蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第15話





帰り道では常にじゃれ合って・・・・

 

 

 

<前回までのあらすじ>

 

 

やめろぉぉ!!!

死にたくない!死にたくなあぁぁぁいいい!!!

 

 

う、うわああああああ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

――――

 

 

 

 

「の、希!どこまで連れていく気なんだ?」

 

 

 

 

希は何も言わず、神社の境内を歩いていく。男坂からずっと手を放さないため、今は希主導で歩いているわけなのだが、変な状態で手を握られているから自然とバランスが悪い歩き方になってしまう。・・・・・ちょちょちょ!!!今、転びそうになったんだけど!!!

 

 

 

というか、何を怒っているのやら・・・・やっぱ、ことりがあんな声を発したのが悪かったんだろうか・・・・

 

 

 

「・・・希、何を怒っているんだ?」

 

 

 

 

恐る恐る聞いてみたら、急に足を止めてこちらを向いてきた。

 

 

 

「なんも怒っとらんよ!!」

 

 

 

・・・・人はそれを怒っているというのですよ、希・・・

 

 

 

 

 

 

 

只今、絶賛お怒り中の希さんはまた歩き出しまして、社の裏の方に入っていった。関係者しか立ち入ることができないのだろうか、人が全くいない。

 

 

そんな場所に来た時、希は立ち止り、またこちらを向いてきた。

 

 

 

「蒼一、さっき何をしとったんかいな?」

 

 

 

スマイル120%でそんなことを言ってきているのだが、目が全然笑ってないんですけど・・・やっぱ、お怒りなんですよね・・・・

 

 

 

「・・・マッサージをしていました・・・・」

「ふぅ~ん、マッサージねぇ・・・へぇ~・・・」

 

 

 

すごい疑い深いような言い方でこちらを威圧している!ああ、もう帰りてぇ・・・

 

 

 

「マッサージであんな声を出させるなんて、蒼一はようやるなぁ~」

「・・・偶然だろ。俺はただアイツが痛いのを我慢しているだけなのかと思っていたんだから、故意にやった覚えは無いんだけど」

「ふぅ~ん・・・ウチはてっきり、なんかそう言う風にやらしいことでもしとったんかと思ってたんやけどなぁ~」

「バカを言うな、野外でしかも神社の手前でそんな自分の痴態を晒すようなことはしねぇし、第一そんなことをしようという勇気なんてこれっぽっちも持ってやしねぇんだぜ?できるかよ、そんなこと」

 

 

 

俺はことりの脚の疲れを取るためにやっただけで、いやらしいことを目的にそんなことはしちゃいねぇさ。そういう風に見えたのはな、うp主の策略だからな!多分、そっち系の人たちを楽しませようとしたに違いない!!俺はその生贄になったにすぎないのだよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷっ・・・くすくす、蒼一のその慌てとる顔、ほんまにおもろいなぁ。くすくす・・・」

「あっ!・・・希、俺をだましたなぁ!!!」

「え~?だましたつもりはないんやけどなぁ~、第一、神社周辺であんな声を出されたらこっちがびっくりしてしまうやろ」

「うぐぐ・・・確かに・・・それもあって途中で終わらせたんだけどなぁ・・・」

「蒼一、今度からはそう言うことはここではせんといてなぁ」

「う、ウッス・・・・」

 

 

 

はぁ・・・なんか希にしてやられたような気分だぜ・・・

 

 

 

「・・・つか、そういう話ならこんなところに来なくてもいいじゃん」

「ええんよここで、ウチはもう奉仕が終わったところやったから着替えて帰ろうと思ったところだったんよ」

「んで、そんな時に俺を見つけたってことなのね」

「そゆこと。すぐ着替えるからここで待っとってな」

「お、おう・・・」

 

 

 

 

そう言うと、希は更衣室だろうと思われる建物の中に入っていった。関係者以外入ってはいけないっていうのはそう言うことなのか?けど、そんなとこに俺が一人だけでいるのって不味くね? 希!早く戻って来てくれよ!!

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

「お待たせなー」

 

 

 

着替えに行ってくると言って、約数分後にこっちに戻ってきた。よかった、他の巫女さんや神主に見つかったら警察を呼ばれるところだったぜ・・・

 

 

 

 

「それじゃあ、帰るとしますか」

「そうやね、ほな一緒に行こか♪」

 

 

 

楽しそうに言ってくれるけど、さっきまで内心ビクビクさせていたんだぜ。全く、誰のせいだよ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・・うp主のせいだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道は男坂門からだ。

ここの階段を下って、入りくねった小さな路地に入り、そこを突き進み、大通りに出て少し歩いたところに希が住むマンションがある。こっからの距離だと20分くらいはかかるだろうと推測できる。

 

 

 

おや、穂乃果たちはちゃんと帰ったようだな。ことりがちゃんと伝えてくれたようだ、後で、一人ひとりに連絡を入れて明日の練習に支障が出る状態なのか聞いておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子たちなんやね。蒼一が言うとったウチの後輩は」

 

 

 

階段を下り終えた時にそう言ってきた。

 

 

 

「ああ、あれがうちの自慢のアイドルたちだ。アイツらならきっとやってのけてくれるはずさ」

 

 

 

太陽のような笑顔と元気が取り柄の穂乃果、ピュアであらゆる行動でみんなを癒してくれることり、冷静沈着でこの2人のまとめ役の海未。いずれも俺の幼馴染であり、友人である3人だ。俺をいろいろと困らせてくれるヤツらだが、今は自分たちの学校をなんとかしようと立ちあがった3人でもある。

 

 

そんな3人を俺は高く評価していた。

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、そうやね、蒼一がそう言うんやからなんか安心してきたわ」

 

 

 

 

希はそう笑いながら応えてきた。

 

 

一昨日、希は俺に学院が無くなってしまうことの不安を打ち明けてくれた。自分のことについてあまり打ち明けようとしない希があの時、泣きながら俺に語って来たのだ。不安でいっぱいだったのだろう、その顔や声を通じて思いが伝わって来たのだ。

 

 

 

 

 

そんな希に俺は一筋の希望を与えたのだ。

 

 

 

 

その希望を見て希は少し安心したのだろう、今はあの時のような表情を見てとることは無かった。

 

 

 

「蒼一はどうしてウチらの学校のために働こうと思ったん?」

「ん~そうだな・・・・」

 

 

 

俺が穂乃果たちに協力しようと思ったのは、

 

 

 

「アイツらのために何かしてやろうかと思っただけさ」

「えっ、それだけなん?」

「まあな、俺自身も大学で特にやりたいことは無かったから暇つぶし程度に協力しようと思ってたのさ。けど・・・」

「けど・・・?」

「実際、アイツらと面と向かって話したりしていたら、生半可なやり方でやるわけにはいかねぇって思ったのさ。特に、希。お前とあの時に話したあの瞬間からそう思い始めたのさ」

「ウチと話して?」

「ああ、あの時お前を抱き締めた時にお前の気持ちを知ったんだ。無くなってほしくない、そんなの絶対に認めたくないってな。そんな感情が俺の心にひしひしと伝わって来たのさ」

「今、考えれば恥ずかしいわ・・・」

「そらお前、自分から抱きついてきたんだもんな。あん時は驚いたなぁ」

「もう、思い出さんといてぇ・・・」

 

 

 

 

よっぽど恥ずかしかったのか、少し委縮している。

 

 

そういう俺も結構恥ずかしかったという気持ちは残っている。女の子を抱き締めるって言うこと事態慣れていなかったし、そういう耐性も無かったのだから余計にそう思ったのだ。

 

 

 

「だが、それがあったから俺は本気で何とかしようって思ったのさ。アイツらのため、学院のヤツらのため、そして、お前のためにやってやろうって思ったのさ。・・・それが、今の俺の気持ちさ」

 

 

 

今の俺は、ただ自分のために行動しているんじゃない、いろんなヤツらの思いを背負いながら行動しているんだということを自覚しながら前に進んでいる。ふっ、そう思うとまた責任の重大性を身に沁みて感じるようになってきたわ。

 

 

 

 

「そうなん・・・ならウチが抱きついたことに意味はあったんやな」

「ああ、決して無意味なんかじゃねぇ、お前がいて今の俺がいるんだ。胸を張っていいんだぜ?」

 

 

 

 

そう言い返すと、希はまた、くすくすと笑い始めた。

やっぱ、女の子に泣き顔は似合わねぇもんな、笑っているその顔を見るだけで十分さ。

 

 

 

 

 

 

そう言ってたら、少ししんみりとしちまったな・・・・あまり、こういう雰囲気は好きじゃねぇんだよな・・・仕方ねぇ・・・・

 

 

 

 

 

 

そう思って、俺は希の頭に手を置いた。

 

そして・・・・

 

 

 

 

「しっかし、お前の身長はとうとう俺を超すことができなかったなぁ」

「あー!ひどーい!!ウチはまだまだ伸びるんやで!!」

「いやぁ、無理だな。小学生の時も同じようなことを言っていたし、お前が高校生になったときだってそう言ってたんだ。無理すんなよ、諦めな」

「う~・・・ウチだって本気を出せばすぐに成長できるんやでぇ~覚悟しとき~・・・」

 

 

 

ははは、無理だな。俺の身長は180cm近くで希は160cm近くなんだ、この差は何年たっても縮まるようなことは無いはずだぞ。諦めて俺に頭をワシャワシャされろー♪

 

 

 

 

こういう風にじゃれ合いながら帰路に向かっていくのが昔から変わらないスタイルさ。ずっと、不安そうな顔ばかりしていた希が笑い続けられるようにという意味を持って始めたものだ。今もこうして笑っていられるのもこれのおかげなのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

 

「蒼一、もうここら辺でええよ」

 

 

じゃれ合いながら歩いていたらもう希のマンション近くまで来た。時間が経つのは本当に早いもんだなぁ・・・・

 

 

あっ!そうだ、あのことを忘れていた!

 

 

 

「希。今、俺たちのグループの名前を募集しているところなんだけど、何かいい名前ないか?」

「名前を募集するん?へぇ~なんかすっごいおもろい考えやなぁ!せやけど・・・ん~・・・せやな、ちょっと思い浮かばんなぁ」

「そうか・・・何か思い浮かんだら学院内に設置されている募集箱に入れてといてくれないか?」

「せやね。何か思いついたらそうさせてもらうわ」

 

 

 

そう言って、希はマンションに向かって歩いていった。

 

 

 

「蒼一!また明日なぁー!」

「ああ!また明日な!!」

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

「ただいまー!」

 

 

自分の部屋に戻って、制服を脱ぎ、着替えを始める。これから御夕飯を食べるのにこんな恰好をするわけにもいかんしなぁ。はよ、せんといかんなぁ。

 

服はあらかじめ用意しとったものを着る。ぱっ、と着替えて、ぱっ、と動けるようにしとるんよ。

 

 

「ん~!今日はほんまにええ一日やったなぁ~」

 

 

今日の疲れを取るように体をぐ~っと伸ばしながら今日あったことを振り返ってみた。ふふふ、蒼一が言っとった子たちにも会えたし、何より、蒼一と一緒に帰れたのがほんまに嬉しかったわぁ♪この前といい、今日といい、ウチに福の神さんが舞い降りてきたんやないかと思ったわ。ほんまにありがとさん♪

 

 

しかし、あん時はびっくりしたわ。境内の近くでやらしいことをしとっとるんやないかって、ほんまに思うたわ。けど、蒼一を見てそうでないってことはわかったんやけどな、お仕置きのつもりであんなことをしてみたんよ。ふふふ、あんな顔する蒼一もおもろいなぁ。けど、あん時なんかこう、モヤモヤって感じがしたんよ。あれは何やったんやろうか?う~ん、わからんなぁ・・・

 

 

そういえば、さっきグループの名前を思いつかへんかって言っとったなぁ。なんかいい名前あるかなぁ・・・

 

 

 

「あっ!そうや!!」

 

 

 

そういえば、ええ名前があったような気がするわ。確か、ここの本棚に・・・・あった!

 

 

ギリシア神話・・・これや!

 

 

 

この前、占いのことを調べとった時に、目に留まったところがあったんよ。その項目は・・・・女神・・・・芸術・・・・あっ!これや!

 

 

 

『ムーサ』

文芸を司る9柱の女神たちのことを指す。音楽を意味するMusicの語源となったとされている。

 

 

 

うん、これや!これに間違いない、これが一番ぴったりやと思うわ。・・・けど、今日会ったあの子たちは3人しかおらんかったけど、これでええのかなぁ?

 

 

 

(パラ・・・)

 

 

 

ん?何かが床に落ちたような?

 

床に落ちとったのは、ウチがよく使っとるタロットカードやん。何で落ちとったんやろ?

 

 

そのカードを拾ってみるとそこに描かれていたのは・・・

 

 

 

()()()()()()()()!」

 

 

 

確か、その意味は・・・新たな展開、幸運、好転、そして・・・・

 

 

 

()()!」

 

 

 

そうか!カードがウチに告げとるんや、この名前を付けるようにって言っとるんや!カードのお告げは絶対やし、これにしよ!・・・けど、流石に『ムーサ』っていうのはどうかと思うなぁ・・・なんか、しっくりと来ないんよ。他の言い方は無いんかなぁ?

 

 

本の方を見直してみると、他の言い方に『ムサ』や複数形に『ムーサイ』ってあるわ。う~ん、なんか違うなぁ・・・あっ!他の言い方がまだあるやん!英語やフランス語ではこう言っとるんやな

 

 

『ミューズ』

 

 

ええやん!これはしっくりくるで!

あっ!そういえばこれ、文字を変えることができたと思うわ。え~っと・・・『ミュー』は『μ』で・・・『ズ』は『s』に変えれば・・・・

 

 

 

 

『μ’s』

 

 

 

うわ~めっちゃええやん!響きもええし、見た目もええ。最高の名前の完成や!!早速、蒼一に連絡を!・・・・いや、これは募集箱に入れとくかぁ。ウチ一人だけの意見で決めるわけにもあかんやろうし、他にもええ名前があるかもしれんからなぁ。・・・紙に書いとこ♪

 

 

 

 

小さな紙に『μ’s』って書いて、それを小さく折りたたんでと、よし!これを明日、募集箱に入れますか!できることなら、ウチの考えたこの名前が決まってほしいなぁ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。・・・っと、これでええかな?

せや!明日、弁天様にお願いしとこ。ええ結果になりますように、って。ふふふ、明日が待ち遠しいわ♪

 

 

 

 

そんな楽しい夜の時間を私、東條 希は過ごしたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ジ・・・・ザー・・・ザッ!〉

 

 

 

 

(次回へ続く)

 






私の計略にうまくはまってくれて何よりだよ、蒼一ィ!



希が『μ's』という名前を思いついた時ってこんな感じだったんじゃなかろうか?スピリチュアルパワー全開で考えたらこういう風になったんじゃないかなぁ?

う~む・・・・実際はどうなんだろうか・・・・

真の名付け親にその真意を聞いてみたいな。




今回の曲は

帰り道での御話と言うことで

anderlust/『帰り道』

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