蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第126話






私が出来る小さなこと

 

 

 

 作業が行われてからおよそ四半日が経とうとした時のことだった―――――

 

 

 

~~~♪

 

 

 

 夕日の茜色に照らされる店内に、夜の訪れを予感させるようなピアノの調べが包んでいた。 やわらかなタッチが1つひとつの音を刻み、まるで語りかけているかのような音色に彼女たちはそっと眼を閉じて聴いていた。

 

 耳に入ってくる音色と、共に運ばれてくる唄――――それを歌い上げるのは、伴奏者である真姫だ。

 

 限られた時間の中、ああでもないこうでもないと何度も書き直した1つの詩。 わずか300文字しかない彼への手紙――――それが1つの曲となって、今、旋律と共に奏でられた。

 

 

 曲を聴く彼女たちの眼から、小さな(しずく)涙雨(なみだあめ)となって零れ落ちては、胸を焦がしていた。 みんなの想いが1つになったこの曲を伝えよう―――そう心の中に打ち付けるのだった。

 

 

 そして―――――

 

 

 

♪~~~………。

 

 

 最後の一音が中空に散った。

 

 終奏を弾き終えると、わずかな静寂が生まれた。 最後の最後にだけ訪れるこの静寂こそ、彼女たちにとって大事な瞬間だった。

 

 

 やりきった――――!

 

 

 そう言わんがばかりの静寂なる声が彼女たちの間で交わされると、ようやく彼女たちは言葉を発するのだった。

 

 

 

 

「……で……できた……できたわよ、みんな!」

 

『……うん……!』

 

 

 伴奏した真姫は誰よりも先に声を大にして発すると、それに呼応するように彼女たちは一斉に相槌を打った。 とても誇らしい表情を見せるものの、目を赤くさせて涙で頬を濡らしているメンバーも少なからずいた。

 

 

 

「うん……これで完成なんだね……?」

「そうだよ、穂乃果ちゃん……! やっと……やっと、歌が出来上がったんだよ……!」

「やった……やったよ……やったよ、みんなぁ!!!」

 

 

 感極まった穂乃果は、思わずことりたちに向かって抱きつき始めたのだ。 涙で濡らし、感動で震える声で、この高まる気持ちをこのように体現させて共有しようとしたのだ。

 すると、そんな彼女に(なら)ってなのか、みんな揃って抱きしめ合いあったのだ。 皆この感動に逆らうことが出来なかったのだ。 気持ちと共に身体も反応させてしまった……それほどまでに、彼女たちが真剣に取り組んでいたと言うことが見てとれるのだった。

 

 

 

 

「いい曲に仕上がったじゃねェか……今までの中で最高だぜ……!」

「うんうん、おじさんも思わず心が揺れてしまったよ……おっと、失敬。 また、雨が降って来たようだ……」

 

 

 出来上がった曲をすぐそばで聴いていた明弘と謙治もまた、彼女たちが作り上げたモノに対して、高い評価を与えた。 と同時に、これなら大丈夫だろうと、彼の相方である明弘がそう思うのだった。

 

 

 

「あとは、それを明日の本番で発表するんだぞ。 覚悟はできてるよな?」

 

 

 ここが終点ではない、そのことを再度確認するように明弘は声をかける。 だが、その心配は無用のようだ。 彼女たちは零れる涙を拭い、力を込めてその場に立ち彼を見た。

 その目には悲しみに暮れる様子は見られない。 ただ、ひとりの惚れた男に対する気持ちのみが満ち溢れていた。

 

 無言で佇むも、決意ある姿に彼もまた何も言わず小さく頷いた。 ただ、それだけで十分だったのだ。

 

 

 

 bbb――――

 

 

 

「ん、洋子からか―――」

 

 

 胸ポケットが震えているのに気が付くと、スマホを取り出して画面を見た。 電話かと思いきや何度も指でタッチやスクロールさせたりしているところを見ると違うようだ。 手を止めて画面をジッと見ている―――それが気になりだしたのか、穂乃果が尋ね出す。

 

 

 

「ねえねえ、洋子ちゃんからの連絡?」

「ああ、どうやら開催時刻が決まったらしい」

「ホント?! いついつ! いつやるの!?」

「待てって、ちょいと落ち着けや……っと、なになに――――うん、明日の夕方17時くらいには行うと言うことだ」

「明日の17時! ちょうど24時間後ですか……!」

 

 

 明弘からの言葉に反応した海未は、店の掛け時計に目を向かわせて言うのだった。 この時計もちょうど17時に針が刺さり、その時刻を伝えるかのように内蔵されたベルが重い音を打ち鳴らした。 ボーン、と打ち鳴る度に彼女たちに緊張が走る。 それは終わりを告げる始まりの音か、それとも、はじまりを告げる始まりの音なのか……

 

 いずれにせよ、すべてが決まるのは明日のこの時刻――――気が引き締まらないわけがなかった。

 

 

 

「おっと、A-RISEの他にもたくさんの出演者が決まったそうだぜ! どれどれ……うおっ!?」

「どうしたの弘君?!」

「す、すげぇ……! ここ関東ブロックだけで12組だってよ……!」

「関東ブロックだけって、まさか……!」

「あぁ……他のブロックからも中継を使ってでも参加したいって名乗りを上げているグループがいるんだとよ! コイツァ、パーティーが終わらねぇぞ!!」

 

 

 本当なのだろうか?! 耳を疑うような情報に彼女たちは身を乗り出して、明弘のスマホを覗き込んだ。 だが、それは紛れもない出演者たちの名前が並べられてあった。 しかも、ランキング上位に位置するグループばかりがだ。

 

 

「す、すごいわ……まるで、日本全国がRISERのことを待ってるみたいだわ……!」

「ふ、福岡のあのグループや秋田のあのグループまでも参加するだなんて……はわぁー!! ど、どうしよう! あまりにも場違いな気がしてならないよぉー!!」

 

 

 それに、にこと花陽が大声で驚くほどの出演者ばかりであったので相当の規模になっていることが予見された。

 

 

「すごい……」

「穂乃果?」

「すごい……すごいよ……! これだけの人が蒼君たちのことを待ってくれているんだね……! すごい……本当にすごいや……!」

 

 

 目を星のように輝かせて覗きこむ穂乃果。 身体をウズウズさせて、今にも飛び上がりそうにないかと海未が心配そうに見るほどだった。

 

 

「あー……正直、俺もこんなにくるなんざ思っちゃいなかったなぁ。 けど、こうも俺たちのことを思ってくれてると考えるとさ、ホントにありがてぇもんさ……」

 

 

 しみじみと嬉しい気持ちを思わず吐露させてしまう明弘。 RISERの一角であり、また時が経った今でもこうして待ち望んでいるのだと言うことに触れたからなのだろう。 頬線を緩ませ、実に穏やかな表情で眺めているのだった。

 

 すると、彼が思いに浸っている中、迷うことなくその背中に向かって抱きつきだす人物がいた―――――凛である。

 

 

「おっ…と、って凛?!」

「えへへ♪ 弘くんがこう言ってるんだから、蒼くんが見たらもっと喜ぶよね! だったら、凛たちももっと頑張らないといけないよね!」

「凛……そういうことだな。 だが、それを左右させるのはお前たちなんだってのを忘れないでくれよ?」

「当然だにゃ♪ 凛たちの歌で蒼くんを元気にさせるにゃ♪」

 

 

 そう屈託の無い笑みを浮かばせて彼に応えるのだった。

 彼女から見て、彼が少し淋しそうに見えたのだろう、元気を与えようとして抱きついてみたのだ。 案の定、明弘の表情に明るさがとり戻ってきていた。 凛がしてくれたからなのか、そもそも女性好きだからなのか定かではないが、嬉しそうにしているのは確かだった。

 

 その様子を他のメンバーたちは、蒼一にしてあげようと思い、一方で謙治が嬉しそうにニヤつくのだった。

 

 

 

「それはそうとして……このことをどうやって蒼一に伝える? 今の調子じゃ、スマホとか一切見ていないだろうし、直接伝えないとわからねぇぞ?」

「それって、蒼君の家に行かなくちゃだよね? 誰が行くの?」

「それはもう……ね……?」

「ん?」

 

 

 何かを含ませるように言葉を溜めることりは、チラリと穂乃果以外のメンバーに目をやった。 すると、海未たち以下のメンバーは揃って小さく頷くのだが、穂乃果だけは首を傾げて疑問符を浮かべるのだった。 何をしているのかな? と穂乃果が思っていると、にこが穂乃果の前に立って――――

 

 

 

「蒼一のところに行くのは、アンタよ、穂乃果」

「え……? 穂乃果が……?……えぇぇぇ?!!」

 

 

 唐突ににこから指名されたためオーバーリアクションで反応してしまう。 穂乃果自身、自分が行くことになるだろうとは考えていなかったようなので、かなり反応に困っている状態だ。

 

 

「ど、どうして、穂乃果なの!? ほら、真姫ちゃんとかことりちゃんとかがいいんじゃないかなぁ……?」

「何言ってるのよ、穂乃果は言い出しっぺなんだからしっかりして欲しいのよ」

「それに、穂乃果ちゃんならきっとできるってことりは信じてるよ!」

「真姫ちゃん……! ことりちゃん……!」

 

 

 何を戸惑っているのか、穂乃果は他のメンバーにその役割を開け渡そうとするのだが、そのメンバーたちがこぞって穂乃果に任せようとしていた。 無論、一番行きたがりそうなことりたちもだ。

 そんな彼女たちからの願いを聞きいた穂乃果は、少し考え込む。 自分が行って何が出来るのだろうか? 彼にどんなことをしてあげられるだろうか? と考えるばかり。 そうした中で、彼女は私にしかできないことを過去の思いの中から引き出した。

 

―――そうだ、穂乃果には穂乃果にしかできないことがあったよ。 それを今、蒼君のために……!

 

 

 健気な少女は止めていた気持ちを押し進め、声を上げる。

 

 

「うん、いまの穂乃果に何が出来るかわからないけど、このいっぱいの気持ちを伝えるようにしてくるね!」

 

 

 胸元に手を添えた彼女は声を大にして公言した。 迷いの無い、彼女らしい真っ直ぐな瞳を見せられた彼女たちは揃って安心した表情を見せる。 穂乃果なら大丈夫だろう、という信頼の籠った感情に彼女を任せたのだった。

 

 

 

「それじゃあ、頼んだぞ」

「うん、任せて――――!」

 

 

 キリッとした自信に満ちた表情を見せる穂乃果は、それからすぐ後に店を飛び出していくのだった。 向かう先は当然彼の家。 いつも見慣れた道を駆け足で進んで行こうと急ぐのだった。

 息が切れようが、汗が流れ服を濡らそうが関係ない。 彼女は絶対に足を止めることなく走り続けて行くのだった。

 

 

 夕日のわずかな日差しが彼女を後押しするように光輝かせていた。

 

 

 

 

 

― 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ………着いた……!」

 

 

 息切れを起こしながらも、彼女は何とか辿り着くことが出来た。 夕日に佇むその住まいがいつもよりも暗く見えてしまうのは、気のせいだろうか?

 いや、気のせいではないだろう。 現に、蒼一はこの中で1人、塞ぎ込んでいるはず。 いつもならこの時間帯に点いているはずの街灯や室内灯すらも、今はだんまりだ。 この暗さが彼の心境を表しているのだとしたら――――彼女は気を引き締めた。

 

 

「よし、行こう……!」

 

 

 息を整えた彼女は彼の敷地内に入ると、すぐに玄関の扉に手を掛けた。 だが――――

 

 

 

「……ッ! やっぱり、開かないや……」

 

 

 グッと力を込めて引っ張ってもビクともせず、踏ん張る彼女をあしらうように扉は微動だにしなかった。

 

 

「こっちがだめなら……!」

 

 

 そう言うと、彼女は裏手に周りだし、庭先の窓に手を掛ける。 そこをスライドさせてみるがここもダメだ。

 諦めない彼女は、家の周りにある小さな塀によじ登り、そこから一階の屋根に飛び乗った。 決してその場でやり始めたばかりの動きではない、以前にも、彼女はこうして彼の家の中に入ることをしていた。 その経験が今こうして役に立つとは思いもよらなかったはず。

 

 よじ登って彼の部屋の窓に手を掛けると、人差し指だけでもするする動いてしまうくらい簡単に開くのだった。

 

―――やった……!

 

 彼女の中で小さなガッツポーズが決められると、靴を脱いではそれを持ち部屋の中に入った。

 

 

「……蒼君……いないや……」

 

 

 中に入ったものの、肝心の彼の姿がそこになかった。 だが、部屋の様子にいささか顔をしかめてしまう。

 部屋に物が散乱していることが彼女の目に留まる。 いつも整理整頓されていたのに、どうしてこうなったのだろうか? 今の彼の心情を物語っているかのように思えてしまう。

 

 彼女は辛うじて見つけた足の踏み場を進んで、この部屋から出た。

 二階廊下に出ても真っ暗。 陰る夕日のわずかな日差しが入る程度の光しか得られず、彼女は凝視しながら進むほかなかった。 壁を伝って見つけた階段を一歩一歩慎重に下り、玄関前に出る。 ここで手にしていた靴を置くと、そのままリビングの方に向かう。

 キィ……、と軋む音を立てながら扉を開くも、薄暗い部屋には人の気配は感じられなかった。 というより、人がいたと言う痕跡がまったくと言っていいほどに感じられなかった。 二階の部屋と比べて綺麗に整えられているどころか、昨日、彼女たちがここにいた時と全く変わってなかったからだ。

 

 この部屋で一際異彩を放っているあのクマのぬいぐるみでさえも、ソファーに置かれたままだった。

 

 

 ぴちゃ…ぴちゃ……、と台所の蛇口から水滴が、涙を垂らすように音を立てて落ちるのだった。

 

 

 

「ここにもいない……ということは、もしかして……」

 

 

 彼女の脳裏に過ったのは、彼を最後に見た3階の部屋。 彼がいそうな場所は、外出する以外、そこをおいて他にはないだろうと察したのだ。 実際、彼が外出した形跡は見当たらない。 だとしたら、なおさらのことだと彼女はそう判断した。

 

 

 彼女はすぐさま行動し、一階からの階段をゆっくりと昇り始める。 時間も時間な訳で、屋内に差し込んでくる明りはもうわずかでしかなかったため足元がおぼつかなかったのだ。 ならば、明りを付ければいいと思うのだが、面倒だ、という理由で一蹴りされる。 と言うより、そこまで頭が回らなかったというのが正解だろう。

 

 彼女の頭には彼のことでいっぱいだったからだ――――

 

 

 

 二階に上がり、その廊下の奥に閉ざされた扉を開くと、同じく彼女を臨む階段にゆっくりと足を踏み出す。 ギシギシと木製独特の軋む音が不気味さを助長させるのだが、臆することなく一歩、また一歩とその歩みを止めることはなかった。

 

 

 カチャ、と昇りきった先の扉に手を掛けると、昨日と同じようにまた扉が開く。

 恐る恐る中に入ってみると、まっくらな空間が彼女を待ち受けた。 目を凝らしてみても窓から入るわずかな光が頼りで、その他は宙に舞うホコリが彼女を邪魔するだけだった。

 

 

「そうくぅーん……どこにいるのぉー……?」

 

 

 抜き足指し足と、物音を忍ばせながら小声を上げるも返事は聞こえてこなかった。 仕方なく、いま目に入る小さな光に向かって足を運ぶほかなかった。

 

 光が差し込む場所に立ち止まると、ハッとなって見上げる。 目の前にあるもの、それは、昨日開いたあのタンスだった。中にはあのボロボロになった衣装が入っていたが、今は彼女の家に置いてある。 そんな彼女にとって印象的であるものをすぐに忘れてしまうほど、彼女は愚かではなかった。

 

 

 

 そんな時だった――――

 

 

 

 

 

「―――………こんなところで何してる……?」

「!!」

 

 

 急にかけられる声にビクつくも、いつも聴き慣れていたその声に、彼女は安心感を抱いたのだ。 やや驚きの表情で振り返ると、暗闇に紛れながらも確かにそこにいる彼の存在を把握したのだ。

 

 

「そう……くん……!」

 

 

 彼を見つけた彼女は、今にも飛び掛かって抱きしめたそうにしていた。 だが―――――

 

 

 

「なんでお前がここにいるんだ……早く、ここから出て行くんだ……」

「………ッ!!」

 

 

 彼のあまりにも冷たい態度に、身体を制止させざるを得なかったのだ。

 

――いつもの蒼君じゃない……こんなに冷たい態度を見せるのは初めてだよ……

 

 彼女をあしらおうとする冷淡な言葉に思考が氷付きそうになる。 いつもの彼ならばそんなことを言うはずもない、必死になってそれを否定しようとし始める。 それは一種の逃避行為だ。 彼女が抱く理想の像が一致しなかったことによる反発、それを無意識のうちに行っているのだ。

 だが、彼女はむしろ後者の方を否定しようと努める。 彼の置かれている心境について理解しているからだ。 故に、穂乃果は彼のために頑張ろうと必死になろうとしていた。

 

 

 

「ううん、行かないよ……穂乃果は、蒼君と話をするためにここに来たんだから……!」

 

 

 気持ちを固く立たせた穂乃果は、彼に向かって堂々とする。 意志の強さが彼女をそうさせているのだった。

 

 

「お前と話すことなんて何もない……帰れ、今すぐに……」

「帰らないよ! 絶対に!!」

「帰れと言うのがわからないのか……このバカが……」

「うぅ~……な、何て言われようが、穂乃果はここから一歩も退かないからね!!」

 

 

 次第に言葉が強くなっていく彼に対して、彼女は引くこともしない。 悠然と立ち向かおうと、自分に言い聞かせながら彼の前にいるのだった。

 

 

 そんな時だ―――――

 

 

 

「そうか……それなら………」

 

 

 呟くような声を細々と発すると、彼は光のあたる場所に進んできた。

 

 

 

「………ッ!!!」

 

 

 ようやく彼の顔を見れると思った彼女は息を呑んで待っていると、彼女の眼に映ったのは厳格な態度をとる彼の姿だった。やつれた頬に、窪むほどに黒い目の隈、鋭く斬り捌いてしまいそうな目付きが彼女の余裕を殺した。 その様子に、何の声も出せなかった。 それだけでなく、身体を下から震わせて動けないでいるのだった。

 

――こ、怖い……! わ、私……どうしたらいいの……?

 

 震え上がる彼女は、ただ待つのみしか選択肢を与えられなかった。

 

 

 そんな彼女の心境に心を留めず、彼はその肩をギュッと掴み出す。 しかも、指がわずかに彼女の肌に喰い込むほど力を込めていたのだ。

 

――痛っ……!

 

 当然、痛みは走り、彼女の顔をゆがめた。

 

 

「さっさとどっかに行け……俺の気が変わらんうちに早く、な……」

 

 

 彼はさらに目を細めて強く言う。 そんな彼の姿に穂乃果は怯え始める。

 

――いつもの蒼君じゃない……蒼君はこんなことはしないはず……。 でも、肩に掛かっているこの痛みは現実なんだ。 多分だけど、蒼君は本気で穂乃果のことを……!

 

 募る焦燥感が彼女を襲う。 足の震えが止まらなく、竦んでしまいそうだ。 普段ならその足で素早く逃げてしまいそうになるのだが、今の穂乃果は違った。

 彼女は震える足を真っ直ぐに伸ばすと、彼が掴む手を逆に掴み返して言うのだ。

 

 

 

「……ううん、行かないよ。 穂乃果は、蒼君のために来たんだから! 何を言われたって、何をされたって、穂乃果はどこにもいかないんだからね!!」

 

 

 グッと、決意に満ち満ちた言葉で彼女は彼に言い放った。 とても真っ直ぐで、真剣な言葉――それが彼女の取り柄でもあり、彼が彼女を愛した理由でもあった。

 

 

「―――……そうか、お前がそう言うのなら仕方ないな……」

「……じ、じゃあ……!」

「……その言葉通りのことをさせてもらう……」

「………えっ……?」

 

 

 しかし、そんな言葉でさえも彼には届かなかったみたいだ――――

 

 彼は彼女を掴む手でその身体を突き飛ばした。 一瞬、力を弱めていた彼女は、彼の手を放してしまい、そのままバランスを崩して背中から倒れてしまった。 どんっ、と部屋を揺らしてしまうほど勢いよく倒れた穂乃果は、咄嗟の反応で受け身をとって尻もちを突く程度に痛みを抑えた。

 

 いったい何が起こったのか理解できなかった穂乃果に、彼が襲いかかった――――!

 

 

「………ッ?! そ、そう……くん……?」

 

 

 無防備に倒れ込んだ彼女に覆い被さるように、彼は四つん這いとなっていた。 彼女の腰辺りに両ひざを立て、両肩のちょうど上に両手を押し当てて彼女が立ち上がれないようにしたのだ。 鳥籠の中に入れられたみたいに、彼女は囚われてしまったのだ。

 

 

「これでお前は動けない……どう足掻こうと俺からは逃れられない……助けだって来やしない……。 俺とお前と2人だけだ……その身体を蝕ませてやるよ………」

「~~~~ッ!!」

 

 

 しっとりと濡らしていくような言葉を掛けられた穂乃果は、思わず顔を赤らめ、ゾクゾクッと身震いしだした。 不幸にもそれは、彼女が望んでいた状況であったからだ。 愛し合っているもの同士、いつかは、こんな感じで襲われることを密かに望んでいた。 自らの身体を彼に預け、隅々まで弄んで欲しいとさえ、夜な夜な妄想に(ふけ)ることもしばしばあったのだ。

 

 それが今、現実のモノとなろうとしていた。 彼女にとっては千載一遇の好機とも呼べる状況に間違いなかった。 今、この身を捧げてしまえば、理想が現実のモノとなる―――悪魔的な誘惑が彼女を手招きするのだった。

 

 

 心臓の鼓動が逸りだし、熱い吐息を漏らすほどに呼吸が乱れ始め出す。 身体中に刺激と言う快楽が走り始めると、興奮が止まらなくなっていたのだ。 現に、身体が火照り始め、着ている服も汗で透けてきた。 いつでも堕ちる準備は整っていた―――――

 

 

 

 

 けれど―――――

 

 

 

――………だめっ!! だめダメッ!!! こんなことをしちゃダメなんだから!! 穂乃果はそうするためにここに来たんじゃないもん! 蒼君を助けるために来たんだから! なのに、蒼君をもっとダメにさせるようなことをしちゃいけないよ!!

 

 心臓を鷲掴みにして抑えるように、穂乃果は自らの欲望を抑えたのだ。

 

――穂乃果がしなくちゃいけないこと……それを何が何でもやってみせなくちゃ!

 

 曲がりくねっていた決意を真っ直ぐに整わせ、本来の目的を思い起こさせた!

 

 

 

「……蒼君。 穂乃果ね、蒼君のことを知ったよ。 蒼君が過去にどんなことをしてて、どんなにすごいことをしていたのか……それに、とっても悲しい出来事もね……」

「…………。」

「だからね、もう一度だけ言わせてほしいの――――ごめんなさい……蒼君のことを裏切って、ごめんなさい……」

「…………………。」

 

 

 仰向けになった彼女は、自責の念を抱いて彼を見上げる。 彼女が彼を裏切ってしまったことは、まだ遠い話ではなかった。 その時も、彼女はこうして彼に申し訳ない気持ちで謝った。 その時の彼は―――彼女をやさしく抱き寄せて、その罪を赦した。 そんな記憶もまた、真新しかった。

 

 そしていま、彼女はもう一度彼に謝った。

 ただ彼を裏切ったことだけではなく、彼の気持ちそのものを裏切ってしまったことに謝ったのだ。

 

 そんな彼女の気持ちに対し、彼は――――

 

 

 

「……その言葉の、何を信じればいいって言うんだ……? そうやってみんな、本当のことを言いやしない……上辺っ面な顔をして、人を欺いて、傷付ける……! 誰も、誰も俺のことなんざ大事に思っちゃくれないんだ!!!」

 

 

 歯を食いしばり、顔全体を強張らせながら、彼は悲痛な叫びを上げる。 彼の突き刺さった傷はあまりにも深く、抉りだされたモノは想像を絶するほど悲惨だ。 悲愴をも越えてしまいそうな悲しみが、彼女の心に触れるのだった。

 

 

「信じて……蒼君……。 穂乃果はバカだから、他にどんな方法で伝えたら信じてくれるのかって、わからないの。 それでもね、この気持ちだけは嘘じゃないよ。 蒼君のことが大好きで、愛してるから―――だから、嘘をつくなんてできっこないよ」

「信じてる…好きだ……愛してる………そう言って来たヤツは山ほどいた。 そして、そのどれもが俺のことを欺いた……お前もその1人だろう……」

「………ッ!!」

 

 

 彼のその言葉に、一瞬、彼女は言葉を失いかける。 彼が彼女を否定しようとしたからだ。 さすがの穂乃果もその言葉にかなり堪え、心が折れかかりそうになった。

 

 

 けれど、それでも彼女は出そうになる涙を堪えながら、声を上げた。

 

 

「そうだよ……穂乃果は蒼君のことを裏切ったよ。 それでどれだけ蒼君のことを傷つけたか知ってるよ……。 どれだけ謝っても赦してもらえるなんて思ってないよ。 でもね、蒼君。 蒼君があの時、そんな穂乃果のことを赦してくれた時、とっても嬉しかったんだよ。 こんな私でも、もう一度、蒼君のことを好きでいられるチャンスを与えてくれた。 だから、穂乃果は蒼君のことを愛してるし、愛し続けたいの……!

 

 もし、それでも、蒼君のその気持ちに収まりが付かないなら……いいよ。 穂乃果の身体を……めちゃめちゃにして……! 穂乃果の身体を蒼君に捧げます……だから、蒼君の気が済むまで……好きにしちゃって……」

 

 

 

 その刹那、彼女に向けられた手は止まった。 彼自身もそんな言葉が出てくるとは思っても見なかったのだろう、眼を見開いたまま制止してしまう。 彼が止まってしまった様子は彼女の眼にもよく映っていたが、驚く様子は見られず、ただジッと彼のことを見つめ続けていた。

 

 そんな時だ、彼に変化が起こったのは―――殺風景な表情に綻びが生じ始めると、熱いモノが零れ落ちた。

 

 

 

「………うぅ、っくぅ……おれは……俺は………!」

 

 

 吐き出すように嗚咽を漏らすと、苦しそうに頭を抱え出す。 あまりにも痛いのか、地を這いつくばるような呻き声を漏らした。

 

 すると、穂乃果は彼の抱える頭に手を伸ばし、胸の中へ引き寄せた。 穂乃果の胸の中に顔を埋められた彼は、咄嗟に起こったその出来事に驚いた。 何故、彼女がこんなことをするのか―――彼には疑問しか残らなかった。

 

 けれど、彼女はそんなことに気を留めず、むしろ、彼の頭をギュッと抱きしめると、髪を撫で始めるのだった。 スゥーっとヘアブラシで梳くよりもやさしく、ソフトなタッチで上下と動くので、それはなんとも心地良かった。 彼は驚きを隠せないままに、身体的に感じる癒しに浸るのだった。

 

 そんな時、穂乃果が口を開いた――――

 

 

 

「蒼君。 穂乃果ね、蒼君が人を信用できなくなったって聞いた時、とっても苦しかったんだよ。 てっきりあの一件で蒼君の気持ちは元に戻ってるって勘違いしちゃった。 でも、違ったんだね……ずっとずっと、心の奥底に沈んでいただけなんだよね。 それがまた戻ってきたから今の気持ちになっているだけなんだって、穂乃果はそう思ってる。

 穂乃果もね、人を信用できなくなっちゃうって気持ち、わかるよ……ほんの一瞬の出来事のように思えたけど、また、裏切られるんじゃないかって、怖かったのを覚えてる。 蒼君も同じ……ううん、蒼君は穂乃果よりもずっとずぅーっと辛くって、怖かったんだと思うの………。

 

 だから、辛かったら辛いって言っていいの。 泣きたい時は泣いちゃってもいいんだからね……」

 

「~~~~~ッ!!!」

 

 

 ポキッ、と心の何かが折れたような音が聞こえた―――

 

 彼は穂乃果のその言葉を耳にした途端、全身を強張らせていた筋肉を和らげさせ、身体を彼女に任せたのだ。 そして、彼女の為すがままに彼は彼女の胸の中で泣いた。 声がかれるくらい強く泣き散らしたのだった………。

 

 

 

――だいじょうぶ、大丈夫だからね……蒼君には、穂乃果が付いているからね……

 

 母親が子をあやすように、穂乃果はそっと彼の髪に口付けをするのだった―――――

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 約24時間ぶりに、リビングの明りが灯された――――

 

 泣きつかれた彼は、ようやく我に返ると、自分がとても恥ずかしい格好をしていることに気が付くのだが、それは後の始末だった。

 それは穂乃果も同じこと―――彼をあろうことか自分の胸の中に埋めたのだから何とも言えない気持ちになる。 お互いに顔を赤らめさせるのだが、気分を取り戻そうと彼は彼女を引っ張ってこの部屋を後にした。 リビングに連れてこられると、彼女は1人だけソファーに座らせられると、彼は台所へと消えて行った。

 

――蒼君、なんだか顔色がよくなったような気がする

 

 わずかに見える彼の横顔に、思わずクスリと笑いを立ててしまう。 からかうためにではない、嬉しいから笑うのだ。 深刻な状況にあった彼が、いま彼女のために茶を点てて持ってきている。 それも、かなり穏やかな表情でだ。

 

 

「飲むか?」

「うん」

 

 

 掴んで持ってきた熱々のコップを手にとると、白く立つ湯気を消すように吹く。 これくらいがちょうどいいかと見計らうと、口を付けてゆっくりと飲む。

 

 

「あつっ…!」

「大丈夫か、穂乃果?!」

 

 

 まだ熱いところを啜ったのか、舌を出して熱を冷ましだした。

 そんな彼女を見て、彼はすぐに駆け寄っては彼女の様子を見ていた。

 

 

「大丈夫だよ、そんなに酷くないから」

「そうか……ならよかった……」

 

 

 何も無いことを確認すると、彼は安堵の声を漏らす。 その様子を見た穂乃果は、また嬉しそうに微笑みだすのだった。

 

 

 

「ねえ、蒼君。 まだ、穂乃果のこと、信じられない?」

 

 

 唐突な問いに、彼は身体を震わせた。 それから、鋭く見開いた目付きで彼女を見つめると、彼は落ち着いた声で言うのだ。

 

 

「いや、今なら分かる……俺は、穂乃果を信じてる」

「………っ! うん! 穂乃果も蒼君のこと、信じてるからね!」

 

 

 “信じてる”―――彼女は初めてその言葉で深い安心感を抱いた。 彼のその言葉と共に、偽りの無い透き通った目を見て、彼女は確信することが出来たのだ。 それが嬉しくって、つい表情が緩んでしまうのだった。

 

 

「それじゃあ、みんなのことは……?」

「―――それは……まだすべてを信じたわけじゃない……穂乃果のように、俺のことを想ってくれている人がいるかもしれない。 でも、それが本当なのかって、わからないんだ……」

「ううん、大丈夫だよ。 穂乃果のことだけでも信じてるって言ってくれたんだもん。 今はそれだけでいいの、蒼君のペースで変えていけばいいんだよ」

「ごめん、穂乃果……俺がこんなんだから穂乃果にも、みんなにも迷惑かけて………」

「迷惑だなんて、思ってないよ。 むしろ、蒼君のことをもっと知ることが出来て嬉しかった。 もっと、好きになれたような気がするの」

「穂乃果………」

 

 

 彼女のやさしさに沈んでしまいたい―――負の感情を暴露している彼のことを、ここまでやさしく触れてくれた人はいなかった。 自身の母親にでさえ、ここまで自分の気持ちを吐露したことはなかった。

 穂乃果だからできたのだ。 穂乃果だから心を許すことが出来たのだと、彼はふつふつと思うのだった。

 

 

 

「それでね、蒼君。 穂乃果は、蒼君にお願いをしに来ました」

「お願い? なんだそれは?」

「えへへ、それはね………明日、私たちのライブを見てもらいたいの!」

「ライブ……? μ’sのライブは確か明後日の最終日だけなんじゃ……」

「違うよ。 これはね、蒼君のため、蒼君たちRISERのための一日だけのライブだよ!」

「俺の……ために……!」

「うん、そうだよ! RISERのことを今でも応援している人たちが集まって、ライブをするの! それも、あの会場だけじゃなくってね、いろんなところの人が参加するんだよ! 日本中で蒼君たちのために行うんだよ!!」

「………ッ!!」

 

 

 彼は眼を真ん丸と見開いて驚いた。

 そんなバカなと一声漏らしそうになるくらいに。

 だが、彼女の目を見て真実なんだと理解した。 本当に俺たちのためだけのライブが行われるんだと、胸が熱くなった。

 

 

「それは……どこでやるつもりなんだ……?」

「それはまだちゃんと聞いてないけど……わかったら、またあとで連絡するからね」

「あぁ……待ってる……」

 

 

 歯に噛むように応える彼女は、彼が反応してくれたことが嬉しく、ニカッと歯を出して笑うのだった。

 

――みんな、蒼君が見に来てくれるって! 頑張らないとだよね!

 

 嬉しくなった彼女は心の中で、そう呟くのだった。

 

 

 

「それじゃあ、私、行くね」

 

 

 飲み干したカップをテーブルの上に置いてから立ち上がると、彼女はそのまま部屋から出ようとする。

 

 

「1人で大丈夫か……?」

「うん、まだそんなに暗くなってないみたいだし、平気だよ!」

「そうか……まあ、穂乃果も成長したもんな……」

「む、それどういう意味かなぁ~? 穂乃果だって、いつまでも人に頼るわけにはいかないんだよ!」

「あぁ、うん……それは結構なことだな……」

「?」

 

 

 彼が心配そうに声を掛けてくれたかと思うと、何やら歯切れの悪そうな表情をしていたので、彼女は疑問に思った。 それに、なんだかそわそわしてて、落ち着きがない様子だ。

 

――あっ、もしかして……♪

 

 ふと、何かを閃いた彼女は、彼がそっぽを向いている隙に、その胸に抱きついたのだ!

 

 

「うぉっ!? ほ、穂乃果!?」

「ふふ~ん、蒼君ってば、そんなに穂乃果のことが恋しかったのかなぁ~?」

「うっ……!」

「図星だね♪ 蒼君も素直になればいいのに。 穂乃果ならいつでもいいんだよ♪」

「………それじゃあ……少しだけ………」

 

 

 そう言うと、彼は穂乃果の背中に腕を回して、その肢体を抱きしめた。 そっと、やさしく包み込むように彼女を抱きしめると、彼は穏やかな表情になっていた。 穂乃果もまた、そっと彼の背中に腕を回して、嬉しそうに顔を身体に埋めるのだった。

 

 双方共に、いい表情をするものだ。 愛し合った仲であるからこそ、信頼しきった関係となってこうした姿を見せるモノなのだ。 この一時だけは、彼らの時間だった――――

 

 

「蒼君って、意外と甘えん坊さんなのかな?」

「………うるさい………」

「うふふ、照れちゃって♪」

 

――穂乃果が抱きついてから、もっと顔を赤くしちゃってる。 ふふふ、もしかしたら本当に甘えん坊さんだったりして……? だとしたら、かわいいね♪

 

 声には出さないが、彼の新しい一面が見れたことに嬉しくなるのだった。

 

 

 

「蒼君。 あのね―――」

「どうした?」

「あのね―――もし、蒼君が私たちのライブを見て、いつもの蒼君に戻ったら迎えに来て―――」

「えっ―――?」

「みんな、蒼君のことを待ってるの。 だからね、戻ってきてくれたら、また、ぎゅーって穂乃果のことを抱きしめて……」

「穂乃果……!……わかった。 必ず……必ず俺は、一番先に穂乃果のことを抱きしめてやるから……! 苦しいって言っても止めないからな……!」

「えへへ、大丈夫だよ♪ その時は、穂乃果も負けないくらい抱きしめちゃうんだからね!」

「約束だ――――」

「うん、約束―――♪」

 

 

 

 深まる夜が街を暗くなる最中、2人から小さな灯火が生まれようとしていた。 決して消えることの無い不消火は、2人の歩む道をやさしく照らし続けてくれる――――そうあってもらいたいものだ。

 

 

(次回へ続く)

 




どうも、うp主です。


ひとこと言わせて……長い()


久しぶりに1万以上も書いてしまったということに疲労が……。よくもまあ、ここまで書けたもんだと自分でも驚いてるよ。

そんなわけで、今回の話が終わると、次回からはライブの話になります。どんな話になるかは御想像にお任せしつつ、こちらは次の話を執筆することにします。


それでは、また次回。


今回の曲は、

KOTOKO/『Shooting Star』

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