蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第176話


セカンドシーズン始まったけど、気持ちはいつもと同じ

 

 

[ 音ノ木坂学院・生徒会室 ]

 

 

 新生音ノ木坂学院生徒会が発足した後日、晴れて生徒会長に就任した穂乃果は最初の仕事にとりかかっていた。学校行事の確認、部活動からの報告、生徒からの意見箱の中身を見るなど早速多忙な時間を過ごすことになる。中でも、部活動の後期予算案の確認には目を回していた。一枚の用紙に数の計算や難しい単語がずらりと並べたてられていて、こうしたモノを読むのを苦手とする穂乃果にとっては悲鳴を上げたくなるものだ。言うまでもなく、穂乃果はその作業を放り投げて机の上に突っ伏してしまう。

 

「穂乃果! 真面目にやらないと終わりませんよ!!」

「む、むりだよぉ……」

 

 空気もピシッと引き締まりそうな迫力のある声で穂乃果をやる気にさせようとする海未。穂乃果を支えるために副会長となった海未は早速鞭打つようにやる気にさせようとしているが、やってることがまるで母親が娘を叱りつけるような姿にも見てとれる。まあ、以前と変わらないのだがな。

 

 そして同じく、生徒会の書記となったことりはその2人の様子を眺めて苦笑いを浮かばせるのだった。

 

 こんな3人が並んであれやこれやと騒ぐ様子を眺める俺は、いつでもフォローできるようにと椅子に腰かけて読書している。まだ仕事に不慣れな3人をすぐに手助けできるようにと、俺が勝手に居座っているだけで他意はない。本来ならエリチカたちがひとつひとつ教えるのだが、しばらくは生徒会がどんな仕事をしているのかをとりあえず資料を読んで少しずつわかるようにしてね、としばらくは様子見のようだ。

 無茶なことをするものだ、と一旦は思ったのだが、そう言えば近々に志望校の推薦受験が近いことを聞いて、それじゃあできないなと納得した。希も同じく受験勉強を行っているようなので、必然的にこうなったのだ。アイツらに余裕ができるまではなんとかしてやるかと、気合を入れるのだった。

 

 

「ふ、ふえぇぇぇん……も、もうだめだよぉ……疲れたぁ……」

「しっかりしなさい! 生徒会長になったのだからこれくらいはやってもらわないと困ります!」

「だってぇ……読んでいても全然わからないんだもん! 行事ごとの挨拶とか礼儀作法とか、予算なんてちんぷんかんぷんなんだもーん!!」

「わからないことくらい私が説明してあげますから、今日中に読み切りますよ!」

「やだあああぁぁぁ!! 蒼くん助けてぇぇぇ!!」

 

 ほぉら、早速お助けサインがきやがった。以前はすぐにきたが今回は十数分は耐えられるようになってて、僅かばかりの成長が見てとれる。できればもう少し……、と思いたいところだがここから少しずつできるようにしてやるしかないようだ。

 

「ほら、どんな内容なのかまとめたりしてやるから一緒にやるぞ」

「うえぇぇん、蒼君ありがとぉ!!」

 

 本を置いて穂乃果の隣に立つと、泣いているんじゃないかって声を上げながら腰にしがみ付いてくる。これじゃあ身動きがとりにくいじゃないかと押し退けようとするが、粘着テープみたいにくっ付いて離れようとしねぇ。だから半ば諦めつつ穂乃果から資料を取って内容を読み、穂乃果がわかるくらいには要約していこうと頭を働かせた。

 

「……あんまり甘やかさないでくださいよ」

 

 注意を促すように海未が言ってくる。決して甘やかすわけではないがそう見えてしまったのだろう。

 ただ、何かまだ言いたげそうな様子でソワソワしているので気になってしまう。熱い視線が送られてくるのを感じた俺は、もしかして海未も穂乃果みたいにしたいのか? と考え、少し意地悪に聞いてみた。

 

「いいんだぞ、海未。今日はなってすぐの仕事なんだから無理しなくたっていいんだぞ。お前も分からないことがあったら俺が助けてやるからな。耳元で一から教えてやるぜ?」

「みっ……?! そ、そんな破廉恥なっ!!? わ、私は蒼一の助けがなくともできますのでご心配要りませんので!」

「そっか。じゃあ海未は俺が必要じゃないみたいだから穂乃果だけを手伝うことにするわ」

「え……? そ、そういう意味ではなくて……」

「あ! だったらことりのところを手伝ってぇ~。おねがぁ~い♪」

「はいはい、わかったから呼ぶのにお願い攻撃するんじゃない」

 

 やっぱりと言うべきか、予想通りに断ってきたので、逆に声をかけてきたことりの方に近付いた。海未はどうしたらいいのかと困惑の色を見せ、しゅんとした顔をしてくるのだ。ちょっと強気になっていたのとは対照的なか弱い姿にあとを引くモノを感じ、ことりたちの後に見てやるかと決めるのだった。

 

 とりあえず今は、穂乃果の書類とことりから手渡される資料に目を通すことにした。穂乃果のヤツはひとつひとつを一から教えないといけない重要書類に対し、ことりの方はと言うと部活動の活動報告という別段注視すべきものではなかった。ことりならさらっとできそうな気もしなくもないが、大方俺を誘うための口実作りなのかもしれない。

 現に、ことりは資料を手渡すと俺の背後に寄りだすと、さりげなく身体を押し付けてきていた。自分からは直接は言わず、間接的な言葉で誘いをかけてくる点ではこの3人の中でも上手だ。ことりのことを知らないヤツが同じ目にあったら間違いなく勘違いを起こしてしまいそうだ。

 

「どうかなぁ~? これはどうしたらいいの~?」

 

 甘い言葉を並び立て、本当にわかっていないような素振りであざとく迫ることり。少しでも意識を自分に向けさせるようとする必死さを感じられる。その本意がわかってしまえば、なんだかかわいく思えてしまうので、一旦は術にかかってもいいかと受け入れた。

 

「後ろからじゃよく見えないだろ? 並んで見てみようじゃないか」

「ふわあっ!? そ、蒼くんってばぁ~強引だよぉ~♪」

 

 ことりの背中に腕を回して前に立たせると、俺からは遠い肩を掴んで抱きよせるように並ばせた。突然のことだったか、ことりもちょっと困ったさんな表情を見せるが声色に艶が付いて聞くに嬉しそうにしているみたいだ。

 

「え~ことりちゃんいいなぁ~」

 

 これを見た穂乃果はとても羨ましそうに目を輝かせたが、片手は塞がっていたためにできず、残念そうになる。

 そして海未はと言うと、穂乃果の影に隠れながらもことりとのやり取りを見ていたみたいで、これもまた目を輝かせて羨ましそうな顔色を伺わせた。海未ももう少し素直になれればいいのに、と残念がるしかないな。

 

 

 

 

 そんで、ことりから書類を眺める作業に戻ると、今年の夏にほとんどの部活が大会に出場するなどの報告が多かった。中でも、俺が以前指導したソフトボール部が都大会を優勝。そのまま関東大会に出場し、準優勝したとの報告に目が止まった。

 夏で引退する3年生のために長く部活動がしたいということでお願いされたが、まさかここまで頑張るとは思いもしなかった。新学期が始まった時にはすでに彼女たちから報告を受けていて、残念がるのかと思いきや、すべてをやりきった清々しい表情を見せてくれたのが強い印象となった。その顔を見るとこちらとしてもやってよかったと嬉しい気持ちにさせられる。

 今でもその何人かとは連絡を貰ってたりしており、この前の学園祭ではたこ焼きの作り方を教えるなどの交流も行っている。これも何かの縁だと思うし、大事にしないとな。

 

 そして、最も活動報告が多かったのは自分たちアイドル研究部であることは言うまでもない。夏合宿から始まり、地方ライブやスクフェスなど毎週ひっきりなしの野外活動でひしめき合っていたから当然と言えよう。他の部活動より数倍もの量の報告書を積み重ねているのを見ると、廃校阻止のためとはいえ、無理をしていたことを再確認させられる。穂乃果がラブライブの決勝の時に熱で倒れてしまったが、もしかしたら他のメンバーも何かしらのアクシデントが起きていたのかもしれない。

 自らが立案しただけに、今後の反省点となるだろう。

 

 

 

「わぁ! μ’sの活動報告がまだあるんだね!」

 

 μ’sの夏休み期間中の報告書を机に置き、次に手にしたのもμ’sの書類だった。まだあったのかよと冷汗をかいていると、ことりが書類をまじまじと見つめながら驚きの声をあげた。

 

「そっちは今月の9月分になるな。この前もライブしたからなぁ」

「ラブライブ決勝に進んだことが良い影響になったみたいですね」

「依然と比べて、あちこちのお祭りや野外ライブにも出るようになったもんね。夏休みの時と変わらないくらい大忙しだよ」

 

 確かに夏休みが明けたはずなのだが俺たちの忙しさは変わっていない。そこは海未が言うようにラブライブ出場の影響は大きかったみたいだ。加えて、音ノ木坂の廃校が無くなったと言う知らせもμ’sの躍進に拍車をかけたみたいで、洋子からの情報だと『音ノ木坂を救ったのはμ’s』なんだとネット上で持て(はや)されているとかなんとかで……。

 どうやらμ’sの休息期間の確保は早急の議題になりそうだ……ここは明弘といずみさんに確認を取らなくちゃいけないな……。

 

 

 

「ラブライブ……」

 

 海未の言葉を聞いてなのか、力の無い声が穂乃果の口からこぼれた。ハッとなり穂乃果の方に顔を向けると、いつもの様子とは違って、とても申し訳なさそうな感じで落ち込むのだ。

 その理由はすぐにわかった。

 

「心配するな。別にそのことでどうこうしようとは思わないさ。それに過ぎたことだ、穂乃果が気に病む必要はない」

「で、でも……」

「いいんだよ。今回はダメだったかもしれないが、もし次があれば今度は最後まで頑張ろうじゃないか」

「……うん!」

 

 暗く(うつむ)いていた表情が少し上向きに転じだした。俺の言葉に安心を覚え始めたのか、顔色に明るさが戻りだした。

 

 克服したとはいえ、まだ気にしているみたいだな……。前回のラブライブ決勝での出来事が穂乃果の中で解消してはいないのか。明るくなろうとしているあの顔から悩ましそうな心境が伺える。

 これを完治させるには時間がかかりそうだな……荒療治でなら可能かもしれないが、そうなると何かがブッ飛んでしまいそうなのがリスキーだ。だとしたら……ラブライブの開催が再び起こることを望むか? ラブライブでのことはラブライブで取り返せ、とどっかの熱血漫画家が言いそうな言葉だがあながち間違いではないかもしれない。むしろ、その方が特効性があると考えている。

 ただ問題なのは、それがいつ開催されるのかだ。ラブライブが終わって以降何の発表もないし、真田会長からも連絡が来ていない。今年はまだやるみたいなことを強く言っていたがいつ実現するのだろうか……さて、どうなることやら……

 

 

 

 

 

 

 

 そんな時だった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄弟ッ!!」

 

 突然、ここの扉が勢いよく開くと明弘が飛びでてきて叫んだ。

 

「大変なんだよぉ、おい! まさに、この瞬間を待っていたんだって感じなんだぜ!!」

 

 かなり取り乱した様子なのだが、それがどんな意味なのかわからず、明弘から発せられる焦燥感のみしか汲み取れないでいる。

 

「とりあえず落ち着けよ。そんなんじゃあ何が言いたいのかサッパリだ」

「お、おう。それもそうだな……それじゃあ、言うぜ。なんと次のらb―「蒼一にぃ!! 大変ですぅ――!!」どわあああぁぁぁぁぁ!!!!!?」

 

 明弘が何か言いかけたと同時に、再び扉が開き、不運にもその前にいた明弘は扉に弾き飛ばされてしまった。ブッ飛んだ明弘は床を2、3回転がると床上にぐでぇと伸びちまったが、まあ明弘だし問題は無いだろう。

 ちなみに、扉を開いて叫んだ張本人は花陽だった。

 しかも、花陽に続いて後から凛や真姫、にこやエリチカ、希たちもやってきてμ’sメンバー全員が集結したのだ。これは余程のことなのだろう、と自然と身が引き締まった。

 

「それでなんなんだ、みんなが集まってさ。何か大変なことでもあったのか?」

「大変どころの問題じゃないんですぅ!! ラブライブが……ラブライブがぁ……!!」

「次のラブライブが決定したって言うのよ! ついさっき、公式から!!」

「「「「――――っ!!!?」」」」

 

 一瞬、花陽とにこが口にした言葉に耳を疑ってしまった。

 ラブライブだとっ……!? それの開催が決まったと言うのか!! ついさっきそのことで考えていたと言うのに、なんという廻り合わせなんだ……。青天の霹靂(へきれき)とはまさにこのことを指すのだろうか……? 何がともあれ、俺たちの目指すべきところがまた見えたと言うことだ。

 

 

「蒼くんっ―――!!」

「蒼一っ―――!」

 

 ことりと海未が同時に俺を見つめて聞いてくる――ラブライブに出場しよう、と。

 驚きを含んだと言うより、希望に満ちている嬉々した表情には迷いが見られなかった。今の2人は、前回の決勝のような心境ではないことが澄んだ瞳から見てとれた。

 2人なら問題ないだろう。あとは……

 

 

「穂乃果―――お前はどうだ?」

 

 腕にしがみ付いていた穂乃果に視線を落とす。

 さっきは複雑な心境を伺わせる表情を見せていた。では、今は―――?

 

 かけた言葉に反応し、顔を俺に向けようと見上げだすと視線がピタリと合わさった。そして、見た。宝石をはめ込んだかのような眩い光を放つ自信に満ちた瞳を―――!

 

 穂乃果は言った。

 

「……出たい。私、もう一度、ラブライブに出たい……! せっかくみんなで頑張ってきたことをあんな形で終わらせたくなかった……蒼君の夢が叶わないままにしちゃうのは嫌だった………。だから、諦めたくないの。絶対絶対、ラブライブに出て、優勝して……そして、蒼君の夢を叶えてあげたいの!!」

 

 

 穂乃果にも迷いがない。自分の答えを見つけ出したようで、曇った表情も今は晴れやかだ。真っ直ぐ突き進む、ブレない気持ち。これは雨が降っていても、コイツの一言で晴れ間ができそうな勢いさえ持ち合わせているようにも見えた。いや、穂乃果ならやりかねないだろう。不可能を可能にさせちまう、絶対的な力が!

 

「―――とリーダーがこう言ってるんだ。やらない理由なんてどこにもないな。だが、やるからにはお前たち、腹くくれよ? 俺たちは優勝するほか無いんだ。前大会優勝者であるA-RISEさえも越えるほどの力を魅せ付けなくちゃいけないからな!」

 

 優勝する――この言葉の意味を知った彼女たちは一斉に身震いし出した。自分たちが越えなくちゃならない相手が誰なのか、明確に見えた瞬間だった。

 

「あ…アライ、ズ……」

「な、何言ってるよ……あ、ああ当たり前じゃない……! にこたちは優勝するんだから、と、当然でしょ……?」

「にこっち、震えとるで」

「うっ……うっさいッ! 武者振るいなだけよ!」

「どうかしらね……」

「真姫ちゃんも!!」

 

 A-RISE。やはり今回も穂乃果たちの大きな壁となって立ち塞がってくるのだろう。前回のラブライブで見た彼女たちの生パフォーマンスに圧倒されていたのは事実、それをその身で味わっているのだから思い返すだけでも身震いが起きるのだろう。

 

 だが、()()()の恐れ知らずな彼女は口を大にして叫んだ。

 

 

「大丈夫だよっ! 穂乃果たちならできるよ! だって、あの短期間で上位ランキングに入れたし、スクフェスでも他のスクールアイドルたちに負けないくらいだったんだよ。今度のラブライブは絶対に勝てる自信があるよ。海未ちゃんにことりちゃん。真姫ちゃんに花陽ちゃんも凛ちゃんも。にこちゃんも絵里ちゃんも希ちゃんの全員がここにいるんだよ。それに、穂乃果たちには蒼君と弘君もいるんだもん! 最高の仲間がいるのにやれないはずがない……ううん、やれるもん! やれるったらやれるっ!!」

 

 穂乃果の発言がこの場の空気をガラリと変えさせた。いつもの根拠のない自信から出たものではなく、ちゃんとした根拠のある言葉となっていたことにここにいる誰もが驚いた。もちろん、俺もなのだが……

 ただ、穂乃果がここまで言い切れるほど成長しているとは思いもしなかった。さっきまでの憂いていたのが嘘みたいに思えてくる。μ’sのリーダーとして、らしくなってきたじゃないか。

 

 

 

「――まったくその通りだぜ! 今の俺たちにやれないことは何もないはずだぜ。胸張って行こうじゃないの!」

 

 穂乃果に続くように口を開くのは、床で伸びていたはずの明弘だ。いつの間にそこにいたのかわからないが、その言葉に背中を押されるモノがあった。現に、これを聞いた海未たちから相当なやる気が湧き起こり、ひしひしと伝わってくるのだ。アイツらにいい発破剤となったようだ。

 

「やろう……せっかくできるんだから後悔のないようにしたいよ!」

「私も気持ちは同じです。やるからにはとことんやりましょう!」

「もう一度、ラブライブかぁ~。楽しくなってきたにゃぁ!」

「A-RISEに負けないパフォーマンスを……! が、頑張ってみますっ!」

「ふふっ、またラブライブ用に曲をつくらないとね♪」

「大丈夫よ。にこがいるんだからラブライブ優勝だなんて簡単よ!」

「カードもウチらならできるってお告げをくれとるやん。やってみる価値は大アリやね♪」

「そうね。今度は悔いの無いライブをしましょう!」

 

 穂乃果のやる気がみんなに伝導して一気にテンションが上昇しだし、溢れんばかりのやる気を感じさせられた。前回のラブライブに出場した時のような、それ以上のものを感じとれてこちらも俄然やる気がみなぎってくる。これならひょっとすると本当にやってのけてくれるのかもしれない……そう思うと身震いを起こしてしまう。

 

 

「兄弟」

 

 身震いする身体を止めるみたいに明弘が俺の肩に手を置いて問いかけてくる。あとは俺次第だ、ということか。ふっ、そんなの言われなくたってわかっているさ。俺が、俺たちがやることはもう、とっくに決まっているんだからな。

 

「おまえたち―――」

 

 胸を叩くような思いで声をかける。みんな一斉に俺の方に顔を向けて、何を口にするのか期待の眼差しを送ってくる。

 握りこぶしをギュッと引き締めて、この言葉を言い放つ。

 

 

 

「―――優勝するぞ。今度こそ、お前たちに見せてやる。頂点からの景色ってものをさ」

 

 言い放った直後の彼女たちから張り詰めた表情が浮かび上がった。優勝することの意味を知り怖気付いたかと思いきや、自信いっぱいな笑みをこぼしだした。

 

「当たり前だよ! だって穂乃果はずっとそのつもりだったんだもん! だから見せてね、穂乃果たちを蒼君と同じ景色が見えるところに!」

 

 さすがだ、穂乃果―――。胸を張って応えたその姿に思わず称賛せずにはいられなかった。すでに気持ちが出来上がっていると言わしめる姿を改めて見せつけられ、また海未たちも同じ姿で俺に臨んでいた。

 

 前回の、あの棄権したことが彼女たちをここまで力付けたのだろう。貪欲で、上を目指していこうとする向上心とが結びつこうとしている今このタイミングでラブライブの報を受けたのは天命としか言いようがなかった。

 コイツらにはすでに、俺の持っているすべてを明け渡したと思っている。だが、まだ渡し切れていないものがあるかもしれない。それに俺だってまだ不完全な部分がある。穂乃果たちと交わっていくことで出来上がるかもしれない。

 

 もし、それが可能な状態にあるのなら穂乃果たちはきっと――――

 

 

 

 

「―――わかった。それがお前たちの覚悟なら俺も全力を尽くそう。途中で音を上げたりするなんてことはするなよ?」

 

 この無茶な指示に9人は口をそろえて、肯定の返事をしてみせた。

 

 多分、今一番悪い顔をしているかもしれない。もしかしたら本当にやってのけてくれちゃうのではないかと思うと心が震えだす。穂乃果たちの指導を引き受けて早半年が経とうとしている。俺の果たせなかった夢をこの9人に託し、叶えさせようとしているのだ。だから……だからこそ俺は、自分にも気合を込め覚悟させた。

 

 

 

「明日から新たな練習を組ませるから覚悟しておけよ?」

 

 

 

 

 

 

 

……あっ、そうなると、どこに休息を入れればいいんだ……?

 

 どうやら火急を要する案件になるやもしれなかった。

 

 

 

(次回へ続く)

 




 どうも、うp主です。

 ようやくセカンドシーズンだぜぇ…(白目
 ここまで来るのに三年くらいかかってしまったけど、何とか取り戻してる感があります。

 次回もアニメベースに行かせてもらいますので、よろしくお願いいたします。

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