第31話
【前回までのあらすじ】
μ’sの初ライブは散々な結果で終わったが、無事やりきることができた穂乃果たち。
蒼一らもようやくスタートラインに立てさせることができたことに胸をなでおろす一方で、
蒼一は自らの後輩である、絢瀬 絵里と再会する。
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俺が小学校6年生になった時に、その子は突然俺の目の前に現れた。
『私は絢瀬 絵里よ!特別にエリチカと呼んでもいいわよ♪』
一個下の金髪の後輩が堂々と俺の目の前に立ち、そう答えた。
『何を言ってんだ、お前は?』
俺はその後輩のドヤァな態度に呆れながらも何か用があるのだろうと思い、話を聞いていた。
『何って、私はあなたに勝負を申し込みに来たのよ!』
『はぁ?!』
『あなたはこの学校の中で誰よりもかしこいと言われているそうだけれども、そんなのこの私が許さないわ!だから私と勝負しなさい!』
『やっぱり何を言っているのか、さっぱりわからねぇ!!』
そんなわけで、俺は4年もの間ずっと付きまとうこのわがまま少女と出会ったのだった。
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そして、現在・・・・
「待て!絢瀬!!」
絶賛、俺は絢瀬と追いかけっこ中であった・・・・・。
何があったのかというと、先ほど、講堂で絢瀬を見つけて近づこうとした時、目にもとまらぬ速さでその場を立ち去ったのだ。
そんで、俺は絢瀬に追い着こうと必死になって走っているわけだ。
だが、一向に追い付くことができねぇ!!意外と身体能力が高いんだな!!!
しゃあねぇ、
速く走り過ぎると体に大きな負担となるから普段から速度を上げてはいないが、今の状態では一向にらちが明かないのだから仕方ないのだ。
よし・・・・・!
足に力を入れ・・・・・はぁぁぁぁぁ・・・・・・・ふん!!!!
(ドッ!!)
床を強く蹴り飛ばして、一時的に速度を大幅に上げた!
それにより、絢瀬よりも圧倒的に早く走れることができたため、勢いに任せてそのまま急接近することができた。
そして・・・・・
(ガシッ!)
ようやく、絢瀬の右手を掴むことができ、そのまま制止させることに成功した。
「やっと捕まえたぞ、絢瀬・・・・・何故、俺を見て逃げる?」
絢瀬は振り返り、俺と顔を合わせた。
その顔には昔の面影を感じさせることができるものの、目付きは鋭利な刃物のように鋭く、冷たい眼で俺を見つめていた。また、表情に変化が無く、感情を持たない機械のように淡々とした。
そう・・・・今ここにいる絢瀬は、
「先輩、放してください」
その口から出てくる一つ一つの言葉にも感情は無く、まるで、俺自身が極寒の雪山の中を彷徨うかのように心が凍りついてきた。昔、小泉八雲の怪談小説の中に、雪女が男に白い息を吹きかけて凍死させてしまう話があったが、今まさに、絢瀬が雪女となって、言葉と視線で俺を凍死させようとしているように思えてきた。
俺は、それに耐えられることができず、言葉どおりに手を放してしまった。
「私は、先輩と話をすることは何もありません。では、失礼します・・・」
絢瀬はそのまま反転し、この場から立ち去ろうとした。
「待て、絢瀬!まだ、俺の質問に答えていないぞ!」
立ち去る絢瀬の正面に回り込み、行き先を阻んだ。だが、そんなことも気にも留めず、横を通り過ぎようとした。そして、すれ違い様にこう言って立ち去った。
「
「・・・・・・」
俺が嫌い?何かに付けて、付きまとってきたあの絢瀬がたったそれだけの理由で立ち去るのか?
俺には理解しがたいことだった。他に何か理由があるのではないかと感じていた。
しばらくすると、希がこちらにやってきた。どうやら、勢いよく講堂を出ていった俺たちのことが気になって追いかけてきたのだろう。
「蒼一!えりちと何があったんか?」
「いや、別に・・・・」
「それに、蒼一はえりちと知り合いだったんか?」
「・・・ああ、俺が小学6年から中学卒業までずっと付きまとってきたヤツだよ・・・それが今ではこうさ、俺を見て逃げ出したんだぜ?おかしい話だろ?」
「蒼一・・・・」
絢瀬から付きまとわされる日々というのはあまりいい感じはしなかった。俺が何かしようとすると、それに対抗するかのように出てきて、俺と同じようなことをするのだ。邪魔で仕方が無かった。しかし、いざ絢瀬という存在が居なくなった時というのは、不思議なことに少し寂しさを感じるものがあった。俺はずっと隣で対抗しようとしていた絢瀬に何か期待をしていたのかもしれない。それが何なのかは、今の俺には分からなかった・・・
「そう言えばな、蒼一」
この沈黙を破るように希が話し始めた。
「蒼一がこの学院の講師として来るっちゅう話をした時な、えりちはめっちゃ動揺しとったんよ。それが何なんかは知らんけど、やっぱり何かあったんやないかなぁ?」
絢瀬が動揺?一体なぜ・・・?
「それと、本当やったら蒼一が初めてこっちに来たとき、ウチら生徒会の方にも来なあかんかったんやけど、えりちが嫌がってな、ウチがもうすでに会っとるからええんやって言うてな、この流れが無くなったんよ。しかも、その後も蒼一と会わなあかんことについても、穂乃果ちゃんやったり、ウチやったりに話して蒼一に伝える間接的なことばっかしやっとったんよ。変やろ?」
「それって・・・つまり、絢瀬は俺のことを避けているってことになるよな?」
「せやね・・・蒼一に何か思い当たる節があるんやないの?」
「・・・それが無いから困っているのさ・・・」
何かあったらとっくに弁解しているところなのだがこんな状態だ、どうすればよいのか全く見当がつかない。さて、どうしたものか・・・・・・
(~~~~♪♪~~~♪)
ん?俺の携帯か?一体誰から・・・・?
「もしもし?」
『あっ!蒼くん!!どこに行ってるの!!!!』
電話の相手は、穂乃果からだった。
相変わらず、電話越しでとんでもない声量で通話してきやがる!!
「だあああああ!!!うるせぇえええ!!!電話で話すときくらいは静かにできんのかぁあああ!!!」
『~~~~ッ!!わ、わかったよぉ・・・今度から気を付けるよぉ・・・』
「それでよし!んで、何か用か?」
『あ!そうそう、早く講堂に戻って来てよ!洋子ちゃんが写真撮るんだって、早く早くぅ~♪』
「島田が?・・・あ~でもなぁ、今俺は・・・」
今抱えている悩み事を解決してからにしようと、穂乃果からの誘いを断ろうとした。
そんな時、希が話させないように俺の唇を指で押さえた。希!何を?!
「行っといた方がええよ。えりちの事はまたあとで考えればええんや。今は自分が最優先にしないといけないことをせえへんとあかんやろ?」
希・・・・
「ほな、行ってきぃな。蒼一の大切なμ’sが待っとるよ。えりちはウチに任せとき、なんとかしてみるわ」
そうか、すまないな・・・・今、俺がしなければいけないのはアイツらの事だもんな。
希は指を離し、ようやく話せることが出来るようになった。
「穂乃果、今からそっちに行くから待っておけよ?」
『うん!わかったよ!!早く来てね!!』
(P・・・)
電話を切り、今自分がやらなくちゃいけないことを改めて思い返した。
「希、あとは任せた」
「うん、蒼一もな」
俺と希は、それぞれ逆方向に向かって行った。
まだ、納得していないところはあるものの、今は希に託すしかない。
それに絢瀬とは、正面切って話し合わなければいけないときが必ず来るだろう。
その日が来るのを俺は待ち続けるのだった・・・・
(次回へ続く)
ドーモ、うp主です。
一区切り後の最初の話となります。今のところいい感じじゃないかぁ~、しかも、現在制作中の話もポンと出来あがって、次の投稿日に間にあいそうや!
前回でも話したように、一応TV版路線で行くつもりなのでよろしくです。
オリジナルシナリオがお好きな方もちょこちょこと入れていくつもりなので、多分、ニーズ(?)には応えられるかも?
そんなわけで、よろしくお願いします。
今回の曲は、
TVガンダムシリーズ『機動戦士ガンダムSEED』より
See-Saw/『あんなに一緒だったのに』
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