第134話
RISER、復活―――――
その報道は日本中に飛びまわった。
数々の実績と異業を残してきた伝説のスクールアイドルが、1年ぶりにファンの前に登場したことに波紋が広がった。 現地で見た人はもちろん、ネット中継を見ていた人たちは、歓喜に沸いた。 初めて見る人もいれば、再び見ることができた人など、まちまちな想いを抱いているようだ。
そして、これから先も、彼らの活動を見続けることが出来るようになるという期待を胸に膨らませるのだった。
一方、会場を一歩先に出た2人の男女はと言うと――――
「―――おーい、もうひとつできたから持って行ってくれ!」
「ちょっと待ってね、もうちょっとだけ待ってて! うんしょっ、よいしょっと……♪」
――彼、蒼一の家に入り、そこで食事の準備をしている最中だった。 蒼一は厨房に、穂乃果はテーブルにてそれぞれの作業に取り掛かっていたのだ。 そうした中、何やら彼女は真剣に何かに取り組んでいる様子だった。
「本当に、何をやっているんだ?」
「……っしょっと、できたぁ! 見てみて蒼君! きれいにできちゃった♪」
「どれどれ……? おっ、これは……!」
「えへへ♪ 蒼君に見てもらうために、穂乃果がんばっちゃった! どう? すごいでしょ?」
「ほぉー……これはすごいなぁ……!」
「ことりちゃん直伝の技だよっ! これで穂乃果も一流メイドさんになれるね!」
彼女が行っていたのは、彼が作ったオムライスの上にケチャップで文字を書いていたのだ。 白と黄色の絶妙な半熟に蕩けた卵の上に、ゆっくりと慎重に書いた文字は、『I
彼女は渾身の自身作を彼に見せようとし、嬉しそうに首を斜めに傾げながら彼に感想を求めようとしていた。
「……んっ? これ、スペル間違ってるぞ?」
「えっ?! ど、どこどこ?」
「ほら、『Love』のところを『Rove』にしてるじゃんか……これじゃあ、意味が違っちゃうじゃんか……」
「……あっ!! ほ、ほんとだぁ!! 『ラブ』って言うからてっきりそう書くモノと思ってたよ……」
「ローマ字式って……一応、中学校でも、いや、小学校でもわかっている内容なんだけどなぁ……これには、ことり直伝も形無しだわ……」
「ふ、ふえぇぇぇぇぇん! そ、そんなぁ~!」
さすがにそれくらいは…、と、やや悩ましく額に手を添えてしまう。
「……ったく、そんじゃあ、もうひとつのヤツを一緒に作るか」
「――えっ?」
「いいだろ、別に。 穂乃果が一生懸命やろうとしているのを止めることなんて出来ないだろ?」
「そ、そうくぅ~ん……!」
「ほ~ら、目をうるうるさせないですぐにやるぞ。 せっかくの料理が冷えてしまう」
「うん♪ 今度は穂乃果の愛情をもぉ~~~~~っと籠めるように書いてみるからね!」
やれやれ、と呟くとともに溜息をつくのだが、不満げな様子は見せなかった。 と言うより、逆に嬉しそうに微笑んで穂乃果のことを見つめているようにも思えた。
「それじゃあ、いっくよぉ~!」
彼女は勢いのある声をあげて、ケチャップの容器を持って書き始める。 ゆっくりと、丁寧に、慎重になりながら少しずつ赤い線を繋いで文字にする一方、内側は心脈が大きな音を立てて揺れ動いていた。 彼が見ているからなのだろう、嬉しさから耳まで赤くし、ミスしないとする緊張からわずかに手が震えていた。
すると――――
「――大丈夫か? 手が震えているぞ?」
「あっ……そ、蒼君?!」
穂乃果の震える手に、彼は近寄ってそっと手を重ねた。 温かな感触を手に抱いた彼女は、目を大きく開いて彼を見上げた――彼女よりも数十センチも高く、その身体で彼女を包み込むように立っているため、自然と目線が上に向いてしまう。 すると、空を見上げるように見つめた先には、太陽よりも陽気で眩しい頬笑みが彼女の顔を照らした。 それを見た彼女の顔は、日焼けしたみたいに赤くなり、あわてて顔を元の位置に戻してしまう。
手の震えは収まったが、胸を叩く音だけは変わらず大きかった。
「それじゃあ、一緒にやるか―――」
「う、うん―――」
彼と重なり合っている、それだけで気持ちがいっぱいになってしまう。 思わず手に握っているこの容器を落としてしまいそう……辛うじて残っている理性と高ぶる感情との葛藤の狭間に立たされながらも彼と共にその手を動かし始めるのだった。
「“I”はちゃんと書けてるな。 次は――問題の文字だな。 最初は“L”だぞ?」
「うん。 だ、大丈夫だよ……! がんばってみる!」
グッ、と強く意気込むと彼と一緒に手を動かしだす。 ゆっくりと、丁寧に、慎重に腕を動かし続ける。
「よし……うまくできてる…。 次は…“o”、“v”、“e”。 焦らないでいいんだよ……」
焦るなと言っても、耳元近くで囁く彼の吐息に身体がおかしくなっちゃいそう! 彼女の心の中では、今すぐに彼に飛び付きたいと言う獰猛な感情が高ぶっている。 それに、密かに行おうとしていたことを一緒にやり、しかも誘導するかのような言い方をするので、誘っているようにも聞こえなくもない。 故に―――
「―――あぁ、よくできてるよ。 さすが、穂乃果だ♪」
「~~~~~~っ!!」
――身体の疼きが止まらないのだった。
そして、完成されたその料理を一緒に食べるのだが、彼の手から食べさせられるという御奉仕させられる側となる穂乃果の心境は、非常に複雑だったという……。
ただ別段、嬉しくないわけでなく、むしろ御褒美のような待遇だったわけで、終始ニヤけた表情から戻ることはなかったと言う……。
―
――
―――
――――
「う~ん、おいしかったぁ~♪」
「それはよかった」
食事を採り終えると、俺は後片付けを始め、穂乃果にはソファーで待つようにさせた。 そんなに手間をかけた料理でもなかったため、片付けも苦労しない。 それに、穂乃果が満足そうに笑っているのを見ていると、作った甲斐があったもんだと胸を張れる。
むしろ、それが見たいがためにこうして一緒にいるのだろうと思う。
なんでだろう、今は無性に穂乃果と一緒にいたい気分なんだ。 どんな形でも構わない、どう想われようが構わない。 ただ、穂乃果とこうしていられるだけで十分なのだと納得してしまう。
「~~~~~♪」
――鼻歌が聞こえる。
やんわりとしたハミングに乗せているのは、つい数時間前に歌っていたあの歌だ。 みんなが、俺のために歌ってくれたあの歌……時が過ぎようとも、あそこで聴いた歌は今も耳に残っている。 あの時、塞ぎ込んでいた俺の気持ちに合わさったような本当にいい歌だった……。
それのメロディを耳にしただけで、胸の辺りがあたたかくなるんだ……
蛇口から流れる水を止め、すべてを終わらせると、そのまま穂乃果の隣に腰を下ろした。
「いい、歌だな」
「うん。 みんなで作った曲だからね。 蒼君のために、一生懸命に考えて、想って作った曲。 穂乃果もね、大好きなの……」
こちらに振り向く穂乃果は、何とも言えないくらい満足しきった表情を見せていた。 嬉しそうに頬を上げているのを見ると、思わずこちらも口元を緩めてしまう。 とても充実して落ち付くこの感じが堪らなく心地良かった。
トクン、胸が小さく揺れ動く―――
自然に起きたことじゃなく、何か不思議な力によって為されたような感覚を抱く。 一回だけじゃなく、それから数回揺れた。 それに、揺れる度に胸の辺りが苦しくなり、また嬉しくて堪らないと言う気持ちになる。 まったく、不思議で仕方が無かったのだ。
これはすべて穂乃果から来ているのだろう、そう考えてしまうのは当然であった。
「なあ、穂乃果」
「なぁに、蒼君?」
呟くように小声をかけると、穂乃果はすぐに反応して呼び返す。 少し首を斜めに傾げながら、水晶のように透き通った瞳で俺のことをジッと見つめるのだ。
そんな穂乃果に向けて言葉を続けた。
「ありがとな……穂乃果が俺のことを信じ続けてくれていて……。 俺、とっても嬉しかったんだぜ。 誰も信じたくないと思っていた俺に、真っ直ぐな目で向き合ってくれた。 突き放そうとあしらっていたのにも関わらず、真剣に俺のことを受け入れようとしてくれていた。 それがとっても嬉しかったんだ……」
「蒼君……。 そんな、穂乃果は別に大したことをやったって思ってないよ。 ただ、蒼君を助けたい……そう思ったら自然と身体が動いちゃってて……だから、あまりすごいことじゃないんだよ」
「ううん、違うさ。 穂乃果のそうした行動が、俺を勇気づけてくれた。 穂乃果がああいうライブをしようって言ったんだろう? もし、穂乃果がいなかったらライブは行われなかっただろうし、今の俺もこうして穂乃果の前にいることはなかったかもしれない。 だから、穂乃果がそう言ってくれたことに感謝の気持ちが止まらないんだ。 ありがとう……俺のために頑張ってくれて……。 ありがとう、俺の彼女になってくれて………」
「そう、くん……!」
俺の言葉を聞いた穂乃果の表情が、熟れたリンゴのように真っ赤になりつつあった。 恥じらいつつも嬉しそうに歯に噛んでいるのを見ていると、こっちも嬉しい気持ちになってしまう。
多分、俺もまた、顔を真っ赤にさせているのだろう。 顔の辺りが無性に熱く感じるからだ。 恥ずかしいと言うより、ただ本当に嬉しい気持ちでいっぱいなのだ。 こんなにも強く想い続けてくれる人が、すぐ隣にいてくれていることに、俺は強い幸せを感じるのだった。
ドクン……ドクン………!
胸の鼓動が熱くなってくる。 感情が俺を逸らせ始めている。 目の前にはこんなにかわいらしい俺の彼女が座っていて、しかも2人しかおらず、時間にも余裕がある……。 これから考えても…、いや、考える必要なんて無い。 目の前にいる穂乃果に、この気持ちを伝えたかったのだから……。
「あっ―――――」
俺は右の手を差し伸べ、穂乃果の左の頬をなぞるように触れた。 鏡のように滑らかで、やんわりとした温かみを含んだ頬が、自然と俺の体温と同調し始める。
穂乃果の熱と一緒になろうとしている――感覚的にそう感じだすと、さらに心が急かしだす。
彼女を触れたからなのだろうか、その唇から甘い吐息が漏れ出す。 長く頬を触れ続けていると、パッチリ開いていた瞳も段々と萎んでいくようで、薄ら開いた状態で見つめている。 そこから見えるまばゆく煌めかせた瞳が、とてもやさしく、また彼女の魅力を跳ね上がらせるのだった。
そんな彼女に、気持ちが惹き込まれそうになる――――
「穂乃果――――」
彼女に触れながら少しずつ身体を寄せていく。 そうした行為をしていく中で、無意識に彼女の名前を呼んでいた。
すると、彼女はちょっぴりとだけ微笑み出すと、温か味のある表情に乗せて――――
「――うん。 蒼君、キて―――」
――俺にしか分からない言葉で俺を誘うのだった。
胸に迫る苦しみが一層高まる。
もう、抑えることなどできなかったのだ……。
俺は、彼女の言葉通りに身体を寄せ始める。 また、彼女に唯一触れているその手で、彼女の頬を引き寄せる。 かわいく整えられた表情が、まるでぬいぐるみのように愛らしい。 だが、その表現すらも劣ってしまいそうになるほど、穂乃果は愛らしかった。
いま、この目に映る穂乃果は、世界中にあるどんなかわいいモノよりも遥かに尊く、吸い込まれるほどかわいかったのだ。
互いの息で熱を感じられる。
鼻先が触れ合い始める。
顔と顔とが交差し合いだすと、そうした小さなことも敏感になる。 心を擽られるような気持ちにさせられるが、それがなんとも心地良かった。 頬が紅く染まり蕩け気味な表情を見せる穂乃果の唇に、俺の唇を―――
『んっ―――――!』
――そっと、押し当てた。
甘い味がする。
これまで、何度もこうして唇を重ね合わせてきた。 だが、どうしてか、このキスだけは違ったのだ。 今までに味わったことの無いような、甘味掛かった味が口の中で融けだす。 やさしくて穏やかな、そして心暖まるような気分になる。 冷たく、頑なだった俺の心に強く響くと、穂乃果の気持ちを初めて知ったような気になる。
『んっ――――ちゅう、ちゅるっ―――んちゅっ――――!』
舌も絡め出して、強く押し当て始める。 身体の中の酸素が一気に出て行ってしまいそうになるほどに。
初めてじゃない、初めてじゃないはずなのに……とても初々しい気持ちになるんだ。 それは穂乃果が変わったからじゃない、俺自身の気持ちが新たに変化したからなのだろう。 過去の自分と向き合うと決心したことから己を取り巻いていた殻を打ち破った。 ただ自分自身を乗り越えただけじゃない、同時に穂乃果たちを信じようとする想いが強まったのだ。 自分の中で押し止めていた感情を解き放ち、彼女たちの愛を全身で受け止めよう、そう思ったからだ。
「んはぁっ……! そ、そうくぅん……ハァ、ハァ……ちょっと激しすぎちゃったかな……?」
「はぁ、はぁ…いや、これくらいは平気だろ? 穂乃果だったら、もっと激しいのをするんだろう?」
「うふふ♪ 蒼君ってば、前よりもエッチな人になっているよ♪」
「かもな。 こんなにかわいい
「………!! うんっ! 蒼君がそう言うのなら、穂乃果だって……」
すると穂乃果は、自分の着ていたシャツのボタンを首元からひとつひとつ丁寧に開いていく。 すべて外れると、首からおへそのところまでの肌がくっきりと見える状態になり、またシャツに隠れていた淡いオレンジ色のブラが顔をのぞかせたのだ。
こうして穂乃果の下着を見るのは初めてかもしれない。 いつもは付けていることよりも、付けていなかった時の方が多かったりした。 それだからか、そんな穂乃果を見て気分が高揚し始めるのだ。
俺がまじまじとしなやかな身体に見惚れていると、穂乃果は両手を広げると、やさしい笑顔を見せながらこう言ったのだ――――
「穂乃果の、全部を、蒼君にあげるよ……だから、穂乃果にも蒼君の全部を頂戴……♡」
「~~~~~っ!!」
その時、俺の中にある何かが外れたような感覚を抱く。 スパッと割り切ったような、清々しいような気持ちになったのだ!
そしたら、俺の身体は動いていたのだ。
「穂乃果っ!!」
「んっ! そ、そうく――んんっ―――!!」
俺の胴は穂乃果の開いた腕の中にすっぽり収まりながらも、腰の辺りを両手で抱きしめた。 そのまま彼女の身体をグッと持ち上げて、顔と顔が重なりあえる位置にまで上げると、勢いのままに穂乃果の唇に貪り付いた。
『んちゅっ、ちゅぅ……んぁちゅぅ、んんんっ!!』
俺が穂乃果の口の中に舌を潜り込ませると、穂乃果はそれに応えるかのように俺の舌に絡み始めてきた。 勢いのある激しいキスをするため、お互いの吐息が絶えず出る。 それに、口の中では溜まりに溜まった唾液が舌を通して運ばれていき、彼女の口の中に入って行けば、逆に彼女の口からこっちに入ってくるのもある。 さらには、行き来している半ばで口から零れ出る液がお互いの身体に流れ落ちる。
俺たちは一心不乱に厭らしい音を口から漏らし、欲情する気持ちを高め合った。 自然と火照り出す身体。 穂乃果のまだ白み掛かっていた首元さえも火傷しそうなほどに赤くなっていた。 そんなことも気にもせず、欲望のために貪り続けるのだった。
「ハァハァ……しょ、しょうくぅんのキシュがしゅごいのぉ~……♡ も、もう、ほにょかは……もう………」
「これで終わりだと思わないでくれよ? まだまだこれからなんだから……」
唇を放すと、とろんと目が据わった表情をする穂乃果の呂律はすでにキテいた。 あまりにも激しすぎたからなのだろう、まだ穂乃果には耐えられないものだったらしく、身体から力が抜けているようにも感じられたのだ。
だが、これで終わるだなんて一言も言っていない。 むしろ、これからが本番とも呼べるモノなのだ。
俺は蕩けた穂乃果の顔から横にずれると、赤くなりだした首筋に顔を埋め出す。
「ちゅっ、ちゅぅ」
「ひゃっ! そ、蒼君っ!! だ、ダメだよ、そこは!!」
「ん、一体何がダメだっていうんだ?」
「そ、それは……そ、そこにキスしちゃったら痕が付いちゃうよぉ……」
「ふふっ♪ だったらいいじゃないか。 その痕が、穂乃果は俺のだってことを証明してくれる、だろ?」
「蒼君……! だ、だったら……もっと付けて♡ 穂乃果が蒼君のモノだってことが分かるようにいっぱいシテ♡」
「あぁ、いい子だ……♪ それと、穂乃果は俺のモノなんかじゃない、俺の彼女だ♪」
「~~~~ッ!! も、もう、蒼君ってばぁ……ひゃあっ!!」
穂乃果の唇から移り、首筋に熱いキスを焼き付ける。 ひとつキスを付ける度に、穂乃果の口から甘い嬌声が出てくる。 何とか抑えようと口を抑えようとするが、あまりにも敏感に反応するので洩れてしまう。
「もしかして、首筋がニガテだったりするのかな……?」
「う、うん……触られるとくすぐったくなっちゃうの。 そ、それに、蒼君のキスが気持ち良すぎるからつい……」
「つい、声が出ちゃうんだな……えっちな声が♪」
「も、もう、言わないでってば……あぁん♡」
彼女が言い終える前に、もう一度首筋に吸い付いた。 唇に吸い付く容量でキスをし続けたので、もう2つも虫刺されしたような紅い痕が付いた。 そして、今もう一つの痕を刻みつけた。
「これで3つ目だ。 誰が見ても分かりやすいところに付けたぞ」
「うぅ~……蒼君のイジ悪ぅ~……」
「何言ってんだよ、誘ってきたのは穂乃果の方じゃないか。 そんな小悪魔みたいなことをするのに、悪者扱いなんて、ちょっと傷付いちゃうなぁ……」
「だ、だってぇ……蒼君がそんなに激しくするなんて思ってなかったんだもん! もう、蒼君のエッチッ!!」
「ふぅ~ん……そう……。 なら―――」
「…………ッ!!?」
俺は熱くなったこの手を穂乃果のスカートの中に潜り込ませる。 手がスカートの内側に入った瞬間、ムワッとむせるような熱さを肌で感じ取った。 そして、そのまま手は進んで行くと、その根源たる部分に指先が触れたのだった。
ふにっ、とやわらかく、じんわりと湿った部分に――――
「ひゃんっ!! そ、そこは……!」
「おかしいなぁ、穂乃果……。 穂乃果の大事なところが、こーんなに濡れちゃってるじゃないか……」
「い、言わないで!!」
「ふふふ、穂乃果が一番エッチじゃないか……我慢しちゃって、かわいいぞ♪」
「も、も、もうっ!! ばかぁ……///」
顔をさらに真っ赤にさせると、ぷいっ、と拗ねるように顔を逸らしてしまう。 少し、やりすぎただろうか? 自分の行き過ぎた行為に反省の色を落とし、機嫌をとろうと穂乃果を抱き寄せた。 俺の胸に穂乃果の顔を埋めさせて身体を撫でるのだが、簡単にはよくならなそうだ。
むっすりと頬を膨らませながらもベッタリと俺の胸にくっつく様子は、少し微笑ましくも感じた。
「ごめんな、穂乃果。 少し、調子に乗っちゃって………」
やさしく髪を撫でながら俺は彼女に言葉をかける。 が、それでもむっすりした様子は変わらなかった。 だから、言い訳がましいかもだが、言葉を続けた。
「俺はな、穂乃果のことが大好きで仕方ないんだ。 だから、もっと穂乃果と触れ合いたいって身体が動いちゃうんだ。 でも、その気持ちが空回って、逆に穂乃果に迷惑をかけてしまった。 ごめんな、不器用なヤツで……」
自分でも、まだ制御しきれてないところがある。 そこは反省しなくちゃいけないところだ。
でも、穂乃果のことが大好きだって言う気持ちだけは抑えることはできないんだ。 嬉しくって、ただただ嬉しくって止まらなかったんだ。 そう考えてしまうと、段々目線が下に向いてしまうのだ。
そんな時だ―――
「…………!」
穂乃果の手が、俺の頬に触れ始めたのだ! その暖かな温もりが頬を伝ってくると、萎みかけていた気持ちが膨らみ出したのだった。
「蒼君」
ポツン、と小さな声が俺に臨んだ。
「穂乃果ね、別に怒ってるわけじゃないの……ただね、蒼君がそんなに穂乃果のことを求めるだなんて思っても見なかったから、どうしたらいいのか分からなかっただけなの。 だからね、勘違いしないで。 穂乃果は蒼君のことが嫌いになったわけじゃないし、むしろ、蒼君のことが大好きで堪らないの! 不器用なのは穂乃果の方……そんな穂乃果でも、いい?」
埋めていた顔を見上げさせて、子猫のように怯え気味な表情をしながら訴えてくる。 そんな顔をされては何も言えるわけもなく、その身体をもう一度抱きあげて、寂しげな唇にキスをする。 ソフトに、指先が触れる程度のキスをすると、ほら、やさしい表情に変わっていったのだ。
「当たり前だ。 俺は穂乃果が大好き――いや、愛してる。 この世界中の誰よりも俺が穂乃果を一番愛している、そう宣言できるくらいに!」
「うんっ! 穂乃果も蒼君のことを愛しているよ!!!」
穂乃果はそう言った瞬間、俺の首周りに腕を回して抱きついてきた。 高まる感情を抑えられなかったのだろう、穂乃果は俺から離れることがないようギュッと力を籠めるのだった。 その時に見せた嬉しそうな表情は、まるで太陽のように輝いているようだった。
「ねえ、蒼君……」
「どうした?」
「その……ね。 穂乃果の身体がさっきからじんじん熱くなってきてるの。 おねがい蒼君、穂乃果を―――」
「………っ!」
囁くように耳元で語りかけてきた言葉に、背筋が伸びた。 まさか、穂乃果の口からその言葉が出てくることになるとは……。 いや、すでに時間の問題だったかもしれない。 むしろ、よくここまでそうせずに来たと誇ってしまうくらいだ。
「穂乃果、いいのか? それをしたら、後には戻れないぞ……?」
「うん、わかってる……。 でも、蒼君にならいいよ……穂乃果の全部をアゲル……♡」
俺の忠告を聞いていながらも、何の躊躇も見せることなく受け入れようとする穂乃果。 頬を赤く高揚させているのを見ていると、穂乃果自身にも我慢の限界が来ているのだろう。 溜まりに溜まったモノを発散させなければならないと、艶めいた目線で訴えかけてくる。
そうした彼女の想いに、俺は――――
「―――あぁ、俺も俺のすべてを穂乃果に注ぎ込むよ」
俺は抱きつく穂乃果をそのまま抱きあげ、そのままこの部屋から出ていく。 俺たちは欲望に駆られるままに、俺のことを信じ愛してくれた穂乃果を、今までにないくらいに、愛し、抱きしめ、触れ合い、馴れ初めあった――――
そして、俺たちは―――――
「蒼君―――」
「ん、どうしたんだ穂乃果―――?」
「穂乃果は今、とっても幸せなの―――」
「あぁ、俺もだ。 夢にも思わなかった、まさか、穂乃果とこうなるなんて―――」
「うふふ、穂乃果は違うよ。 穂乃果はずっと、こうなるって信じてたもん―――♪」
「はははっ、ほんと、穂乃果は変わらないな―――」
「えへへ♪ 穂乃果は蒼君のことが大好きだから―――♪」
「あぁ、俺もだ。 愛してる―――」
「うん♪ 穂乃果も愛してるよ―――♡」
―――お互いを知った。
(次回へ続く)
ドウモ、うp主です。
さて、穂乃果との馴れ初め(意味深)が行われて一層の絆が生まれたであろう蒼一くんです。
ここまで書いてきて、またしても彼の成長を見ることになり個人的にも満足しているところがあります。というか、よくここまで来れたな、と驚いている。
そして、この章を境に、蒼一はとうとう完全な状態となります。もうぶれないし、過去に捕らわれることも無い。より頼もしい男となってくれることでしょう。
というわけで、次回。この章の最終話となります(多分…
頑張って幕引きしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします!!
そ・れ・と……
ちょっぴりお知らせ……。
この話のアンリミテッド版が明日あたりに投稿されるっぽい…?
内容は…
=蒼一と穂乃果の馴れ初め(マジで意味深)=
…となります。
お察しの通り、R18デス。ガチエロデス。お子様は見ちゃだめよ!!
という感じで、ここではありませんが、自分のページから飛んでその話を読んでみてください。ちなみに、今回の話よりも若干そっちの方が長いという…ね?
そんな危険でしかない話ですが、気になる方だけ、どうぞお楽しみに。
お子様は見ちゃだめよ!!(大事なことなので2度言いました。
というか、この作品を読んでいる方はお子様ではないはず……?
それも含めて、よろしくお願いいたします。
更新速度は早い方が助かりますか?
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ちょうどいい
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もっと早くっ!
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遅くても問題ない