蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第163話





何事も始まる前の準備が大事

 

【前回までのあらすじ】

 

 新学期を迎える9月の初め、蒼一と明弘は新たな大学生活を迎えたその放課後、彼らが以前世話になった多趣味愛好サークル『充電機関』に再び足を向かわせた。新期を迎えたことの憂鬱さを消すために訪れたがやることが無い。そこで部長である槇島沙織が他サークル『温泉発掘研究会』とサバイバルゲーム(通称:サバゲ)をしようと持ちかける。それに興味を抱いた蒼一たちは沙織の提案に乗ると、早速相手サークルに顔を出すことに……。熱烈(?)な歓迎を受けた蒼一だったが、その後に現れた植木耕助と意外な再会を果たすのだが…………

 

 

 

 

 

[ 温泉発掘研究会・室内 ]

 

 

「ほぉ~、そんで俺らとサバゲしようっちゅう話なんやな? エエで、俺らもちょうど暇してたんや。いい遊びが見つかって嬉しいわ~!」

「お~! 流石清一郎氏ぃ~話がわかるでござるぅ~♪」

 

 軽い自己紹介も済ませると、早速沙織さんは佐野さんと交渉するも秒で成立させてしまう。まるで前から口裏合わせでもていたんじゃないかと疑うほどの速さに正直驚きだ。沙織さんの人望の厚さによるものか、それとも暇人同士の空気の読み合いなのか……いずれにしても準備が着々と進められそうだ。

 

 

「ちょっ、ちょっとちょっとぉ! 佐野ぉ! 私はまだやるなんて一言も言ってないわよ!?」

「なんや森、遊びたくないんか?」

「確かに、久しぶりにみんなが集まったんだから何か遊ぼうって言ったのは私だけど、サバゲだなんて……」

「まあまあ、そうかっかすんなや。森も前に何度もやったやないか、エエ気晴らしになると思うで」

「やったことあるけどさぁ……もぉ~鈴子ちゃんも何か言ってよぉ~!」

「う~ん、サバゲですか……私、やったことが無いんですよね」

「ほーらー! 鈴子ちゃんだってこう言ってるんだから違うのに―――」

「でも、楽しそうですよね、銃の撃ち合いって♪ なんだかワクワクしますよね♪」

「凛子ちゃんっ?!」

「はっはっは! 鈴子もこういっとるんや、観念するんやな!」

「そ、そんなぁ~……」

 

 肩の力が抜けて意気消沈する森さんとか言う女の子。目をあんなにうるうるさせちゃってるんだけど、そんなに嫌だったのだろうか? まあ、気持ちはわからんでもない。何せ、佐野さんや植木、森さん以外の2人はこの3人と逢うために、他の大学生でありながらもわざわざ来てくれたのだ。しかも、久々に集まったと言うのだから時間をかけてゆっくりと話をしたいと思うのは当然だ。それを押し切る佐野さんもよくやるものだ。こういうのは、後々で難癖付けられたりするんだけど……わからんな。

 けど、押し切っていこうとする性格と言うのは、押しに弱くなってしまう俺からすると欲しくなるところでもある。だからと言うわけなのか、佐野さんを悪いようには見えない。

 そんな羨望の眼差しを向けつつ、事の始末を見届けようとする。

 

 

「そちらの方も問題が無いと言うことでしたら、こちらでフィールドを選ばせていただきますが、よろしいでござるか?」

「おう、何も問題ないで。ちゃっちゃっと決めちゃってや」

「了解したでござる。では、今回はアキバにあります地下施設のフィールドにさせてもらうでござる。拙者の伝手もありますし、何より初心者でも気軽に楽しめるところなのでオススメなのでござる」

「さすが沙織や、仕事が早くて助かるわ!」

「私はよくなーい!!」

 

 どうやら場所は決まったみたいだな。未だに反対しているのはいるけど……

 しかし、アキバに地下フィールドか……サバゲができる施設は何点か見たことがあったが、地下にあると言うのは初めて聞いたな。まあ、ことりがバイトしていたメイドカフェのオーナーをちゃっかりやってるくらいだし、俺の知らないアキバを熟知してるんだろうと納得してみる。

 

「さて、とりあえず集合時刻は3時頃でどうでござろう? 施設の方はその前から入ることもできます故、射撃訓練もできるようにしてるでござる。それまでの空いた時間は有効活用してほしいでござる」

「3時! 3時までならまだ時間はたくさんあるからそれまでどこかでご飯を食べながら話を――「よっし、すぐに行って作戦会議や!」――って、話を聞きなさいよー!!」

 

 多分、じっくり話とかしたかったんだろう森さんの提案は、またしても佐野さんに一刀両断されてしまう。あそこまで思いっきりやられてしまうと、こっちだって少し気が引けてしまう。悪いな森さん、ウチの沙織さんが(けしか)けなければこうならなかっただろうに……

 しかし、もう時すでに遅しというべきか、他のメンバーたちは準備に取り掛かっている。乗る気になってるのか、それとも仕方なくなのか……見る限りでは前者なのだろうが、森さんにとっては快くはなさそうだ。

 

 

「さて、拙者たちも準備に取り掛かるでござるよぉ!! 今回こそは絶対勝つでござるよ~!」

「「ぐおおぉぉぉっ!!!? く、首があぁぁぁ!! 首を掴まないでぇぇぇ!!!」」

 

 こちらもすぐに作戦会議を開こうと意気込んでるけど、なんで帰る時も首んとこを掴んでいこうとするのさ?! てか、ホントにこの人馬鹿力すぎやしない!? こんなに力強く引っ張って元いた部屋に戻るんだぜ? 死ぬッ!! これマジで死ぬから!! 現に……い、息がっ……!!

 

 

「きょ、きょうだ…い……お、俺はもう……ダメなよう………かはっ……」

「死ぬんじゃねぇぞ明弘ぉぉぉ……!!!」

 

 白目引ん剥いた状態で気絶したのか明弘の反応がない……! いや、これマジでやばくね? 俺の現状における生存危機を感じちゃってるんですが!? うぐっ……?! お、俺も……このままじゃ……うっ……!!

 

 一瞬、意識がどこかへ飛んで行ってしまったような気がしたんだ……うん、急に視界がぼやけてきてな、次に視界がハッキリした時には……俺は知らない天井を眺めていたんだ……ベッドに横たわって……

 

 つまり……そう言うことなんだろう……。

 言葉にすることもなく、ただ受け入れるしかなかった。

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

[ サバゲフィールド内 ]

 

 時間と言うのは、案外早く進むみたいで気が付けば待ち合わせ時刻になっていた。

 状態が回復した俺たちは、集合時刻まで余裕があったため、一足先にフィールドに向かった。しかしその場所が俺の想像の範疇を越えていて、一目見た時口がぽかんと開いてしまったよ。

 と言うのも、そもそもフィールドの大きさがおかしい。歩いて何歩分だ? 全力疾走しても端から端まで行くのに10秒くらいはありそうな気がするんだが……。天井も2階分くらい余裕があって、声を出せば反響で戻ってくるくらいの奥行きもある。フィールド上には、廃墟さながらな倒壊したビルの壁やコンクリートの破片などがわんさか転がっていて本格的なつくり込みを感じる。

 そして何と言っても、ここが地下7階の場所に設置されているって言う事実だ。初め沙織さんから聞かされた時、は――? と思わず声が出たよ。だってそうじゃないか、地下7階って普通に人が体験できるような深さじゃないし、そもそもこんなところに施設を作ることが異状でしかない。しかも、サバゲのために……

 

「本格的なサバゲをしたいのだけど、アキバに十分な場所もありませんでしたから地下鉄にも迷惑のかからない場所に作ったんだそうでござるよ」

 

 どんだけサバゲに命燃やして作っちゃってるんだよ……。この施設を作った人は相当ヤバイヤツに違いない、そう感じてしまう一面だったわ。

 

 でもまあ、そんな場所を今回使わせてもらうわけなんだけどな。来て早速、今回使用するモデルガンを手にとって、それで射撃訓練をさせてもらった。銃の形状や素材、ガスによる身体への反動などは一般的に売られているものと同じのようだ。弾倉に彫られた文字には、あの大手の名前が刻まれているのも確認できる。

 

 

「へぇ~サバゲが初めてな割には、銃の扱いが様にじゃないか」

「専門店には何度か足を運んでは触らせてもらってますからね、それなりには扱えるつもりです」

 

 試し撃ちをしている時、秀光さんに声を掛けられた。

 

「いいねぇ、なら今回の代役は務まりそうだな」

「ん、どういうことです?」

「人数合わせで俺が抜けるって話さ。相手は5人だから6人で挑むわけにはいかないじゃん」

「それはわかりますが、俺たちが入ってよかったんですか?」

「いいんだよ、同じ大学にいるんだからいつだってできるさ。それにキミらはまだ体験してないんだから存分に味わってもらいたいだけなんだよ」

「秀光さん……そう言われたらやるしかないじゃないですか」

「はっはっは! キミの肌で戦場を感じてくれ! 控え室でキミたちの活躍を見させてもらうからね!」

 

 そうにこやかな顔で言葉を返す秀光さんは、M240機関銃を的に向かって掃射していました……。いや、全然控えるつもりなさそうなんですけど? ランボーやらコマンドーな気分でドンパチしまくってるんですけどぉ!? やっぱ出たかったんじゃないですかやだぁー! てか、ここでは機関銃も取り扱ってるのかよ!!

 

「いやぁ~いいねぇ~! 的が一瞬にしてハチの巣になったぜぇ!!」

「やめてぇ!! もう的のライフは0よ!! これ以上やっても無意味よ!!」

 

 制止をかけようとするも秀光さんは、放せェェェ! の一点張りで振り切って追加された的に再び掃射しだす暴れっぷり。いやもう参加して下さいよ、ホント。そんな姿見せられたら参加し辛いんですからぁ!!

 心の中で叫んでみたものの、メンバー表には本当に秀光さんの名前が抜けてて……うん、なんかすみません……。肩にどっしりと重石を背負わされたようなプレッシャーを感じたまま本番を迎えることとなった。

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 参加者全員がフィールドに集まったのは定刻の5分前。俺も含めて全員が装備を整えた状態で顔を合わせた。

 メンツはと言うと、俺がいる沙織さんチームは、明弘に藤香さん、新八さんの5人。対する佐野さんチームには、鈴子さんに宗屋さん、森さん、そして植木の5人だ。ちなみに、秀光さんは審判(ジャッジ)として立ってくれていた。

 

「それじゃあ、今回のゲームの説明をします―――」

 

 秀光さんはどこからか手にした一枚の紙を読みだした。

 

「今回の内容は『拠点制圧戦』です。相手方の拠点にあるフラッグを奪われた時、勝負は決まります。なお、他にも味方の全滅、リーダーの戦闘不能が確認された時も同じこととなります。リーダーの選出はこちらで決めさせていただきます。そのため、戦闘不能が確認された時はこちらで合図を出しますので、そこんとこよろしく」

 

 拠点制圧戦か、オーソドックスなものがきたものだな。でも見方を変えれば殲滅戦にもなりかねない。リーダーがわからない以上は無作為に相手を倒さなければならないからな。短期決戦となるか、長期戦となるか分かったものじゃない。

 

「あと、今回みんなが着用している防護服ですが、ここのオーナーの趣向によって改良が加わっています。この防護服には被弾したことを知らせるセンサーがあり、今回使用するBB弾がこれに触れると硬直して肉体を動かさなくさせます。例えば、腕に当たった場合、その腕と下の手も固まって使えなくなると言うことです。そして、頭部と胸部を撃たれた場合は死亡と言う扱いで戦闘不能になります」

 

 この防護服にはそんな機能が備わってるのか? なんの疑問も持たずに全身タイツのようなインナーと迷彩服、プロテクターを着込んだが、まさか肉体の一部の機能を失わせるようにするとはな……未来だなぁ……。

 

「そして、今回使用できる武装は、ハンドガン、アサルトライフル、サブマシンガン、ハンドグレネードとなります。ちなみに、ハンドグレネードは威力が高いため、双方合計3個しか使えないようにしております。弾の補給は拠点で行えるようにしてますが、武器の変更・交換などはできないので事前に使用する武器は決めておくようにしてください」

 

 基本武装もFPSのビギナータイプに合わせたものか。こんな場所じゃさすがにスナイパーライフルは使えないだろうし、機関銃なんてぶっ放したら秒で試合終了になりかねんわ。と言うか、機関銃が使えない時点で秀光さんの立ちいる隙もないとか、どんだけやらせないようにさせてるんだか……。

 戦場がこの人を嫌っているのかもしれない、一瞬だけそう思えてしまう。

 

 

「――以上で説明を終わらせますが、質問はありますか?」

「はい」

 

 佐野さんが手をあげた。

 

「被弾したら腕が硬直するっちゅう話やけど、どのくらい当たってしもうたら動かなくなるんや?」

「そうですね。基本的にはインナーがBB弾に反応したらアウトです。ですからプロテクターや迷彩服に当たっても反応しないこともあります。しかし、同じところを何度も撃たれれば服の耐久度は下がって被弾のリスクがありますので注意して下さい」

「ふ~ん、なんなら頭か首かを直接狙うしかなさそうやなぁ~」

「ただし、危険射撃だけはしないでくださいよ? 故意に撃ってしまった場合は即退場ですから、リーダーであった場合でも容赦なく退場&敗北が決まりますからね」

「おーわかったで。そういうことなら、ちぃ~と気張らんとアカンなぁ~。あと、フィールドにあるもんならなんでも使ってもエエんやろ?」

「ん? 問題ないと思いますけど」

「ほうか、それ聞けて安心したわ~」

 

 ニカニカと何だか嬉しそうな表情で笑って見せる佐野さんは答えた。

 ふと、佐野さん側のメンバーに目をやると、意外にもみんな嬉しそうな様子を見せている……未だ当惑している森さんと立ち寝している植木を除いて……。てか器用だな、立ちながら寝るって言うのはさ。講義の時やさっきも瞬で寝ていたし、寝ることが1つの才能なんじゃないかって首を傾げてしまうほどだ。

 

 だが、あの5人から感じる余裕な空気は何だろうか。まるで戦い慣れているようなものさえ抱いてしまうのだ。あのサル顔の宗屋さんが言う10年とはいかないが、俺と変わりない場数を踏んでいるような気がしてならない。

 彼らはいったい………

 

 

「それじゃあ、10分後に戦闘開始しますんで、各自装備を整えちゃってください」

 

 瞬間、秀光さんの言葉が俺の思考を遮った。同時に佐野さんたちは向こう側の拠点に向かって歩いていきだした。何かを感じ取る前にいなくなってしまったか……もう少し眺めて、あの余裕の正体を探ってみたかったものだ。

 

「蒼一氏、こちらも武器を揃えるでござるよ~」

「……わかりました。いますぐに向かいますので」

 

 こちらも足早に拠点に向かう。時間が短い中で自分の武器を考えなくちゃならい。個人戦ならまだしもチーム戦となると連携が必須。武器選択も連携のひとつになるものだ。

 拠点に着いた俺たちは、ずらりと並べられた武器を見る。射撃訓練で使用した武器と同じのようで、どれを握ってもしっくりきてしまう。さて、どれを選んだ方がいいか……

 

 

「そう言えば、まだ作戦の方を伝えていなかったでござるな。手短ですみませんが説明するでござるよ」

 

 ちょいちょいと手招きしてくるので集まると沙織さんの作戦が始まった。

 

「今回の闘いは、“焦らず確実に相手を倒すこと”でござる。ですから、むやみやたらに前に出ないようにするでござる。多分、相手は短期決戦を仕掛けてくる可能性が大でしょう。一気に前進してきて拙者たちを袋叩きにする戦法をとってくるやもしれません故、深追いは禁物でござる。持久戦に備えるようにするでござるよ」

「わかりやすい戦法だね、バジーナ。それで、ボクたちの武装はどうしたらいいの?」

「前衛と後衛の2つに分けて決めるでござる。前衛は主に相手の足止めと殲滅なので、アサルトかサブの突貫で行くでござる。後衛は支援を主にします故、飛距離のあるアサルトでいくでござる」

「……ならば、俺が後衛に回ろう……バックアップは任せろ……」

「じゃあボクは前衛をするね。武装はサブを2丁でいかせてもらうわ!」

「拙者も前衛のアサルト&ハンドでいくでござる。蒼一氏と明弘氏は?」

「自分も前衛に出ます。アサルトって言うのも手ですけど、リーチが長いと動き辛いのでサブとハンドでいきます」

「俺は後衛だけどアサルトとサブでいかせていただきますよ!」

「なるほど、いい選択でありますなぁ~。お2人は今回が初めてですからご無理はなさらぬように」

 

 サブでいくのは我ながらいい選択だと思っている。このフィールドはとにかく狭いところが多いし盾となる壁が邪魔をしている。隠れてから構え撃つ動作が少しでも遅れないようにと考えてのものだ。できれば、安定性のあるアサルトを使いたかったが、今回は諦めよう……

 

「それとグレネードでござるが、拙者と蒼一氏が持つでござるよ」

「え、俺ですか?」

「あると便利ではござらんか? さすがにその武装だけでは心もとないでしょう?」

「確かに……ではお言葉に甘えて」

「うむ。それともうひとつは拠点に置いておきますね。もしもの時に誰かが使えるように、でござるよ」

 

 後衛側に敵が回った場合の対処策ってとこだろう。突貫する前衛に持たせるって言うのも大事だが、長期戦を視野に入れた場合や前衛が破られることを考えれば無難と言える。

 

「緒戦は拙者たち前衛が相手を足止めするでござる。後衛はそのバックアップと共に相手情報を共有できるように走りまわってもらいたい。もしかしたら戦闘よりもこの方がキツイかもしれないでござるよ」

「……問題ない。諜報活動は得意分野……」

「おうよ。体力には自信があるから何度だって走り抜けられるぜ」

 

 諜報活動か……相手の情報がわかれば攻め時と引き際ってのを見分けられる。実際は、勘がモノを言うが……果たして俺の勘がこの試合で使えるのか、だな。

まあ何しろ個人戦になりかねない状況なんだから外部からの情報には気を付けておかないとな。

 

「各個撃破を目標、無理だと判断したら後衛と合流して下され。無理せずに勝ちましょう! 何か質問はあるでござるか?」

「それじゃあ……味方の区別はどうします? 背後から来たのが敵味方か判断できない時のために、と思いまして」

「ふむ、確かにそれはいけませんなあ。同士撃ちというのはサバゲではよくあることです故、ちゃんとせねばなりませんな。では……『蛇』と聞かれたら『液体』と答えてくだされ」

「『蛇』に『液体』ですか……あ~なるほど、わかりました」

 

 沙織さんが出した提案に思わず、いいセンスだ、と言いたくなる自分がいた。わかる人にはわかるものだが、さすがに相手もわからないだろう。

 

「さて、これで問題はなさそうでござるね……。では、我々充電機関の勝利に向かって勝つでござるよ!!」

『おーーー!!』

 

 最後に鼓舞をあげた直後、戦闘開始の合図が鳴りだす。

 さて、どうなることやら……やってみるさ――――

 

 

 拠点を出た俺たちは前衛、後衛と区分されて前に出る。最初は前衛3人が固まり、途中で散開する手はずになっている。つまりこの瞬間がチームとの最後の調整となるのだ。

 

 

「あらぁ、蒼一くんってば緊張してるの?」

「してませんよ。むしろわくわくしてるんですから」

「へぇ~いい感じじゃん。でも、恐くなったらお姉さんのところに来てもいいのよぉ~?」

「遠慮しときます……なんか嫌な感じになりそうなんで」

「ひっど~い。先輩に対して生意気だぞ♪」

「銃口を向けながら突こうとしないでくださいよ! 危ない!」

「ほらほら、そこでイチャ付かないでござるよ~」

「イチャ付いてませんってば!」

 

 直前まで藤香さんにからかわれて少しばかりか溜息が出てしまう。緊張感が無いと言うか、いつも通りと言うか……それが藤香さんらしいのだけどね。

 散開地点まであともう少しと言うところで藤香さんが先行した。

 

「それじゃあ、お先に右翼へ展開させていきますね~!」

 

 我先にと言う思いなのだろう、急に足早になって前に進んでいったのだ。さて、俺も左翼に展開を………

 

 

「……ん、なんだ……あの黒い玉は……?」

 

 その時、空中に何かが飛んでいるみたいで、それもこちらに向かって落ちてきそうな――――

 

 

「―――っ!! 藤香さん! 伏せてっ!!」

「―――っぇ―――?」

 

 

 気付いて声をかけたのが遅かった。

 突然空から降ってきたその黒い物体は、藤香さんの頭上近くにまで接近してて、沙織さんもその存在に気付いたが藤香さんは………

 

 

 シュゥ…、と炭酸が抜けるような音が聞こえたその瞬間だった―――

 

 

 

 

 風船が割れるよりもつんざく激音が鳴り響いたのだ

 

 

(次回へ続く)

 




ドウモ、うp主です。

外伝の方に偏りが出てきて本編が疎かになってきてますねぇ…
でも来週は外伝を更新しようかと思ってますので、こっちの更新はまだ先になりそう…

次回もよろしくお願いいたします。

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