蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第122話


隠されていた真実

 

 

 あれから数時間経った。

 

 

 蒼君から逃げるように出ていった私たちは、お互いに何も話すことなくそのまま家に帰っていった。 穂乃果も気を落としながら自分の家に帰ったんだけど、全然気持ちが落ち着かないの。

 

 蒼君のことがずっと気になっちゃってる自分がいる――――

 

 

 家に帰ってからの私はずっとそのことばかりを考えていた。 それだからかな、晩御飯を食べててもあまりおいしいとは感じられないし、食欲もそんなに湧かなかった。 そんな私のことを見て、お母さんと雪穂は心配そうに声をかけてくれるけど、私は「大丈夫だよ」と返した。

 

 本当はそうじゃないんだってことを圧し隠しながら………

 

 

 

「はぁ………」

 

 

 深い溜め息がお腹の底から出てくる感じだ。 部屋に戻ってからの私は、そのままベッドの上でごろんと寝っ転がっていた。 何もすることもやる気も起きなくって、ただぼぉっと天井を眺めるくらいしかできなかった。

 

 何やってるんだろう、わたし……。

 いったい、何のために蒼君のところに行ってきたのかわからない。 私の知らない蒼君を知ることが出来た、けど、それは本来の目的じゃない。 ただ私は……支えてあげたかったのに……。

 

 

 

「蒼君……」

 

 

 あの時、振り返って見上げた蒼君の後姿が目に焼き付いて離れられなかった。 あんな怖い顔をして起こったのを見たのは初めてだったし、それに、あんなに辛そうにしているのも見たことがなかった。

 

 蒼君にいったい何があったんだろう……?

 そう思いながら身体の向きを変えてみる。 すると、私の眼の先に自分のバッグがあることに気が付いた。 今日一日中使い回していたから少しくたびれているみたい。 でも、私が見ているのはそうした外側の部分じゃない。 その中に入れてしまったモノを見ていた。

 

 つい、勢い余って入れちゃった蒼君の衣装。 本当なら戻しておくはずだったんだけど、戻し辛かったし……それに、どうしてか分からないけど、手放しちゃいけない気がしたんだ。

 この衣装を持ってくる代わりに、蒼君からもらったぬいぐるみを置いてきちゃったけど、多分これでよかったんだと思う……。 今はそう思いたかった。

 

 

 

 

 

――――♪

 

 

 スマホから着信音が流れ出てくる。 この音からすると、あのグループ会話のアプリからのモノだとすぐに分かった。 いったい誰からなのかを確認することもせずに電話に出た。

 

 

 

「もしもし――――?」

 

 

 そう切り出すと、聞こえてきたのはたくさんの声だった。

 

 

 

『あっ、穂乃果ちゃん! 今、大丈夫?』

 

 

 一番最初に聞こえてきたのは、ことりちゃんの声。 いつものやさしい声に心をほっこりとさせられるから少しだけ安心しちゃう。 そんなことりちゃんに穂乃果は聞き返した。

 

 

「ううん、大丈夫だよ、ことりちゃん。 どうしたの?」

『うん、それがね――――』

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

 翌朝―――――

 

 

「みんなぁー! おまたせー!!」

 

「穂乃果!」

「穂乃果ちゃん!」

 

 

 太陽が昇りだして、暑くなり始めた朝―――海未ちゃんとことりちゃんの声を聞きながら、私たちはいつもの階段前に集まった。 いつもならここの階段で練習を行うつもりなんだけど、今日は違う。 とっても大事なことを行うためにみんなで集まったんだ。

 

 

「さあ、みんな準備はいいかしら?」

 

 

 どんっと腕組みしながら私たちを見るにこちゃんは、私たちよりも数段高いところから声を上げた。 そもそも、こうしてみんなが集まるように連絡したのはにこちゃんだ。 昨日のグループ会話をしようと切り出したのもにこちゃんで、そこで1つの目的について語り合われたの。

 

 

「にこちゃん……本当に行っちゃうの……?」

「何をいまさら! ことりだって、蒼一のことについて知ろうとしたくないの?」

「そ、それは……! 知りたいけど……でも……」

「でも……?」

「あまり、気乗りしないよ……。 いくら蒼くんのことを知ることにしても何だかイケない事をしちゃってる気がして……」

「ふん、それこそいまさらのことじゃない! にこたちはね、昨日、蒼一が行っちゃいけない場所に踏み込んだだけじゃなくって、知ってほしくないモノまで見ちゃったのよ! 当然、蒼一の目から見たら私たちへの好感度は下がっているはず。 そんなリスクまで犯したにも関わらず、蒼一のことをちゃんと知らずに終わってもいいと思ってるのかしら?」

「ううっ……やだよぉ……蒼くんに嫌われたままだなんて、いやだよぉ……」

「だったら、にこたちは少しでも蒼一のことを知ってあげなくっちゃいけないのよ! 蒼一のためにも、私たちのためにもね!」

 

 

 蒼君に嫌われる、その言葉を聞いただけで胸が苦しくなる。 ことりちゃんは我慢をしているけど、今にも泣き出しそうで声を震わせていた。 にこちゃんだって、あんなに強気でいるけど、顔にグッと力を込めて堪えているみたいだった。 みんなだってそう、蒼君に嫌われるほど嫌なことはないのだから………

 

 

 

「それで、肝心の明弘に聞くとして、どないなことを聞きだすん?」

「当然、ド直球に聞いてやるわ―――アンタたちがRISERなんでしょって?」

「で、でも……また、はぐらかされそうだよぉ……。 それに、今度は謙治さんまでいるんだし……」

「それは逆に好都合なのよ、花陽。 あの部屋の中から謙治さんたちとの写真も出てきたんでしょ? それに他にも……そうよね、海未?」

「はい。 確かに、アレを見た時は驚きましたが、聞きだすための材料としては問題ないかと」

「知り合いのおじさんに、ラブライブの会長さんまでがRISERに関わっている。 こんな話切り出したらいくら明弘でも言い逃れなんてできないものね」

「つまりそういうことよ。 というか、そうするしかないと言うのが本音だけど」

 

 

 そう言うと、にこちゃんの目は鋭くさせてその場から高く跳んだ。 私たちの間を抜けると、だんっと大きな音を立てて着地した。 そして、くるりと首を回してこっちを向くと、「さあ、行くわよ!」と引き締まった声で言ったの。

 その時、偶然なのか、にこちゃんが穂乃果のことだけをジッと捉えていたようにも感じられたけど……気のせい……だよね……?

 

 でも、その真っ直ぐと突き刺さるような目が、躊躇ってその場にしがみ付いていた私を引っ張り出してくれた。 そして、みんなと歩調を合わせながら前に進んで行ったの。 大丈夫、大丈夫だから……

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

「ちょっと、失礼するわよ!」

 

 

 謙治さんのお店、スタジオKenjiが見えると、にこちゃんは躊躇することなく中に入っていったの。 穂乃果たちもそれに続くように入っていくと、そこには思いがけない人がそこにいたの!

 

 

 

「どうやら、来たようだな」

「ほぉ、今日はずいぶんと荒々しい登場だな。 勢い余って店のモノを壊さないでくれよ?」

「ほっほっほ、これはまた元気な子たちですなぁ! 蒼一くんも結構な子たちを大会に送りこんできたようだのぉ」

 

 

 お店の中に入った直後に目にしたのは、男3人が決して大きくないテーブルに座っていたと言うこと。 しかも、弘君、謙治さんだけじゃなくって、スクフェスの主催者でもあるあの真田会長もそこに座っていたんだ! まさか、この人までいるだなんて、と私たちはその場ですっごく驚いた。 あのにこちゃんもここまでのことは予想していなかったらしくって、真田会長を前にして身体を硬直させていたの。

 

 

「に、にこ……! ほら、しっかりしなさい……!」

「……ハッ……! そ、そうだったわ……!」

 

 

 絵里ちゃんに肩を叩かれて我に帰るにこちゃん。 すると、一度咳払いをしてから気持ちを整え、この3人に向かって話をし始めたの。

 

 

 

「3人に聞きたいことがあったからちょうどいいわね。 単刀直入に聞くわ、RISERって、明弘と蒼一が起こしたグループなのよね……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――あぁ、そうだぞ」

 

 

 

「………はぁ………?」

「ん、どうかしたのか?」

「えっ、い、いや……そ、その……あまりにもあっさりと応えたからつい……」

「なんだぁ? そんくらいのことで驚いちまうのか、にこ? まだまだ、あまいなぁ~」

 

 

 弘君はにこちゃんが予想していたのとは全く違う反応で、まるで、当たり前みたいな感じでそう言ったんだ。 それが今まで隠していた人が見せるような態度には思えなかったし、ましてや、からかっているようにも見えなかった。 多分、本心で、真剣にそう言っているんだろうと思った。

 

 

「ど、どうしてそんなにあっさり応えちゃうのよ!? 今まであんなにひた隠しにしてたのにどうして……?!」

「ん~……というか、ここで隠したって今のお前たちには通用しねぇだろ? 俺の予想だと、すでに蒼一の家からいろんなモンを見つけたんだろう? そんなものを見ちまったのなら、言い逃れ何ぞできやしねぇさ。 だろぉ?」

「うっ………」

 

 

 弘君のその返しに、にこちゃんは口籠った。 さすがのにこちゃんもこれにはどうすることもできなさそうだった。 というか、この先どんなことを聞きだそうとしているのか穂乃果には分からなかった。

 

 

 

 

「あぁ……うぅっ……」

「にこちゃん?!」

 

 

 突然、にこちゃんがその場に倒れちゃいそうな勢いで膝をがっくり着いたの! 何がどうしたのかさっぱりな穂乃果から見たらびっくりしちゃうよ! そしたら、身体をぶるぶると震わせながら言いだしたの。

 

 

「……あは、あはは……ほ、本当に明弘たちがRISERだったなんて……あらためて考えるとすごいことなのよね……あまりにもすごすぎちゃって…こ、腰が抜けちゃった……」

「ははは、確かにそうかもしれねぇな。 にこと初めて会った時から俺たちのことを話してたからよぉ、バレねぇかずっと肝を冷やしてたんだぜ? しかしまぁ、こんなかたちでバレちまうとは考えちゃいなかったわ」

「と、ということは……蒼一もずっとそのことを聞いていたってこと……ッ!? うわぁ……とっても恥ずかしいわ……」

 

 

 恥ずかしそうに顔を隠そうとするにこちゃん。 それと同じく、花陽ちゃんもぺたんと身体を床に座らせていて、ちょっと心ここにあらずって感じだった。 そう言えば、花陽ちゃんもRISERのファンだったもんね……それを思い出して勝手に納得していた。

 

 

「けど、驚いたわね……まさか、蒼一たちがあの伝説のグループだったとはね……」

「言われてみれば、何となく納得できるところもあったなぁ。 けど、分からんやったわ」

「でもでも、凛たちはそんなすごい人からいろいろ教わってたんだね! すごいにゃぁ~♪」

 

 

 みんなが驚いている中で、凛ちゃんはとっても嬉しそうに話していた。 確かにそうかもしれない。 穂乃果たちがここまでやって来れたのは、ただ単に穂乃果たちが頑張ったからじゃない。 蒼君たちが持っていたたくさんの知識と経験がモノを言わせていたって、これまでを振り返ってみてそう感じちゃう。

 

 でも、どうして蒼君たちはそのことをずっと黙っていたんだろう? それに、蒼君を見ていると、その過去のことについてあまり触れてほしくないようにも感じた。 それはいったいどういうことなんだろう……? それに確か、前に弘君が………

 

 

 

「ねぇ、弘君。 ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」

「ん、どした、穂乃果?」

「どうして蒼君たちはそのことについて話そうとしなかったの? そんなすごいことをどうしてずっと黙ってたの?」

「ん~……それはだな……」

 

 

 

 すると、弘君は右手で拳をつくって、それを穂乃果の前に突き出した。 いったい何を始めるのかな?と思いながら見ていると、折り曲げた人差し指をピンッと伸ばした。

 

 

 

「まず、1つ。 俺たちのことについて口外されたくなかった。

 これでも俺たちは素性を一切隠して活動をし続けてきた。 それは活動を始めた当初から決めていたことだし、俺たちの知名度が広がった時でさえも変わることのないスタイルだったのさ―――」

 

 

 次に、中指を伸ばした。

 

 

「2つ。 μ’sの活動にRISERは必要ないと言うこと。

 仮にだ、俺たちRISERが素性を明かして音ノ木坂に来たとしようか。 そしたら、たちまち音ノ木坂の知名度は上がるだろうし、スクールアイドルだってすぐに結成されただろう。 だが、それは俺たちが理想としていることじゃない。 そういう連中は興味本位でしか動こうとしないし、まともに取り合おうとはしないはずさ。 にこの過去の例がモノを言っているように、そんな陳腐な理想で立て直しなんざ考えちゃいなかったのさ。 高い理想を持って活動する、まさに、お前たちのようなのが俺たちの理想に叶ったってわけ―――」

 

 

 立て続けに淡々と話を続ける弘君。 あらためて弘君たちが思っていた考えがどういうモノなのかを知ると、納得してしまう一方で、少しチクッと心に刺さるモノがあった。 それは多分、蒼君たちが穂乃果たちの無茶なお願いに真剣になってくれていたんだと言うことに気付かされたからだと思う。

 学校を何とかしようって考え始めた時、私は結構簡単なイメージでしか考えてなくって、あの講堂ライブを行うまで絶対にうまく行くって思ってた。 けど、違った。 世の中そんなに甘くないって突き付けられたあの時、私は本当に挫けそうになった。 諦めようかとも思った。

 でも、そんな私に勇気を与えてくれたのは蒼君だった。 今思えば、あの時の蒼君は私たちがうまくいかないことを分かっていたんだと思う。 そうでなかったらあんなに準備を整えることなんて出来なかったと思うし、私たちを励ましてくれることはできなかっただろうと思う。 分かってくれていてもなお、私たちのために頑張ってくれた、そんな蒼君に感謝しかなかった。

 

 

 

「そして最後――――」

 

 

 最後―――と言い掛けてから固まった弘君。 中途半端に折れ曲げた薬指をそのままに、何か思い悩んでいるようにも見えた。 どうしたんだろうと身構えていたら、フッと強く短い息を吐き出して曲げた指を伸ばした。

 

 

 

 

「そして最後――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――お前たちに過去を語ることを堅く禁じてられていたからだ。 ()()()()―――」

 

 

「――――えっ?」

 

 

 一瞬、耳がキィーンと鳴ったような静けさを感じた。 そんな…嘘……?! 心の中でそんな声が聞こえてきそうなくらいの驚きが私の中で起こった。 ありえない、蒼君は私たちのことを信頼していたはずじゃ……? なのに、どうしてそんなことを言ったのかが分からなかった。

 

 すると――――

 

 

「まあ、お前たちからすればありえねぇと思える話しに聞こえるかもだが、ある意味当然なことなんだぜ?」

「どういう……こと……?」

 

 

 苦い表情をしながらそれを当たり前のように話をするから少し怒りを覚えた。 どうして、そう言われなくちゃいけないの?! 蒼君と私たちはそんな浅い関係じゃないのに! 湧き上がってくる不満を抑えながらジトっと見つめる弘君の声に耳を傾けた。

 

 

「お前たちには一度、話したことがあったよな? 何故、蒼一が我を忘れるほどに怒り狂ったのかを……」

 

 

 それを聞いてパッと思い浮かんだのが、一か月も前に起きた()()()()()()()――――謙治さんたちがいるから口には出せないけど、決して忘れることのできない出来事だ。 あの時、確か弘君が言っていたのは……

 

 

 

 

「俺たちのことをずっと慕ってくれていたヤツが裏切った―――」

 

「………ッ!」

 

 

 身体が竦んでしまいそうな悪寒が私を襲った。 あの暗闇の中で聞かされた恐ろしい言葉が今になっても身体に堪えちゃう。 何度も自分の中で繰り返し考えさせられ、何度も後悔したあの時を……。 でも、わからない……。 私たちはあの時を一緒に乗り越えたはずなのに、どうして……。

 

 

 そしたら、弘君は唇を深く噛む仕草をしてからこう呟いた―――

 

 

 

「正直に言えば、あの時の蒼一は誰も信じようとしちゃくれなかった。 謙治さんや真田会長、そして、この俺さえもだ。 それほどまでにあの日の出来事が蒼一の心を深く抉ったんだ。 そして、決して見ることも治すこともできないような深い深い傷を未だに背負っているってわけだ」

「う、嘘よ!! 蒼一の傷は治ったはず……! でなかったら、私にあんなにやさしくなんかしてくれないわ!!」

「おめぇの言いたいことも分かる。 だが、実際問題、アイツはあの時以降にもそう俺に言ってんだ。 これは事実なんだ、真姫!」

「そんな……そんな………」

 

 

 強く訴えかけるように真姫ちゃんは怒鳴った。 あの時の前後の様子を間近で見てきた真姫ちゃんだからこそ言える言葉だ。 妬けちゃうくらい羨ましいことだけど、そんな真姫ちゃんでさえもこう言ってしまうんだから口には出せなかった。

 

 

 

「ねぇ、とても気になってることなんだけど……蒼一の過去に一体何があったの?」

 

 

 重くなりかかった空気の中で絵里ちゃんが声を上げた。 不安を抱えながらもジッと弘君たちの方を見ていた。 そしたら、弘君は目を細め出して―――

 

 

「ほぉ……聞きたいか……?」

 

 

―――と聞いてきた。 もちろん、絵里ちゃんは迷うことなく―――

 

 

「聞きたいに決まってるじゃない!! 私だって、蒼一のことを知る権利はあるはずよ!!」

 

 

―――と強く言い放った。 仮にも、私たちよりも一回りも年上の人が2人いると言うのに、まるで気付くような素振りを見せないで、真っ直ぐに弘君だけを見ていた。 そうした姿から絵里ちゃんの真剣さが垣間見えたような気がした。

 

 

 

「なるほどね……。 そんな怖ぇ目を向けられちゃあ、俺も黙っているわけにはいかねぇな」

「本当にいいのかい? 蒼一くんはいいとは言ってないけど?」

「ワシらに対してだって口を酸っぱくして言ってきたくらいなのだ、それを安々と決めるのはどうかと……」

「大丈夫だぜ。 俺にだって考えがあるんだからよ」

 

 

 口元を少し緩ませた弘君は、重くなった空気に穴を開けるように口を開いた。 すると、それに反応した2人が詰め寄ろうとしたのだけど、何も心配しないでと言わんがばかりに笑って見せていた。 その笑みに何の意味が隠されているのだろう……? 無意識に深く考えてしまう。

 

 

 

「俺たちの正体もバレちまったようだし、それに俺たちの仲もそんなに浅いもんじゃなくなった。 だとしたら、もう隠すことをする必要はないかもな……」

「と言うことは……明弘くん……!」

「あぁ、そのつもりで話をしようかと思ってるのさ。 師匠、コイツらのためにイスを頼むぜ」

「わかった。 そこにあるモノのどれでもいいから座りなさい、お嬢さんたち」

 

 

 そう謙治さんに勧められるまま、私たちはイスやソファ―に座りだす。 そして、これから弘君の口から話されることに耳を傾けようと身を乗り出した。

 

 

 

「それじゃあ……どこから始めようか……。 そうだな、あれは――――――」

 

 

 

 

 

 

〈ジジ………ジジジジ…………ザ――――――――〉

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

 

 

 数年前――――――

 

 

 

 

 

 

 

 ウワアアアアァァァァァァァ―――――!!!!!

 

 

 

『ほぉら、兄弟!! 見てみやがれよ、この観客の数を!! 熱声をォ!!! くぅぅぅ……まさに、このために生きてるって感じがするぜェ!!!』

『おいおい、まだ始まっちゃいないってのに、そんなに張り切りやがって……。 曲の途中でバテやがったら承知しねェぞ?』

『カッカッカァ!! この俺を誰だと思っていやがる? 身体能力はこの業界No.1と称されるほどの持ち主、RISERの暁、エオスとは俺のことだってことをよォ!!』

『フフッ、愚問のようだったな……。 その調子なら問題なさそうだな』

『あったり前よ!! そんで、同じく業界No.1の歌唱力と謳われたRISERの太陽、アポロさんはァどんな調子よ?』

『問題ない。 至って良好だ。 今日も感度が良いらしい……全身が会場一体とシンクロ出来ていて、これほどの状態は前例に無いくらいだ……!』

 

 

 

 観客の歓声が天にまで昇って行きそうな勢いだった。 その声を聴いて、心が(たぎ)らない者は誰1人としていないだろうと思うほどにだ。

 

 俺たちはこの業界に足を踏み入れてからすべてが変わった。 ネットで華々しいデビューを飾り、飛ぶ鳥落とす勢いでいくつもの賞と名誉を手に入れた。

 だが、それはただの飾りにしか思えなかった。 俺たちにとって最高の名誉と言うのは、多くの観客たちの前で俺たちを魅せることだった。 俺たちが魅せる全力をぶつけることこそ至高! それを糧に喜ぶ者たちの顔を見るのも一興! それらすべてが俺たちにとっての喜びとなっていた。

 

 もはや、これ以上のモノを求めたくないくらいに充実した日々を送っていた。

 

 

 そして、今宵もまた、観客たちの前で大暴れして見せるのさ……!!

 

 

 

『マスクの着用を――――』

 

 

 俺たちは互いに素性を隠している。 それは、ただ単に俺たちの素顔を見られたくないようにするための手段。 結成当初から貫いてきたポリシーみたいなもんだ。 その方が目立って良いと思うし、マスクってなんかかっこいいじゃんか、赤い彗星とかみたいで。

 観客に見せるのは、眼の下と髪の毛だけ。 目元だけを隠すだけでも十分に誰だか分からん。 俺自身も初めは兄弟の姿を見て、誰だか分からんかったからなぁ、これならバレることはねェって今も信じてる。

 

 

 

『――――っくぅ……なんだか、これを付けるといつも気持ちが変わるんだよなぁ……』

『ほぉ、兄弟からそんなことを聞かされるとは思いもしなかったぜ』

『何と言うか……自分を偽るみたいな……もう1人の自分を曝け出すみたいな気持ちになるんだよ……わかるか……?』

『ん~~~……いや、分からんなぁ……。 俺はこれを付けても俺のままだし、エオスって名乗っても俺に変わりねェからさ』

『そっか。 それが普通なんだよなぁ……』

 

 

 兄弟はああいってるけどさ、俺にはわかってるぜ。 ソイツを付けた後の兄弟の凄みはハンパねェからよ! まるで、人が変わったみたいに大胆不敵な行動をしやがるんだからさ。 さすがの俺も抑えきれねェさ!

 

 

 

『おい、そろそろだぜ。 準備はいいか?』

『いつでもいいぞ、相棒―――』

 

 

 コツンとお互いの拳をぶつけ合って、大勢の歓声が集中するあの舞台へと足を運ぶ――――

 

 

 俺たちが魅せつけるとっておきを披露するために――――!!!

 

 

 

 

『その想いは()(ため)に―――?』

 

 

 

 マイクを通した声が、スピーカーから澄みきった声となって響きだす――――

 

 

 

『彼の想いは()(ため)に―――?』

 

 

 これが俺たちの合言葉――――

 

 

 俺たちが俺たちであるという証し――――

 

 

 

 

 

 

『『その想い……我らが果たさん――――!!』』

 

 

 

 

 

 これが俺たち、RISERの闘い(やり方)だ―――――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ジジジ……ザ――――――……ギギギ……ジ……ギ……ギ………〉

 

 

 

 

(次回へ続く)




ドウモ、うp主です。

先週、極寒の中を這いずり回っておりました自分。運送作業ってほんと辛い……あんなん中を走り回るって、頭がおかしい…うん、ほんとおかしい……

……とかいいながらも、業務命令で走り回っておりました……



……自転車で……!!


この恨み……必ず、倍返し……いや、十倍返しにして見せますよ……!!



……もちろん、晴れの日で路面が凍って無い状況よ?



こんな茶番は放っておいて…
さあ、RISERの過去編がはっじまーるよー!
ただし、次回だけな。1話で終わらせるから、うん、絶対に終わらすから!

それと、外伝の方もそろそろ更新しないと…
あっちはダークネスを極めるから何でもアリになるよ…(もち、ヘイト系で


ということで、次回もよろしくお願いします。



ここで、お知らせなんだぜ!

活動報告でもお話しましたが、
この度、自分の作品に登場します

宗方蒼一 滝明弘 島田洋子

この3人が他作品に出張することが決まりました!
その作品と言うのが……


原作:ラブライブ! 作者:うぉいど

『ラブライブ!〜少年を救う女神たちの詩〜』

という作品です!


もうすでに、チラッと登場してもらっているのですが、どんな話になるのかこちらも知りません。ですから、かなり期待しております(過度なプレッシャー

自分のキャラを使ってもいいよ、と言ってから1年以上が経過しましたが、まさか本当に使ってくれる人がいるとは……しかも、3主人公全員を!
……俺でも扱いにくいのに、よく頑張ったなぁ、オイ。

もちろん、自分も使いたいと言う人がいらっしゃれば許可しようかと思いますが、要相談です。ここ重要です、要相談。大事なことなので、2度言いました。

コラボ回のことも考えますので、こっちだともしかしたら3月頃になるやもしれませんねぇ……うわーい、たのしみじゃけぇ!

更新速度は早い方が助かりますか?

  • ちょうどいい
  • もっと早くっ!
  • 遅くても問題ない

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