抱きついてきて、力強く大きな声で泣いた・・・・
よっぽど辛かったんだろうな・・・
・・・よく耐えたな・・・
〈ザー・・・ザッ!〉
(ぎゅううううううううう・・・・・・・・)[何かが絞まる音]
んっ?今気付いたが、希のヤツ首に抱きついていやがるっ!あっ・・・
・・・ヤバイ!コレ完全に入ってるよ!入ってるよ!!!ぐおおおおおお!!!!
い・・・息があああああ!!!!
く″る″し″い″い″い″い″い″い″い″!!!!!!
―
――
―――
――――
しばらく、希からのネックホールドを喰らい続けたがようやく気付いてくれて止めてくれた。
・・・あぁ・・・ヤバイ・・・本当に逝くところだった・・・
苦しみから解放されて息を整えている時に
「蒼一、ありがとな・・・」
そう落ち着いた声で言ってくれた。
「いいんだよ、別に。何かあったらまた相談しろよ?」
「うん!」
そう言った後、希の頭をもう一度なでてからその場を後にした。
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「『大切な思い出の場所』か・・・こりゃあ、責任重大かもしれないな・・・・」
そんなことを思いめぐらせながら、俺は帰路に向かっていった。
「やっぱり、希って力が強くなってるんじゃねぇか・・・?」
そんな疑問も頭の中でめぐらせながら、絞め付けられて痛む首に触れていた。
(次回へ続く)
何故に早く投稿するようにしたんだって言われるかもですが、
理由として、真姫ちゃんの誕生日だったことや書く余裕があったから書いた。
ただそれだけなんです。
真姫ちゃんいつになったら登場するんでしょうかねぇ・・・
今回は希を登場させました。
蒼一の幼馴染の一人として登場させていますが、性格に少し修正を加えています。
希って自分の気持ちをそう簡単に打ち明けないようなタイプかなぁって思ってまして、そこを信頼における人物に対しては打ち明けるようにしてみたんです。
蒼一は中々信頼できる男だそうですが、自分で書いていて羨ましいの一言に尽きますわ・・・
次回投稿は土曜になってからにしていますので、よろしくお願いします。
今回のお勧めの曲は、アニメ『最終兵器彼女』から
杉内光雅/『夢見るために』
更新速度は早い方が助かりますか?
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ちょうどいい
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もっと早くっ!
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遅くても問題ない