蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第20話


俺はお前を支える、ウチはキミを支える、私は・・・

<前回までのあらすじ>

 

 

明弘の提案により、真姫から与えられた楽曲を編集することを行った蒼一たち。

無事に作業を終えて、ライブに向けて大きな一歩を踏み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、不安な思いを抱えてこの数日間を過ごしてきたのは蒼一だけではなく、もう一人の方にも言えることだった。

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

(~~~~♪~~~~~~♪)

 

 

 

 

あれから数日、蒼一は未だに現れる気配は無かった。

 

 

 

 

もうそろそろ来てもいい頃なのに・・・・・

 

 

 

 

そう思いながら教室の扉に目を向ける。

 

 

だが、そこには誰もいなかった。私はただひたすらと覗きに来ようとする蒼一のことを考えて、じっと扉の窓から見える景色を見ていた。そこから見えるのは、延々と続く長い廊下とそれを支えるように両面にそびえ立つ壁だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(~~~♪~~~~♫♩・・・・)

 

 

 

「あっ・・・・」

 

 

 

まただ・・・・また指を滑らせてしまい違った音を出してしまった。

 

 

「・・・・これで何度目よ・・・・」

 

 

 

毎日、同じような曲ばかりを弾いていて、目をつぶっていてもどこに指を掛けて弾いていくのかは当たり前のようにできる技だ。・・・・けど、ここ最近は、こうしたミスが連発するようになっていた。どうしてなのかしら、こうしたことは初めてだわ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

今日はもうこの辺にしておきましょう、モチベーションが上がらない状態で弾いても意味は無いし。

 

 

 

鍵盤に蓋をして、椅子の下に置いておいた私のバッグを取り、その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

 

「はあ・・・・・」

 

 

 

その帰路に進んでいく中で、私自身に対し、呆れと情けなさの感情がふつふつと湧きあがってくるようだった。その原因がいったい何なのかということを考えるとあの時のことを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺が真姫と会った時に、何で悲しそうな表情で弾き語っていたんだ?』

 

 

『蒼一には・・・・・答えられないことだわ・・・・』

 

 

『そうか・・・変なことを聞いて悪かったな』

 

 

 

 

 

蒼一が私と初めて会った時のことについて話した時、私は酷い悪寒にさらされていた。私がどんな表情でピアノを弾いていたのか、それについて問いただされることに恐れを感じていた。私がどうしてあんな表情で弾いていたというのは自覚していた。けど、誰にも知られたくなかった、私自身も忘れたい過去なのにそれを他人に話すことなど到底できるはずもないこと・・・・・

 

 

 

 

 

 

だけど、今となっては後悔している部分もある。何故だろう、蒼一にだったら打ち明けてもいいかもしれないと感じている部分もあるの。それがどうしてなのかは分からないけど・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時、蒼一は悲しそうな顔をしていた・・・私の一言で蒼一を悲しませてしまった・・・・・また、私のせいで他人を傷つけてしまった・・・・

 

 

 

 

黒く歪んだこの気持ちが私の内に漂っていた。それはまるで付いてしまったらとることが難しいシミのような感じだった。これが私を蝕んでいくものなのだろうか?疑問を抱いたところで何も変わるはずもなかった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ」

 

 

 

神田明神。

 

 

確か、ここは前に蒼一が話していたあの人たちの練習場所があったはず。ええっと・・・場所は・・・・

 

 

 

正門から境内に入り、周りを見渡す。

 

 

 

 

「さすがにこの中ではやらないわよね・・・」

 

 

 

 

右の方を見てみると、もう一つの門が見えてきた。そうよ、ここだわ!

 

 

 

 

「男坂門・・・・ここのはずなんだけど・・・」

 

 

 

 

蒼一が言っていた場所に来てみたものの、誰もいなかった。変ね、毎日練習していると言っていたのに・・・・今日はお休みなのかしら?

 

 

 

 

 

・・・・って、どうして私がここにいなければいけないのよ!私には関係はずよ!・・・・関係無いはず・・・・・

 

 

 

そう思っていると、なんだか無性に悲しくなってきたわ・・・・ここにいても何も変わらなそうだし・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった・・・

 

 

(ガシッ!)

 

 

「きゃっ!!!」

 

 

な、ななななな、、、なんなのよ!!!!きゅ、急に後ろから胸を掴んでくるなんて!!!誰なの!!!

 

 

 

 

 

 

「ん~ええ反応やねぇ~。それに発展途上ってとこかな?」

「はぁ?!何なのよ、あなたは!!!」

 

 

巫女服を着たこの女性が私の胸を触りに来た事に驚いている。けど、男の人で無かったことが少し安心感を与えてくれていた。

 

 

 

「あれぇ?ウチのことを知らんの?いつも音楽室の使用申請を許可しとるのに~」

「えっ?・・・・あっ!」

 

 

 

も、もしかして、副会長?!ど、どうしてこんなところにいるのよ!!学校にいた時と比べて雰囲気が全く違うから分からなかったけど、言われてみると確かに副会長だわ!!

 

 

 

 

「ようやく思い出してくれたんやね。忘れられていたら、ウチ、めっちゃ悲しかったわ~(シクシク 」

「えぇぇぇ・・・・」

 

 

 

結構、この人って面倒な人なのかしら?そして、どうして関西弁なのかしら?関西人なの?・・・・いや、今はそんなことを考えている場合じゃなくて・・・・・

 

 

 

 

「で、今日は明神さんにお参りに来たんか?」

「い、いえ・・・今日はそういうことをするために来たんじゃなくて・・・・」

 

 

 

実際、私自身も何故ここに来たのか分からない。でも、何故か体が勝手に動いてこの場所に来てしまったのよ。

 

 

 

 

「はは~ん、てことは・・・蒼一に会いに来たんやね?」

「ゔぇぇぇ?!い、いや、そうじゃなくて・・・そう言うことじゃなくて・・・わ、私はただ単にここを通りぬけようとしただけよ!」

「ふ~ん、そうなん・・・・ふ~ん・・・・」

 

 

 

 

副会長は目を細めてこちらをじっと見つめている。あ、あまりこっちをじろじろ見ないでほしいんだけど・・・

 

 

 

 

「ホントに通りたかっただけなん?」

「そ、そうよ・・・何か問題でもありますか?」

「ふふふ、急に丁寧な口調になっとる、かわいいなぁ~♪」

「ゔぇぇぇ・・・」

 

 

 

だめよ、あの人のペースにのまれてしまうわ。ここはクールに冷静でいないと・・・

 

 

「しかし、ホントに何も無いんやね?」

「そうです、何もありません。もう行ってもいいですか?」

「う~ん、そう言うことなら行ってもかまへんけど・・・・」

「そうですか、では行かせていただきます」

 

 

 

早くこの場から離れないと、この人と関わっていると嫌な予感しかしないような気がしてならないわ。来た道を戻っていかないと・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうやねぇ・・・・ウチから見ると、男女が気まずい雰囲気をかもしだしたままおるというのはあまりよろしくないと思うんよ。しかも、女子校である学院内で・・・」

 

「!!!」

 

 

 

えっ!?ど、どうして、そのことを知っているのよ!!あそこには私と蒼一しかいなかったはずなのに、どうしてそのことを?!

 

 

 

「ふふふ、ウチにはなんでもお見通しなんやで。スピリチュアルやろ?」

「その言葉はそういうふうに使うものじゃないと思うけど・・・」

「そうかもしれへんな。それで、キミはどうしたいん?」

「な、何がよ・・・」

「キミと蒼一の仲をどうしようかということや」

「だ、だからそれは・・・」

「ごまかすことは無いやろ?実際、そう言うような感じだったやん」

「うう・・・」

 

 

 

そう言われると何も言えないわ。私の一言で変な空気にしてしまったし、あれ以降、蒼一が来なくなったのも事実だし・・・・う~~~~どうすればいいのよ!!!

 

 

 

「何も難しく考える必要なんてないんやで?」

「考えるのが当り前じゃないですか!だって私の一言で蒼一の事を傷つけたのかもしれないんですよ!!そう考えると・・・・私・・・私は・・・・・」

 

 

 

考えれば考えるほど、私の中には罪悪感しか残らない。私のせいでまた人を傷つけてしまった・・・・苦しい思いをさせてしまった・・・・あぁ、涙が・・・涙が止まらないわ・・・・・

 

 

 

「ちょっ、ちょっと!こない場所で泣かんといて!まるで、ウチが泣かしているように見られるやん!」

 

 

 

そう言って、副会長はハンカチを渡してくれた。人前で泣くなんてあまり無かった。でも、この感情が抑えられなかった。悲しい気持ちが私を覆うように広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はなんて悪い子なんだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真姫ちゃん!!」

「えっ?」

 

 

 

(ぎゅっ)

 

 

 

 

泣き崩れそうだった私を副会長は抱きしてくれた。私の顔は胸の中に飛び込み、体は密着した状態だった。

 

 

 

 

 

息苦しい感じはしたが、何だろう・・・すごく安心してしまうこれは一体何なのかしら・・・

 

 

 

 

「真姫ちゃんはずっと一人で頑張って来たんやなぁ。けど、今だけは楽になってもええんよ、ウチが受け止めてあげるから、心配せぇへんでもええんよ」

 

 

 

そっと、私の頭をなでながら副会長はそう言ってくれた。

なでられている間、不思議にも私を覆っていた気持ちを忘れさせてくれた。それと同時にうれしい気持ちが芽生えていた。こうやって私を励ましてくれたのは、ママくらいだった気がする。今ではもうし無くなってしまったけど、今でもあの時の感覚を覚えている。暖かさと愛情に包まれた胸の中にうずくまりながら私は楽しい時間を過ごしていた。今、その時と同じような心情で副会長に抱き締められている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・もう、大丈夫やね」

 

 

私の中にある悲しい感情が無くなったと同時に副会長は放してくれた。

 

 

 

「あ、ありがとう・・・・ございます・・・・・」

「ええのよ、やってほしくなったらいつでも言ってくれてもかまへんよ」

「や、やりませんよ、もう!」

 

 

今、思えば私は誰かに見られているなかで抱き締められていたのよね!!そう考えると、なんだか恥ずかしくなってくるじゃない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

 

 

「真姫ちゃん、一つだけええことを教えてあげるで」

 

 

副会長はその場を立ち去ろうとする私に向かって話してきた。

 

 

 

「蒼一はああ見えても女の子と話すことを得意としておらんのよ。だから、真姫ちゃんから話しかけないと難しいかもしれへんよ」

「そう・・・ですか・・・」

 

 

 

女の人と話すのが得意じゃない?初対面の私に対してあんなに語ってくるのに信じられないわ。

 

 

「・・・って、どうして私のことを名前で呼ぶんですか!?」

「ええやん、ずっとキミって呼ばれるよりはマシとは思えへん?」

「うぅ・・・マシ、です」

「せやろ?そのかわり、ウチのことを希って呼んでもらえへんかなぁ?」

「ええぇ!どうしてそうなるんですか?!」

「お願いや~やってもらえへんやろうか?」

 

 

どうしてそう言うことになるのかしら・・・・私にとっては先輩なのだけれど・・・・

 

 

 

「仕方ないですね、やりますよ!」

「おお!!」

「すぅ~~~~はあぁ」

 

 

深く大きく息を吸った後、吐きだして気持ちを整える。

 

 

 

 

「の、希?」

「うん!ウチやで!!!」

「ゔぇえ?!」

 

 

急に目を輝かせていた。この人は本当に私の先輩なんだろうか?

 

 

 

「ふふっ、なんかまた友達が増えたような気分やなぁ」

「は、はぁ・・・・・」

 

 

 

ここまで来ると、もう尊敬を持って接することが、何故だか難しく考えるようになっていた。もういいわよ、友達と言うことになっても。別に増えても困るようなことじゃないし・・・・

 

 

 

「あと、蒼一は必ずキミに会いに来るで」

「えっ?!」

 

 

 

意外な言葉を聞かされた。蒼一が私に?どうして、会いに来ようとするの?

 

 

「会いに行こうとする理由は分からんけど、弁天様がウチにそう告げとるんよ」

「なんとも、信用しにくい話なんですけど・・・・」

 

 

弁天様って・・・どこからそのお告げを聞いたのかしら・・・

 

 

「でも、信じなあかんよ。だって、それが真姫ちゃんの運命なのだから」

「運命・・・」

 

 

またしても、信用できないような言葉が出てきた。けど、運命という言葉に何か引っかかるものがあった。もしかしたら、本当に・・・・!

 

 

「決まったようやね。だったら、すぐに帰って明日を待つようにしないとね。善は急げや!」

「そう・・・ですね・・・・ありがとうございました」

 

 

私は希・・・副会長にお礼をしてその場を立ち去った。

 

 

もし、希の言葉が本当だとしたら・・・!

 

 

 

私は全力で家に戻り、そして、明日を待った・・・・・。

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

翌日の放課後、いつものように音楽室に向かっていた。もし、今日来るのだとしたら早くいなくちゃいけないような気がする。そう考えると、足の動きが速くなり、早足で音楽室に向かって歩いていた。

 

 

 

 

すると・・・・

 

 

 

 

(~~~♪~~~~♪~~~♪)

 

 

 

誰かが・・・ピアノを弾いてる?

 

 

 

先生が中で弾いているのかしら?でも、このたどたどしいような弾き方はしないはず・・・それじゃあ、一体誰が?

 

 

 

 

教室の扉の窓からのぞいてみると・・・・

 

 

 

「・・・・・蒼一・・・!!」

 

 

 

蒼一がピアノを弾きながら歌っていた。

 

 

 

 

(次回へ続く)

 




れ、連続投稿をして疲れ果てるヤツの顔が見たいんじゃぁ~あびゃあ~



眠いです!(キリッ!
只今、絶賛睡魔と格闘しながら執筆をしています。


仕事中は2,3時くらいまでに寝て、5時に起きるという悪習慣が先週あったんだなあと考えれば楽なほうかな?でも、疲れることには変わりないけどね。


こ、このままいけば明日に間にあう!!!
や、やってみるさ・・・!




今回の曲は

Rewrite ORIGINAL SOUNDTRACK から

井内舞子/『Potted one』

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