蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第19話


今は一刻も争うのだ!

 

 

 

【報告】

 

「兄弟聞いたかよ、うp主の仕事がようやく片が付いたそうなんだとよ!」

「全くだらしねぇヤツだな。これまでストックしていた話をすべて放出させてしまうとは・・・・愚の骨頂だな」

「まあまあ、そういうなよ。うp主にだって考えがあったんだからさ」

「・・・・仕方ねぇ、今回だけは見逃してやるか。んで、当の本人はどこに?」

「ああ、それがな・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果たちによって縛りあげられているところだ・・・」

「はぁ?!イミワカンナイ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

俺と明弘は早速、編曲を行う準備に取り掛かることにした。

流石に音ノ木坂ではそうした専門的な機材が無いために、穂乃果たちとは別れて明弘と共に俺の家に向かって全力で走っているのだ。

 

何故ならば、俺の家にはそうした機材が揃っている場所が存在しているからだ。

 

 

 

「兄弟!!やる場所って言うのは、親父さんが持っているオーディオルームだな?」

「ああ、俺たちがずっと使い続けていた場所だ。俺たちの活動が止まって以降、親父からその部屋の鍵を預かったままなんだ。すぐに使えるかどうかは分からないが、やってみないとな!」

「そうか!よし、分かった!!!」

 

 

音ノ木坂から全力で走っておよそ10分で俺の家に到着することができ、そのまま、玄関の鍵を開け、その場所に向かっていく。

 

 

 

(カチャ)

 

 

 

その部屋の鍵を開けて真っ暗な空間へと入っていく。

どこを向いても暗くて何も見えないが、扉近くの壁に触れると部屋の明かりを灯すためのスイッチがそこにあった。

 

 

 

(パチッ)

 

 

 

久しぶりに輝きを取り戻したその空間には、埃がかぶって所々が白く汚れてはいるものの最後に見た光景のままであった。

 

 

 

「半年振りだな・・・・」

「ああ、そうだな・・・・」

 

 

 

この部屋に最後に入ったのは、およそ半年も前のことだ。明弘に悟らされるまで幾日が経っていたのか分からずにいた。俺にとっては、つい先日のようであったり、何年も前のようにも感じられたのである。

 

 

 

 

 

そうか・・・・俺はそんな事さえ忘れていたのか・・・・・

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()がどれほど俺にとって苦痛でしかなかったのかを象徴するかのように埃が白く輝いて見えた。

 

 

 

 

 

 

「おい兄弟、機材に灯を入れるぞ」

 

 

明弘は早々と機材の前に立ち、主要電源盤のスイッチをONに切り替えた。

 

 

 

(・・・・グォォォォオオオオオオオオン!!!!!!)

 

 

何とも言えないボリュームでファンが回り始めた。この機材は編曲をするのに欠かせないメインサーバーで、見た目はデスクトップパソコンとなんら変わり無いが、その中身は、編曲に必要なソフトが旧式から新型までがズラリと入っている。実際に使うのは新型のものが多いのだが、細やかな作業を行うにはどうしても旧式に頼らなければならないので、未だに健在なのである。

 

 

 

「明弘、ミキサー、シンセとかにも電源が行き渡っているか?」

「おうよ!問題ねぇ、ちゃんと正常に行っているぜ!」

 

 

この空間には他にも、ミキサー、シンセサイザー、スピーカー、CDプレーヤーなどあらゆる機材が存在している。7,8畳ほどの空間にそれらが壁に沿って並んでいるため、人が行動することができる実際の空間は3畳ほどしかない。

 

 

 

 

 

 

そんな場所で、俺たちは活動し続けてきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メインが完全に立ち上がったようだ、アップデート情報がたくさん入ってきてんなぁ・・・・今それやっている暇は無いんだけどななぁ・・・・」

「そいつぁ、後回しにするしかねぇだろ?まずは、仕えるもんだけを取り出してやれるかどうかが問題だ」

 

 

明弘の言うとおりだ。今は時間との戦いとなっている中で、こうしたことにうつつを抜かしている場合ではないのだ。仕えるものだけを使い、それ以外は作業終了後にバックグラウンドで使えるようにしておくことが最善だと言える。

 

 

 

 

 

「まずは、このソフトで作ってもらったこの曲の楽譜を作成する。これを基にどう変えていくかを構想していくぞ」

「おうよ!そんじゃ、ちゃっちゃと頼むぜ!」

 

 

 

俺たちがやろうとしている工程はこうだ。

 

 

①まず、編曲したい曲を楽譜として作成する。

②その楽譜からメロディとコードを取り出し、新しいベースを考える。

③3つに分けたら、それぞれに合った楽器を選び出し当てはめていく。この時、それぞれ一つずつと言う制限は無く、幾つでも取り入れても構わないのである。

④楽器が決まったら、専用のソフトを立ち上げて組み合わせていく。この時、付け加えたいメロディがあればこの時に入れ、曲全体を整えるようにする。

⑤ミキサーを使い、音量調節やMIXなどの効果を行い仕上げていく。

⑥最後に、マスターをすることで完成となる。

 

 

 

こうした工程を行うことで編曲された楽曲が生み出されるのである。全盛期だったころの俺ならば1時間程度で終わらせることはできたのだが・・・・今はどうなのだろうか・・・・?

 

 

 

 

俺は真姫からもらったCDをサーバーに取り込ませた。そこからメロディのみだけを抜き取り、それをソフトの方に取り込ませた。案の定、ピアノ伴奏のみであったため、楽譜にするのに大した時間もかからずに出来上がった。

 

 

「さてと、次は・・・・」

 

 

メロディ、コードはすでに出来上がっているため、次は、ベースを新しく考えていく必要がある。ベースはメロディ又はコードに合わせて演奏するため、できるだけ綺麗にまとまりを持つようにしたい。そういう意味では、コードと何ら変わりは無いのだが・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

(カリカリカリカリ・・・・・)

 

 

 

印刷された楽譜に自らがイメージしている音を一つずつ鉛筆に思いを乗せながら加える。

 

 

 

 

 

ここはこうで・・・・これはこうやる・・・・・これは・・・・違うな・・・・

 

 

 

 

(カリカリカリカリ・・・・・・・)

 

 

 

 

鉛筆が走る。

半年のブランクがあるとは思えないほど早く作業が進んでいる。イメージも次から次へと生まれてくる。それはまるで溜め続けていたものを吐き出すかの如く、湧き出る水源の如く、流れ出てくるのだ。

 

 

 

「相変わらず手早い作業だな」

 

 

 

 

明弘が横から顔を出してその様子をうかがっていた。俺が作業している最中はコイツのやることは無い。コイツが頼りになるのは最後の方にある重要な作業のみである。

 

 

 

 

 

 

「・・・・できたぞ。コイツをサーバーとシンセに打ち込ませてデモを作る。完了したら聴いてくれ」

「あいよ、そんじゃ、それまでくつろがせてもらうわ」

 

 

 

そう言うと、この部屋から出ていき、台所の方へ足を運びに行ったようだ。どうやらウチの飲み物やらお菓子やらをくすねていくつもりなんだろう・・・・はあ、しょうがない、今回だけは見逃してやるか・・・・

 

 

 

 

 

 

(カタカタカタカタ・・・・・・)

 

 

 

打ち込み作業自体に左程時間はかからない。すでに出来上がったものを写し見ながら打ち込むのであまり時間を要するものではないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(カタカタカタカタ・・・・ターン!!)

 

 

 

「ふう・・・・打ちこみ終了・・・・」

 

 

 

出来上がったデータはすぐさま保存を掛け、そして、確認のためにデモ再生を行う。

 

 

 

 

 

 

(~~~~~♪~~~~~♪~~~~~~~♪)

 

 

 

この曲のベースとなったピアノ伴奏はできるだけ多く残したまま、ギター、ドラムス、シンセなどの数種類の楽器を用いている。原曲と聴き比べれば数倍程、やかましさが増してしまったが大丈夫だよな・・・?

 

 

 

 

「おっ!出来上がったようじゃんか!」

 

 

 

二つのカップを手に取りながら明弘は部屋に戻って来た。

 

 

 

「そこら辺にあったもんで作って来たぞ」

 

 

そう言って手渡されたのは、ホットコーヒーだ。寒さが残るこの春の時期には、まだ、必要なものである。

 

 

「ああ、ありがとな」

 

 

 

少し温めで飲みやすくなっていたコーヒーをすすりながら、出来上がった曲を2人で視聴している。

 

 

 

 

「原曲が何だったのかすら忘れちまいそうなやかましさだな」

 

 

それ俺がさっき思ったこと・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

(~~~~♪・・・・)

 

 

 

 

「・・・・感想は?」

「なかなかいいんじゃないか?かなりましになったと思うぞ?」

 

 

 

・・・よし。確認をもらえたようだ。

 

 

それじゃあ、最後は・・・・・

 

 

 

「そんじゃあ、後は俺に任せな」

「頼んだぞ、相棒」

 

 

 

カップの中のコーヒーをぐいっと飲み干し、作業の引き継ぎを行う。明弘は専用のヘッドフォンを付けて、さっき出来上がったばかりの曲の編集を行い始める。

 

 

音量調節やリミックスなどは俺よりも明弘の方が格段と上手である。というのも、俺の親父の友人の音楽関係のおじさんのところに通いつめて、その技のほとんどを体得したというのだ。その甲斐もあり、これまでに頼んだ楽曲のほとんどはいい出来で披露することができたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ・・・・ふふふふ・・・・・ふふふふふふふふ・・・・」

(カチッ、カッカッカ、カチカチッ・・・・・)

 

 

 

 

ただ、作業中に変な声を出すという変な癖だけは正直、止めてもらいたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

「ふぅ・・・・・・出来上がったぞ、兄弟!!!」

 

 

時刻は20時を回っていた。作業をし始めたのがおよそ16時頃だとすると、4時間ほど同じ部屋の中に閉じこもっていたというわけだ。まあ、一番時間を取ったのは明弘の作業なんだけどな・・・・

 

 

 

「それじゃあ、早速聴いてみるとしますかぁ」

 

 

サーバーの音声プラグをそのままスピーカーに伸ばして電源を入れる。そして、再生ボタンを押して演奏が始まった。

 

 

 

 

 

 

(~~~~♪~~~~♫~~~~♪♪♪~~~~~)

 

 

「!!」

 

 

なんという壮大感!!!さっきまでの曲がここまで変化するものなのか?!それはもう全くの別物に近いものだった。楽器の組み合わせから、音量調節、リミックスにかけてまで十分なくらいに仕上がっている。これならば・・・・!!

 

 

 

「どうよ、これで何とかなりそうなんじゃないのか?」

「ああ、全くだ。文句なしの出来だ」

 

 

 

こうして出来上がった曲を聴き流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・もう平気か?」

 

 

 

 

明弘は心配そうな顔をこちらに向けてきたが、俺自身はすでに心の整理ができていた。この曲を編集していく中で答えを見つけていた。俺は何のために音楽と共に在ったのか、誰のために奏でるものなのかを・・・・

 

 

 

 

「明弘、俺はもう逃げない。視線を逸らさない。ただひたすら目の前にある現実に向かって前に進むだけだ」

「そうか・・・・・変わったな、お前も・・・」

「いつまでも留まっているわけにもいかないだろ・・・・それに今は背負わなければならないものができたからな」

「やんちゃ過ぎて話にならないな。いっその事、投げ飛ばしたくなっちゃうぜ」

「やれるのならやってみろ、多分、やり返されるぞ?」

「ははは、ちげぇねぇな」

 

 

 

今の俺は自己のためだけにこうした活動をしているわけじゃない。出来上がったばかりの穂乃果たちμ’sのことを支えていくことが、俺たちに課せられた使命なのだ。今はただ、それだけのことに集中しておけばいいのだ。

 

 

「それじゃあ、コイツを基に踊りのレベルアップでも行いますか~♪」

「頼んだぞ、明弘。後はお前の手にかかっているんだ」

「おうよ、後は俺に任しときな・・・・・それと蒼一・・・」

「なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「!!!」

 

 

 

 

明弘の口から想像もしていなかった言葉が飛び出て来た。俺と真姫とのことについて知っていたのか?

 

 

 

 

 

「なぁに、お前の顔を見りゃあ分かるさ。学院にいた時のお前の顔は女のことを考えている時の顔だったのさ」

「そんなところで判断するのかよ・・・・」

「まあ、いいさ。いいか、女を慰めるときは絶対に主導権を相手に渡らせたり、不快な気持にさせねぇことだぜ?」

「・・・・ああ、わかった」

「お前にとって重要なことなんだ。失敗するんじゃねぇぞ」

「ああ・・・・」

「そんじゃ、そろそろ退散するとしますか」

「ああ、ありがとな」

「いいってことよ、後は頑張れよ」

「任せておけ!」

 

 

 

 

そう言い返した後、明弘は自分の家に帰っていった。

 

 

「アイツにああ言われるとはな・・・・・」

 

 

 

普段はバカで女のことしか考えていない変態野郎だが、こういうことに関してだけは勘が鋭くなる。まったく、アイツにこの事に関して言われると妙な説得力を感じるんだよな・・・・

 

 

 

 

「・・・・・さて、どうしたものか・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

練習が始まる前に会いに来てみたが、そこには誰もいなかった。

 

 

 

そこには、黒光りしているピアノがただこの教室に居座っているだけだった。

 

 

 

(~♪)

 

 

蓋が開き、むき出し状態となっていた鍵盤に指を置き、音を出していた。

 

 

 

 

 

「・・・・久しぶりに、弾いてみるか・・・・」

 

 

 

 

椅子に座り、鍵盤に両手を置いた。

 

 

 

 

「すぅ~・・・・」

 

 

 

大きく息を吸い、そして、そのまま・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

(~~~~♪~~~~~~~~♪)

 

 

 

(次回へ続く)

 

 

 







ども、うp主です・・・・。



・・・・・どうやら、穂乃果たちに捕まってしまったようです。
はやく、穂乃果たちのはなしを書きなさいと言われているのですが・・・・



まだ出ないんだよな、これが!!!



病みあがりテンションで書いていたら余裕の5千オーバーとか、何それイミワカンナイ・・・

そして、次話も同じくらいな勢いで書いているため、また長い文章になっているかも・・・?




今回の曲は

タイトルを見て、ん?と思ってくれたらありがたい。
アレのオマージュ的な感じにしてみました。

ROMANTIC MODE/『DREAMS』




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