【前回までのあらすじ】
試験をギリギリの点数で切り抜けることができた穂乃果たちはオープンキャンパスでのライブに向けて練習を再開する。そんな中、蒼一は絢瀬をダンスの指導者として共に参加させようと提案する。
みんなが悩む中、穂乃果と明弘が賛成してくれたことで事が動き出す。
そして、絢瀬も参加することを了承するが………
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[ 屋上 ]
「1、2、3、4、5、6、7、ハイ、そこでターン!」
「うわっ!?とっとっと、あいたー!!!」
「凛ちゃん!」
まだ、基礎中の基礎のことをやり始めたばかりなのに、こんなところで転んでしまうなんて………だらしないわね………
「全然なっていないじゃない!そんな状態でよくやって来られたわね!!」
「うう~……昨日はちゃんとできていたのにぃ~………」
「昨日は昨日、今日は今日なのよ!基礎ができていないからそんなことになるのよ!いい?そこに座って、足を開いて前屈みになりなさい」
「こーお?」
星空さん?は私の指示通りに動いたが、まだ十分に足が開ききれていなかった。私が思っているかたちではないわ。仕方ないわね、押すしかないわ。
「んにゃああぁぁぁぁぁ!!!!い、痛いにゃあぁぁぁぁ!!!!!!!」
「だめよ、もっと前に屈むのよ!足が開いた状態でお腹が床に付くようにならないといけないわ!」
背中を思いっきり押して無理やりにでもお腹を床に付けようとしてみる。けど、どう力を加えてもこれ以上は曲がることができなかった。
「他の人はちゃんとできているのかしら?出来ないのなら、押してあげるわよ?」
「「「ドキッ!!!」」」
「じぃ~~~………もしかして、あなたたちができないの?」
「そ、そんなことないでしょ!!?に、に、にこはそんなのへっちゃらよ!!」
「や、やって見せようじゃないの!!!」
「わ、わ、私は無理ですぅ………」
どうやら、後からメンバーに加わった人たちはこうした柔軟ができないらしい。元々の子たちはちゃんと出来ているみたいだけど、どうして出来ていないのかしらね。
「さあ、やるわよ!」
「「「は、はい!!!」」」
「せぇーのっ!!!」
「「「ふん!………ッ!??ッててててて痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ!!!!??」」」
快晴の空に叫び声が響いて行った…………
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「なあ、兄弟」
「ん、どうした?」
「この光景、前にも見たような気がするんだが?」
「奇遇だな、俺もそう思って笑いそうになっているんだ」
絢瀬の指導の下で練習が行われ始めたものの、開始早々で、ミスをしてしまうメンバーがちらほらと出てきてしまい、挙句の果てに、柔軟が未熟だった1年生組とにこがこってり絞られて、無理やり柔軟性を高めることとなったのだ。
その光景はまるで、結成したてだった頃の穂乃果たちと良く似ていたので、笑いが込み上がって来ていたのだ。
「先輩、何なんですかこの体たらくは?それで良く講師を務めているのですねぇ?」
「余計な御世話だ。それは嫌みで言ってるのか?」
「嫌みも何も先輩のことが嫌いなんですから当然でしょ?」
「あっそ。ほら、俺らに構ってないでアイツらのことを頼むぜ?」
「わかってます。引き受けると自分で言ったのですから出来るとこまでやりますよ」
そう言って、穂乃果たちの方に戻って行き、バテてきているメンバーたちに喝を入れて練習を再開させていた。
「なあ、明弘。お前、わざと柔軟体操を今日やらなかったろ?真姫や花陽ちゃんはともかく、アレをやっていれば凛ちゃんやにこは簡単に出来ただろ?」
「へっへっへ……さすが兄弟、いい勘を持っている……アレをやらなかったのはアイツの実力を試していたのさ。アイツがどこまで、今のみんなの欠点を見極めることができるのかをここで確かめているんだぜ」
「また、そんな勝手なことを………それがもとでケガでもしたらどうするんだよ?」
「案ずるな、あれでも一応、柔軟はしているんだぜ。まあ、ケガしない程度のものだけどな……」
いろいろと言いたいことはあるが、今はいい。まずは、絢瀬の様子を見ておかないといけないよな。アイツがどういう指導を加えるのかまだまだ見させてもらうぞ
「筋肉トレーニングがまだまだ出来ていないわよ!そんなんじゃ、バランスを保つことも出来ないわよ!!!」
絢瀬の怒号が屋上を響かせる。
片足立ちでバランスを保っている穂乃果たちに辛い表情が出てくるようになってきた。さすがの海未にもその表情が出てきているくらいなので、花陽ちゃんたちが倒れてしまうのではないかって心配になってきた。
「わ……わわわ………わあ!!!」
「花陽ちゃん!!」
気にしていたところにバランスを崩して倒れそうになったのは、花陽ちゃんだった。間一髪のところで受けとめることができたため、ケガをすることはなかった。
「す、すみません…………」
「無理はするな、それでケガでもしたら大変だからな」
「は、はい…………」
花陽ちゃんはメンバーの中でも体力が無い方だから倒れそうになったのだ。他のメンバーも辛うじて耐えているが、花陽ちゃんが倒れたことで次々と脱落してしまう可能性があった。
「……もういいわ、今日はここまでにしましょう」
絢瀬は現状を把握した様子でそう言い放った。
「んな、何よそれ?!そんな言い方ないんじゃないの!!」
「私は冷静に判断した結果としてそうしただけよ。これで少しは理解してもらったかしら、あなたたちの実力はこの程度のこともできない、無理なら無理で早めに終わった方がいいんじゃないかしら?時間の無駄にしかならないわよ」
にこが言った言葉を振り払って、自分の言いたいことだけを述べて帰り仕度をし始めていた。
確かに、穂乃果たちの実力はまだこんなものかもしれない………だが……
「今日は、ありがとうございました!!!」
「……えっ?」
「明日もよろしくお願いします!!!」
「「「「「「よろしくお願いします!!!!!!」」」」」」
穂乃果たちの挨拶と言う意外な行動に絢瀬は動揺していた。穂乃果たちを打ちのめす言葉を吐きかけたにもかかわらず、穂乃果たちは礼を持って対応してきたのだ。そして、また明日も頼むことをお願いしたのだ。絢瀬もどう答えれば良いのかわからな無くなっていて、何も言わずに立ち去って行ったのだった。
「さて、明日も楽しみになってきたな」
「だな!」
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[ 絢瀬宅 ]
「ただいま」
「お姉ちゃんおかえり~♪」
「ただいま、亜里沙。今日も元気にしてた?」
「うん!今日も学校で楽しいことをたっくさんしたんだよ!!」
「そう、それはよかったわね」
夕方の時間帯に帰ってくると、私よりも先に亜里沙の方が帰ってきていることが多い。靴を脱ぐ前に亜里沙の笑顔が見られることは何とも言えない喜びだわ。それを毎日、見ることができるなんて私は幸せ者よ。
「お姉ちゃん、先にお料理する?」
「そうね、早めに作ってしまいましょうか」
「亜里沙も手伝うよー!」
「ふふっ、ありがとうね」
それに私によく似てしっかりとしている。こんなに嬉しいことはないわ。
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「「ごちそうさまでした!」」
それじゃあ、早くお皿を片づけて企画の案を作らないと…………そうだ。
「亜里沙」
「なぁに、お姉ちゃん?」
「亜里沙にね、見てもらいたいものがあるんだけどいいかしら?」
「いいよ!それで、何を見ればいいの?」
「まだ出来ていないのだけど、今度ね、私の学校でオープンキャンパスがあるのよ。そこで参加者にお話しする内容とかを考えているのだけど、私以外の人の意見が欲しいのよ。いいかしら?」
「全然問題ないよ!それじゃあ、私だけじゃなくって、お友達も呼んで聞かせてもいい?」
「ええ、いいわよ。意見は多い方が嬉しいわ」
「わかった!じゃあ、連絡しておくね!」
亜里沙はすぐに携帯を取り出して連絡を取り始めてくれた。
さすがね。良く気が付くわね。それじゃあ、亜里沙のためにも頑張らないとね。
お皿も綺麗にしてから片づけて、そのまま部屋に入って作業を再開し始めた。
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――翌日
[ 屋上 ]
「はぁ………はぁ…………はぁ……………」
「どうしたの、練習はまだまだ続くわよ!」
「はぁ………はぁ………は、はいぃ…………」
「かよちん、無茶しなくてもいいんだよ?」
「へ、平気だよ………それに足を引っ張っちゃうのは嫌だから………」
「かよちん………」
まだまだ、これからだと言うところで小泉さんが座り込んでしまっていた。元々、体力が無いのでこの辺でばてると思ったけど、まだ動こうと必死に立ち上がろうとしている。
無茶をしちゃって………体を壊してしまったら、本当に足を引っ張ってしまうことになるのに………どうして、そこまで頑張ろうとするのかしら?
「生徒会長さん…………お、お願いします……!!」
小泉さんは立ち上がって、練習を再開してもらうようにお願いしてきたが、これ以上やり続けることは困難だろうと判断した。
「いいえ、今のあなたでは私の練習メニューをこなしきれないわ。今日はこれでお終いよ」
「そ、そんなぁ………!!」
「いい?あなたは何か勘違いをしているようだけど、無理にやって体を壊したら意味が無いのよ。それに私が指導をしてケガでもしたら困るわ」
私の言葉を聞いて、小泉さんは床に座り込んでしまった。やっぱり、体に無理をしていたんでしょうね、早く体を休ませなさいよ。
すると、矢澤さんが私に近づいてきた。
「ちょっと、アンタ!!少しは言い方を考えたらどうなのよ!!」
「何かしら?私は事実を話したまでよ。小泉さんの気持ちを優先させれば、それこそあなたたちに迷惑がかかるでしょう?」
「アンタねぇ!!!「にこ先輩!!!もういいんです!!」……っ!!で、でも………」
「わかっています!私の体ですから良くわかります………確かに、私は無理をしていました……でも、そんな私を生徒会長さんは止めてくれたんです………これでいいんです………これで…………」
「……くっ!!………わかったわよ………」
小泉さんは私と矢澤さんとの間に入ってくれたことで、無駄な時間を取らずに済んだ。今日は亜里沙との約束事があるし、早く帰らないと………
「それじゃあ、私は用事があるから先に帰らせてもらうわよ?」
ドア近くの壁に寄り掛かっていた宗方先輩にそう告げると、良しとしてそのまま返してくれた。そして、帰ろうとすると………
「今日も、ありがとうございました!!また、明日もよろしくお願いします!!」
「「「「「よろしくお願いします!!!!」」」」」「………します……」
高坂さんたちがまた、お礼の挨拶をした。
変よね、私はあなたたちの活動を取りやめとしているのよ?そんな私に挨拶だなんて………
バカバカしいわよ………
そのまま屋上を後にして、家へと真っ直ぐに帰って行った。
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[ 絢瀬宅 ]
「ただいまー」
帰ってくると、見知らぬ靴が2人分玄関に置かれてあった。もう来ていたのかしら?
「おかえりーお姉ちゃん!亜里沙のお友達を連れて来たよ!!」
すると、亜里沙の部屋から女子生徒が2人出てきて挨拶しに来た。
「「こ、こんにちは!!」」
「こんにちは、今日はよろしくね」
「「は、はい!!!」」
「そんなに畏まらなくてもいいのに、亜里沙の友達なんだから気持ちを楽にしてもいいのよ?」
2人はそわそわと落ち着かなそうな感じで亜里沙の部屋に戻って行った。亜里沙は、部屋で待っているよ、と言って先に入って行った。私も背負っている鞄を部屋に置き、昨日作り上げた書類を持って、着替える時間を考えず制服のまま亜里沙の部屋に入っていく。亜里沙は、待っていました、と言いたげそうな表情で私を出迎えてくれ、2人の友人も同じように座って私の話を聞こうと待っていた。
「それでは、音ノ木坂学院についてご説明いたします!………」
私は書類を手に取り、自信を持って話し始めた。
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「…………以上を持ちまして、私の話を終わらせていただきます」
読み終わると同時に、私は書類を4つ折りにしてポケットの中に入れた。書類に書いた言葉を丁寧に、何一つ間違えることも途切れることもせずに読み切ることができたことで高揚感に浸っていた。今までにない、最高のスピーチになるかもしれない、私は自信を持ってそう言いきることができそうだった。
けど………亜里沙たちの表情は硬かった。
2人の友人は苦い表情で唸っており、感想を言いだそうかと迷っている様子だった。
一方で、亜里沙は………………
「わからないよ………わからないよ、お姉ちゃん………」
「えっ…?」
「お姉ちゃんの言いたいことが全然わからないよ!お姉ちゃんはこれでいいの?これがお姉ちゃんのやりたいことなの!?」
「あ、亜里沙………」
予想もしなかったことに私は心を乱していた。いつも私に対して肯定的な意見しか言わなかった亜里沙が初めて否定的な意見を述べたのだ。私に対して優しく接してくれる亜里沙が怖い表情で私を見てくる…………。
その時、私は恐怖した…………
亜里沙すらこの表情を見せてくるのだから、オープンキャンパスの時には多くの人がそんな表情をしてくるに違いない…………
………その情景を想像するだけで胸が張り裂けそうになりそうだ………………
「あ、ありがとう……亜里沙……………それに、2人もありがとうね…………こんなことに時間を割いてくれちゃって……………」
その時、亜里沙たちは何か言ってきたと思うのだけど、私の耳には何も入って来なかった。
私はそのままこの部屋を後にした。だが、視界が不安定でぐるぐると回るように見え、足取りが覚束なくなってしまい、自分の部屋に戻るまで一苦労することとなってしまった。
部屋に入るとドアを閉めると、高い所から落ちていくように座り込んでしまった。全身から力が無くなり、腕を動かすことすら出来ずに、真っ暗な部屋の天井を見上げることとなった。
「私………どうしちゃったのかしら……………」
頭で考え、言葉にして発してもその答えは得られることが無かった………。
暗い絶望の淵では、無駄な時間がただひたすらと流れていくことだけしか感じることができなかった………。
(ピキッ……………)
何かがひび割れるような音が体の中から聞こえたような気がした……………
〈ジ・・・・・ジジ・・・・・・・ジ・・・・・〉
(次回へ続く)
どうも、うp主です。
すみません、投稿日程が少し開いてしまいました。
今日、ようやく大学の集中講義が終わりましたので、これからはこちらに集中することが出来そうです。
さて、絢瀬編第7話です。
自分に文才があれば、もっといい表現が出来ると思うのですが……力不足ですみません。絵里をこういう風に描いているのですが、どうでしょうか?
何か、こうすればいいのでは?といった意見がありましたらドシドシ書いてください。お待ちしております~。
今回の曲は、
現在放映中のTVアニメ『Rewrite』のサントラより
細井聡司/『凍土』
更新速度は早い方が助かりますか?
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ちょうどいい
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もっと早くっ!
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遅くても問題ない