第16話
<前回までのあらすじ>
「ねぇ、弘君。前回の話はいろいろすごかったね!」
「文字数が多い、なんかエロい、東條さんがメイン。最早、うp主の欲望の塊にしか見えないな」
「そういうことをいうもんじゃありません。うp主は最近、多忙で疲れているのです」
「それで欲求不満になって妄想を爆発させたと?」
「・・・そうなりますね・・・」
「何を言っているの海未ちゃん!元々、この物語はうp主さんの妄想の中にあった話が具現化したってこうなったんだよ!」
「おいおい、そんなにメタなことを言うもんじゃあねぇぞ」
「今回はまともな話になるんでしょうか・・・」
―
――
―――
――――
「お前ら、あん時隠れていたのか」
「まあ、そうなるな。俺たちがいたら邪魔だったろ?」
「邪魔だったというか・・・いなくてよかったな・・・」
音ノ木坂学院の臨時講師となった翌日、いつものように大学のくだらない講義を聞き、本日の大学での活動を終えた今、学院に向かっている最中である。
俺が希に引っ張られていく際に、明弘たちはその様子を物陰に隠れて見ていたという。できることならば助けてもらいたかったけど、あの時の希を止められる事は出来ないだろうな・・・結果的に、いい方向性に持っていくことができたし、問題ないといえるかな?
「しかし、あの子があの時の人見知りの女の子だったとはなぁ~。見違えるほどに成長したんだよなぁ~」
「お前はアイツと最後に会ったのは、小学校の時だったっけ?」
「ああ、そうだな。あの子が引っ越しをするときに会ったのが最後だったから・・・おおよそ9年ぶりってとこかな?かぁ~~!!人って言うのは9年であんなに変わるもんなのかい?おにぃさん、テンションあがっちゃうよー!!!」
「おい、何を見てそう言ってんだ?」
「ボディ&スタイル!!!」
「お、おう・・・」
「高校生であんなに、ボン・キュッ・ボン!な子はそうそういねぇぞ!ランクSの逸材だぜ!しかも、音ノ木坂学院の生徒会副会長で俺の知り合いときた!!うっひょーーー!!グレートですよ、コイツァ!!!」
「お、落ち着けぇー!」
明弘が興奮するのも解らんでもないが、抑えてくれ。人が多く通る公道で暴走するんじゃないよ!この変態が!・・・あっ、元々か・・・・
―
――
―――
――――
「あの、宗方さんですか?」
「えっ?ああ、そうだが?」
「「「きゃーーー!!!!」」」
「あなたが滝さんですか?」
「おう!そうだぜ!!」
「「「きゃぁーー!!!」」」
「「(どういうことだってばよ・・・!!!)」」
い、今起こっていることを、あ、ありのままに話すぜ・・・!!
学院に着いた瞬間からここの学生たちに詰め寄られるというこの有様!な、何がどうなっていやがるんだよ!?
昨日、学校中を回っていた時はただ見られていただけなのに、今日はどうしてこんなにも積極的に詰めよってくるんだ?!右を向いても、左を向いても、後ろを向いても、女子しかいねぇ!!!!
ただ、俺が理解できることは一つだけだ・・・
前に進めねぇ・・・・!!!!
くっ、なんとかしてこの集団から抜け出さねば!!
「いやぁ~まいっちゃうなぁ~♪」
・・・・って、明弘!!何楽しんでんだぁ!!!
だめだ・・・コイツは使えねぇ・・・一体何がこの状況を作り出しているんだ?
「宗方さんは様々なスポーツもできるんですよね?」
「えっ?あ、うん・・・」
「じゃあ、ウチのソフトボール部の指導をお願いしてもよろしいですか?もちろん都合がよい時で!」
「え、いや、その・・・」
「宗方さんは歌もお上手だと聞いています。是非、我がフォークソング部の指導を!!」
「ちょ、ちょっとぉ?!」
「ダンスも凄いと聞いています!ウチにも来て下さい!!」
「えー・・・・」
な、なんだ?!俺の個人情報が色々知れ渡っているのだが、どうしてそんなことを知っているんだ?
「な、なあ、どうして俺のことをそんなに知っているんだ?」
「と言われましても・・・・学校の掲示板に書かれていましたよ?」
「掲示板?」
「はい!我が校の広報部の新聞に宗方さんたちのことが色々書いてありましたので!!」
「広報部・・・・だと・・・・?!」
広報部と言えば、確か・・・!
『てへぺろ☆』
島田かぁ!!!!!
―
――
―――
――――
「やぁやぁ、お二方。あの集団からよく抜け出せましたねぇ~♪」
そうやって、微笑みながらそう話してくるのは、この学院の広報部部長の島田 洋子だ。
昨日、島田に俺たちのことを話すことを条件にこの学院を案内してもらうことをお願いしたのだ。その対価が今になって降りかかって精算させられることになろうとは・・・・
掲示板には確かに俺たちのことが書かれていた貼り物がちゃんとあった。その内容は昨日、島田に話したことがそのまま書かれて・・・・・
・・・・・いたから少し安心している。
いらんことを書かれていたらそうしようかと思ったがな。
「いやぁ~、また新しいネタの提供ありがとうございます~。今後もよろしくお願いしますねぇ~♪」
くっ、島田めぇ・・・・できる!情報だけを武器に俺をここまで困らせるなんて・・・
「島田・・・」
「何ですか?滝さん」
「・・・いい夢、見させてもらったぞ!」
「それは何よりです♪」
はぁ・・・・苦労しているのは俺だけか・・・・
―
――
―――
――――
『また、遊びに来て下さいね~♪』
ネタにされるのならあまり行きたくないのだがな・・・・
広報部の部室を後にして、明弘はそのまま屋上の方に行き、練習に向かった。
一方、俺はと言うと・・・・
「よう」
「ノックくらいしてもらいたいわね・・・」
音楽室の守人・西木野 真姫のところに来ていた。
「もしかしたら、ここにいるんじゃないかと思ってみたら大当たりだったようだな」
「私にとってはあまりうれしくないんだけど」
「そんな堅いことを言うなよ、名前で呼び合う仲じゃんか」
「昨日会ったばかりの人にそこまで心を開いたつもりは無いんだけど」
一応、年下なんだよな・・・・それなのに今日もこういう風に話してくるというのはちょっと残念だな。もう少し敬ってもらいたいものだな。
「今日、真姫に会いに来たのは他でもない。昨日のアレはどうなった?」
「ああ、それね」
真姫は自分のカバンに手を入れて一枚のCDケースを取り出し、俺に手渡した。これって、まさか・・・
「蒼一が渡してくれたあの詩で試しに作ってみたのよ。聴いて気に入らなかったら使わなくてもいいわよ」
「そんなのもったいない!!」
海未の詩を渡してからたった一晩で完成させたのかよ!しかも、それで気に入らないなら捨てていい覚悟なのかよ!何なんだこの子は!!?
「試しに作ったからメロディはピアノしかないわ」
「十分だ。というか、一晩で作り上げるとは思わなかったぞ」
「まあ、私にとっては大したことないわよ」
そこまで言うことができるとは・・・今日といい、昨日の音楽に関する考えの持ち方といい、やはりこの子はただものじゃないな!
「それと・・・・私が弾き語りしたのもその中に入れているわ・・・」
「なん・・・だと・・・!?」
メロディのみと弾き語りの両方がこの中に入っているのか・・・・!!
完璧やないか・・・!
「用はそれだけなんでしょ、早く練習に行ったら?」
それもそうだが、ここで帰るのは少し惜しい気がする。
・・・・お願いしてみるか・・・・
「真姫、頼みがある」
「何よ?」
「真姫が作ったこの曲をこの場で聴かせてくれないか?」
「はぁ!?な、なんで私がそんなことをしなければいけないのよ!?」
「嫌なのは十分承知だ。だが、俺は見てみたいんだ。真姫がどんな感じでこの曲を作り、どんな思いでこの曲を歌うのかを」
「嫌よ、そんなこと。大体、何でそこまでしなきゃいけないのよ」
「頼む、最初のところだけでもいい、少しだけ聴かせてくれ。この通りだ!」
俺はその場で頭を下げてお願いした。
歌をただ聴きたいだけなら渡されたCDに収録されたやつを聴けばいいじゃないかと言う人もいるだろう。だが、そうじゃない。CDだけでは、データで渡された音だけでは聴きとることのできないものがある。それは、制作者の想いだ。生の音でしか味わうことができない小さな仕草や細やかな表現。こうしたものは実際に見て、聴いて、感じなければ伝わらないものである。その機会が今、目の前にあるのにそれを手放そうなんてのは勿体な過ぎることだ。どうしても聴きたい、土下座してでも聴いてみたいのが今の俺の気持ちなんだ。
「・・・・・しょ、しょうがないわね・・・・やってあげるわよ」
「ほ、ホントか!?」
「ほんとよ、嘘はつかないわ。それにあの詩の感想をまだ伝えていなかったわね」
「ああ、そうだが・・・・まさか!?」
「ええそうよ。今からその感想をこうやって伝えてあげるわ!」
真姫はピアノの椅子に座り、鍵盤蓋を開いた。
両手を鍵盤の上に据え、目をつぶって息をすぅーっと吸って吐き、真剣な眼差しを見せた。
(~~~♫~~~~~♫~~~~~♪)
ピアノの伴奏が鳴り始めた。
―
――
―――
――――
(~~~♪~~~♪・・・・・・)
「・・・・ふぅ」
真姫は演奏を終えて息を吐いた。
(パチパチパチパチパチ・・・・)
俺はまた、無意識に拍手をしていた。
「蒼一、また拍手しているわよ。そういうのいらないわよ・・・・」
頬を赤く染めながらそっぽを向かれてしまった。
ふふっ、嬉しさを隠そうとしてぎこちない顔をしている。
「歌は正直なのに、真姫自身は素直じゃないんだな」
「な、何が言いたいのよ!!」
今度は顔を真っ赤にしてこっちに近づいてきた。図星だったのか?
「いや、なんでもない。・・・・それにしても、真姫は本当に歌が上手なんだな。音程がはっきりしていたし、気持ちが歌と一つになっていたぞ!」
「まあね、前にピアノを習っていた時に一緒に歌い方の練習もしたのよ。何年もの間、練習とかしていなかったけど、それでも、まだ感覚だけは残っているわ」
「何年も練習をしていなかったって!?それって、作曲もそうなのか?」
「いいえ、作曲は独学でやったわ。それでもやり始めたのは半年も前のことよ」
「半年!?たった半年でこれだけの曲を作り上げたのか?」
「ええそうよ。私だからできたことなのよ、感謝しなさい」
「へへぇー・・・」
なんだよ、こんなところに化け物がいるなんて思いもしなかったぜ。いやぁ~頭が下がるなぁ・・・
「生で聴いて参考になったかしら?」
「ああ、十分すぎるくらいだ。歌い方に曲の入り方、息継ぎの仕方、感情の入れ方とかバッチリ押さえさせてもらったぜ。ありがとな」
「い、いいわよ。好きでやったことだし」
「ふふっ、そう言うことにしておくさ」
そういうところだよ、真姫のそういうところが素直じゃないんだよ。もう少し感情を表に出してもいいんだぜ?
しかし、ホントに歌が上手いよなぁ。高校1年とは思えないような歌い方だから正直驚いているんだ。・・・・それだけじゃないんだけどな。こうした逸材をここで眠らせるのは惜しい気がするんだよな・・・・。一応、聞いてみるか。
「真姫は俺たちと一緒に活動する気は無いか?」
「えっ?」
「真姫のその才能をそのままにしておくのが勿体なくってな。どうだ、一緒にアイドル活動をしてみないか?」
「それは・・・・・その・・・・」
「ん?」
「前にここに来た人にも言ったんだけど、私はそういうことに興味は無いの。ごめんなさいね」
う~ん、ダメか・・・・前に来たって人って言うと、穂乃果のことか。アイツも同じようなことを聞いてみたんだな。
「いや、無理に誘ってすまない。ただ、聞いてみただけだ」
「そう・・・」
「俺たちは屋上か、神田明神の男坂のところで練習をしているから、もしよかったら来てみてくれ。歌の練習の時だったらすごく嬉しいんだけどな、作曲者の直接的な意見も聞けるし」
「ま、まあ、機会があればね・・・」
完全に否定しないところを見ていると、来てくれる可能性があると見た!うんうん、それでいいのさ。
「それじゃあ、早速、これを使って練習させてもらうぜ。ありがとな」
「ええ」
「また来るよ」
「い、いいわよ。来なくても!」
全く、素直じゃないのはお兄さん嫌いだよ?
あっ・・・・・そうだった、そうだった。また忘れるところだった!
「真姫」
「なに?」
「聞きたいことがあるんだ」
「何かしら?」
「真姫は
「えっ?」
真姫は目を見開いてこちらを見てきた。その表情には驚きがあったが、それ以外にも何か違った感情が浮かんでいるように見えたが・・・・それが何なのかは、こちらでは把握することは出来ないようだ。
「・・・・無いはずよ・・・会ったとしても、それはすれ違い程度でしかないと思うわ・・・・・」
違ったか・・・・俺の勘違いだったのだろうか?
「そうか・・・それともう一つ・・・」
「まだあるの・・・」
「昨日、俺が真姫と会った時に、
「?!」
その瞬間、真姫はビクッと体を震わせた。また、その表情には何かに怯えているかのように顔がこわばっていた・・・
「真姫?」
「・・・・・答えられないわ」
「えっ・・・?」
「蒼一には・・・・・答えられないことだわ・・・・」
そう言って、体を反して後ろを向いてしまった。聞いてはいけなかったことだったのだろうか・・・・この時、自らが抱いた好奇心に怒りを感じてしまった。
「そうか・・・変なことを聞いて悪かったな」
「・・・いいのよ、別に・・・・」
「・・・・また、来るからな・・・」
「・・・・ええ・・・・」
真姫の背中から出てくる哀しみのオーラを感じ取りながら、俺は音楽室を後にした。
(次回へ続く)
もう、真姫ちゃん最高やないか!!!
この物語の中でいい立ち位置になってきていると思うよ!
あとは、どういう風に続けていくかだけど・・・・・
さて、どうしましょう・・・?
まあ、次回をよろしくです。
今回の曲は
蒼一、少し反省しようか・・・?
尾崎豊/『傷つけた人々へ 』
更新速度は早い方が助かりますか?
-
ちょうどいい
-
もっと早くっ!
-
遅くても問題ない