蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第179話


2度あることは3度もあるし絶対次もやる

 

 騒がしい蝉の声が遠くに聞こえる頃、俺たちは静かな避暑地でμ’s二回目となる合宿を行っているところなんだが……

 

 

 

「てめぇらあぁぁぁ!!! なぁ~に蒼一のところに行こうとしてんだあぁぁぁ!!!?」

 

 合宿開始早々から大騒ぎが起こることに……

 

 

 旅の疲れ(…と言うことにしておこう)で個室にて休息させている蒼一に襲いかかろうと、μ’s切っての制作組である海未、ことり、真姫が揃いも揃ってバカしようとしていたのだ。間一髪のところでその首をとっ捕まえ、今は広間で3人並べて正座させている。

 

「ちょっと! これでも私は医者の娘なんだから、蒼一を看病するのは当然でしょ!?」

「蒼一がああなったのはお前を含めたてめぇらだったってことを想い返せや! つうか、発端は真姫、お前だろうが!!」

「し、仕方ないじゃないですか! 脚が勝手に蒼一の方に向かって行ってたんですから!」

「嘘付けェ! お前はちゃんと意識してたから叫んでたじゃねェか!!」

「ことりは悪くないもん! 蒼くんが無防備に寝ていたら、襲っちゃってくださいってことりに言ってるようなものだもん! むしろ、そんなところで寝ている蒼くんが悪いもん!!」

「お前はまず、悪くないという言葉について勉強し直せや!!」

 

 反省させるためにこうさせていると言うのに、反省の色がまったく無し! 逆に開き直られる始末にほどほど呆れちまう。

 こんなんで制作がはかどるのか全く分からんし、とんと見当もつきやしない。何か対策を講じなくちゃいけないようだな……。

 

「おーし、よーくわかった……そんじゃあ真姫、お前が今持っている部屋の鍵貸しな」

「えっ?! この鍵使って私と蒼一の愛の巣に勝手に入るつもりなの!?」

「んなわけねェーよ!! つうか、なんちゅう名前だなオイ!? それにお前の部屋には蒼一はいないだろうが!!!」

「ここは私の家の別荘なのよ! ここにある部屋はすべて私のモノ。つまり、蒼一が今寝ているところも私の部屋になるのよ!!」

「なるほど、理解s……するわけねェーだろうがぁぁぁ!!! そうじゃなくって、お前らはこれから2階の各個室で作業してもらうんだ。出来上がるか飯の時間になるまで部屋は鍵を閉めさせて、俺たちが練習していない時に蒼一に近付けさせないようにするんだよ!」

「あ、明弘! あなた、私たちを監禁する気なんですか?! いくらあなたが変態だからとてそんなことまでする人だったんですか!? 見そこないました!!」

「誰が監禁するつったよ?! その言い方はやめろや! 本当に犯罪者扱いされかねんのだけど!? と言うか、以前監禁をしていたヤツに言われたかねェーんだよ!!!!」

 

 あぁくそぉ! ああ言えばこう言う!! 面倒なガキを相手してるみたいで嫌になるぜ!! さっさと入れるところにブチ込んでしまいたい!!

 怒りで我を忘れかけそうになったが、凛と花陽がなだめるので心持ちはよくはなっていた。ただ俺を苛立たせるのだけはやめてはくれなさそうだったので、他のヤツらの手を借りて部屋にブチ込んだ。もちろん真姫から鍵を受け取り戸締りもさせてもらったわ。これで少しは不安要素が解消されると思い、ホッと一息ついた。

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

「ほーら、もうちょい走るぞ。ちゃんと付いてこいよ!」

『はーい!』

 

 あの3人を除いた6人で早速山の中を走り込む練習をし始めた。

 別荘から少し離れたところなのだが、どこも空気が澄んでて気持ちがいい。走ってても肺が痛くならないくらいやさしいものを感じるぞ。こんなのを吸っていたら都会の空気がいかに汚いのかを実感させられちまうな。

 

 いつもとは違う環境だが、こうしたところで身体を動かしてみるのもいいかもしれない。できれば毎週こんな場所で身体をリフレッシュさせたいが、生憎大学の課題があるために遠出は厳しいし、金銭的にも余裕はねェ。金持ちだけが許される特権なのかもな……ハァ……。

 

 残念な気分の溜息を吐き出すと同じく、身体からやる気も出ていっちまった。そしたら身体が急に重くなり始めやがった。そろそろ休憩にしようかな――? 腕時計の時刻を見て、程良い丘を見つけるとそこに方向を定めてスパートをかけ出した。

 

 一番に丘に上がると、そこからはこの地域一帯景色が一望できるところを見つけテンションが大いに高まった。自然豊かに広がる緑の草木に、その間に割って入って流れる青く透き通った川。そして、これらを取り囲むかのようにそびえ立つ山々が俺たちを見降ろしている。この雄大な自然を目の前にして圧巻させられ、知らぬ間に口角が引き上がって笑い顔になっていた。

 こんなすげぇーもんを見せられたら誰だって気持ちの高鳴りを抑えきれないはずだ。だってほら、穂乃果たちだってこの景色を見て大いに喜んでいる様子じゃないか。道なき道を突き進んでこんなところに出て来れたんだ、ちょっとした感動に浸っちまうのは仕方のないことだろうよ。

 

 

「そんじゃあ、ここいらで休憩を取るかな。しばらくしたら別荘のところまで戻るぞ」

 

 大きく背伸びしながら草むらにゴロリと仰向けになって休み出す。この辺は思った以上に柔らかく、布団までとは言わないが身体を痛めるほどの硬さがないから心地良い気分になる。心なしかさっきのツッコミ疲れであくびが出てきて眠くなってくるな……ちょびっとだけ寝ちまおうかな、とまで思ってしまう。

 

 

 

「――ま、まだとれないの……?」

「――あともう少しよ……」

 

 ん、何かやっているのか? 凛とにこの声が聞こえる……

 気を楽にしていたからか耳の通りが良くなったみたいで2人の声が届いた。いつもとは少し違った様子に思えたのでしばしの休息もここまでに身体を起こして周りを見回した。そしたら、急斜のあるところに凛が木に掴まりにこが凛の手を掴んでもう一方の手をぐっと伸ばして、何かを取ろうとしているのが見えたのだ。

 

 

「あ! 弘くんちょっと手伝ってほしいにゃあ!」

「どうしたんだ? アクロバティックの練習か?」

「そうじゃないよぉ。にこちゃんのリストバンドがこの下落ちてるの」

「どれどれ?」

 

 そう言って見下ろすと、にこが腕を伸ばす方に確かににこ愛用のピンクのリストバンドが倒木に引っかかっているんだ。間違って落としちまったのだろう。けど、落ちたところが結構遠いな……いくら2人が力合わせても人ひとり分の距離がありそうで届かないだろうよ。となると、俺が手を貸すしかないってわけか。

 だが、今の状態からだと難しいな。一旦連れ戻すとするか。

 

 

「どれどれ、俺も手伝ってやるから、まずそこでぶら下がっているにこを引っ張り起こすぞ」

 

 俺も凛と同じ木に掴まりながらにこを引っ張り上げようとした。だが、当のにこはそれを嫌がり諦めきれずに言うのだ。

 

「いやよ! あともうちょっとで届きそうなんだから、ここで引き下がれないわよ……!」

「いやいや、どう見ても届きそうもないんだけど。脚を伸ばしたって届きやしねェからとっとと戻れよ」

「ダ・メ・な・の! あれはにこの大事なモノなんだから諦められないわよ……!」

「別に諦めるわけじゃないから! 一旦ちゃんとした作戦を練ってからした方が確実に取れるから!」

「バカ言わないでよ! 目を離したら風に飛ばされて落ちちゃったらどうするのよ!」

「今絶賛落ちそうなのはお前だから! この急斜で真っ逆さまに転がり落ちちまうのが目に見えるわ!」

 

 ダメだこりゃ、強情にも程があるぞ!

 どう説得しかけても頑なに拒んでくるにこ。そのリストバンドが大事だってことはよくわかった。頼むから俺の言うことを聞いてほしいんだよ。これ以上腕を伸ばし過ぎるのはキツイんだ。引き上げようとしてるのに逆に引き千切ろうと前に出ようとするから腕が痛いの! 筋肉がブチブチと千切れるみたいな痛みを徐々に感じてきてるからマジで無理!! 限界ッ!!

 

 

 もう無理矢理にでもにこを引っ張りだすしかないと、にこの腕をグッと掴み出した―――その時だ。

 

 

 

 あ……れ……? 腕にかかる負担が急に強くなってぞ。変だな、まるでにこの体重が重くなったみたいな……それも倍以上の負荷を感じさせられるような………ッ!!! ま、まさっ―――!!?

 

 ハッと気付いて横を振り向いてみると、何かを諦めてしまったかのような、解放されたみたいな表情をした凛が静かに落ちていくのが見えたのだ。それも、にこの腕を掴みながら、ゆっくりと――――

 

 

 

「あっ………………」

 

 

 その瞬間、頭の中でいろんなことがありえないくらいの速さで交差し出したのだ。今見える景色からの情報や考え事、これまでの過去の記憶が一同に会し、まるで走馬灯を見ているかのような体験だった。

 おやぁ……? この感覚、以前にも感じたことがあるなぁ。どこだったっけ……? 確か……そう、海未にフルボッコにされかけた時の……あ―――

 

 この時、俺は思い出した。それは、死の予兆なんだと……そして、俺のもう一方の腕が木から離れちゃっていたことも………あぁ、こんなことなら、思い出さなければよかっ「たぁぁぁぁぁあああああああああぁうおあああぁぁぁぁぁぁあああ!!!?!?!??!!」

「「ぎにゃあああああぁぁぁぁああああああ!!!!!?!?!?」」

 

 

 木から腕がずるりと離れてしまった時にはすでに遅い! 身体は怒涛の勢いで急斜を駆け下りていこうとしているッ!! てか思いっきり走ってるッ!!!! あ、あっ、足が車輪みたいに高速回転しちゃって止まらねェ!! 駆け下りて数秒も経たないで短距離走張りのトップスピードをマークしている気がするんだ、そう簡単には止まれそうもない!! 仮に止まったとしても過剰な負荷で脚が粉砕するか、転がり落ちていくかしか浮かばねェ!! どちらにせよ、DEAD ENDだけが待ってそうな状況じゃないですかヤダァァァァ!!!!!

 

「うおわあああぁぁぁぁぁあああ!!!? と、止まらないにゃァァァ!!!!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!! この坂急過ぎて全然止まれる気がしないんですけどォォォォ!!!!?」

 

 おまけに、この2人も道連れみたいな形で激走しまくっている次第! つうか、道連れ喰らったのは俺の方だから! 助けようとしたのに、とんだとばっちりを喰らっちまったじゃねェーかァァァチクショォォォォォ!!!!!!

 

 異様にまっすぐ伸びるこの斜面の道を走り続けると、ようやく終点が見えてきやがった! 正面を抜けた先はめっちゃ日の光が当たって眩しくなってるからあそこが終わりなんだろうと、希望的観測を立てて若干の喜びに浸ろうとした。が――――

 

 

 

 その先を抜けた後に待っていたのは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ―――」

 

 

「い―――」

 

 

「お―――?」

 

 

 

 

 

 あっれー? おっかしいぞー? さっきまで地面に脚が付いてたのに、どうして俺は飛んでるんだろー? あははっ、もしかしたら本当に飛べてるのかもしれないぞ~! このまま手を羽ばたかせたらもっと高く飛べるんじゃぁ――――――

 

 

 

 

 

 

「―――んなわけあるかああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!??」」

 

 崖みたいなところを高らかに飛んだ俺たちは、阿鼻叫喚を山じゅう響かせるくらい(わめ)きながら数メートル下の川へドボン! 高い水しぶきをあげながら落ちていったのだった。

 

 

 

「……なあ、にこ……」

「……なによ……」

「リストバンドは?」

「……取れなかった……」

「無駄損だにゃ……」

 

 

 川に身体を浮かせながら、どんぶらこと流れに身を任せていくのだった。

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

[ 西木野家別荘・広間 ]

 

 

『ぶえっくしゅん―――!!!』

 

 川から自力で這い戻ることができたものの、当然のことながら服はすべてびしょびしょに濡れてしまった。おまけに、川の水温が思ってた以上に冷たく、非常に肌寒い思いをする羽目になる。別荘に戻ってから速攻でシャワーも浴びて着替えを済ませたが、それでも秋の訪れを感じさせる寒気が肌にまとわりついてて、時々全身を震わせてくるのだ。

 

「まったく、服を着たまま川に飛び込むだなんて、遊んでる場合じゃないでしょ?」

 

 呆れた様子で絵里は俺たち3人を眺めると小さな溜息を吐いて言った。

 

「違うぞ絵里。これはにこのアホのせいでこんな目にあっちまったんだ」

「そうだにゃぁ! 凛たちは被害者なんだもん! ()()()()()()を請求するにゃぁ!!」

「そうだ、もっと言ってやれぇ!」

「おバカ! ドジ! スカポンタン!」

「ああ、もうっ! 悪かったわよ!!」

「まな板! まな板! すっごいまな板!! かなりまな板だよコレ!!」

「あ゛あ゛っ!!? いい度胸してんじゃないのアンタアアァァァァ!!!?」

「うっせぇ!! まな板にまな板言って何が悪いんじゃ?! なんならビート版とでも言っとこうか? イイ感じに平坦な身体が浮いてたしよぉ?」

「――――っ!! あったまきた……ちょっと表に出ようか、久々にキレちゃったわ……!」

「上等だぁっ! スノボみてぇに地面を滑らせてやるわ!!」

 

 被害をこうむった俺もキレてるんだ、怒ってもいいよね? いいよねぇ?! にこの身勝手で身体は冷えちまったが、頭はカンカンに燃えてるんだぜ? やっちまってもいいんだよなぁ!?

 怒りの沸点が頂点に達し、この気持ち、そう簡単には止められそうにない! ちょ~っとマジで怒るわコレ!

 

 

 

 

「――弘くん、弘くん」

 

 俺とにことの一発触発状態にある中、肩をつつきながら俺を呼ぶ声がして振り向くと、花陽がニッコリした顔でいたのだ。なんだよ邪魔するんじゃねェ、と突き放そうとしたら、肩に強い力が加えられて顔を歪ませた。

 なっ、なんだ―――?! と突然のことで動揺していると、花陽が俺の肩を掴んでいたのだ。それも、指が喰い込むほどの万力みたいな力で! それをにこに対しても同じように肩を掴んでいる! なのに、花陽は顔色を一切変えずに微笑んでいる。そこに恐怖を抱かないはずもなかった……!!

 

 そして、口角が上がり、にっこりと笑いながらこう言うのだ。

 

 

「――凛ちゃんの悪口、言っちゃ……やだよ?」

「――――――ッ!!!!」

 

 その刹那、俺は息が詰まってしまいそうな重圧に殺されかけた……!

 いや待て! 俺は凛のことを言ったわけじゃない! と弁明しようとしたが、目にチラッと凛の涙目になりかけな表情が映り込んできて口をつぐんだ。

 ええぇぇ?! どうして凛にも被弾しちゃってるんだよぉぉぉ!!? 凛は関係ない、凛は関係ないからぁぁぁ!!! 心の叫びが身体中に広まり、ついにつぐんだ口から出て来ようとして口を開こうとした―――が、

 

 

 

「あ゛………?」

 

 今まで聞いたことのないドスの効いた声を俺に投げてきやがった!! ゾクッ、とさせられるハンパない悪寒! 背筋が痙攣してしまいそうなほどに恐ろしい表情で俺を見てしまった! それに語りかけて来るんだ……ッ!! あのぬいぐるみのような愛らしい表情が一瞬、お面のように寡黙なる怒りを含んだ表情をしてくるんだッ!! 光を失った瞳孔が俺を呑みこんでしまいそうなほど深淵で直視できなかった……。

 にこも同じ顔を見てしまったみたいで、威勢のよかったのが一瞬にして借りてきた猫のように大人しく震えていた。逆らえない……逆らえるわけがない……!! こんなん怖ぇのを前に命の危険さえ感じちまう……!

 

 

「ねぇ――――」

 

 突然声を掛けられ俺たちは肩を震わせた。

 

「喧嘩しちゃ……ダメ、ですから……ね……?」

「「ッ~~~~~!!! は、はいぃぃぃぃぃッッッッッ!!!!」」

 

 恐怖におびえながら俺たちは叫ぶように花陽に応えるのだった。ガチで人を殺しちまいそうな雰囲気をこれでもかというくらいに出しまくってくるからちびりそうになったわ……! そんでもって、すぐに花陽の表情が緩んでいつものように花開いたような笑みで安堵の声を漏らしたのだ。まるで別人を見ていたような、そんな幻覚に襲われていたみたいでまた身震いしちまう。

 

 花陽の逆鱗に触れてはいけない――、今回の合宿で最初に学んだことだった……

 

 

 

 

「はいはい、こんなおバカさんたちを相手してないで私たちもやること済ませちゃうわよ」

「おい、かなり辛辣だなぁ……」

 

 絵里に一言蹴りさせられるとか、さらにテンション下がるんだが……。マジで最悪……こっちに来てから苦労の連続で頭が痛くなってきたわ……。こんなんなら俺も蒼一と同じように寝ていたいぜ……あ、そうだ。

 

「なあ、そろそろ蒼一を起こしにいかねェといけないんだが、誰か手伝ってくれないか?」

「あー! 穂乃果いくぅー! 蒼君起こしにいくぅー!!」

「あ~……まあ知ってたが、悪くは無いだろう。ついでにだ、誰か海未たちの進行状況も見て来てくれないか?」

 

 それなら――、と花陽と凛とにこが名乗り出てくれたので、3人に鍵を渡して見に行かせることにした。俺も穂乃果と共に蒼一の部屋に行こうと2階に上がって行く。確か、一番奥の部屋がそうだった気がする……。

 

「それにしても、ここの別荘も大きいね! 部屋がたくさんあってホテルみたいだよ!」

「言われてみればそうかもな。けどよ、さすがにこんだけ大きくしなくたってよかったのにな。真姫の家族が寝泊まりするためだけなら必要ないだろうに」

「ん~、もしかしたら私たちが来るのに合わせて作ったんじゃないの? だってほら、ここ12部屋もあるんだもん! 洋子も来たらピッタリだったよね!」

 

 そう言えばそうだよな。さっき確認した時には、部屋が12もあったのが不思議だったんだ。さすがにそんなにいらないだろうとは思うが、穂乃果の言うことが正しいかもしれないのか……? それに、何かやけに真新しい木材が使われているし、気のせいだよな……? あの一家ならやりかねんだろうと思うんだがな……

 

 

 そうこう考えている内に蒼一のいる部屋に辿り着いたな。さて、鍵はどこに仕舞ったかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、たいへんですぅぅぅ―――!!!」

 

 突然、花陽の焦った声が聞こえたのだ。どうしたのか駆け脚でこちらにやって来た花陽に何があったのかを聞こうとしたら驚きの内容だった。

 

 

「こ、ことりちゃんが部屋にいないんですぅ!!」

「はあ?! ちゃんと確認したのか!?」

「しましたよ! でも、ベッドの下にもタンスの中にもいなくって……」

「か、鍵は? 鍵は当然閉まってたんだよな?」

「はいっ、扉の鍵は……あ、でも窓が開いてましたよ。でも、ここは2階だから飛び降りることはできないはずですし……」

「マジかよ、なんか嫌な感じになってきたぞ……まさか他も?」

 

 嫌な予感は割と当たっちまうみたいで、凛とにこも焦った様子でこちらにかけてきて言うのだ。

 

「海未ちゃんがいないにゃぁー!」

「真姫ちゃんもいないわよ! どこに行ったのかしら?!」

 

 おやぁ~? なんだ、この雲行きがものすんごく怪しくなる感じは……? まさかと思うんだが、ことりたちは窓から飛び降りやがったんじゃないか? 以前、蒼一から外から2階の窓に侵入したって話を何度も聞かされたし、あの身軽な身体ならやりかねん! 海未だって余裕かもしれん。だとしたら、真姫はどうやって……? もしや、鍵を開けたのでは!? アイツ、俺が持っている鍵だけじゃなく他にもスペアがあったんじゃないのか? そうだとしたら合点がいく。じゃあ今アイツらがいるところって……ッ!!

 

「まさか、このッ!!」

「ひ、弘君?!」

 

 嫌な予感が脳裏を過り、素早くこの扉の鍵を開けて中に入ってみたら案の定な光景に目を眩ませた。

 

 

「ハァ……ハァ……ほらぁ、蒼くん……ズボンを脱ぎましょうねぇ……♪」

「はぁ……はぁ……汗もひどいじゃないですか……上も脱がしてあげますよ……♪」

「全部脱がしたら風邪引いちゃうじゃない……なら、私が……ハァ……ハァ……蒼一の身体をあたためて、ア・ゲ・ル♡」

 

 各部屋にいたはずの3バカが、ぐったり眠っている蒼一を人形のように弄んでいるのを目の辺りにしてしまう。

 

 

「ひぃっ! ひ、弘君……怖いよぉ……」

 

 

 あ~あ、今日これで何度目なのかもうわかんなくなっちまったわ……何回注意したら気が済むんだろうなぁ……やっべェわ、久しぶりにキレちまったぜ……

 

 

 

「てめぇ~らぁ……いい加減にしやがれえええぇぇぇぇぇ!!!!!」

『えっ?! あっ、きゃあああぁぁぁぁぁ!!!?!!?』

 

 

 言ってもダメなら罰しかない、そう改めさせられた瞬間であった。

 

 

 

(次回へ続く)




ドウモ、うp主です。

同じネタを3度も使っているような気がする……(遠い目
そろそろ自分がアホの子になってきたんじゃないかと内心そんなに心配してはいない様子です。この合宿編はどのくらいまでやろうか考えていますが、とりあえず自分の気力が続く限りで伸び縮みが決まると思っておいてください。

では、また次回もよろしくお願いします。


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