蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第168話


男たちの学園祭
メイドに冥土へランデブー?


 明くる日の午後のこと、大学の講義を終えた俺と明弘はいつものように音ノ木坂の門をくぐってはアイツらに逢いにいく。ちょうど放課後の時間だったらしく下校を始めたりしている生徒をチラホラと見かけるのだが、今日は何だか騒がしい。と言うのも……

 

「文化祭……なんだ、もうそんな時期だったか」

「へぇ~文化祭かぁ~。こういうの見てるとテンションあがるよなぁ~!」

 

 音ノ木坂学院の学園祭があともう少しで始まるからだ。おかげで正門辺りは生徒たちが一生懸命に何かを作っている最中だ。

 俺たち大学は夏直前に行ったのに対し、高校は夏直後に行うみたいだ。まあその方が生徒たちとの関係も浅くは無いだろうし、季節的にも大分落ち付いてる。そうした意味では打って付けの時期なのやもしれない。

 

「ふふふ……文化祭と言えば、ここにいるかわいい生徒たちが一堂にあれやこれやと催す企画。完璧とは言えないが手を抜かない学生ならではの視点で作り上げるモンだから新鮮さは間違いないぜ! しかも、音ノ木坂と言うレベルの高い女子たちが集う楽園(ユートピア)! この俺を満足させてくれること間違いなしと見た……ッ!」

「おーい、おめぇの欲望が駄々漏れだぞ……」

 

 明弘の女好きも熱も下がる秋になろうとも衰えを知らないようだ。清々しい顔で辺りを見回しては、ブラボーとかマーベラスとかハラショーとか口にしてるし……ん? だが、女が嫌いな男なんているわけがないと思ってるし、世の大半はそういうことを考えるモノだと確信している。まあ、8人もの彼女を作った俺が言うのもアレだがな……。

 

「お前がそう言うのは勝手だがな、ここに来るヤツの大半はそんなことを考えてるかもしれないぞ? 女子校だし、ラブライブに出場した穂乃果たちμ’sがいるんだからなだれ込むこと間違いないぜ?」

「ダニィ?! そんなこと俺が許すものかっ! 俺だけの楽園(ユートピア)に変な輩が入ってくるなど言語道断! 即刻撃ち払う対策を練らねば……」

「いやいや、そんなことしたら逆にお前が撃ち払われるだろうが。それに、こっちにとっちゃ大事なお客さんなんだから追い返したらダメだろうが」

「むむむっ……た、確かに……だ、だが、それでは俺の楽園(ユートピア)が……!」

「諦めろ、そんなの端っからできやしないんだから早々に退散したほうが身のためだぜ?」

 

 くうぅっ…、と悔しそうに歯軋りする明弘。どんだけ期待していたんだよ、とツッコミをいれたくなる。しかし明弘、お前がそう言わなくともあっちの方から迎えに来そうな感じだわ。何故だかわからんが、明弘の人気っぷりはここの生徒全体に浸透しているらしくって、嫌がる様子が見られないという不思議。現に、こうして歩いているだけでも熱い視線が明弘に集まっているのが嫌でもわかる。女子校に突如と現れた男子で、しかもこっちから話しかけてくるんだから、異性に耐性の無い生徒には毒のように浸透するわけだ。洋子から聞いた話では、一般生徒の人気は俺よりも明弘だって言ってたからな……ちょっと傷付くのだが……

 感傷に浸っていると、上から声が聞こえてくるので顔を上げると、二階の窓から穂乃果が腕を振って呼んでいた。

 

「そ~くぅ~ん!! こっちに来てよ~!!」

「ん、あぁ、わかった」

 

 晴れやかな気持ちになるスッキリした声に、俺の些細な悩みも吹き飛んでしまう。そうだな、俺には穂乃果たちがいるじゃないか、と気持ちを切り替えた。

 そう言えば穂乃果のヤツ、何か着ていたように見えたんだが……アレは何だったんだ?

 一瞬だけだったが、穂乃果の身体には制服とは違った何かを身に付けていたように見えた。黒っぽくって、白のラインが見えたような……? それに、見覚えもある気がしなくもない……。そんなことを考えつつ、明弘とともに校舎内に入るのだった。

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

[ 音ノ木坂学院・2年生教室 ]

 

 

「じゃじゃーん! どう、似合ってる?」

「ほぉー、よく似合ってるじゃないか!」

「エヘヘッ、そう言ってもらえると思ったよ♪」

 

 るんっ♪ とした嬉しさ満点の表情を見せる穂乃果。そんな穂乃果は黒地に白の縦縞を入れたメイド服を着て出迎えてくれた。催促していた理由はこれだったからか……って、何故学校でメイド服を着ているんだ? と普段であればそう言っているだろう。だが、周りをよく見てみるとその理由に合点が付く。

 

「穂乃果たちはメイド喫茶でもやるつもりなのか?」

「うん! なんかね、クラスのみんなが私たちがアキバでメイド服を着てライブをしたのを思い出して、それをウチでもやろう! ってなってやることに決めたんだ!」

「なるほど。ってことは、その衣装は……」

「もちろん、ことりの手作りだよ♪」

「うおっ!? い、いつの間に……!」

「えへへ~蒼くんがいるって感じたから来ちゃった♪」

「感じる、って……お前の身体にはセンサーでも付いてるのか?」

「うん! 蒼くんが近くにいるってわかると身体がジンジン感じちゃうの♪ 私の中にある蒼くんがね、ことりに呼びかけて来るんだ~♪ これも蒼くんと本当の意味で一心同体にな――」

「おぉっと、それ以上は言うな、言うな……!!」

 

 何初っ端から飛ばしてくるんだよコイツは! 仮にもことりの教室内なんだからそう言うことを当たり前のように言わないでもらいたいものだよ。ほらぁ、ただでさえ周りの視線を感じちゃうって言うのに、ことりがそんな意味深なことを言うからみんな目を丸くさせちゃってるじゃないか……! 言い訳を考える俺の身にもなってくれよ……!!

 

「さっすがことりだぜ。男心を擽らせるような見事なメイド服だ。伝説のカリスマメイドと呼ばれるのは伊達じゃないようだ」

「えっへん! 弘くんもいいと思うでしょ? あそこで使ってた制服をアレンジして一から作ってみたんだ。今回は、カワイイをたくさん詰め込んでみたの! どうかなぁ?」

「マーベラス!! 非の打ちどころがないかわいさ満点だ! 上は黒地に細い縦縞の白線を入れているのに、スカートは短く、黒一色とすることで身体をスラッと美しくみせている。黒と言うのがいい。それで女の子の美しき可憐な純白の素肌が際立つものだ。スカートの下の白の二段フリルもいい! フリルがあるだけで女の子のかわいさが引き立つだけじゃなく、上品ささえも付属されるものだ。腰巻きエプロンもいいチョイスだ! 全身を隠すのではなく制服の良さを活かすためにあえて腰回りだけにする采配、見事だ…! だが、何と言ってもカチューシャがいい…! メイドには欠かせないフリル付きカチューシャ、リボンも付けることによって全体の見栄えをよくさせてくれる。まさに、着ただけでかわいいメイドになれる魔法の制服……! 神掛かっていやがる……!」

「さっすが弘くん! ことりの頑張ったところをちゃんとわかってくれてて嬉しい♪」

「ひ、弘く~ん……そんなに穂乃果のことをじろじろ観察しないで~……そう言われると、恥ずかしいよぉ……」

「何言ってるんだ? お前は毎日蒼一からたくさん言われている癖に、この程度で赤面喰らってちゃこの先思いやられるわ」

「むぅ……そ、それとこれとは別だもん……///」

 

 明弘からたくさんベタ褒めされて穂乃果のヤツ困っているな。確かに、朝も目覚ましみたいな形で電話してきてはおはよう代わりに言ったこともあれば、登校途中に出くわして言ったこともある。そう思えば毎日言ってるのは確かなことだな。しかし、明弘に言われて恥じらいを感じるとはな、またしてもかわいい一面を見れた気がする。

 しっかし、ことりの作った制服の良さを言い当てる明弘の凄さときたら……目付きはまさに変態だな。

 

 

「ことりちゃ~ん! 私も着てみたんだけどピッタリだったよ!私のサイズにもあわせてくれてたす、かっ……た………」

 

 突然、教室の扉が開いたと思いきや、そこからヒデコが入ってきた。しかも、あのメイド服を着て……

 当然、俺たちはその姿をマジマジと見ることになるんだが、ヒデコの目線は明弘に向かって離れようとしなかった。それに……みるみる顔が赤くなっているような……?

 

「あ……あわっ………!?」

「ほほぉ~これは……! 穂乃果のを見ていいと思ったが、ヒデコが着ると様になってるじゃないか! いつもよりスラッとして見えるし、何よりかわいいじゃないかぁ! 完璧としか言いようがないな!」

「ほ、ほわっ……?! か、かかかかわっ!? かわわっっっ!!?」

「お? もしかして、化粧もしているのか? 健康的な赤みの含んだ肌でもいいと思うが、白みが増すとますます綺麗になるんだなぁ~ははっ、これは文化祭当日に一番乗りしなくちゃ御指名できなさそうだぜ!」

「ひ、ひゅ……!! きゃ、きゃわっ……!!」

 

 あっ……あれは……あんなに顔を紅くさせちゃって、爆発しそうな勢いだな……。

 

「ひゃっ……あ、し、よ……よ、用事を思い出したから帰るねっ!!! じ、じゃあねぇ!!!」

「お、おう……? 行っちまったなぁ……」

 

 頭から蒸気を噴き出しながらヒデコは教室を全力疾走で後にして行った。何か廊下で何かにぶつかる音や悲鳴みたいなのが聞こえるんだが……気のせい、だよな?

 

「どうしたんだ、ヒデコのヤツ? あんなに急いで、それほどの急用だったのか?」

 

……いや、どう考えてもお前のせいだろ、と言いたくなる。穂乃果だって顔を紅くしちゃうくらいなのに、あんなに褒めに掛かったら誰だって顔を抑えていなくなりたいはずだ。無自覚なのか、それとも……いや、無自覚だな。あんなとぼけた表情を見せるんだから自覚がありそうに思えない。

 

「ん、そう言えば、海未はどこに?」

「あ~海未ちゃんなら……」

 

 ことりが話終える前に、また扉が開くと今度は海未がやってきて、

 

「ことり! 何なのですか、この服は! どうしてこんなにスカート丈がみじか――ッ?!」

「海未……?」

「えっ、あっ……ど、どうして蒼一がここにいるのですかぁぁぁ!!?」

 

 俺を見るなり紅潮させて叫ぶのだ。

 そんな海未はと言うと、穂乃果と同じメイド服を着ているのだが、スカート丈が短く見える。穂乃果は膝より少し上を裾としているのに対し、海未はバッチリ太ももの中間辺りに留まっている。学校制服のスカート丈と同じくらいのようにも見えなくもないが、穂乃果と比較してしまうとやはり短く見えてしまう。ライブ衣装でさえもスカート丈にこだわっている海未なのだ、恥ずかしがらないはずもないのだ。

 

「やーん♪ 海未ちゃんかわいい♪」

「うんうん! 海未ちゃんとっても似合ってるよ! 蒼君もそう思うよね?」

「あ、あぁ、確かに。制服でいるよりその衣装の方がよく似合ってるぞ」

「ほ、ほんとうですか……?」

「本当だとも。スタイルのいい海未にピッタリな衣装だから綺麗に見えるぞ」

「そ、そう言われますと……照れちゃいますね……///」

 

 気分が良くないように思えたが、褒めてあげたら顔色に赤みが増してホッとした様子を見せる。不安や恥じらいよりもこうして褒めてあげることで自信をつけさせてあげたいものだ。今後ことりが作る衣装はこのくらいのが出てきそうな気がするし、うまく着こなしてもらいたいところもあったりするからだ。

 

「なぁ、ことり。もしかしてよぉ……このスカートの下にはドロワを穿かせてたりするのか?」

「もぉ~弘くんのエッチ~♪ 女の子の下着を覗こうとしちゃってたの~?」

「いやぁ~できたらその方が男心をますます擽られるからいいんだけど、やっぱしそういうのを隠すのにはドロワがピッタリだと思ってよ。ことりのことだからそういうことまでしちゃってるだろうと聞いてみただけさ」

「ウフフ、下心ですぎぃ~♪ でもぉ~弘くんの言う通り、ちゃんとドロワも穿かせますよ~。私が働いてたとこもそうやって着せることで、悪い人を締めあげちゃってるんです♪」

「……めっちゃいい笑顔で言う言葉じゃないな……」

 

 沙織さんの店で働いていることりなら、もしものことについては万全な備えをしているだろうとは思っていたがさすがの判断だな。スカートの中を覗いたり、盗撮したりする輩はいるかもしれないからな、ことりもちゃんと熟知してるそうだし、安全が高くなることを期待したいものだ。

 

「穂乃果も穿いてるよ! ほら!」

 

 何を思ったのか、穂乃果は急にスカート丈を掴むとその場でバッとめくり上げたのだ!

 

「ほらって……うおっ!!? ほ、本当に見せるヤツがあるかっ!!?」

「うっひゃ~!! こ、これが世に言う……見せパン、なのか……?」

「えへへ~♪ ど~お? かわいいでしょ♪」

「かわいいって、お前……」

 

 何のためらいもなくスカートをめくり上げるとは恐れ入ったよ……。突然のことに顔面硬直してどう返したらいいのかわからなくなっちまったじゃないか……。明弘も喜んでいると言えばそうなのだが、さすがに少し引き気味の様子。海未に関しては顔を抑えて、破廉恥です! と叫ぶ始末。

 確かに白で丈が短めのドロワを穿いているんだと言うことはよくわかった。だが、代わりに穂乃果は恥じらいをほとんど捨てているバカなのだと言うことを改めて気付かされたことに頭を悩ませている。少し前なら赤の他人として扱うこともできたが、これが自分の恋人なんだと言うことが引っかかり、悩みの種でしかない……。

 

「ほらほらぁ~蒼君ってばぁ~遠慮しないで見てもいいんだよ~?」

「お、おい……バカ! こんなところで大胆に見せるもんじゃないぞ!? さ、さっさと下ろせ!」

「むぅ~蒼君のいけずぅ~」

「いけずなのはどっちだ……」

 

 だめだ、常識的な返しをしてても埒が明かない……。というか、穂乃果はいつも学校でこんなことばかりしているのだろうか? 周りからの視線も驚きと言うより呆れているようなモノさえ感じている。本当に大丈夫なのだろうか、コイツは……?

 

「こら穂乃果ッ! 人が見ているところでスカートをたくし上げるだなんて、破廉恥です!!」

「わわっ!! う、海未ちゃんに叱られるぅ~!!」

 

 風紀の乱れに勘付いたのか、海未は穂乃果に対して怒りを爆発させる。さっきまで大人しかったが、さすがにこれは見過ごすことはできなかったようだで、穂乃果に説教し始める。唯一ここでまともなのが海未だから話が通じると言う意味ではありがたい気持ちになる。

 

「そうだ! 海未ちゃんも蒼君に見せたら?」

「えっ、何をです?」

「ドロワだよ、ドロワ! 海未ちゃんも見せちゃおうよ!」

「な、ななな何を言っているのですか?! バカげたことを言うのではありません!!」

「いいじゃん別にぃ~、穂乃果も見せたんだから一緒に見せちゃおうよ!」

「言ってることがまったく理解できないのですが!!?」

 

 安心しろ、俺も理解できない……。そもそも、穂乃果の頭を理解しろと言うこと自体が困難なのだから、わかろうとしなくてもいい……。

 

「わぁ~海未ちゃんのドロワも見てみたいなぁ~♪ ちゃんと穿けているのかことりもチェックしちゃいますよ♪」

 

……しまった、バカはもう1人いたんだ……

 

「なっ……?! こ、ことりも何を言っているのですか!!?」

「だってぇ、気になっちゃうんだもん。穂乃果ちゃんもしてくれたんだから海未ちゃんも♪」

「い、嫌です……!! 絶対にしませんから!!」

「そんなことを言わないでぇ~♪ 穂乃果ちゃぁ~ん♪」

「へへん、海未ちゃん覚悟しろ~♪」

「や、やめっ……やめなさい穂乃果! ことりぃ!!」

 

 なんなんだよこの状況は……。

 悪い笑みを浮かばせる穂乃果とことりは、一緒に海未に飛び付くと動けないようにと身体を掴んだ。さすがの海未も動揺していたために為す術がなく、2人の狼藉を許してしまう。

 そして、穂乃果が海未のスカートの裾を掴むと、

 

「ごかいちょ~♪」

 

 と腕を振り上げるようにしてスカートをめくり上げたのだ……

 

 

 

 

 

 

 しかしそれは、ドロワとはかけ離れた布で……彼女の秘所を隠すだけの際どい淡い青の大人な下着が目に映ってしまった……

 

 

「おっ―――」

 

 それは想像していたのとは違った光景が目に映って……、

 

「えっ―――」

 

 この場にいた4人は思わず……、

 

「うっ―――」

 

 声を漏らし……、

 

「いっ―――」

 

 

 

 

 

 

 

……自らの死期を悟った……

 

 

 

 

 

 

 

「あ~な~た~た~ちぃ~……!!!」

『あっ――――』

 

 噴火のごとき殺気が俺たちに向けられた。マズイな、ここはさっさと退散したほうがいいかもしれないと誰にも気付かれないように後退りを始めた。

 

「ほ~の~かぁ~……こ~と~りぃ~……!!」

「「ひ、ひぃっ……!!」」

 

 そのさっきはすぐ様、近くにいた穂乃果とことりに向けられ、一瞬の余裕も断末魔も叫ばせることも与えずに瞬殺してしまう。

 やばいやばいやばいやばい……!! あんなのにやられたらひとたまりもないじゃないか! 俺はひとまず退散させてもらうとするか……

 後退りする脚を早めて逃げ出したい。できれば距離を出来るだけ置きたい……! シンクロカットされた暴走エヴァ初号機みたいな悪鬼っぷりを目の前にしたら誰だってそう思えるはずだ。自分の命を縮めるようなことはしたくないのだ!

 

 

「……どこへ行こうと言うのですか?」

「―――っ!!」

 

 まずっ……海未が俺を捉えやがった!! これはもう一目散に逃げるしかなさそうだ、恥じらいなんて捨ててしまっても構わない!!

 

「に、逃げるんだよぉ~!!」

 

 身体を返して扉に近付こうとした時、その扉とは別の扉に向かって明弘が走りだしていた。が――、

 

「――待ちなさい」

「うぉん!!? う、嘘だろ……はやすぎっ!!?」

「あなたも見ましたよね……?」

「し、知らない知らない!! 俺は何も見てないぞォー!! 海未にはちょっと早すぎるようなアダルティなモンだったが、見てないからなァー!!」

「ほぉ……そうですかそうですか……覚悟はできてますね?」

「ハッ……!! く、口が勝手に……ッ!! ま、待て、落ち付くんだ海未……ぼ、暴力はいけないと思うぞ、ちゃんと話しあった方がいいと思うんだ……。特に、アレだ、まだまだお兄さん的にはあんなマセたキワモノを穿くよりもっと歳相応のパンツの方がいいと思うんだけどぅうおおぉぉおおぉぉああ頭がリンゴのように砕け散るような掴み方をおおおぉぉぉおおお!!!!!???」

「な~に~か~い~ましたぁ~~~???」

「ふごおおおおおお!!!!! 痛い痛い痛い痛いィィィィィ!!!!!! 手の平で顔を抑えつけられながら五本の指が頭に食い込むゥゥゥゥ!!!!! 前頭部を思いっきり掴まれちゃって血が吹き出そう!!!!! トマトよりも真っ赤なモンが出ちゃうからァァァァァ!!!!!!!」

「安心して下さい。出るモノが出てしまった時は、ちゃんと入れ直しておきますから♪」

「そ、そ……そういうことじゃな……あっ………」

 

 今、ぷちって変な音が聞こえたような……って、そう思ってたら明弘の霊圧が消えたっ!? 手脚をだらんと垂れさがらせて抵抗している様子がないどころか、意識さえも失ってるんじゃないのか?! いや、そんなことよりも海未がこちらに向かってくるんじゃないかって心配になってきたわ……!

 そう思ってた矢先、海未は掴んだ明弘の頭を放すと、首を回転させてこちらを向きやがった! 一瞬に、じゃなくぬるぬると動かすのだから恐いのなんのってレベルじゃない! 本当に死ぬんじゃないかって圧を掛けてきているんだ、容赦ないに決まってる!! さっさとここから脱出しなければ!

 一目散に退散してやろうと躍起になった俺は、すぐに扉を開いて逃げ出s――!!

 

 

「――どこへ行こうと言うのです……?」

「うおぉぉああああ!!!!?」

 

――せなかったわあああぁぁぁぁぁ!!!!! 掴んでる!! 俺の腕をガチっと掴んで放さないぞ!! そして、俺を見上げる海未の表情ときたら筆舌し難いほどの悪鬼に包まれていて、もはや逃げられそうにないのですがァァァァ!!!!!

 

「うふふふふ……よもや蒼一に見られてしまっては仕方がありませんね……記憶諸共消し去って差し上げましょうか……♪」

「ダメだから!! あれは不可抗力だ、俺は巻き込まれただけなんだ! てか、そんな物騒な字面をにっこりした表情で言わないでもらいたいんだけど!!?」

「大丈夫ですよ、悪いようにはしませんから♪ あっ、もし気を失うことがありましたら私がじっくりと看病して差し上げますからね♪」

「なんで気を失うこと前提で話がまとまろうとしてるの?! てか気ぃ失うの!? やめろぉ!! そんなことしたって何の益にもならないじゃないか!!」

「蒼一に無くとも私にはあるので問題ありません♪」

「いや問題あるからァァァ!!」

 

 マズイ、全然話が通じてないんだけど! 何なんだよ、いつかの病んでた時の状態になっちまってるんじゃないのか!? ちゃんと抑えたはずなのに、もはや発作レベルで発動してるよね、これ!?

 というかさ、どうしてパンツ一枚見られただけでこんなに怒る? 今までだって散々見てきたわけだし、俺なんてそれ以上のモンを見ちまってるんだから、ただの御愛嬌と言うことで流してくれないのか?!

いや待て……そう言えば、海未があんなパンツを持っているだなんて初めて知ったぞ……。今までだったら女子高生が普通に穿くであろう種類をしていただろうに、何故かレース状でできた大人なパンティーだ。今までの海未だったら、破廉恥だから何とやらで敬遠していたはずなのにどうしてそれを……?

 その時、脳裏に過るモノがあった。そう言えば、あんな感じの下着を着ていたのがいたな。確かアレは……そう、真姫だ。真姫があの時に付けていたのとよく似ている。うん、間違いない。それに、ああいう下着を真姫はこうも言ってたな―――

 

 

 

「……勝負下着……」

「………っ!! ほぉ……これはもう、ダメですね……」

「えっ、なに? もしかしてあってるの……? いや、そんなわけないだろ……? だって今日はそんな予定があるわけが……」

「どうして私の都合を知っていると言えるのですか? 知るはずもありませんのに……♪」

「あっ………」

 

 ペロリと上唇を撫でるように舐めた海未は、何とも言えない妖艶さを顔に表していた。つ、つまり……俺は今日、海未に………!!

 

「……もはや、考える必要もないですよね……♪」

「ちょっ、まっ―――――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから記憶が無かった――いや、正確に言えば、俺が穂乃果に誘われて教室に入って行ったあとからの記憶がまったくない……。そして気が付いた時には、俺は保健室のベッドの上で寝ていたんだ……。

 わからない……俺の身に何が起こったのか、とんと見当がつかなかった……。ただわかることは……俺がベッドの上で寝ていたこと、身体から汗がたくさん流れ出ていたということ、そして頭がすぅーっとするような爽快感があったということだ。おまけに、服もシワだらけになってて……い、いったい、何が起こっていたのだろうか……?

 

 

 

 

 

「うふふ――――♪」

 

 

 

(次回へ続く)

 




ドウモ、うp主です。

困った時の記憶抹消って都合よすぎですね()


と言うわけで、また新しい話に突入しました。
今回は音ノ木坂学園祭をメインとした話になりそうで、この話でもあったようにμ'sのみんながワイワイ騒ぎます。
もちろん、暴走することもしばしばあったりするので……
次回も学園祭前の話でゴタゴタが起きるはずです。

では、次回もよろしくお願いしたします。

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