第42話
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[ 部室内 ]
「ねぇ、蒼くん」
「ん、どうしたことり?」
「衣装を作る素材が無くなっちゃって……お願いなんだけど、買って来てくれないかな?」
「構わないが、それはどこで買うんだ?」
「え~~~っと……渋谷の専門店でお願いしているから、そこで買ってきて~」
「わかった。だが、荷物が多くなりそうだし、1人だけじゃ心許ない気がするな」
「それなら、私が行くよ!!」
「えっ?!穂乃果がか?」
「うん!今、何もやっていないのは私だけだし、私も何か手伝えることがあったら何かしてあげたいと思うんだ。だから、私も一緒に買いに行かせて!!」
「むう、そこまで言うなら…頼むぜ?」
「じゃあ、穂乃果ちゃんにお願いするよ♪」
「うん!私に任せといて!!」
「………………」
なんか、不安だ……
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[ 渋谷駅前 ]
「ふっふっふ………」
やったぁ――――――!!!!!!!!!
今日は、蒼君と2人っきりで買い物ができるよ!!
まさか、こんな機会にめぐりあえるなんて…ついているわ!!
今日は朝早く起きることができたし!朝のテレビでやっていた今日の運勢も良かったし!出かける時に4つ葉のクローバーも見つけちゃったし!
うん!!!今日の私はついているに違いないよ!!!
「う~ん…でも、嬉しすぎちゃって待ち合わせ時間よりもかなり早く着いちゃった……。蒼君が来るまで何していようかなぁ?………」
待ちあわせ場所として決めているハチ公の前には来たんだけど、やることがまったく無くって大変だよぉ~。こんなことなら、もう少し、のんびり来ればよかったよ~……
「ハチも私と同じような気持ちで御主人さまを待っていたのかなぁ?」
ご主人様が帰ってくるのをずっと待ち続けていたというハチのお話は、小さい頃によくおばあちゃんに聞かされていたなぁ~。そのご主人様が病気で死んじゃっていたのに、晴れの日も、雨の日も、風の日も、嵐の日も…ずっと、ご主人様が帰ってくることを信じ続けてここで待っていたって言う、悲しいけどとってもいいお話し。
ご主人様に会えなかったハチはどんな気持だったんだろう?私は銅像に近づいて、その頭をなでなでした。生きている犬と同じように、やさしくやさしく私の気持ちを伝えるように撫でた。
「私もハチと同じように大切な人を待つからね。早く、来ますように。かしこみかしこみ!」
私の想いよ届いてぇ~~~!!!
早く来てくれないと、私もハチのようになっちゃうよ~~~~!!!
忠犬・穂乃果になっちゃうよ~~~~~~!!!!
「……お前、来るの早すぎないか?」
後ろの方で私に話しかけてくる声が聞こえた。この聴き慣れた安心できる声は……!!
「蒼君!!!もう!女の子を待たせるなんてひどいよぉ~~!!」
「いやいやいや、ありえねぇだろ……まさか、指定していた時刻の1時間も前にいるなんて、誰が想像するんだよ?それに、いつものお前だったら遅れてくるのが、相場では決まっているのに、その意外な行動によって大暴走を起こしているぞ。お前は、本当に穂乃果なのか?」
「むぅ~~~、失礼だよ!!穂乃果は穂乃果なの!今日の私はいつもの私じゃないんだからね!」
「う~ん、早く着いていたという点では違うなとは思えるが、今のお前を見ていてもいつもの穂乃果にしか見えないからわからねぇや」
「えぇ~~!!そんなぁ~~~!」
むぅ~、今日のために服装とか、髪型とか、アクセサリーだって気合い入れてきたって言うのに…いつもと変わらないなんて言われると、なんか落ち込んじゃうなぁ………この気持ちは、今日の買い物の時にぶつけちゃうんだからね!!!
「予定よりかなり早くなっちまったな……喫茶店によって時間でも潰し行こうか?」
「!!ハイ!いいと思うよ!!うれしいなぁ~ちょうど、甘いものが食べたかったんだぁ~♪」
「おいおい、まさか、もうおやつの時間か?飲み物だけにしておけよ…」
「や~だ、絶対に何か甘いものじゃないといやだよ」
「はあ……わかった、それでいいから早く行こうぜ?」
「うん♪」
やったぁー!何か甘いものが食べられる~♪何にしようかなぁ~?う~ん……やっぱり、行ってみないとわからないか。
……あっ!その前に………
「蒼君、ちょっと待ってて!」
私はハチの銅像の方に戻り、挨拶した。
「えへへ、ハチにお願いしたおかげで蒼君が来てくれたよ、ありがとう♪」
そう言って、また、ハチの頭をなでなでした。
「じゃあ、私はもう行くね?」
ハチに別れを告げて、蒼君のもとに戻り、そのまま一緒に歩き出した。
この後も、いいことが起こりますように♪
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[ 喫茶店 ]
「お待たせしました。苺パフェとチョコパフェになります」
私たちの前に出されたのは、なんとも美味しそうなパフェが!しかも、2つもあるんだよ!!うわぁ~~!どっちを食べようかなぁ~♪
「まさか…本当に2つも食べる気なのか?」
「まさか~2つも食べたらお腹を壊しちゃうよ~。だから、蒼君はもう一つの方を食べて!あっ、でも少しだけもらってもいい?」
「俺は構わないが、マジで腹を壊すことになるぞ……」
へっへ~ん、大丈夫だもん。私のお腹はそのくらいでは壊れないのだ!というより、これだけじゃ物足りないって感じだよ。
それじゃあ、早速……
「私は苺パフェね!」
「だろうと思った。お前は苺が好物だからな」
「うん!苺っていいよね。甘くって、ちょっぴり酸っぱいところがなんとも言えないんだよ。苺狩りがあったらお腹いっぱい食べちゃうかも」
「お前が苺畑に現れたら未成熟のモノまで全部食われそうだな……じゃあ、俺はチョコで」
私は苺を、蒼君はチョコを手にとった。スプーンを手に取り、そのままアイスの中に挿し入れる。やわらかく、ちょっと硬いアイスの感触がスプーンを通じて私の手に伝わってくるよ!
それじゃあ、まずは一口………
「あ~ん、はむっ!」
う~ん………んんん!!!!おいし~~~い♪♪♪
口の中でとろけるアイスのミルク味と苺のシロップが何とも言えないような絶妙なハーモニーを演出しているかのようだよ!これはおいし~~~い!!
これなら、何度でもイケるよ!!
「はむっ!……はむっ!……はむっ!……はむっ!……はむっ!………」
んんん~~~~!!!何度口に入れてもおいしいよ~~~♪♪♪もう、しあわせ♪
「昼メシ後だろうに、ホント良く食うなぁ」
「美味しいモノを食べるのに朝も昼も夜も関係ないんだよ、食べられることがとってもいいんだよ♪……あっ!蒼君のも少し頂戴♪」
「ったく、食いしん坊だな…ほら、一口だけだぞ」
「わぁ~い!それじゃあ、いっただっきま~す♪はむっ!……ん~~!!チョコもおいし~い♪」
「こりゃあ、本当に2つ食いそうな勢いだな……」
チョコもおいしいけど、やっぱり苺かなぁ~。好きなものが入っていると、どうしてもそっちの方を優先しちゃうんだよね~。
「そうだ!蒼君にも私のを少しあげるよ!」
「えっ?!い、いや、俺はいい…お前が全部食えよ」
「そうはいかないよ、私は蒼君のを少し食べたんだからそのお返しとしてあげたからって問題ないでしょ?……ほら、あ~~~ん~~~~」
「そう言うことじゃないんだけどなぁ……わかったよ………はむっ…」
「どう?おいしい??」
「……おいしい…おいしいけどな……こういうのをあまり人前でやるもんじゃないぞ……」
「えっ??」
蒼君の言葉に私はようやく気付いた。蒼君がどうして食べるのをためらっていたのかを……
はぅぅぅ………よ、良く考えてみれば、私、無意識に蒼君と食べ合いっこしていたんだよね?こういうことをするのって……こ、こ、こ、恋人同士が、ややや、やることなんだよね????そ、そ、それに……蒼君が使ったスプーンを舐めちゃっているし…蒼君も私の使ったスプーンを舐めたんだよね??
わ、わ、わあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!よくよく考えれ見ればすっごく恥ずかしいことをしていたんだぁぁぁぁぁぁ!!!!
私の体は燃えるように熱くなっていった。冷たいものを食べているのに、それを口に入れれば入れるほど体が熱くなっていくよ。そそそそ、蒼君が使ったスプーンが、わわわわ、私の口の中に…!!!こ、これって、間接キッs…
「穂乃果」
「!!!(ビクッ!)な、何かな蒼君?」
「早く食べないと置いていくぞ」
「あっ…」
私が悶々としている間に、蒼君は自分のパフェを平らげていた。えええっ?!は、はやいよぉ~~~……蒼君は私の口に入れたスプーンを使っても何とも思わなかったのかな?恥ずかしいとは思わなかったのかなぁ??ううっ……メンタルが強すぎだよ………。
「す、すぐに食べるから待ってて!!」
「無理やり入れて腹壊すなよ?」
もう、どうにでもなれ!!腹をくくるように、私の中で何かが吹っ切れて、容器を持って飲み物を飲むようにそのまま口の中にアイスやフルーツなどをかき込むように口の中に流し込んだ。
(キ―――ン!!)
んんん!!!あ、頭が痛いよぉ~~~~たくさん口の中に入れ過ぎちゃって、頭がキンキンするよぉ~~~…
「穂乃果が食べ終わったことだし、早速行くとするか」
「わ、わ、わ、ちょっと待ってよぉ~~~…あいたた……」
蒼君は立ち上がり、会計を済ませようとしていた。私も後について行こうとしたけど、途中、足がふらついて体制を崩してしまい倒れそうになった。
「おっと、大丈夫か?」
蒼君が倒れかかった私を受けとめてくれた。肩に手を置いて、私が倒れないようにしっかりと支えてくれた。
「あ、ありがとう…」
「やっぱり無茶していたんじゃないか?しょうがねぇ、俺にしっかりつかまっていろよ?」
蒼君は左腕を差し出してきた。これは、私がこの腕につかまってもいいってことだよね?それって……その……腕につかまるって言うより、抱きつくってことになるよね???
「早くしないと行っちまうぞ?」
「わあぁぁぁ!!わ、わかったよぉ~~~」
自分の力では歩くことができないので、仕方なく蒼君の腕に抱きつくように掴んだ。
はぅぅぅ……さっきの事もそうだけど、これもこれですっごく恥ずかしい気持ちになるよ…
お店の中に居るお客さんたちの視線が私たちに注目されているような気がするよ。うわぁぁぁ…恥ずかしいよぉぉぉ………
私たちはそのまま会計を済ませてお店を出ていった。
会計をしている時、店員さんが驚いたような顔で私たちを見ていたよ……ど、どういう風に見られていたのかな……も、もしかして…恋人同士に見られていたのかなぁ……??
う、うわぁぁぁぁぁぁぁ………そう考えると、余計恥ずかしくなってきたぁぁぁぁぁ………
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[ デパート内の生地屋 ]
ぷしゅうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ………………………
あ、頭から煙が上がっているよぉぉぉぉ……………
結局、お店を出てからも頭の痛いのが収まらなくって、蒼君の腕に抱きついたままこのお店に来たんだけど、いろんな人に見られて恥ずかしかったよぉ………
こうやって、注目されるのはとっても恥ずかしい気持ちになるよ。μ’sで歌って、踊っている時はそう感じなかったけど、蒼君と2人でこうしていると、不思議と恥ずかしい気持ちが湧きあがっていくよ……ど、どうしてなんだろう………いつも、蒼君に抱きつこうとしているけど、その時はみんなに見られたって平気だったよ?で、でも……今日は何か違う気がするんだ……いつもとは違った何かが、私の中に湧きあがっているんだ。それが何なのかは分からないけど…多分それが、今の私の気持ちに現れているんだろうね……これは一体何なんだろう……?
私は自分の気持ちについて考え込んでいると、視線の先にとってもきれいなものを見つけちゃった。それは………
「ウェディングドレスだ!!」
これが花嫁さんが着る服かぁ……全体が白く輝いていてとっても綺麗………
キュッと引き締まったウェストのから肩までの上半身と、その下のふわっふわっな大きなスカートがとってもかわいらしい感じがするよ!わぁ…これが女の人の憧れの衣装なんだよね…?私もいつかこんなきれいな服を着たいなぁ……
「お気に召しましたか、お客様?」
「えっ?!」
その店の中から女性の店員さんが出てきて、私に話しかけてきた。
「は、はい!とってもきれいで見とれていました!」
「左様でございますか。こちらは当店でもオススメとなっているモノでございます。お客様は良い感性をお持ちのようですね」
「そ、そんなことはないですよぉ~…」
「もしよろしければ、御試着してみてはどうでしょうか?」
「えっ?」
試着?……このドレスを着ることができるの!?えええっ!!!!本当なのぉぉぉ!!!!
「どうした穂乃果?」
「蒼君!!」
ことりちゃんからの注文品を受け取ってきた蒼君は不思議そうな顔をして私に話しかけてきた。
「そ、蒼君!!!ウェディングドレスだよ!着ることができるんだよ!!!」
「はっ?何だそら??日本語になっていないぞ???」
「はうぅぅぅ……興奮しちゃってて……」
あまりにも思いがけないような出来事だったので、私の頭の中はパニック状態になっちゃっているよ。わぁ…何をどう伝えればいいんだろう……
「お連れ様でよろしいでしょうか?」
「ん、あっはい」
「実は、お連れ様にここにあるドレスを試着してはどうでしょうかとお伺いしていたところでございまして、いかがでしょうか?」
「本人が着たいと言うのであれば、俺は構わないと思いますが…御代とかはどういたしましょうか?」
「いいえ、結構です。当店では、試着するだけならば御代は頂かないことにしておりますので、よろしければご自由にお選びになり、試着してみてくださいませ」
私の様子を見て店員さんが気を利かせて、代わりに蒼君に話をしているよ。本当に、このドレスを着てもいいんだ…まるで夢のようだよ……
「だ、そうだが、着てみるか?」
「うん!!ぜひ、着させていただきます!!!」
「かしこまりました。それでは、どちらにいたしましょうか?」
「ええっと……そうだなぁ………」
そのお店の中にはたくさんのドレスが置いてあって、どれもみんな美しくって、かわいくって……もうどれを選べばいいのかわからないよぉ~~~~………
「穂乃果、こんなのはどうだ?」
蒼君が見つけ出したのは、仄かにオレンジ色をした少し小さめのドレスで、私にちょうどぴったりなサイズになっていた。
「おお!!これは御目が高い!そちらは今の流行りのカラードレスでして、白以外のドレスも来てみたいとのご要望で様々なカラーのものをご用意しておりました」
とってもきれい……ちょっと赤めのオレンジ色の輝きがさっきのドレスよりもより一層、美しく、きれいに見せているような感じがするよ…………これが、私の…………
「うん!!そのドレスを着るよ!!!」
「左様でございますか、それではご用意いたしますので、こちらにどうぞ」
私は店の奥に連れていかれて、ドレスを着る準備に取り掛かった。
さっきまで来ていた服を脱いで、体についている汚れや汗などを濡れたタオルなどで拭き取ることから始めた。これも商品だからね、私が着て、汚くなっちゃったら大変だもんね。入念に拭きとらないと……
そして、ドレスを着始める。
背中のチャックを下ろして、そこから足を入れて、そのまま、ドレスを上にあげて着る。ちゃんと着れるかが心配だったけど、店員さんのおかげで、一回で着ることができた。
「お客様、よくお似合いですよ」
店員さんが鏡を持ってきてくれて、私はそれで自分の姿を見た。
「うわぁ……これが、私?」
そこに映っていたのは、とってもきれいな私だった。この鏡に映っているのが本当に自分なのか疑っちゃうほどだったよ。私はほっぺをつねってみて、夢じゃないか確かめた。
痛い…!
と言うことは、これは夢じゃない…本当の事なんだ!!!
私はもう一度、鏡を見て今の自分を確かめた。ドレス一つだけでこんなに変わるんだ……えへへ、まるで魔法にかかったシンデレラみたいだよ。
今の自分をいち早く蒼君に見せたかった。私は蒼君の方に向かって行った。
「蒼君、見て見て!私こんなにきれいになっちゃった……よ………」
蒼君の前に着た時、驚きの光景を目の当たりにした!それは、蒼君がタキシード姿になって立っていたからだった。その姿がとっても似合っていて、そのビシッとした服装が蒼君のカッコよさを引き立てているかのようだった。
「ちょうどよろしかったので、お連れ様にもこちらを着ていただきました」
もう1人の店員さんがそう言った。
すごい…すごいよ!!私はこんなにきれいなドレスを着ることができたし、蒼君のカッコいいタキシード姿も見ることができたなんて……ほんと、夢みたいだよ!!!
私はもう一度、自分のほっぺをつねってみようかと思った。けど、それよりも先に、蒼君が私の手を握ってくれた。その手から伝わってくる温もりが、私に夢じゃないことを伝えてくれていた。私は嬉しくって、嬉しくって、涙が出てきそうだったよ。私、幸せすぎて死んじゃいそうだよ!!
「すみませんが、よろしいでしょうか?」
「?」
「はい。では、よろしくお願いいたします」
「???」
蒼君と店員さんが何を話しているのかがよくわからなかった。私がいなかった時に、何を相談していたんだろう?気になって仕方が無かったよ。
「穂乃果」
蒼君が私に話しかけてきた。
「さっき、お前が着替えている時に、この店に飾る写真に俺たちの姿を飾ってもいいかっていう話があったんだ。無償で衣装を貸し出してくれたんだし、その代わりにと思ってな、俺はお願いすることにしたんだ。穂乃果は問題ないか?」
「ううん!!何の問題もないよ!!むしろ嬉しいよ、この姿を蒼君と一緒に記念として残してもらえるんだから、これほど嬉しいことは無いんだよ!!」
「ふっ、お前らしい答えだな」
蒼君はくすっと笑いをこぼしていた。
「それに、今の穂乃果はとっても綺麗に見えるぞ」
「えっ//////」
不意打ちな言葉に私は、また体が燃えるように熱くなっていった。ううぅ……そ、そういうのは、反則だよぉ………。蒼君の顔をまともに見れなくなっちゃったよ……
「それでは撮りまーす!!」
カメラマンさんが準備をし終えたようで、こちらにレンズを向けて待っている。
「大丈夫ですよ、いつでもお願いします!」
えっ!?ちょ、ちょっと待って!!私はまだ、心の準備が………
「穂乃果」
蒼君は手を私の腰に当て、私の体を引き寄せた。うわあぁぁぁぁぁ……こ、これじゃあ、ますます緊張しちゃうよぉ……
「落ち着いて、ただ前だけを見ていろ」
「えっ?」
「大丈夫、俺が付いている。だから、安心しろ」
「蒼君…」
その言葉を聞いて、私は落ち着きを取り戻した。不思議だ、その言葉を聞くと心が穏やかになって安心しちゃうんだ。前にも聞いたことがあるような………
「それではいきまーす。3・2・1・ハイチーズ!」
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「うふふふふ………」
「どうした、そんな変な声を出して…周りから気味悪がるだろ?」
「だってぇ~、こんないい写真が手に入ったんだもん。嬉しくないはずがないよ~♪」
私は撮影が終わった後、撮った写真を自分にも貰えないかと話をした。すると、店員さんは快く了承してくれて、写真と私のスマホにその写真のデータを送ってくれたんだ。
うふふふふ……これは、私の宝物だよ!肌身離さず、ずっと持っているようにするよ!
「そういえば、蒼君はどうして私にあの色のドレスをすすめたの?白とかでも良かったんじゃないの?」
「ああ、それはだな。白じゃ面白みがないなと思って、違う色が無いかって思ったんだ。そしたら、ちょうどぴったりな色のドレスを見つけたからお前に渡したんだよ」
「私にぴったりな色?それはどういうことなの??」
「あれを見てみろ」
蒼君は花屋さんの前に置いてある花に指をさした。けど、たくさんの花がそこにあったから、何を指しているのかが分からなかった。
「蒼君、どれを指しているの?」
「じゃあ、近くで見てみるか」
そういって、花屋さんの前に足を運んで蒼君が指さした花を見た。その花は…
「バラ?」
「ただのバラじゃない、朱色のバラだ」
確かに、私がよく見る真っ赤な赤いバラじゃなくって、オレンジ色に近いような赤いバラだった。そうか!このバラの色があのドレスと同じ色だったんだ!!
「それに、これはお前の花なんだぜ」
「私の…花?」
「お前の誕生日は8月3日だったろ?その日の誕生花は、この朱色のバラだってことさ」
「これが、私の誕生花……」
知らなかった…星座の他にも自分の誕生日に合った花があったなんて……しかも、こんなきれいな花が私の誕生花なんて……
「この花のように、今日のお前はとっても綺麗だった。まさに、空高く輝く太陽だった」
「!!!」
「穂乃果……お前はあの太陽のように輝き続けろ……そして、みんなを照らす光となるんだ……」
「蒼君、それは一体どういう……」
蒼君は私に何かを問いかけているようだった。その目はとても優しかったけど、何か寂しそうな感じがした。その意味が何なのか、今の私にはわからなかった……
「さあ、暗くならないうちに帰るぞ」
蒼君は駅に向かって歩き始めた。私もその後に続いて行こうとしたけど、一瞬、その花に付いていた白い紙に目が行った。そこに書かれていたのは、この花の意味だった。
「朱色のバラの花言葉は……『愛情』…!!」
蒼君は、もしかして私のことを……!!
そう思うと、また、嬉しい気持ちになってきた。
私は蒼君の後を追いかけて、その腕に抱きつくように掴んだ。
「おぉぉ!?何だよ、いきなり?」
「えへへ、ちょっとこうしたくなっちゃったんだ~♪」
「ったく、自分の足で歩けるのにこういうふうにされると、逆にこっちが歩きづらくなっちまうじゃんか…」
「いいもん!だったら、今度は私が支えちゃうもんね♪」
「はぁ…まあ、それはそれでいいんだけどさ。あまり、変なことをするなよ?」
「うん!わかってるよ、だから心配しないでね!」
蒼君は、やれやれと言った感じに私のお願いを聞いてくれたよ。
えへへ、蒼君とこうしていられるのって、とっても幸せ♪さっきとは違って、もう恥ずかしい気持ちなんてないよ。だって、こんな気持ちでいられるのに恥ずかしいなんて思うことなんてできないんだもん。見ている人たちに私たちの姿を堂々と見せてあげるんだから!!
蒼君……蒼君が言ってくれたこと、ちゃんと覚えておくよ…蒼君の言ったような女の子になれるように、私、頑張るから……だから……私を見ていてね……
(次回へ続く)
ドーモ、うp主です。
今回の誕生祭は間に合ったな。前回のにこの誕生祭には遅刻した上に、本編中に入りこませることが出来ないからって活動報告で終わらせてしまったという、苦い経験をしたばっかだったので、今回は絶対にやってやる!!という気持ちでやってみたら………
9千文字!!?
ば、ば、ばっかじゃねぇのぉぉぉぉ!??力入れ過ぎぃぃぃぃ!!!
ホント、視聴者様にやさしくないSSだな!!
通常だったら、このくらいあれば2~3話くらい作れる気がする……
いいとこ、1話5千文字くらいに収めてもいいかもしれないな。やってみるか?
次回は、通常営業話が続き、また、新キャラの登場の予感が!!
どうするかは、物語の進行によりますが………
それでは、みなさん。この素晴らしき、穂乃果誕生祭を盛り上げていきましょぉぉぉ!!!!!
今回の曲は、
TVアニメ『SHUFFLE!』より
YURIA/『YOU』
更新速度は早い方が助かりますか?
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ちょうどいい
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もっと早くっ!
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遅くても問題ない