第34話
【前回までのあらすじ】
~孤独にグルメ 第33皿目~
[ 千代田区秋葉原メイド喫茶のチャンピオンカツカレー 特製チーズケーキ ]
????「完全に別物だわ!!!」
あんじゅさん・・・・・出番はまだです・・・・。
―
――
―――
――――
「ん?」
家の前に着いた時、何やら背後から何かの気配がした。
それが何なのかはわからない。
ただ単に、暗くなったから見えないだけなのだろう。それか・・・・
「気のせいだな・・・」
そんな能天気な考えを抱きながら、ドアの鍵を開け、中に入る。
「ただいま、帰りました~~~っと・・・」
そうして、靴を脱いで上がろうとした時・・・・・・
「・・・・(ボソッ」
ちょうど、背後から小さい声がした!とっさに俺は、高らかにジャンプをして廊下を回避行動(ローリング)する。
廊下の電気は点いていない。点いているとしたら外灯のみ。相手の姿を捉える事は難しい。
「誰だ!!」
叫んでも、返事は無い。有るのはこちらに近づいてくる黒い影だった。
「くっ!!」
黒い影が正面に来た時、俺は影の横にあるわずかな空間に体を滑り込ませ、背後に付く。そのまま、脇を両腕で抑えて持ち上げ動きを止める。
それは、ジタバタと手足を動かしていたが、俺にはどうということは無かった。
抵抗しても無駄だと言うことがわかると、動きを止めておとなしくなった。
それを見計らい、俺はそれを持ち上げながら移動して、部屋のスイッチを押す。
すると、俺が抱えていた人物が誰なのかがはっきりした。
「何やってんだ?ことり??」
「てへっ☆ばれちゃったぁ~♪」
はあぁぁぁぁ・・・何しているんだ、このおてんば娘は・・・・
俺はそのままリビングに入り、ことりをソファーに座らせる。即席で、ホットなお茶を提供することは出来なかったので、冷蔵庫の中に冷やしていた麦茶を用意した。
「ほらよ」
「ありがと~」
ことりは手渡したお茶を一気に飲み干した。
「はぁ~、やっぱり麦茶はおいしいねぇ~♪」
「おいしいねぇ~、じゃねぇよ!何しに来たんだよ!!」
「う~ん、そうだね~・・・一言で言えば・・・・監視かな?」
「はぁ?!」
よもや、ことりの口からそんな言葉が出てくるとは思いもしなかった。毎度毎度、俺にアタック(物理・精神)してくるのは日常茶飯事なのだが、ストーカースキルまで身に付いてしまうとなると・・・・う、う~ん・・・やべぇよ・・・・
「だ、だって・・・・蒼君・・・見たでしょ?」
「えっ?何を???」
「そ、それは・・・そのぉ・・・・・・もう1人のことりのあられもない姿を・・・」
「おいいいい!!!誤解を生むような発言は止めろぉぉぉ!!!そして、何故、顔を赤くする!!してないから、何もしてないから!!!」
「それはこのあと何かするということなんだね!」
「止めなさい!!!!」
だめだ、こういう話になるとことりのペースに乗せられてしまう。いかんいかん、乗せられるな、あくまで我を押しとおさねば・・・
「んで、何故、あそこで働いていたんだ?」
「それは・・・・μ’sのため・・・かな・・・」
「何?」
「まだ、μ’sの活動は生徒会に認められていないでしょ?衣装を作ろうにもお金が無いと布を買えないからこうして働いているの・・・」
「そうだったのか・・・・」
「こ、このことは誰にも言わないでね!お母さんにも、穂乃果ちゃんたちにも!」
「う~ん・・・いずみさんはともかく、穂乃果たちには言ってもいいんじゃないか?」
「ダメなの!!!」
急に、ことりが声を荒げて叫んだ。それは、必死に何かを隠そうとする思いと後ろめたさがそこにあるのだと感じられた。俺はそんなことりにやさしく問いかけてみた。
「
「それは・・・ことりには・・・・何もないから・・・・」
「へぇ~、何が無いって言うんだ?」
「私は、穂乃果ちゃんみたいに学校のために何かしようとしてμ’sを始めようと言ってみんなをまとめようとすることもできない、海未ちゃんのようにしっかりしてないし、体力も自信も無いし、詩だって書けない・・・2人と比べて、私は何もないの・・・何の取り柄もないの・・・・本当はね、私は変わりたかった・・・こんな何もない自分から何かを持つ自分に変わりたかった・・・2人に追い付きたい・・・そんな思いでこのアルバイトを始めたの。でも、まだ追い付くことができないでいる私がいる。2人には、そんな私を見せたくないの・・・」
ことりは真剣な眼差しで俺を見ていた。それに今にも泣き出しそうなその顔をしていた。この十数年もの間、ことりは俺や穂乃果たちを見ていて、そう感じていたのだろう。それぞれが真剣になって、何かに取り組んでいこうとしていく中で、ことり自身が取り残されてしまっていたのだろう。そんな自分が嫌となって、違った自分を演じるようにあそこでメイドとして働いていたのだろう。だが、どうあがいたって当然それは本物になることはできないということを理解していた。偽ろうにも偽りきれないそんな自分を見てほしくなかったのだろう・・・
「ことり」
俺はことりの手を引いた。ことりの手のひらは俺のと比べてとても小さく、か細く、色白で弱々しく見えた。だが、その手は決して、何も出来ない手では無かった。
「ことりの手はいつも小さくって弱っちく見える。だが、その手からはたくさんのモノを生み出してきただろう?」
「えっ?」
「ことりの部屋の中には自分で作ったぬいぐるみがあったり、服だってあるんだろう?それに、この前のライブで作ったあの衣装だってよかったじゃないか」
「あれは・・・色々な雑誌とかを参考にして作っただけで・・・私のオリジナルじゃないの・・・誰かのモノを見ないと出来なかったの・・・」
「それでもいいじゃん」
「えっ?」
「人間誰しも最初っから自分1人で何でも出来るヤツなんていねぇさ。誰かを見たり、参考にしたりしながら自分のオリジナルってやつを作っていくのさ。もちろん今の俺があるのは、色々なヤツからの影響を受けたからあるんだ。そこから、俺流の歌や踊りが生まれたってことだよ」
「・・・・私にはできないよ・・・・」
「いや、できる。ことり、お前ならできる!俺が保障する!!」
「蒼君・・・」
「誰かを参考にしたっていい、誰かのをそのまま使ってもいい!だが、お前なら既存のものよりもはるかにいいものを作り出せる。お前のこの手にはその可能性が詰まっている。安心して、俺を信じろ。そして、お前が俺を信じるようにお前自身を信じろ。必ずできるって信じるんだ」
「蒼君・・・・!!」
「見せてくれないか・・・お前の可能性が確信に変わるその瞬間を・・・」
「・・・・うん!ありがとう蒼君・・・ありがとう・・・・」
そう言うと、ことりは俺の体にしがみつき、顔を胸に押し付けた。引き離そうと考えたが、服から染み透ってくる湿りがことりの目から出ているものだと感じると、そっとそのままの体勢を維持し続けた。
数分後、落ち着きが見られるようになったため、引き離してみようとするが、しっかり掴んでいてビクともしない。さてどうしたものか・・・・
時刻は19時を回ろうとしていた。
その時間まで娘を外に出歩かせていく親はいないはず。いずみさんに限ってはそんなことは無いだろうと思うのだが・・・
「ことり、もうこんな時間だぞ。帰らないといずみさんに怒られるぞ?」
「・・・・まだ、このままにしてぇ・・・・」
「そうもいかねぇだろ。ことりが帰ってこなくちゃ心配するだろうし、今頃、色んなところに連絡を入れていることだろうよ」
「・・・じゃあ、蒼君。今日は蒼君の家に泊まるって伝えてぇ・・・」
「俺が大迷惑なんですけど、それに、許さないだろうよ」
「お母さんは蒼君ならいつでもOKしているよ・・・」
「ねぇ、何それ?何の話なの、それ??何がOKなの????」
「ひ・み・つ♡」
「よし、お前がそういう手で来ると言うならば・・・・
・・・・すぐに帰るか、バイトの事をみんなに話すのか・・・どっちがいい?」
「ぶ~~~蒼君冷たいよぉ~~~。もう、帰りますよ~~だ!」
ことりはようやく掴んでいた手を放して、ほほを膨らませながら帰り支度を始めた。
はぁ・・・しかし、こう・・・なんだ・・・
穂乃果とことりはどうして俺に執着して来るのだろうか?・・・う~ん、幼馴染と言う接点からか?いや、何だろうな・・・わからん。女子の心は複雑怪奇じゃぁ!
「それじゃあ、私、帰るね」
「送らなくても平気か?」
「大丈夫だよ!もう子供じゃないんだから!」
「法律上ではまだまだ子供の扱いなんだがな」
「んもぉ~~~バカにしないの!」
あはは、さっきよりもほほを大きく膨らませているわ。よく膨らむなぁ~指で突きたいくらいだぜ。
・・・そうなんだよな、もう子供じゃないんだよな・・・・
小さい頃はよく、1人じゃ帰れないって言ってことりの家まで送っていったっけな、それから考えると変わったと思うぞ。少しずつだが、確実に新しい自分を作り上げているように感じられる、そんな気がするのさ。
「蒼君」
「ん、なんだ?」
「大好き!」
「・・・・はいはい、わかりました。ちゃんと、ありがたく受け取りますよ」
「ぶ~、やっぱり今日の蒼君は冷たいよぉ~」
「毎日聞かされている俺にとってはただの挨拶にしか聞こえんぞ。ちゃんと使うならもっとこう・・・使用頻度を下げて、貴重なものとしろよ。そうしないと、男は落ちないぞ」
「ぶ~~~~、もういいもん!私帰る!!」
ぷんぷんという漫画でよくありそうな擬音語が飛び出てきそうな雰囲気だな。ことりさんはずいぶんご立腹なご様子だなぁ~。いつものことなのに。
そんじゃあ、
「ことり」
「何、蒼君!ことりはかなり御機嫌がななめ気味なんだよ!それもこれも全部、蒼君のs・・・・」
俺はことりの背後に忍び寄り、顔をことりの耳元に近付けた。そして・・・・
「俺も、大好きだよ」
・・・と、小さく囁いた。
「ふぇ・・・・ふぇえぇぇえぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!!!!!」
「・・・・というように、こうした言葉は使われるものだ。わかったか、ことり?」
「ふぇ???はわわわわわわわ・・・・・」
「どうやら、思考回路がぶっ飛んでいるようだな・・・斜め45°チョップすれば直るかな??」
ものは試し様なので、軽くチョップしてみた。
「ちゅん!?・・・・あ、あれ?私どうしたの???」
「安心しろ、思考回路がぶっ飛んでいたから直しただけだ」
「そうなの??・・・あれ?・・・何か忘れているような・・・・・・・・ああああああ!!!!そ、そ、そ、蒼君んんんn!!!!さ、さっきのアレはな、何!!?」
「お前がよく使っている言葉の本当の使い方の見本だよ!少しは言葉に気を付けるんだな」
「え?え??てことは、さっきのは・・・冗談・・・なの?」
「ん?ああ、大好きだよ・・・・
・・・・・親友として」
「ええええええええええええええええええええええええ!!!??」
「俺は
「そ、そんなぁ~~~~~~~!!!!!!!!!!
・・・・あっ、もう一度、言ってもらってもいい?」
「だぁ~め!!言葉の安売りはしないよ!!」
「ことりの目覚ましアラームにしたいの!!もう一回言ってよぉ~~~!!」
「自分で自分の首を絞めるような黒歴史は作りたくないので、却下」
「ちゅ~~~~~~ん!!!!」
「そら、早く帰った帰った!」
玄関で駄々をこねることりをなんとか外に連れ出して(強引に)帰らせた。
ふう、やっと落ち着いたか・・・・・
しかし・・・・・・
冗談でも、あんなことは言うもんじゃねぇな。柄にでもないことを言ったから吐血しそうだ・・・今度から気を付けないと・・・・
さて、いずみさんにことりが帰っているってことを伝えるか。
その後、蒼一はいずみに連絡をしたところ、『泊まらせてもよかったのよ』と言っていた。また、ことりが言っていたことをたずねてみると、『うふふふふ・・・・(意味深)』と言ってはぐらかされた。それに一体どんな意味があるのか、なんとなく予想は出来ている蒼一だったが、何やら嫌な感じしかしないと第6感がそう告げているので、それを言葉にするどころか考えることすら止めてしまった。
どーも、うp主です。
前回はお腹が物質的に満たされる話でしたが、今回は、精神的な意味で満たされそうな感じになっちゃいました!!!てへぺろぉぉぉ!!
壁があったら殴りたい!バンバンしたいよ!!
こんなのが現実にあるわけない!!!
ということもない人生を送ってきた俺なので、まず、自分を殴りたい・・・
あぁ~~!!あぁ~~~!!!黒いれ~き~し~のいっペ~ジ~♪
さて、ことりの恋はどうなるんでしょうかねぇ?・・・まあ、どうなるかはもう決めてはいるのですがね。それまで、待っててねー!!
今回の曲は、
遊助/『全部好き。』
更新速度は早い方が助かりますか?
-
ちょうどいい
-
もっと早くっ!
-
遅くても問題ない