蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第12話





己の固定概念にとらわれるな

 

 

 

<前回までのあらすじ>

 

海未から詩をもらった俺はすぐさま音楽室に走っていった。

 

だが、そこには誰もいなかった。

 

 

 

しょうが無く部屋の中をうろうろしていたら、例の1年生がやってきた!

 

近くにあった机の中に身をひそめていると、急に弾き語り始めた。

 

 

 

あぁ~いい曲じゃないか~♪

 

 

 

そう思いながら聴いていたのだが、一つの疑問が生じた。

 

 

 

「あの子・・・なぜ、悲しそうに弾き語っているんだ?」

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

(~♪~~~~♫~~~♪・・・・)

 

 

 

 

あの子の弾き語りが終わったようだ。

しかし、いい歌だったな・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(パチパチパチパチパチ・・・・)

 

 

 

 

 

そう思っていたら、拍手をしていた。

 

 

 

やべっ!体が勝手に動いてしまっている!!!

 

 

 

「ッ!!誰かいるの!!!」

 

 

 

うぐっ、気付かれたようだな・・・しゃあねぇ、腹を決めるか・・・

 

 

 

「すまない、盗み聴きするつもりはなかったんだけどな」

「あなた・・・!例の男子講師ね!!」

「たはは・・・話はもう広まっているんだな」

「当り前でしょ!この学院に男が2人も来るなんて話は朝から学校中の噂となっているのよ」

「なるほど・・・ってことは、学校にいる生徒たちの間では俺たちのことを認知してくれているってことか?」

「当然そうなるんじゃない?私にとってはどうでもいいことなんだけど」

「はは・・・どうでもいいときたか・・・」

 

 

 

結構強気な女の子だな、この子が例の女の子なのか・・・

ピアノができる、作曲ができる、作詞もできる・・・

想像していたのよりもそれ以上の性格の子なのかもしれないな・・・

 

 

 

 

「それで、私に何の用?」

「・・・お見通しってことか?」

「何の理由もなくここに来るっていうのは、ただのモノ好きか、私に用があるかの二択しかないと思っただけよ。違ったかしら?」

 

 

 

 

それに勘も鋭いときた。

 

 

 

 

 

 

「ああ、そうだ。用と言うのは、キミに頼みがあってな」

「頼みって言うのは?」

「作曲をお願いしたい」

「はぁ・・・あなたもですか・・・お断りします」

 

 

 

あなたもって・・・俺が来る前に穂乃果と話したのか。この様子を見ていると、また断られたようにも見えるが・・・・

 

 

 

「へぇ~それはどうして?」

「あなたたちがやろうとしているアイドル活動?それで使うような曲っていうのは、なんか軽いのよ。薄っぺらくって、ただ遊んでいるようにしか思えないのよ。それに私はああ言った曲はあまり聞かないのよ」

「軽くて薄っぺらい、そして遊んでいると来たか・・・・・・くくくっ、キミおもしろいな」

「はぁ!!何がおかしいのよ!!!」

「いやぁ~その歳でそう言えるっていうのは大したもんだよ。ということは、キミが聴いている曲って言うのは、クラシックとかジャズといったものかな?」

「そ、そうだけど・・・」

「確かにあれと比べたらポップスみたいのは軽いようにしか見えないだろうよ。けどな、それがいいんだ」

「えっ?」

「ポップス独特のあの軽さ、薄っぺらさ、本格的な音楽を追求しようとしている人からして見れば何の趣向も深みもない、馬鹿馬鹿しいものにしか聞こえないだろう。だが逆を返せば、それは人の心に入りやすく、感情を動かしやすいものだとも言える。例えるのなら、小説よりも漫画のようなもの方が分かりやすいだろう。曲が持つ思いや願いを言葉と曲を通じてストレートに感情に働きかけてくれるのがこうした曲なのさ。キミがよく聴くだろうクラシックはある程度の曲に対する理解が無ければ感動することは難しいだろう?」

「確かにそうだけど・・・だからなんだって言うのよ!!」

「クラシックはクラシックなりにいい部分が存在する。だが、それは今の人たち、特に子供たちに理解されるだろうか?」

「そ、それは聞いてみなければ判らないじゃない」

「俺が知っている範囲内では、判らないって言うヤツが多かった。理由は簡単、何を伝えたいのかが曲だけでは判らないってさ」

「はぁ!?何それ!!馬鹿にしているの!!!」

「馬鹿にしているわけじゃない、さっきも言ったようにこう言ったヤツっていうのは、曲に対する理解が足りなかったのさ。曲だけでどう楽しむのかが分からないだけ。それに比べて、ポップスは判りやすいと言っていたさ」

「どうしてそう言い切れるのよ」

「さっきも言ったように、大抵のポップスは曲と一緒に詩も添えられている。曲だけを聴いて感動する人もいるが多くはその詩によって感動する人が多い。言葉による力ってやつかな?人の言葉によって語られたものは曲よりも人の心に入りやすい。それに曲も詩も誰もがわかりやすいような形でできているから、なお一層、大衆に受け入れやすく人の心に入りやすい」

「私はクラシックでも自分の心に入ってくるわよ?」

「それは人それぞれさ。ちなみに聞いておくけど、キミがさっき弾いていた曲はクラシックでは無いよね?」

「!!!い、いや・・・それは・・・その・・・」

 

 

 

「いい曲だった」

 

 

 

「えっ?」

「初めて聴いた曲でここまで感動したものはなかった。キミの感情が十分に伝わったよ」

「~っ!!!べ、別にそういうのじゃないから!!!」

「ははは。キミはこの曲を作る時、真剣になって作ったんだろ?」

「・・・そ、そうだけど・・・」

「キミが今まで聴いていた曲は遊んでいるようなものばかりだっただろうけど、キミが作った曲はそうじゃない。キミのあらゆる思いがこもった素晴らしい曲だ。誰もが純粋に感動することができる、すばらしいポップスだった。そんな曲を作ったキミだからこそ作曲をしてもらいたいんだ。だめか?」

「・・・・・」

 

 

 

 

彼女は黙りこんでしまった。しかし、さっきとは打って変わって考えてくれている。話をしていてあの子の考えが変わってくれたのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その・・・詩はあるの?」

「やってくれるのか?」

「ま、まだよ!詩をただ見たいだけよ!」

「そうか。これがその詩だ・・・」

 

 

 

海未が書いた詩を彼女に手渡した。

彼女は手に取るとすぐにその内容を見た。その顔には真剣な表情が浮かんでいた。

 

 

 

 

「・・・・」

「どうだ?」

「・・・考えさせてもらうわ。この紙、貸してもらうけどいい?」

「構わない。じっくり見てやってくれ。作曲ができなくてもその詩の感想をまた今度聞かせてくれないか?」

「・・・・わかったわ」

 

 

 

 

よし、まずまずってとこかな?詩を渡すことができたが作曲してもらえるかはわからねぇな。まあ、そん時はそん時でなんとかしてみせるか。

 

 

 

 

そういえば、彼女は西木野って名字だったけど、名前はなんていうのだろうか?

 

 

 

「キミ名前はなんて言うんだ?俺は宗方 蒼一って言うんだ」

「宗方・・・・」

「?」

 

 

 

 

 

どうしたんだ、急に黙り込んで?それに俺の顔をじっと見て・・・どうしたっていうんだ?

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだ?」

「!!い、いえ、何でも無いわ!」

「そ、そうか・・・」

 

 

 

「私は()()西()()() ()()よ」

 

 

 

「西木野・・・真姫・・・ぐっ!!」

「どうしたの!!!」

 

 

 

 

彼女の名前を聞いてそれを口に出した時、また、背中が痛みだした!!!

ぐっ・・・なんだ、何だって言うんだ!!!!

 

 

 

 

 

うぐぅぅぅぅ・・・?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞こえる・・・?

 

 

 

 

 

 

何かが・・・・聞こえる・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――――!!!』

 

 

『―――――!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()の声?それと・・・()()の声?

俺は・・・・その子の名前を・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()は・・・確か・・・!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――蒼一!!!!」

「はっ?!」

「どうしたのよ!!急に苦しみ出して!!どこか怪我でもしているの?!」

「い、いや・・・別に。ただの頭痛さ・・・」

「そう、ならいいけど」

「ああ、わりぃな真姫」

「ちょ、ちょっと!気安く名前で呼ばないでよ!!」

「さっき、俺のことも名前で呼んでたからいいのかと思ったんだけど」

「あ、あれはあなたが返事をしてくれないから、つい・・・」

「蒼一でかまわない。あなたって言われるより、そう言ってもらう方が気が楽だし」

「そ、それなら仕方ないわね。私のことを名前で呼んでいいわよ、蒼一」

「おう、よろしくな真姫」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔蒼一は真姫と仲良くなった〕

 

 

 

 

 

うん、多分この表示は間違っていると思うぞ。直さないと真姫に怒られそうだぞ?

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

「それじゃあ、またな」

 

 

 

 

そういうと蒼一は、この部屋を出ていってしまった。

なんだったのよ、あの人は? 

 

 

はぁ・・・なんだか嵐が過ぎ去ったかのようだったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、蒼一から渡されたこの詩・・・

 

 

 

 

 

「悪くないじゃない」

 

 

 

 

 

これを書いたのは蒼一かしら?だとしたら、褒めてあげちゃうかも。

まあ、私ほどではないけど。

 

 

 

 

「・・・・・」

 

 

 

 

この詩を見た瞬間、私の中にメロディが思い浮かんできたわ。変ね・・・音楽をやることはもうとっくに諦めていたのに・・・でも、私の中にある感情が働きかけてくるの。曲を作ってって言ってくるの。

私がさっきの曲を作った時もそう。勉強をしていたら急にイメージが湧き出てきちゃって、曲と詩を両方一気に作ってしまったわ。どうしてなのかしら・・・・

それに・・・蒼一の名前を聞いた時、私の中で何かが見えたような気がするの。なぜかしら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いつかしら、いつ会ったんだろう?

今はただそれだけしか考えていないわ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「宗方・・・蒼一・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

一瞬何かが聞こえたような気がした。()()()の声だった。

 

 

 

「誰?誰なの!?」

 

 

 

そう言っても、何の返事もない。この部屋にいるのは私一人だけ。どういうことなのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ・・・」

 

 

 

はっきりと聞こえた。確かにあの声だ。()()()の声だ!でも、どうして今聞こえたの?声が聞こえるのは夢の中だけだったはずじゃ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ・・・」

 

 

 

自分の瞳から涙がこぼれでているのを今気がついた。

 

 

 

 

「なんで・・・なんでなの・・・?どうして涙が止まらないの・・・?」

 

 

 

 

 

しばらくの間、私は涙を流し続けた。

 

 

 

 

 

(次回へ続く)

 

 

 






伏線をじわじわと張っていくスタイルのうp主です。


ちゃんと真姫ちゃんが登場できたということで、大満足なご様子なウチの真姫ちゃん。くっ・・・ドヤ顔がまぶしい・・・!



今回は結構語った気がするわ・・・。音楽についてここまで語ったのは久しぶりかもしれない。一応、うp主は様々なジャンルの音楽に手を付けているので、それなりの理解を持っています。うp主自身も前は、クラシックやジャズの曲のみの良さっていうのは解らずにいました。ですが、ドラマ、アニメ、ゲームBGMなど、こうしたものを通して曲の素晴らしさというものに気付くことができました。今では、何か作業を行っていく上で、こうしたBGMというのは欠かせなくなっています。いやぁ~、音楽って素晴らしいですねぇ~



今回の曲は

そんなうp主がかなり気に入っているBGMをどうぞ。

TVアニメ『MASTERキートン』より

蓜島邦明/『Railtown』

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