第46話
【プロローグ】
[ 部室内 ]
「さて、PVで使う楽曲は出来上がった!あとは、ダンスと衣装と撮影現場のデザインだ!」
リーダーは誰がやるのかという一件から数日経った今、蒼一は俺とことりを呼びつけて、作戦会議を行っているところさ。ちなみに、ダンスの方は以前から構想はできているから問題はなかった。だが、俺が懸念しているのは撮影現場のデザインというやつだ。
一体どうするつもりなんだ?
「私ね、衣装と一緒に現場のデザインも考えてみたんだけど、見てもらってもいいかなぁ?」
「構わないぞ、どんなものなのか見せてくれないか?」
ことりは自らが構想してノートにまとめたデザインを俺たちに見せてくれた。
「今回は不思議な国のアリスをモチーフにして考えてみたんだ。衣装はね、いろいろな動物さんたちに変身させてみたの!それでね、現場のデザインはこれに合わせて、メルヘンチックにしてみたんだ~♪」
おお!こいつぁはかわいいな!!
カラフルな衣装にうさ耳や猫耳、それに尻尾まで着いているなんて本格的すぎる!!!これを着たメンバー全員の姿が目に浮かぶ………!!ヒャッハー!!テンションが上がるぜーー!!!
「………で、この学校のデザインは何?」
「かわいいでしょ!!学校を不思議な国のようにメルヘンなものにしてみたんだ~♪」
「こ、これって……廊下や階段もこんなに飾り付けるの??それに、昇降口のところも???」
「うん♪いいでしょ!!」
「いやいやいや、これ全部やるってトンデモ作業だぞ!!おい、兄弟!どうするよ!!」
「……お前に任せた」
「兄弟ィィィィ!!!!」
蒼一が裏切った!俺だけでやれというのか!?ふざけるなッ!!できるわけないだろぉ!!!
「弘くん、おねがぁ~~い!!!!!」
「yes your majesty!……ハッ!?」
「それじゃあ、頼むぜ♪」
は、図ったな………!!!!!
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―――
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[ 学院内・某教室内 ]
この教室内でとある作戦会議が開かれていた………
主催者は、滝 明弘…………
参加者は3人の学院生………
さて、その内容とはッ………!!!
「第一回!μ’s舞台裏会議、はっじまるよ――――――――――!!!!!!」
「「「えっ、あっ……はい………」」」
ここに集まってくれたのは、以前、講堂でのライブで手伝いをやってくれた、三宅 英子ちゃんと山本 文子ちゃん、そして、原 美佳ちゃんのヒフミ三人衆だ。彼女たちを呼び寄せた理由は簡単だ、それは…………
「次回のPVの手伝いをしてくれぇぇぇぇ!!!!(懇願)」
明弘、こころの叫びである。
「なるほど……ことりちゃんがこんな無茶を滝さんにお願いしてきたってわけですか……」
「だが、このデザイン通りにしなければいけないのか?私たちだけではどうにもならないぞ」
「辛い作業になりそうだよぉ………」
彼女たちはことり作の設計図を見て、難色を示している。
それもそのはずだ、1つの廊下を隅から隅までを装飾細工やシールなどが飾られて、階段の一部もそのようにしなければならない。そして、決めつけなのが……………
「………しょ、正面校舎の外装…………」
「これは!!…………私たちの手に余る………!!!」
「……無理よぉ……廊下で勘弁してぇ………」
出来んのぉ~~~~?これぇ~~~~????
前回の講堂の証明とか音響とか、チラシ配りとかなんての比じゃねぇよ!!マジで、こんなものができると思うのかよ!!輝夜姫の難題並に難しい内容だぞ、これは!!!
助っ人が欲しい……!!誰かいないのかぁ~~~!!!!!
「ふっふっふ……みなさんお困りのようですね…………」
「むっ!その声は!!!」
「ど~も♪みなさんの大好きな音ノ木坂学院新聞を発行しております、島田で~す♪」
俺たちは颯爽と現れた島田に視線を注目させた。
なぜ、ここに島田がいるのか?その目的とは一体何なのだろうか?
そういった憶測が各自の脳内で飛び交う中、島田の口が開いた。
「いやですねぇ~、以前に宗方さんから協力してくれる生徒を募集して欲しいという依頼を受けましてね。私の方で小規模ながらも募集を掛けさせてもらったわけですよ。そしたら、思いのほか、集まっちゃってくれましてねぇ~そのことを宗方さんに相談したら、直で滝さんがいるこの教室に行くようにと言われたわけですよぉ~♪」
なぁ~るほど。要は、蒼一から派遣されたってわけか……。アイツはそこまで見据えていたのか、流石だぜ!
「それで、何人くらいが集まったんだ?」
「ざっと、30人くらいですね」
「なんと!!」
「みなさん、講堂でのライブの映像を見て手伝う気になったそうなんですよぉ~。いやぁ~、予期せぬところに福来るってやつですかね?映像様々ですねぇ~♪」
そいつはすげぇな!!俺も予想しないほどの人が集まってくれたことに驚いている。何よりも、あの時の映像をちゃんと見ていてくれたって言う生徒がいたことにも驚いている。
講堂では散々な結果だったものの、ネット上で何度も見られるようになったことで、アイツらの良さがわかってもらえてきているんだな!!
「よっしゃあ!!!そう考えたら、気合が入ってきたぞ!!!このまま、PVのセットを作っていこうか!!」
「そうだね!穂乃果ちゃんたちの頑張りが実って来ているんだもんね!」
「私たちが頑張らなければ、その実を摘み取ってしまうことになるからな!!」
「難しいことだけど……私、頑張る!!!」
俺の合図を皮切りに、ヒフミ三人衆はそれぞれ気合を入れ始めていく。ファーストライブで見せたあの頑張りを今こそ発揮する時なのだと、自分に言い聞かせているかのようだった。
今ならいける……この気持ちがある時に進んで行かなけりゃぁ止まっちまう………
乗り遅れるわけにはいかない……このビッグ・ウェーブに!!!
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―――
――――
「その飾りはそこにぶら下げてー!…そこのはあそこに頼むよー!!」
「壁に貼るシールは破れやすいし、剥がれやすいから気を付けてやってー!!」
「飾りはまだまだ使います、出来るだけ多く作っておいて下さい!」
『は――い!!!!』
手伝いに来てくれたおよそ30人ほどの生徒たちはヒフミ三人衆の指示の下で作業を順調に行い、PVセットは着実に出来上がってきている。
みんな呑み込みが早く作業出来ているのが、ありがたかった。この調子なら撮影前までには完成させることが出来そうだぜ!
「作業は順調に進んでいるようだな」
蒼一が作業の進行状況を見るためにこっちまで出向いてきた。
穂乃果たちの衣装合わせも済ませ、その状態でリハーサルを行っているところだという。
くそッ!俺もその場に居合わせたかったぞ!ネコミミ!ウサミミ!うひょぉ~~~~!!!
萌えるぞ、血液がヒート!!!
「真姫たちが加入してくれたことで、グループとしてまとまりが付いてきたと思う。歌も踊りもそれぞれに差はあるが、もう数週間あれば平均値に合わせられるかもな」
「そうだな。現段階では、全員が同じように出来る訳じゃあねぇ。真姫ちゃんや花陽ちゃんとか、ダンスに自信がねぇのもいる。今回のPVでは、前回よりかイージーなダンスにしたつもりだ」
「あとは、お前の撮影技術と編集技術で結果が左右されるな」
「へっへっへっ・・・兄弟、誰だと思っているんだ?」
「ふっ、愚問のようだな。それじゃあ頼んだぜ、出来上がったら連絡してくれよ…」
蒼一はそう言い残して穂乃果たちの指導に向かっていった。
「俺の技術で結果が左右される……か……」
前回のライブを俺自身の手で映像として残しておくことができなかったのは痛恨のミスだった。蒼一も後になってからそのミスに気付いたが、幸いにも誰かが残してくれ、さらにはネット上にアップしてくれる作業までやってくれたことは感謝しきれない。アレが無ければ、今の状況は無かっただろう……。
だが、今回は違う………
この俺が指揮をとって、このPVを完成させるんだ…!!
俺のこの一手が、μ’s……いや、この音ノ木坂の運命を左右させるんだ……!!
ふっ……久しぶりの大役を任されたな………
確実に、結果を残せるものを作らないといけねぇな…………
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―――
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「滝さん!廊下のセット完了しました!!!」
「正面校舎のセットも完了した!!!」
「照明、カメラ、マイクのセットも完了しました!!!」
「…よし!……」
ヒフミたちと集まってくれた生徒のおかげで、ようやく舞台セットが完成することができた。
その出来に正直驚いてしまった。
ことりの設計図を見てはいたが、実際にかたちにしてみると日常とのギャップに驚いてしまう。
単色系の廊下や壁が一変して、文化祭や縁日が開かれたかのように華やかになっている。様々な模様のカラフルシール壁一帯に貼りつけられ、天井からはフラッグやキラキラモールがぶら下げられていて、まるで別世界に来てしまったかのように思ってしまったぜ。
そして、極め付けがこの正面校舎の装飾だ!
屋上から吊る下げた約十数mもあるフラッグが2階まで伸び、正面玄関もシールや紙飾りでかわいらしくなっている。装飾はさすがに校舎の壁全面にやる勇気は無かった為、カメラに映る時に問題が無い範囲までに抑えるようにしてみた。つうか、この作業だけでも一苦労というものではない、十数mもあるフラッグも合わせて、ほとんどが手作り、時折、ことりに来てもらい手伝ってもらったが、大半の作業はこっちが持っていた。
もし、同じようなことをしてくれって頼まれても絶対にやらない。つうか、マジ無理。
「ようやく完成したようだな」
「兄弟ィィィ………疲れた………何か………何か栄養をくれ…………」
休日の学校に1クラス分の生徒たちが、1日中、汗水流して作業を行ってくれたのだ。
俺だけじゃない、ここにいる生徒たちみんなが疲労困憊とも言えるような状態に陥っているのだから、何か欲しくなってしまうのは必然だろう?
「そんな事だろうと思って、差し入れを持ってきたぞ!!」
蒼一が持ってきてくれたのは、たくさんのおにぎりとみそ汁、そして、から揚げだ。
これすべてを蒼一が手掛けたものだと言う。穂乃果たちもこの調理に携わったというが、大半は蒼一がやったのだろう。およそ30人分の食事を作り上げてきたのだ。
「コイツはありがてぇ!!!早速いただくぜ!!!!」
蒼一から手渡された食事をどんどん胃袋の中に入れ込む。くぅ~~!!疲れた後の食事はうまい!!体に沁みてくるな~~~♪
「ほら、みんなも食べて食べて!今日は俺たちのために手伝ってくれてありがとな!!」
蒼一は作業に来てくれた生徒たち1人1人に声をかけながら食事を手渡していった。
流石、兄弟!支援者たちへの手厚いサービスを欠かせないとは……!!!
前と変わっちゃいねぇな。
アイツもこの数週間でどんどん変わって来ていやがる。
去年のあの状態と比べれば、大きく改善されていやがるんだ。
もしかしたら…………今なら出来るんじゃないか?
だが、俺の口から始めるわけにはいかねぇ……アイツにも、アイツなりのタイミングがあるんだ。それがいつになるかはわからねぇが、じっくり待つとしようじゃないか………。
「よし!撮影本番に入るぞ!!!明弘!島田!頼んだぞ!!!」
「応よ、兄弟!!!」
「了解いたしました~♪」
こうしてμ’sの新作PV『これからのSomeday』の撮影が開始された。
撮影シーンは、廊下・階段・正面校舎の3つに分けたが、正面校舎のところだけは昼間と夜間の2度に渡ってダンスシーンを撮るようにした。これは照明演出が行えるようにすること、つまり、サビに入る瞬間に昼から夜に切り替わり、スタンバイした照明を一気に焚くことで幻想空間を演出させる、いいと思わない?まあ、ここの編集は俺が後でやるんだけどねぇ~♪
1つの映像になった時が楽しみでしかたない!!!
―
――
―――
――――
「撮影終了で~~~~す!!お疲れ様でした~~~~!!!!!」
島田の合図によって、新作PVの撮影がすべて終了することとなった。
ここに集まったμ’sやヒフミたち、そして、手伝いに来てくれた生徒たちが一斉に歓喜し合った。学校と共に盛り上げるという蒼一が構想したものが現実となった瞬間であった。こうしたみんなの働きがあってこそ廃校を阻止する大きな力となることができる、蒼一は最後にそう言って、すべての作業の終了を宣言したのであった。
んで、俺はというと…………
「よっしゃあ!!!みんなお疲れ―――!!!!!」
『お疲れ様でした!!!!!!!!!!!』
「いやぁ~、一時はどうなるかと思ったけど、無事に終わることができてホント良かったぜ!!それもこれもすべて、キミたちが手伝ってくれたおかげだぜ!!!」
「そんなことないですよ、滝さんの的確な指示があったからこそ出来上がったものなんですよ!」
「あの大きなフラッグを紙で作ろうなんて発想は誰も思い付かなかったと思いますよ」
「布でやっていたら今日中に終わることができなかったですよ!」
「いやぁ~それほどでも~~~~♪」
正直なところ、あの発想は始めにことりが言いだしたことだ。だが、それを形にすることはことりの考えではうまくはいかなかった。そこで俺がさらに工夫を凝らしたことで、布と変わらないような見た目と強度を実現させたのである。
「しかし、ことりと俺の発想を形にすることができるキミたちもなかなかできるじゃないか!!また、撮影がある時に手伝ってもらいたいのだが……いいか?」
『もちろん!!やらせてください!!!!!!!』
集まってくれた生徒たちが口々に参加を表明してくれたことに俺は猛烈に感動しているッ!!!
「それじゃあ、今度何かあった時はヒデコちゃんたちに連絡するから頼むぜ!」
『はい!!わかりました!!!!!』
「おう!みんないい返事だ!!それじゃあ、後は頼んだぜ、リーダー!」
そう言って、俺はヒデコちゃんの肩を叩いた。すると、驚いた表情で俺の方を向いて言った。
「えっ?ええええぇぇぇぇぇ!!!!??り、リーダーってどういうことですか!!?」
「言葉通りだぜ?生徒のまとめ役は、やはり生徒がやらないといけねぇし、俺の連絡も知っているのはヒデコちゃんしかいねぇんだから、結果的にリーダーになっちまうんだよね☆」
「そ、そんなぁ―――!!!」
「そうだ!これを機にキミたちの集まりの名前でも考えておくか!!そうだな……………ヒデコちゃん、フミコちゃん、ミカちゃんが最初だったから…………いっその事、『ヒフミ組』ってのはどうだ?」
「「「えっ!!!???」」」
「いいと思う人ぉ~~~?」
『は~~~~~い!!!!!!』
「「「えええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!????」」」
「ということで頼んだぞ、リーダー!!」
「ちょ、ちょっとぉー!!どうしてそうなっちゃうんです!!!」
「はっはっは!!よいではないか、よいではないか~~☆」
「よくないですよぉ~~~~~!!!!!」
こうして、音ノ木坂に新たなグループ・『ヒフミ組』が誕生したのである。
その作業内容は、主にμ’sの裏方で、装飾作業や音響・照明・撮影等々、あらゆることに関われることができるバックアップチームだ。
リーダーはヒデコちゃんで、そのサブとしてフミコちゃんとミカちゃんが入ることとなった。
ちなみに、俺は…………
「………となると、滝さんは棟梁ってことですかね?」
「棟梁!…………う~ん、心に染みいるいい言葉!………うん、いいね!」
『ヒフミ組』の棟梁として、みんなを支えることとなったのである!!!
「それじゃあ、ヒフミ組、結成初の仕事…………お片づけを行います!!!」
『え゛っ!!!??』
「時間もヤバいので明日にしますのでよろしく~☆」
『ええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!?????』
はぁ、こんなギリギリなことをすることになるなんて……先が思いやられるぜ………
「滝さんのことでしょ!!!!」
「てへぺろ☆」
(次回へ続く)
どうも、うp主です。
今のところ順調に話が進んできているようで、ホッとしております。
アニメ本編を見てて思うのが、あのセットは一体誰が作ってくれたのか?
謎の勢力が係わっているのではなかろうか?
そんなことを思いつつ、割と現実的な手段に変換させてみました。
ヒフミ組………どこまでやってくれるのだろうか?
超・万能集団として活躍できそうで怖いですw
次回から新しい話が始まる予定ですので、どうぞよろしくお願いします!
今回の曲は、
今回はちゃんと曲に触れることが出来なかったのでこちらで……
高坂穂乃果、南ことり、園田海未、星空凛、西木野真姫、矢澤にこ/『これからのSomeday』
更新速度は早い方が助かりますか?
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ちょうどいい
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もっと早くっ!
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遅くても問題ない