蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第183話


A-RISE、再び

 

 

 新曲作りと称した合宿から一週間が過ぎようとしていた。海未と真姫、ことりの3人のおかげでラブライブ出場用の新曲が完成し、衣装もこの期間に仕上げることができていた。そして、ダンスの方も振り付けが決まり、順調な仕上がりを見せていた。このペースなら来週辺りには撮影ができるかもしれないと確信していた。

 

 

 ただ、今はそうしている暇は無く、俺と明弘はちょっとした場所にお呼ばれされていた。それは―――

 

 

 

 

 

 

[ ラブライブ本部・スタジオ ]

 

 

『撮影機材準備完了でーす!』

『フラッシュ少し上げて』

『モク焚ける準備はできてるかー?』

『RISERのお2人スタジオ入りしまーす!』

 

 

 全身を新しい衣装で固められ、素性を知られないために仮面を被った俺と明弘は、全スタッフの拍手で温かく迎えられながらスタジオ入りしたのだ。

 

 あー……、つまりはこういうこと。以前話に出てきた今度のラブライブで俺たちRISERに会長直々の依頼が入り込んできて、今回はその撮影。写真と映像の2つをいっぺんにしてしまおうとの話で普段よりも騒がしい現場となっている。

 

 

「やあ、2人とも。調子はどうかね?」

 

 にこにこと手を上げながら挨拶してくる恰幅のいいこのおじさんは、ラブライブ実行委員会の会長である真田さんだ。

 

「大丈夫ですよ、真田会長。今回のためにちゃんと調整しておきましたからね」

「はっはっは! 問題ねェよ、おっちゃん! 手間暇かけさせねェよう一発で決めちゃってやるぜ!」

「ほっほっほ、それは楽しみですね」

 

 真田会長だったり、おっちゃんだったりと俺たちの呼び方はまちまち。そんなおっちゃんとは古い付き合いで、俺たちがRISERとして活動した当初から支えてくれた恩人でもある。その人から頼まれてしまっては断る理由もなく、快く引き受けたってわけだ。

 

「で、今回はこの台本通りに動けばいいのか?」

「うむ、そうだとも。キミたちの号令で全スクールアイドルたちに勇気を与えてくれたまえ!」

「勇気ねェ……。簡単に言ってくれちゃうけどねェ、俺の姿を見ただけで卒倒するんじゃないかって心配した方がいいんじゃないかな?」

 

 キザっぽく、かなりウザめに語るエオスこと――明弘はまたしょうもないことを口にして俺を呆れさせる。ほら見ろ、会長も表情を引きつってるじゃないか! いくらなんでもそんなことの心配なんて誰がするんだか……。

 

 

――と、会長と話をしているとどこからか女性の小声が聞こえてくる。

 

 

『アポロ様だわ……本物の御姿を間近で見られるなんて幸せだわ……!』

『エオス様も素敵ぃ……私、あのナイフのような瞳で見つめられたら嬉しくって心臓止まっちゃいそうだわ……!』

『あぁ……復活なされたお2人の新たなる伝説を、誰よりも先に拝見することができるなんて……私、ここに就職してよかったわ……もう死んでもいいかも……♡』

 

 

 

「……真田会長。とりあえず、AEDと担架の準備はしておいた方がいいかもしれないですよ……」

「んっ?! え、えぇっ?!」

 

 ここのスタッフたちの様子からして、明弘の言ってることがあながち間違いじゃなくなってきたわ……。

 

 

『それではカメラ回しまーす! スタンバイお願いしまーす!!』

 

「おっ、どうやら出番みたいじゃん? ちょっくら暴れてきますか♪」

「ちゃんと手加減しろよ、壊すことだけは」

「ほほぉ~? ってことは、それ以外は全力でいいんだな?」

「当たり前だ。俺たちを誰だと思っている?」

「ハハっ! そうこなくちゃな!」

 

 お互いに気合を込める意味合いでハイタッチして、セットの中に入りだす。撮影前の最終調整で身だしなみからメイクまでも念入りにチェックが入り、ライブをしていた時よりも力が入っている。

 全国に向けて配信されるとのことだし、全スクールアイドルたちの代表でもあるのだから仕方がない。彼女たちが競う舞台に上がれないのは残念だが、その分こっちで楽しませてもらおうじゃないか。

 

 

『それでは本番入りまーす! ラブライブ!()()()()()()R()I()S()E()R()によるPV開始いたします!』

 

 

 俺たちの、新しい舞台(ステージ)が始まる――――!

 

 

 

 

 

〈ザ……ザザ―――――――――――ザッザッ!!!〉

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 それから数日後―――

 

 

[ UDX入り口前 ]

 

 

「みんなぁー! 早く早くぅ!!」

 

 蒼一と明弘が出演するラブライブ公式PVのお披露目が、ここUDXで行われるとのことでμ’sメンバー全員がその様子を見届けようと集まった。中でも穂乃果は、誰よりも早く彼の晴れ姿を見たいとする衝動に駆られ、ひとり先走ってしまうのだった。

 

「穂乃果! はしゃぎすぎです! もう少し、私たちのペースに合わせるのです!」

「そうよ、穂乃果。急ぎたい気持ちはわかるけど、はぐれちゃったら大変なのよ?」

「海未ちゃん、絵里ちゃんごめんね。でもでも、蒼君がラブライブの公認アイドルとして出てくるんだよ! こんなにすごいことはないよ!」

 

 海未と絵里が注意するも、穂乃果の興奮する気持ちは以前変わらないまま彼女たちに返ってくる。ブレない穂乃果に頭を悩ませる2人だが、嗜めるように希たちが声をかけた。

 

「ええやん、今日くらいはしゃいでもバチは当たらんで?」

「そうよ。なんてったって今日の主役は蒼一と明弘なのよ! あの2人のことを知っている私たちが真っ先に見てあげなくってどうするのよ?」

 

 希に加えて、めずらしくにこが穂乃果の肩を持つので、絵里たちもこれ以上は何も言えなかった。

 

「でも、ここからは蒼一たちのことを話すのは他言無用よ。秘密にしてって言われているんだから約束は守らないとね」

 

 絵里の言うことはもっともだ。未だに世間には公表されていないRISERの正体――それが彼女たちのすぐ近くにいる2人だと知る者はわずかである。蒼一らはまだ秘匿のままにと言うことで活動を行っているが、いつかは公表しなければならない時が来るだろう。その日がいつなのか、彼女たちも見守るのだった。

 

 

「しかし、かなりの人の数ですね……。脚の踏み入る隙間もありません」

 

 UDX学院の巨大スクリーン前には、すでに大勢の人が立ち並んでいた。お目当てはもちろん蒼一らのRISERであろう。公式から事前告知でRISERに関する情報が流れていたため、もしかすると――? との思いでこの場に集っている人も多いだろう。人だかりの中には、UDXの生徒だけじゃなく周辺の生徒たちも続々と集まってきていて、想像以上の盛況を見せた。

 その反面、遅れて来てしまったμ'sの面々はスクリーンからかなり離れたところで立ち見しなくてはならなくなってしまう位置にあった。ここまで多いとは思わなかった彼女たちは困り果ててしまうが、彼女たちに向かって合図を送る少女が声を上げた。

 

「みなさ~ん! こちらで場所を用意しましたので来て下さ~い!」

 

 雑踏の中でも通った声を響かせるのは洋子の声だ。彼女たちよりも一足早く来ていた洋子は、凛と花陽、そして真姫と共に場所取りをして待ってくれていたのだ。

 穂乃果たちはその誘いに乗り、遠回りするが洋子のいるところに行くことができた。

 

「やぁやぁ、お疲れ様ですぅ~。先に来ていて正解でした~」

「洋子ちゃぁ~ん! ありがとぉ~!」

「いやぁ~、こんなものコミケを比べれば朝飯前ですよ~」

「凛たちも頑張ったんだよ! もっと褒めてほしいにゃぁー!」

「凛ちゃんえらいなぁ~。頑張った御褒美にアイスあげるで~」

「わぁーい! 希ちゃんありがとー!」

「の、希ちゃん……そのアイスはどこから出したの……?」

 

 洋子たちと合流でき、ひと安心する彼女たち。洋子がとってくれた場所はモニターの真下にある空中通路の端で奇跡的に場所が空いていたのだ。大方、周りがスクリーンを見上げるのに集中していたために見落とされていたのだろう。そうした隙を洋子は見逃さなかったのだろう。

 

「―――で。蒼一さんと明弘さんはどのくらいで合流することになってるんです?」

「それが、だいぶ時間がかかりそうなのよ。まだラブライブ本部とのセッションが長引いてて、終わり次第連絡すると言ってたわ」

「ラブライブの公式アイドルになるんですからね。これからのことで打ち合わせが難航するのは当然のことでしょうし、あのお2人ですから手を抜きたくは無いのでしょうね」

 

 仕事(アイドル)モードに入った彼らには妥協と言う言葉はない。加えて、公認と言うことでさらに根を詰めているに違いない。すべては良き手本として、目指す指標として恥じることの仕上がりを見せるためにやっていることなのだと洋子は理解した。

 

 

 

「あっ! そろそろ始まるみたいだよ!」

 

 巨大スクリーンにでかでかと映し出される“ラブライブ!”の文字に、集まった人たちの歓声が湧き起こる。この瞬間を待っていたと言わんがばかりで、今ここで発信される情報に目を凝らすのだ。

 

 

 

 

 

“第2回 ラブライブ!出場校受付開始!!”

 

 

 希望に満ち溢れる音楽と映像演出と共に映し出された告知。ついにこの瞬間から全国№1のスクールアイドルを決める大会の始まりの合図が大々的に示された。観衆から温かな歓声が起こる。以前から公表はされてはいたが、あらためてこうした形で公表されるのとでは実感が違うものだ。

 

 

「いよいよだね――!」

 

 手をぐっと握り締めた穂乃果は決意を新たにさせる気持ちで見上げていた。

 

 

 この他に、運営からは開催日程や申込期限、大会予選日と決勝日を定めたものを公表。注意事項や規定などその他諸々の情報が出場者に向けられたのだった。

 

 

 

 そして、誰もが待ち望んでいた内容が――――

 

 

 

 

 

“ラブライブ! 公認スクールアイドル決定!”

 

“そのグループとは―――?”

 

 

 

 テロップと演出でもったい焦らされて、観衆の気持ちが落ち着かなくなる。そこに入る名前はもう知っている――、誰もがそう感じていた時、黒い画面の向こう側から聞き覚えのある声が―――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『その想いは()(ため)に?』

 

 

 

()の想いは()(ため)に?』

 

 

 

『『その想い……我らが果たさん!!』』

 

 

 

 この大胆な台詞! 全身から湧き立つような声! 何よりも、黒いベールに包まれたかのような影が少しずつ消えてゆき、ついにはその姿が目の前に―――!

 

 

 まるで、眠りから覚醒したかのような姿で再び表舞台へと舞い戻ってきた2人――――!!

 

 

 

 

『RISER・アポロ―――!!』

『RISER・エオス―――!!』

『『目指せ――我らが立ったその頂に! その栄光は()が手に持ち帰らん? 全身全霊を持って挑め―――!我らRISERがキミたちの力を見極めよう!!』』

 

 

 歓声は歓喜へと変わった―――!

 

 彼らの登場は観衆を熱狂させ、その叫びがこの場の空気を! 地面を震撼させた!! さらに、彼らを絶頂の域にまで到達させる告知が入る―――

 

 

 

『さて諸君。来月末、ここ秋葉原で行われるハロウィーンイベントに、キミたちが待ち望んでいたであろう我らRISERのライブを行うことが決定した!』

『俺たちが今まで作り上げてきた作品と新曲を織り交ぜてのライブだ! 大いに盛り上がろうじゃないの!!』

 

 観衆から雄叫びにも似た大喝采が巻き起こる! まさにこの瞬間を待ち望んでいたかのような喜びに人々は熱狂した。このただならぬ熱量に男女問わず、思い思いの気持ちをこの場で炸裂させるのだ。この光景を目にする一般観衆は目を丸くさせることだろう。しかし、当事者たちにとって、これは歴史的瞬間を目の辺りにしているにすぎない。この興奮は冷めることは無いだろう。

 

 

「すごい……!」

「圧倒的な歓声ね……さすがRISERといったところね……!」

 

 この瞬間を目にするμ'sの面々もあまりの興奮に身体中から溢れんばかりの熱が放出し、心高まっていた。この人々の熱量は前回大会とは比べものにならない……前とはうまくいかないだろう、とする危機感さえ抱いてしまうほどのプレッシャーだ。

 それでも―――、負けたくない気持ちだけは他のどこよりも強かった。あの頂点で蒼一と明弘が待っている―――! 自分たちもあの同じ舞台に立ちたいとする気持ちが遥かに強かったからだ。だからこそ、今回みんなで作り上げた曲で勝負すると決意したのだった。

 

 

 

 

 

 ドクン―――――!

 

 

 

「ッ――――!!」

 

 その刹那、穂乃果の身体に異様な悪寒が走った。穂乃果は身を強張らせると自分に向かって鋭いプレッシャーを掛けられていることに気が付いた。周囲の観衆からのではない、誰か特定の人物から発せられたものなのだと穂乃果は感じたのだ。しかしこれは、いったい誰からのものなのだろうか? 辺りを見回しだしたその時、彼女の目の前に“あの少女”が姿を表した―――!

 

 

 

 

 

「ハァ~イ、穂乃果さん」

 

 一瞬、穂乃果は息を呑んだ。上品な声をかけてくる目の前の人物を理解した時、気持ちが追い付かなかった。

 小柄でありながらも力強く。人の心を見通すほどの鋭い眼光。ここにいる誰よりも強く、揺れ動くことのない王者の誇りを抱く彼女こそ――前回大会の優勝者、A-RISEのリーダー、綺羅ツバサ本人なのだ―――!

 

 

「ッ――――!?ツバっ――――!!」

「おっと。今は私の名前を呼ばないでもらえるかしら。これ以上、騒がれても困るからね♪」

 

 ツバサは穂乃果の口を人差し指で封じ、静かにするよう促した。だけれども、穂乃果の気持ちが沈ますことなどありえぬ話で、今穂乃果はツバサと密着するような形で立っているのだ。

 少し前までは彼女の名前をこれっぽっちも知らなかったが、前回大会を通じて彼女のことをするようになった穂乃果にとっては尊敬する人であった。その人を前にして気持ちを落ちつけられるほど穂乃果は大人ではなかった。

 

 

「あ、あのっ……!」

「付いてきて――――」

 

 なんとか言葉を発した穂乃果だが、それよりも先にツバサが穂乃果の手を握りだすと引っ張るように駆けだした。出会ってからわずか1分足らずのことである。困惑する穂乃果はツバサに連れられて人ごみの中をかき分け、UDXの中に入ってしまう。

 

「……あれ? 穂乃果ちゃんは?」

「えっ? もしかしてはぐれちゃったの?」

「……待って。あれって、穂乃果じゃない?」

「本当だ。誰かと一緒に走って……あっ!? あ、あれってツバサさんじゃない!?」

 

 その様子を偶然見てしまったμ’sの面々は、慌てて自分たちも穂乃果たちの後を追って駆けだした。

 

 

 

 一方、穂乃果はツバサと共にUDX内の階段を登っていき、人気のないところで立ち止まった。

 

「ここまで来ればあの人たちは来れないでしょう」

 

 ビルの窓から下を見下ろして何かを悟るツバサ。穂乃果は息絶え絶えになりながら上がったので息を整えるのに苦労した。なのに、ツバサは息どころか汗一つかいてる様子がない。こうして見てもツバサのすごさを実感させられるのだった。

 

「つ、ツバサさん……な、何の用でここまで……?」

 

 疲れを見せる穂乃果とは対照的に、ツバサは余裕を感じさせる表情で返してくる。

 

「あなたと話がしたかった」

「そ、それだけ……なんですか……?」

「それだけ―――と、今は言っておこうかしら?」

 

 単純な応えだけを返してくるので、穂乃果は余計に困惑した。彼女のような人がわざわざ自分をここまで連れ去るわけがない。きっと他に何かあるに違いないと疑った。

 

「フフッ、疑ってそうな目をしているわね。まあ、当然のことだけど、事実でもあるのよ?」

「それは、どういう………?」

 

 ツバサの答えに更なる疑問を浮かべる穂乃果。ちょうど同じ時、穂乃果の後を追いかけていた海未たちがようやく到着したのだ。

 

「き、綺羅ツバサ……!」

 

 こうやってツバサと対面するのはスクフェス以来のことだ。ただ、今とその時とでは状況が違う。何の目的で穂乃果をここまで連れてきたのか、何が目的なのか知りたかった。

 

「やあμ’sのみなさん。ちょうどよかった、みなさんにもお伝えしなければならないことがありました」

「それは……どういうことでしょう……?」

 

 表情を強張らせる絵里は視線をツバサに返す。

 

「そんな怖い顔をなさらずとも悪いようにはいたしませんよ」

 

 何事もないかのように、ツバサは顔色1つも変えず、平な笑みを浮かばせるのだった。絵里からすれば、突然穂乃果を連れ去って自分たちをここまで来させたのだから何かしらの意図があるに違いない、と神経を尖らせた。

 

「ここで話すのもなんですから、是非こちらのカフェに来てくつろいでください」

 

 ツバサは穂乃果たちが主張する間もなく、この人数が入ることのできるカフェスペースへと案内した。絵里たちもあのツバサが自ら自分たちを招き入れているのに断る理由が見つからなかった。それに彼女たちにとってはスクフェスでのあの企画を通すのに尽力してくれた恩があるため、その恩を返す意味でツバサの指示に従うのだった。

 

 

「さあ、座って」

 

 カフェスペースに入ると、ツバサを中心にμ'sの面々は用意されたソファーに座った。ただみんなこうした場所には慣れていないのか、そわそわしてしまう。

 と言うのも、彼女たちの周りにあるものすべてが光輝いており、高級ホテルのラウンジの一部分を切り取ったかのような高級感と清潔感にあふれていた。しかも、これが1つの学校の校舎内に常備されているというのだから驚きを隠せない。自分たちの音ノ木坂学院とは別次元に来ているみたいな感覚に陥る。

 他にもこうした施設が常備されているのだろう―――、絵里はどうしてUDXに人口が流れてしまったのかという理由を今なら理解できて、少し負い目を感じるのだった。

 

 

「ツバサ。正面入り口の警備をまた厳重にさせておいたぞ」

 

 颯爽と姿を現し、長く真っ直ぐに伸びた髪をなびかせる少女――統堂英玲奈がツバサの横に立った。

 

「あら、みなさんおそろいなのね♪」

 

 同じくやわらかくホップした髪を指で弄る少女――優木あんじゅもまたツバサの横に立ったのだ。

 2人ともツバサと同じA-RISEのメンバーで、この3人こそ前回、前々回の大会を優勝した王者たちなのである。こうして揃うと、見るに優雅で高貴な姿だ。王者に相応しい風格と威厳を感じさせられるのだった。

 

 

「英怜奈、あともう2人お客様が来るからその準備をしてほしいわ」

「わかった。すぐに連絡してみよう」

「あ、あのぉ……私たちって勝手に入ってきちゃったんですけどよかったんでしょうか?」

「問題ないわよ。あなたたちが来るのを見越して、警備の人にあなたたちだけを通すように仕向けたんですもの。学校の許可も得てますから心配しなくてもいいんですよ、島田洋子さん」

「まさか、部外者である私の分まで入場券を渡してくださるとは、ラブライブの頂点に立つ者は太っ腹ですねェ~」

「そんなことはないだろう、島田洋子。君は広報部部長でありながらもμ'sのバックアップメンバーの1人でもある君をこの場に呼ばないわけがないだろう?」

「……それって、私だけじゃなく、私たちが来ることは想定済みだった、と言うことですか?」

「つまりは、そう言うことなのよ」

 

 この言葉に洋子も冷汗をかきだす。彼女たちの喋り様だとμ’sだけじゃなく洋子もここに来ることを認知していたということになる。それにさっきのツバサの話からすると、蒼一と明弘も揃って来ることも範疇なのだと……まさに侮れない相手と対峙していると洋子は震えた。

 

「さて、本題に戻りましょうか―――?」

 

 軽い咳払いをするとツバサは前のめりになって話し始めた。彼女の口から何を聞かされるのは想定できない穂乃果たちは自然と姿勢が伸びてしまう。

 

 

 するとその時、英怜奈の許に一報が届く。これを知ると、すぐツバサに耳打ちしてこれを伝えた。ツバサは、そう、と一言呟くと穂乃果たちの方に向かって何かを含めた様子で言うのだ。

 

「どうやら、お客様が到着したようね……」

 

 何かを悟るように呟くツバサ。すると、こちらに向かってドタバタと激しい足音を立ててこちらに来ようとする人影を穂乃果たちは感じ始めていた。まさか、と思いながら待ち続けていると扉が勢いよく開かれ、そこから蒼一と明弘が飛び出てきた。

 

「穂乃果! お前たち!!」

「蒼君!」

 

 開放早々、第一声を上げる蒼一は、酷く慌てた様子で彼女たちの前に現れた。大方、彼女たちから連絡を受けてからかなり心配していたようなのだろう、額から流れる汗の量がその度合いを示しているようだった。

 

「あら、意外にもお早いご登場ね」

「ツバサか……まったく、何のつもりだ?」

「くすっ。すべてはあなたたちが来るのを待っていたの」

「……どう言う意味だ?」

 

 何かを含んだ言葉に蒼一は顔をしかめだした。穂乃果たちをわざわざ連れ出して蒼一たちを呼ばせるとはいったいどんな理由なのだろうか? 気持ちが落ち付かなく身構えるようになる。

 

「そう構えなくてもいいのよ、蒼一さん―――いえ、こう言った方がいいかしら?」

「!」

 

 ハッとさせられた蒼一は目を見開き、息を呑んだ。彼女がこれから何を言わんとしているのかようやくわかって気がしたからだ。

 ツバサはもったいぶる様子で顔をニヤけだすと蒼一の許に近寄りその言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の最も尊敬する―――RISERのアポロさん♪」

 

 

 

 

(次回へ続く)

 




どうも、うp主です。

熱に殺され続けて私のライフはもうゼロよー!!になっている今日この頃です。


さて、今回から話はユメノトビラ回に入ることが出来ましたね。このままどのような展開を迎えるのか、そして、ツバサの目的とは一体何なのか?それは次回のお楽しみにと言うことにしておきますね。

ではでは、よろしくお願いいたします。


今回の曲は、
桜川めぐ/『オープニングセレモニー』

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