第52話
【プロローグ】
[ アイドル研究部・部室内 ]
(バンッ!!!)
「……もう少し、丁寧にドアを開けないか?……凛ちゃん、にこ?」
「宗方さん!!」
「蒼一!!」
「んんん???どうした、そんなに焦って?」
「「や……や…………………」」
「???」
「「やったよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!赤点回避できたよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」」
「おお!よかったじゃんか!」
「凛、こんなにいい点数取ったの初めてにゃ~!」
「ふっふっふ、やっぱりこの天才・にこにーは天才……いや、大天才だったのよ!!!」
「まあ、全教科が平均点に到達していたのは正直驚いたけどね」
「せやね、蒼一の教え方がうまかったんやないの?」
「お前らはどうだったんだ?」
「私はすべてほぼ満点よ」
「ウチもそんくらいかなぁ~」
「そうか……となると、後は穂乃果だけか………」
(バンッ!!!)
「蒼君やったよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
「来やがったな、久しぶりのロケットダイブ!!!だが、その技は見極めているぞ!!」
(ガシィィィ!!!!)
「……やるね、蒼君……!!」
「キング・オブ・ハートに同じ技は通用しないぞ! んで、点数は?」
「じゃーん!!!53点!!!」
「………決して、自慢できるものじゃないな…………」
こうして、俺たちはラブライブ出場の許可を正式に得て、練習を開始し始めたのだ。
ちなみに………
「いやっふぅぅぅ!!!!!!合格だぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
俺と明弘もちゃんと合格していました。
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―――
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[ 屋上 ]
「蒼一、これが前に話していた歌詞です」
「こっちも曲が出来上がっているわ、確認して頂戴」
海未からは歌詞が書かれている紙と、真姫からは曲が入っているCDを手渡された。
歌詞を読んでみると、流石としか言いようのない内容で満足していた。これに合わせる曲もきっと素晴らしいものなのだろうと想像を広がらせていた。
だが……………
「………すまないが………これを今度のライブでは使わない………違ったのをもう一度考え直してくれないか?」
そう言って、海未と真姫に渡されたものを返した。
当然、2人は驚いた表情で俺を見て、何が問題なのかを問いただしてきた。
しかし、俺は語ることをためらった。
何せ、俺の中で考えているのは絢瀬の事なのだから……
朝に希に言われた一言で俺は今に至るまで悩み続けていた。もし、絢瀬たちが一緒にやることになるとしたら、今、渡された曲では似合わないのだ。
しかし、絢瀬の事をみんなにどう話せばいいのか、話したとしても反発されることは重々承知だ。だが、絢瀬は後々に重要な存在となってくれるに違いないとも確信していた。そんな彼女を認めさせるにはどうすればよいのか………
「何か、悩み事でもあるのですか?」
海未は優しい言葉をかけてくれて悩んでいる俺を気遣ってくれた。
「ああ、かなりの難問だ……」
「私に出来ることがあるのならば話してください。蒼一はμ’sのメンバーなのですから、1人で抱え込むのではなく私たちを頼ってくれてもいいのですよ?」
「そうよ、水くさいじゃない。せっかく、ここまで一緒に頑張ってきたのにこういう時でさえも1人で悩むなんてだらしないわよ」
「……これはμ’sのこれからがかかっている問題なんだぞ?……それでも聞くか?」
「構いません」
「構わないわ。けど、私たち2人じゃなくて、みんなに話してよね」
真姫はそう言うと、練習をしている他のみんなを呼び寄せてくれた。
「さあ蒼一、話を聞かせてください」
みんなの視線が俺に集中した。
俺は腹をくくって、今日の朝に聞かされたことと、俺の考えを包み隠さずみんなに話し始めた。
ただ、希のことはまだ話さないようにした。
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「………ということだ……」
すべてを話し終えると、みんな苦い表情になって悩んでいた。
そんな中で、第一声を発したのは、にこだった。
「ありえないわよ!あんな堅物女と一緒に練習をやろうなんて出来っこないじゃない!!」
「それに、生徒会長は私たちの事を良くは思ってないですよね………」
「嫌ってるよ!絶対そうだよ!!」
「私も賛同しかねます。第一、生徒会長が私たちの事を嫌っているのにそのようなことができるのでしょうか?」
「絶対に潰しに来るわよ」
にこに続いて、花陽ちゃんも凛ちゃんもあまりよくは思っていないようだ。
そして、海未も真姫も…………
ただ、穂乃果とことりはどうしようかと悩んでいるようだった。
「兄弟、物事にはどうしようもないことがあるんだぜ?何故、そんなにあの生徒会長に固執しているんだ?いくら兄弟の馴染みだからって、そこまでやる義理はねぇと思うぜ?」
明弘もあまり良しとはしていないようだった。
「わかった……だが、決定する前に映像を見てもらいたい。穂乃果、そのノートパソコンを貸してくれ」
「うん、わかった」
そこで俺は希からもらったあの映像を見せることにした。
メモリースティックをPCに差し込み、入れていたデータを開いた。
すると、そこに映し出されていたのは中学校時代の絢瀬の映像だった。
何かの大会の映像だと思われるが、時々聞こえてくる言葉とキリル系の文字が見えたので、ここは絢瀬の出生地のロシアのとある会場でのものだと言うことがわかった。
曲目や演目などバレエに関する知識が無いため、何を披露しているのかは全くわからなかったが、滑らかで力強く無駄のない動き、曲に合わせて顔の表情を変えてその物語の登場人物の気持ちの表現、こうしたありとあらゆる動きにここに居る全員が魅了されていた。特に、明弘は目を凝視しており、その一挙一動を注意深く観察していた。
映像をすべて見終わると、みんな何も言わずに黙りこんだ。強く反対をしていたにこでさえも口をつぐんでしまったのだ、あの映像を見てみんな何か思うことがあったのだろう。
すると………
「私はいいと思うよ!」
『えっ!?』
明弘を除く全員が穂乃果の言葉に驚きを表した。
「アンタ何を言っているのよ!!」
「だってあんなに上手に踊ることができる人なんだよ?蒼君たち以外でこんなに上手な人が私たちの学校にいたなんてすごいことだよ!それに私たちと一緒に踊ったら、μ’sがもぉぉぉぉぉっと輝けると思うんだ!」
「穂乃果……」
穂乃果は何とも楽しそうな表情で語りかけてきた。
「俺も賛成するぜ」
『ええっ!!?』
明弘の意外な言葉に全員が驚愕した。
何せ、ここに居る誰よりも絢瀬のことを嫌っていたのは、この明弘だからだ。
そんな明弘に対して、海未が問いかけた。
「明弘、どう言うことなのですか!?」
「俺だってアイツの事は嫌いさ。けどな、踊りを見て感じたのさ、アイツだったら俺の代わりにお前たちにダンスを教えることができるだろうってよ。それに、アイツは本場仕込みのバレエをやっているに違いねェ……俺とは違った観点からお前たちを成長させてくれるだろうし、それに………」
「それに…………?」
「それに………
…………やっぱいいスタイルなんだよねェ~♪金髪異国系美女でボインってヤベェよな!!」
「……………………」
はぁ………知ってた。
だが、明弘が俺と同じ考えを抱いていることは嬉しかった。流石は、ダンスマスター見る目が違う。一応言っておくが、スタイルの話ではないぞ、ダンスの話だからな?
「誘うにしても、いきなり一緒にやりませんかなんて言えるわけがねぇからよ、今日のところは指導をオナシャス!!って言っておけばいいんじゃねぇか?」
「いいね!そうしようよ!!それじゃあさ、今から生徒会長のところに行こうよ!善は急げってやつだよ!」
「まさか、本気でやるつもりなの?……どうなっても知らないわよ?」
にこや真姫、凛ちゃんは未だに納得はしていないようだが、海未やことり、そして、花陽ちゃんも賛同してくれている。多数決にしても賛同側の方が多いので、まずはダンスの講師として参加してくれるかを頼むことから始めるようにした。
俺と穂乃果は早速、絢瀬がいる生徒会室に向かった。
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[ 生徒会室 ]
「私にダンスを教えてくれですって?」
「はい!教えていただけないでしょうか!!」
「そこにいる蒼一先輩や他の講師からではダメなんですか?」
「私は生徒会長の絢瀬先輩にお願いしたいんです!バレエの本場で教わった技術を少しだけでも教えていただけないでしょうか!!」
穂乃果はグイグイと絢瀬に迫って行き、自分の願いを聞き入れてほしいと切望していた。以前は、絢瀬の威圧に耐えられずに逃げ出していた穂乃果だが、今度はそれに負けない勢いで対抗しているのだ。穂乃果の決意は固くなっているようだった。
絢瀬は近づいてきている穂乃果を振り払って、俺に近寄って話しかけてきた。
「………先輩、どういうことなのかしら?どうして私がバレエをやっていたことを知っているのですか?」
「お前が前にバレエをやっていたことを教えたら、その様子が見たいって言うからお前が現役だった頃の映像を見せたわけさ」
「何でそんな映像を持っているんですか?」
「たまたまさ、家のPCの中にそのデータがあっただけさ。多分、過去にお前が俺に渡してくれたデータじゃねぇの?」
「……まあ、いいわ。それで、私があの子たちの指導をして、私に何のメリットがあるの?無駄な時間は取りたくはないのだけど」
「メリット?大ありじゃないか。前にも言ったじゃないか、お前の企画には学校いる生徒のことを考えていないものだってよ。生徒たちを見る、いい機会じゃないか?それをその企画に反映できるようにしたらどうだ?」
そう言うと、絢瀬は少し考え込み、そして、顔を穂乃果の方に向き直した。
「わかったわ、引き受けましょう」
「本当ですか!!」
「ええ、あなたたちの活動を認めているわけではないけど、どういう活動をしているのかを調べるいい機会だから引き受けるだけよ」
「ありがとうございます!!」
穂乃果はとても嬉しそうな顔をして、そのはずみなのか絢瀬の両手を握って感謝していた。
その意外な行動にさすがの絢瀬も戸惑いを隠せなかった。
「か、勘違いしないでもらえるかしら……それに、やるからには私が許せる水準まで頑張ってもらうことになるわよ。それでもいいの?」
「はい!ありがとうございます!!」
こうして、明日からの練習に絢瀬が加わることになったが、みんな大丈夫なのだろうか?体力は以前と比べれば、高くはなっているはずなんだが………絢瀬の水準となると……………明弘よりもハードになるかもしれないかな………?
(次回へ続く)
どうも、うp主です。
連続投稿記録を伸ばそうかと思いましたが、昨日は寝落ちしてしまったので出来ませんでした………(アワレ!
絢瀬編第6話です。着々と話が進んできていているので、今のところは安心。
次回でもう少し詰めるようにすればいい感じになるかも?
では、次回もよろしくお願いします!
今回の曲は、
ゲーム『FINAL FANTASY VI』より
植松伸夫/『予兆』
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