蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第56話





抗うココロ

 

 

【プロローグ】

 

 

[ 屋上 ]

 

 

「う~ん………」

「どしたよ兄弟?さっきから唸ってばっかでよ?」

「う~ん……解らんことがあるのだよワトソン君。これは迷宮入りになるかもしれないぞ?」

「何そのホームズ的発言は?事件でも起こる予定なんですかい?」

「言っただけで起こっちまったら俺は第一級フラグ建築士になれるぞ?」

「あっはっはっは!!ソイツはいいねぇ~♪俺はラッキースケベの方を所望するぜ♪ぐへへ……」

「海未ポリスを出動させるぞ?」

「サーセンでした!!!」

 

 

しかし、絢瀬の言葉にどうも引っかかりを感じてしまう……何故、このタイミングで話したのか?やはり、理解に苦しむことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

(バンッ!!!!!)

 

 

 

「「なにッ!?」」

 

 

急に扉が力強く開いたので、俺と明弘は驚いて飛び跳ねてしまった。一体何が………

 

 

 

 

「そういちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

扉から出てきたのは希だった。とても焦ったかのような、悲しんでいるような……なんとも、不可解な叫びをあげてやってき…………………

 

 

 

(ゴスッ!)

 

 

 

「なにィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!?????腹をよじらす刺激的なパッションんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

穂乃果と同じような感じで俺の腹に目掛けて頭から入ってきやがったぁぁぁぁ!!!ぐわあああああああああああ!!!!一撃必殺を喰らっちまったかのようだぁぁぁ!!!痛ィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!た、倒れるぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ………うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」

 

 

 

 

しかし、何か様子がおかしかった。奇怪な行動をとる希でもこんなことをするはずもないし、ましてや、こんなに泣く希を見るなんて数年ぶりかもしれないのだから………

 

その刹那、悪寒が全身に走り回った。どうも嫌な予感がする………俺は痛みをグッと押し殺して希に尋ね始めた。

 

 

 

「希、一体何があった?!」

 

「うっ……うぅ………えりちが………えりちがぁ……………」

 

「絢瀬が!?絢瀬に何かあったのか!!!」

 

「うぅ………うっぐ……えりちが………ひっぐ……………えりちが壊れたぁ…………うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!」

 

 

「まさか!?…………そんなまさか……………」

「兄弟!!ソイツァもしかしなくともだぞ!!!」

 

 

明弘も希が語った言葉の意味に気が付いたようで、俺の考えが正しいことを証明するために話しかけてきたのだ。起こってほしくなかった最悪の状況が起こり始めたのだった……

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

 

『お前たち、事は一刻を争う。ただちに、絢瀬を探し出すんだ!!!』

 

 

 

俺は練習を中断させて、メンバー全員で絢瀬の捜索を開始した。

普通だったら生徒会室にいるはずなのだが、見当たらなかった。生徒会室は誰もいない時には施錠して、鍵を職員室に持っていき返すことになったいるのだが、鍵も返っていない状況であったため、まだ、学校のどこかに居るに違いないと踏んだのであった。

 

 

もし、希が言ったことが正しいのであるならば、今の絢瀬は………心を持たない人形と同じなのだ。そんなアイツを放っておくと、何を仕出かすかわからない………どうしても、最悪のシナリオになる前に探し当てたいところだ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シュシュッと、参上!島田です!!」

 

 

忍者の如く現れた島田は、さっき連絡をして呼び寄せた。状況はすでに把握させており、島田が張った学校中の情報網を駆使させて探させているのだ。

 

 

「首尾はどうだ?」

「はい!3階から屋上にかけて対象は無し!また、体育館にも姿見えず、です!」

「わかった、引き続き捜索を頼む!」

「了解!」

 

 

島田の情報によれば、3階以上は無し……っと。それじゃあ、1、2階と校庭のみとなるか………穂乃果たちに連絡しなくては………………

 

 

 

 

 

 

(TLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLL………………)

 

 

 

 

 

ん、誰からだ?………明弘か!!

 

 

「俺だ!どうした!?」

『兄弟!俺たちゃぁ今、1、2階を捜索しているぜ!外の方は今、東條と穂乃果を向かわせているところだ、兄弟はそっちに合流してくれ!!』

「わかった、それじゃあ頼むぞ!」

『応よ!!』

 

 

 

(ピッ)

 

 

 

さて、早く見つけねば……………

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

[ 校舎正面玄関前 ]

 

 

 

「お~い!蒼く~~~ん!!!」

 

 

外に出て見ると、穂乃果が先に出ていて俺を待っていてくれていた。

 

 

「絢瀬は?!」

「ううん、見つからないよ…………絵里先輩どこに行ったんだろう?」

「ここは割と広いが、アイツはよく目立つからすぐに見つかるだろう…………手分けして探すぞ!」

「うん!」

 

 

 

穂乃果はアルパカ飼育小屋の方に、俺は中庭の方に向かっていった。

 

 

俺の方は至って何も変わらない様子だったが、生徒が誰1人いなかったことが少し不可解だった。

穂乃果の方も絢瀬の姿を見つけることは出来なかったそうだ。一体どこに行ってしまったんだろうか?

 

 

 

遅れて数分、希も合流して現状を報告し合った。

 

 

「蒼一!えりちは!?」

「いや、まだだ。中庭の方にもアルパカ小屋の方にも居ないそうだ」

「そうなん……………ウチがもっとしっかりしとったらこんなことにならんかったのに………」

「希!!起こってしまったことを後悔するんじゃない!!見つけたら後悔した分、何かで返してやんな!」

「う、うん!わかった!!」

「よし!それじゃあ、またどこを探すのか決めるぞ!!」

 

 

さっきは探しても見つからなかったが、もう一度探してみれば見つかるかもしれない!さあ、どこに行くか決めようじゃないか!!

 

 

 

 

 

 

すると、穂乃果が………

 

 

 

 

 

 

「ねぇ…………蒼君……………あれって……………」

 

 

 

穂乃果は何かを見つけた様子でとある方向に向かって指を指示した。

 

俺と希はその指の先の方を見て見ると………………

 

 

 

 

 

金髪ポニーテール……!!間違いない!あれは絢瀬だ!!!

 

 

 

 

俺たちはようやく絢瀬を見つけることが出来た。

 

 

絢瀬は学校の正門をくぐろうとしていた。

俺たちはその後追うように走りだしていた。

 

 

俺たちが今居る玄関前から正門まではおよそ100m、すぐに追いつけるものかと考えていた。

 

 

 

 

 

 

だが次の瞬間、俺たちは予想もしない行動を取り始めた絢瀬に驚きを隠せなかった。

 

 

赤信号なのに、まるで、何事もないように横断歩道を歩いているではないか!!交通量があまり多いとは言えないこの通りを赤信号のまま通り抜けようだなんて……………そんなことさえも判断することができないほど重症なのかよ…………

 

 

 

頼む………俺たちがそこにたどり着くまで車なんて来るんじゃないぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、運命は残酷だった。

 

 

絢瀬が横断歩道の中間地点まで歩いたところに左側からトラックが走って来たのだ!!

 

 

 

 

 

「えりちぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」

「絵里先輩ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!」」

 

 

 

希と穂乃果が叫んでも絢瀬は気付く気配が無かった、ふらふらと左右に揺れながら前に進んでいく姿を見て、今の絢瀬は放心状態に陥っているんじゃないかと感じた。

 

 

だとしたら、俺たちの声は絢瀬には届かないってことになる。そうなると、引っ張っていくか、押していくかの2択しかなくなってしまう……

 

 

 

……くっ!どうすりゃいいんだ!!正門すらくぐりぬけていないのに、どうすりゃあ絢瀬のところまでたどり着ければいいんだ?!俺はこのままアイツを見殺しにしろって言うのか!?だめだ!!そんなことは…………そんなことは絶対にゆるさねぇ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《では、抗うか……少年?》

 

 

 

…………!!だ、誰だ!?俺に話しかけてくるのは誰だ!!?

 

 

 

《もう一度問う………この忌まわしき運命から抗うか?》

 

 

 

 

………抗う…………抗って見せる………!!それがどんなに困難な事だろうと…………俺の友を死なせる運命なんて真っ平御免だ!!!

 

 

 

 

《ならば、思え………キミの大切なものを守り抜く運命を………抗いし変えよ、その未来を………》

 

 

 

 

…………イメージしろ、蒼一…………絢瀬が助かる未来を…………アイツが傷つく未来を変えるんだ!!!!俺の全身全霊を持って……………絢瀬 絵里を救って見せるんだぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

《その思い………叶えたり………!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

刹那、俺は真っ白な世界を走っていた。何一つ無い道をただひたすらと………

 

 

 

 

 

すると、目の前に水色に輝く小さなカケラが浮いているように見えた。

走っていても、手に届きそうで届かない……そんな距離を保ちつつ、そのカケラは浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

《求めよ………さすれば、叶えられん………》

 

 

 

 

 

 

俺は手を伸ばして、カケラを掴みとろうとした。

 

そして、願った…………

 

 

 

 

 

 

『俺の友………俺の大切な友人を……………絢瀬 絵里を救う力を俺に与えろ!!!!!!』

 

 

 

 

 

願いを込めながら手を伸ばすと、掴みとることができた。

 

 

 

 

 

……………すると、カケラが光り出し、俺の体を光で覆ったのだった…………

 

 

それはとても眩しすぎて、目を閉じてしまうほどだった…………

 

 

 

 

 

 

 

その目際、微かだが()()()()()()()()()()()()()()()()()…………

 

 

 

 

 

 

『おにいちゃん、がんばって……………』

 

 

 

 

 

 

 

〈ジジ・・・ザ、ザ―――――――――――――――――――――――!!!!!!!!〉

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

目を開くと、さっきと同じ情景が広がっていた。

俺の横には希と穂乃果が居て、目の前には道路を渡ろうとしている絢瀬、そして、左側から突っ込んでこようとしているトラックの姿が…………

 

 

 

さっきのアレは一体………………

 

 

 

 

 

『がんばって走って………おにいちゃんなら追い付けるよ………』

 

 

 

 

 

また、女の子の声が………!!キミは一体誰なんだ!?

 

 

 

 

 

 

 

それに走るって………………はっ!!そうか!!

 

 

 

俺は脚に力を入れ始めた。

 

 

 

 

 

「一か八かだ………………この状態からの臨界点突破状態(フルスロットルモード)をやるなんて今までやったことが無いからどうなるかわからねぇ………だが、これならば間に合う!!!!」

 

 

 

 

 

俺は走りながら大きく息を吸い込んだ。

 

 

その空気を口から肺に………肺から動脈に…………動脈から神経細胞に…………廻れ、廻らせ、巡廻せよ!!!

全神経、全能力、ありとあらゆる力とその源とをそのすべてを脚に集中させよ!

 

 

 

(ドクンッ!!……ドクンッ!!!!………ドクンッ!!!!!!!)

 

 

 

心臓の鼓動が鐘の音よりも強い音を響き渡らせ、雨が地面に叩きつけるよりも早く、そして、多くの音を打ちならす!!!さあ、己の限界の限界に挑め!!不可能ならば打ち破れ!!理不尽な道理を薙ぎ払え!!!!己を信じ抜け!!!勝利と喜びの世界を手に入れろ!!!!!

 

 

 

 

(ドクンッ!!!!!ドクンッ!!!!!!!!ドクンッ!!!!!!!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………いざ、駆け抜けろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ドンッ!!!!!!!!!!)

 

 

 

 

左足を地面に強く踏み込ませる!!!次への第一歩につながる大きなバネとなれ!!!

 

 

 

 

 

そして、右足を後ろから前へと踏み出そうとした、その瞬間こそ………………

 

 

 

(ドッ!!!!!!!!!!)

 

 

 

 

 

スタートダッシュの合図だ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

(ゴオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!)

 

 

 

 

 

力強く飛び出て行った俺の体は、たった一歩踏み出しただけで数メートル分の距離を走り抜けて行ったのだった!!

そして、5歩目には正門をくぐり抜けて、道路の前まで来ることが出来たのだ!!

もう、2、3歩で絢瀬のもとに辿りつくことができる!!

 

 

だが、同時にトラックもすぐ目の前まで迫って来たのだった!!!

 

 

 

 

 

(ミシッ…………ミシッ…………ミシッ…………)

 

 

 

風を引き裂くほどの速度で走り抜けようとする俺の体に、体感したことも無い重力と逆風が叩きつけられる。その2つの力になんとか耐えようとしている俺の体は、ミシミシと悲鳴をあげている!!!ぐっ……!!!耐えろ、耐えてくれ!!!!!あと、もう少しなんだ!!!もう少しだけ耐えられるだけの力を与えてくれ!!!!

 

 

 

 

 

(ドッ!!!!!!)

 

 

 

 

その次の一歩でようやく絢瀬のもとに辿りつくことができた!!

 

 

 

 

しかし……………

 

 

 

 

 

 

(ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!!!!)

 

 

 

トラックのクラクションが鳴り響いた時、もうすぐそこまで迫っていた!!!

 

 

 

引っ張っていくことも押すことも難しい………………

 

 

かくなる上は……………

 

 

 

 

 

俺は瞬時に、絢瀬の背中と足を腕で支え、抱きかかえるようにしてその場を立ち去ることを選んだ。

 

 

 

 

 

 

だがそれは、()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()…………

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…………

 

 

 

 

 

 

 

頼む………!!今度ばかりは失敗しないでくれ…………!!!

 

 

 

 

俺は最後の力を振り絞って、絢瀬を抱きかかえながら地面を蹴り飛ばして駆け出した………

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

(キィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トラックのブレーキ音が学校周辺を響き渡らした…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(次回へ続く)

 










絢瀬編 第10話





そのまま、第11話に入ります。

※6時間後に更新いたします。






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