蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第109話


嫉妬で人は燃え尽きるのだろうか?

 

 

 合宿最終日―――――

 

 

「ふわぁ~~~……いい天気だなぁ~……」

 

 

 明朝、暁がちょうどというタイミングで山から太陽が見えだした頃に目が覚めると、そのまま海岸沿いにまで足を運ばせた。

 波がさざめく音。 磯の香りを漂わせる潮風。 舞い上がる砂埃。 そんな潮騒を浴びながら何一つ変わることのないこの心地良さに癒される。 毎日、こうした環境に浸っていられたことを感謝したくなる思いだ。 今日まで身体に溜まってきていたあらゆる重責が抜け落ちていくようで気分が善い。 自然の中に身を投じさせたことが最高の気分転換だったと言えるだろう。

 

 

 

「おっす、兄弟! 今日も早起きじゃんかよ!」

「おう、おはようさん。 お前だってめずらしく早起きじゃねぇか?」

「くっくっく、だってよぉ…今日は合宿最終日じゃねぇか。 妙にワクワクしてしまうわけさ」

「なんだよ、その修学旅行あるあるな感じは? そんなら毎日こんくらい早く起きて見るか?」

「ハッハッハ! 冗談キツイぜ! 俺は朝をギリギリまで寝ていたいんだよ!!」

「穂乃果みたいなことを言うなぁ……」

 

 

 大学生になってもこのぐうたらっぷりだけは直らないようだ。 こういうところを穂乃果とかに見られたら、自分を正当化するための材料にされちまいそうで怖い。 まったく、悪影響しか与えないのかよコイツは……

 

 

「およ? 朝一番で蒼一の顔を見ることが出来るんなんてなぁ。 今日もエエ運勢が待ってそうやんな♪」

「よお、希……って、お前も寝巻かよ……」

「いやぁ~なんやこの方が落ち着いてなぁ~。 それに、寝起きスピリチュアルパワーが貰えそうな気がするんよ♪」

「寝起きスピリチュアルパワーとは一体?!」

 

 

 意味分からないことを発言しながら俺の横にやってくる希。 近くで見てみると、寝起きなはずなのに寝癖が一本もない整った髪を見せられる。 多分、こっちに来る前に入念に髪を梳かしてきたのだろうと考えると、ちょっとだけ微笑ましく思える。 誰にも見えないところで努力している、そんな希らしい頑張りが時々嬉しく思える。

 

 

「あら、今日も早いのね」

「真姫も起きてきたのか。 まだ、寝ていてもいいのに」

「いいのよ、別に。 それに……」

「?」

「私がちゃんと見張って無いと、蒼一が誰かに獲られちゃうかもしれないし♪」

「なっ?!」

 

 

 少し不敵な笑みを浮かばせながら俺の腕にしがみ付く真姫。 朝っぱらから何をするんだと思いながらも真姫を引き離そうとする。 それをジッと面白そうに眺めていた希がちょっかいを出し始める。

 

 

「ふふっ、なんや真姫ちゃん。 ウチが蒼一と一緒におるんことに嫉妬してもうたん? もう、かいらしいなぁ♪」

「べ、別にそう言うんじゃなくって……/////」

「やっぱりそうやんなぁ~♪ でも、気持ちは分かるで……ウチもな……」

「え?」

「えい♪ こ~やって朝から抱きついていたいと思うんよ♪」

「の、希まで!?」

 

 

 もう一方の腕の方にも抱きついてきた希。 思った以上にがっしりと掴まれているため、そう簡単には抜け出せないかもだ……それに、双方からとてつもなくやわらかい感触と女の子独特の甘い香りが鼻腔を擽り始める。 くっ…! 朝から俺の神経を殺しに掛かってきやがる……!!

 

 

「かぁー!! 朝っぱらからなんつうもんを俺に見せつけてきやがるんだ?! 彼女いねェ俺に対しての当てつけか?!」

「うるせぇ!! こっちは頼んでもねェのにやられてんだから仕方ねェだろ!?」

「両手に花持っといて言う台詞か!? くっそォォォ!! 俺にもそういう甘い日常に浸りたいもんだぜ!!」

 

 

 明弘…お前の言いたいことはよく分かる……だがな、この生活は……死ぬほどキツイからな……? 慣れてねェとメンタルやら精力やらが一気に吹っ飛んでしまうからな? この歳から鷲のマークのあのエナジードリンクに頼る毎日ってゾッとするぞ……?

 

 

「ああっ!! 真姫ちゃん、希ちゃんだけずるぅい!! 穂乃果も!!」

「抜け駆けなんてずるいよぉ!! 蒼くぅ~ん、ことりのこともかまってよぉ~♪」

 

「げっ、お、お前らまで………」

 

 

 分かり切ってはいたが、本当に全員がやってくるとは思いもしなかった……というか、みんな割と早起きだったり? いやいや、そんな訳ないだろ……

 

 

 そんで一通りわんさかやって、落ち着いて、気が付いたら全員でこの景色を眺めていた。 それに穂乃果が急にみんなで手も繋ごうって言いだすので、その通りにしてみた。

 するとどうだろう、こうして手を繋いだだけで心がスッとするのだ。 お互いの鼓動を感じるような、そんな感覚を抱くのだ。 シンプルなその行為だけで互いの気持ちを感じ合えることが出来る。 それに、今みんなが感じていることが1つにまとまっている、そんな気がしたんだ。

 

 

 

「今日は…絶対に成功させような……ラブライブに向けての第一歩としてな」

 

 

 そう意気込みを語ると、みんな言葉を発することはしなかったが、握るこの手がすべてを教えてくれた。

 

 

 俺たちの1つの目標が明確に映り出した、そんな瞬間だった。

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

[ 内浦 ]

 

 

 別荘からすべての荷物を持ってバスに乗り込み、そのまま内浦までやってきた俺たち。 ここからボートに乗りついで淡島の方にまで行くことになっている。 その前に、先日お世話になったあの宿・十千万に来ていた。 ちょうどこの宿の前がボート乗り場であることもあるが、合わなくちゃならないヤツがいるので立ち寄ったのだ。

 

 

 ここまではよかったんだ…ここまではな……

 

 

 

「そーいちさーん!! 本当に来てくれたんだね!! 私、待ち遠しいかったんだよ!!」

「ち、千歌…ちゃん……た、頼むから離れてくれないか?」

「え、なんで? これが私なりの挨拶なんだよ?」

「いやぁ……そういうのはありがたいんだけど……ちょっとね………」

 

 

 宿の暖簾をくぐった瞬間に俺の胸元に飛び込んできた千歌は、そのままギュッとしがみ付いた。 引き離そうとしてもそう簡単に引き離れてはくれない、女子なのに意外と力があると言うことはすでに経験済みなので驚きはしない。

 ただな、今のこの状況でそれをやられてしまうと違った意味で命の危機を感じることに……!

 

 

 

「あれぇ~? そうくぅ~ん……その子だぁ~れぇ~? どうして蒼君にべったりとくっついちゃってるのかなぁ~? なんでなんでなんで…?」

「ウフフフフフ…蒼くんってばぁ、すぐに女の子に手を出しちゃうから仕方ないもんね、仕方ないもんね?? でも、大丈夫だよぉ~後でたっぷりとことり色に染めてあげるから……」

「蒼一……私という者がありながら、こんな破廉恥なことを……少し、御仕置きが必要のようですね………」

 

 

 ひぃっ…?! は、背後の方からおぞましい空気と憎悪を感じ始めているのは何故!? 今、とっても後ろを振り返ってはいけないようなそんな感じがしてならないのだが! 振り返った瞬間、多分俺の明日は消えて無くなるような………

 

 

「あははは……蒼一も朝から大変なことになってるみたいだねぇ……」

 

 

 そう苦笑いを浮かべながらこの状況を見守る果南。 というか、見ていないで助けてほしいと言うのが俺の本音。 千歌の友達なら尚更のこと早く引き離してもらいたいのだ。

 

 

「果南……一応、これはお前の保護管理下にあるのだろう? は、早くどうにかしてくれよ……!」

「とは言ってもねぇ……千歌は一度しがみ付いたらそう簡単に離れてくれないからねぇ~……」

「ま、マジかよ……」

 

 

 しがみ付いたら簡単に離れないってどんな抱っこちゃんだよ……自爆するフリーザの分身よりかはマシだとは思うが……

 

 すると、千歌は何かを勘付いたのか、俺の後ろにいる穂乃果たちの方に顔を向けたのだ。

 

 

「あっ! もしかして…みなさんが蒼一さんの言っていたスクールアイドルなんですか?」

「え? あ、うん。 そうだよ」

「うわあぁぁぁ……か、かわいい!!」

「ええっ!? か、かわいい?!」

 

 

 興味津々に穂乃果たちを見始めると、目をキラキラと輝かせて見て回っていた。 ただでさえ、都会に憧れを持っている子なので、都会っ子である俺たちを見て嬉しくないはずがない。 それよりも、彼女が初めて目の前にする本物のスクールアイドルに絶賛興奮しているようにも見える。

 そんな純粋な視線で見られている穂乃果たちは、千歌に対して思わず顔を引き摺らせてしまう。 それにこちらとしては嬉しいことに、さっきまでの嫌な空気が消滅してくれたようだ。 思わぬところで功を得てしまったようだな。

 

 千歌はそのまま穂乃果たちの前に立つと、ビシッと背筋を伸ばしだした。

 

 

「自己紹介まだでしたね、私、高海千歌って言います! 地元の高校の1年生です!」

「私は高坂穂乃果! 東京の高校で2年生なんだぁ! よろしくね、千歌ちゃん!」

「はい! えと……穂乃果…さん?」

「穂乃果でいいよ、穂乃果で!」

「はい! それじゃあ、穂乃果さん! そして、みなさん、ようこそ内浦へ!!」

 

 

 順序は違うが、まあこんな感じで千歌はみんなと挨拶を交わしだしたのだ。 ほとんど、その場でのノリというヤツだろうか、勢いを持って畳み掛ける感じがすごい。 初対面なはずなのにこれだけグイグイ押してくる様子が、まるで穂乃果みたいだな。 そんな似たような素質のヤツを見たのは初めてかもな……

 

 

 

「ねえ、蒼一。 これから鞠莉のところに向かうんでしょ? だったら、私がボートで送ってあげるよ」

「送るって……果南は運転できるのか?」

「うん、できるよ。 一応これでも水上バイクとかの免許も一通り持っているからね。 海のことなら任せてよ」

「さ、さすが海人だなぁ……」

 

 

 海辺に住むとそう言うモノまで手にするものなのか……これが逆に山になると車の運転免許常備が当たり前ということも……そういえば、前原のおっちゃんも高校に上がる頃にはバイクの免許を持っていたって言ってたっけ?

 

 俺もそろそろそう言う免許とかとっておいた方がいいのかねぇ……?

 

 

 そんなことをしみじみ思いながらも、果南の案内でそのまま淡島のところまで行くこととになる。

 

 

 

 

[ 淡島・砂浜 ]

 

 

 

「ワァオ!! 約束通りに来てくれたのデスネ、蒼一ィ!!」

「ぐあァァァ……!! ま、またこの展開かよ……!!!」

「イェース! ハグは世界共通の立派な挨拶デース♪」

「ハグ以外にも握手やお辞儀があるだろうが……! なんで、よりによってハグなんだよ? 俺を殺す気か?」

「Oh…ワタシはついでに、この疲れた心を癒してもらいたいなんて思ってないデスからネ?」

「絶対、そっちが本音だろ?!」

 

 

 ボートから下りてそのまま浜辺に付いた俺を待ち受けていた鞠莉は、狡賢そうな笑みを浮かばせつつハグし出したのだ! しかも、躊躇なくだ。 おかげで、数多くの異性の身体を知り尽くしてきた俺の身体が、鞠莉の身体に反応しだす!

 女性のやわらかな肌の感触の他に、飛び出たところがいい感じに俺の身体で押し潰されてはよい感触を与え出している。 比べるとすれば、やはり同じ外国人の血を得ているエリチカだろう。 さすがにエリチカほどではないが、それなりのボディを見せつける訳で中々に恐ろしい。 また、以前は感じられなかったが、気品のあるラベンダーな香りを漂わせている。

 まさかと思うが、俺を誘惑しているのか…? そう思うと、冷汗が堪らなく滲み出てくるのだ。

 

 

 

「へぇ~……蒼一はそんな外人もどきに心を奪われるの……ちょっと、ロシア式のやり方をしてあげないといけなくなってきたわね………」

「あんなおっぱいで誘惑するんなんて、まだまだおませな子やなぁ……ウチが本当の扱い方っちゅうのを見せたらんとなぁ………」

「ふんっ……あの程度の慣れ染めくらいで蒼一がなびくと思ったのかしら……? まだまだケツが青いガキみたいね………」

 

 

 

……って、また背後からおぞましい空気が………おい、お前ら……一応、初対面で場所も貸してもらっているんだから穏便にしていてくれよ…? こんなところで大騒ぎを起こされちゃあ堪んないからな……

 

 内心、冷汗をダラダラと垂らしながらこの状況をどうしようかと考えているのだが、まずは引きはがさないと離しにならん。 グッと力を入れて離しに入って見るが、どうにもビクともしない……だから、女というヤツは変なところで力を使う! まったく!!

 

 

 

 

「こら、鞠莉さん! 蒼一さんがお困りではありませんか! 今すぐに離れなさい!!」

 

 

 ビシッと張った声で戒める言葉が投げ掛けられると、鞠莉は慌てて俺の身体を壁にして声の主から隠れようとし出した。 俺もその方向に顔を向けると、かなり怒った表情をしてやってくるダイヤの姿が……

 

 

「わ、ワーオ……だ、ダイヤァ~……ちょっと、怒り過ぎじゃない?」

「これが怒らずにいられますか!? なにいきなり蒼一さんにハグなんかしているのです?! いい加減にそうする癖を直しなさい!」

「ノォ~……これは列記とした挨拶デース、こうしないと落ち着かないのデース!」

「や・め・な・さ・い!」

「は、はぁーい………」

 

 

 鬼のような形相で鞠莉に迫っていくダイヤに、鞠莉はその迫力に押し負けてしまったようで、渋々俺から離れていくのだった。 それを見て安心したのか、ダイヤはホッと胸を撫で下ろした。

 

 

「大丈夫でしたか、蒼一さん? 私の友人が粗相を仕出かしてしまい申し訳ありません」

「いや、ダイヤちゃんのおかげで助かった。 ありがとな」

「と、とんでもございませんわ! こ、これしきのことなどどうということありませんわ!」

 

 

 そう言うと、ダイヤは顔を少し赤くさせて嬉しそうにしていた。 怒ったり、澄ましたり、喜んでみたりと、表情がお面のように次々と変わっていくのが人形のみたいだな。 表情が豊かって言うべき何だろうけど、こうして見るとホント海未とよく似ているよな。

 

 

「こほん。 そ、それとですね、蒼一さん……」

「ん、どうしたダイヤちゃん?」

「そ、その……ダイヤ『ちゃん』などとあまり呼ばないで貰えます? こ、ここではそう呼ばれてないので、あまり慣れないのです……」

「そうなのか? ダイヤちゃんでもいいと思うんだけどなぁ……」

「そ、それは他の時にお使いくださいませ! 私のことは……その、呼び捨てでも構いませんから……」

「わかった。 それじゃあ、ダイヤ」

「は、はい!! 何でしょうか?」

「その……さすがに俺も移動したいから……離れてもらってもいいかなぁ……?」

「え?……あっ!」

 

 

 俺に言われてようやく気が付いたのか、無意識のうちに両手を俺の胸元に添え置いたまま話をしていたことに。

 

 

「そ、そそそそれは失礼いたしましたっ!! わ、私ってばこのような恥ずかしいことを……」

「あ、いや、別に怒ってるわけじゃないから。 大丈夫だからね?」

 

 

 慌てて手を離すとそのままリンゴのように赤くなった両頬を隠すように手でおさえた。 俺に触れた程度でそんなに恥ずかしがることなのだろうか? それに関してだけはまったく不明なのだが、問題はそっちにあるのではなくてだな………

 

 

 

「あら、あの女も蒼一に……へぇ……ちょっと分からせないといけないのかしらね……?」

「なんで蒼一にぃに寄ってくるのかなぁ……? ダメだよ、蒼一にぃは渡さないんだからね………」

「兄弟のヤツめぇ……いつの間に、こんな美人たちとお知り合いになりやがって……うらやまけしからんぞぉ……!!」

 

 

 9人からの身に覚えのない憎悪に圧し殺されそうなので早く逃げたいと言う気持ちでいっぱいなのだ。 撮影直前だけどな!!

 

 

 それから準備直前まで9人からの鋭い視線が、背中に次々と突き刺さって痛かったというのは、また違った話である―――――

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 撮影直前――――

 

 

 明弘と洋子がカメラや楽曲などをし終え、すべての準備が整った。 といっても、ほとんどの作業がすでに鞠莉の手に寄って行われていた。 ステージとなる浜辺は前来た時よりも綺麗に整えられており、楽曲を流すためのスピーカーの設置すらもとり行ってくれたと言うのだ。

 なんでも、内浦のいい宣伝になると言うことで鼻息荒くさせながら作業を行っていたようだ。 さすがお金持ちだ、費やすところが全然違い過ぎる………

 

 とまあ、思わぬ協力を得ることが出来て本番を迎える訳だが………

 

 

 

 

「お前らの今回の衣装って……こんなにきわどいモノだったっけ……?」

「えー? 元々こういう感じだったよぉー」

「ことりから貰ったイラストではもう少し露出は抑えていた感じだったような………」

「気のせいだよ、気のせい♪」

 

 

 てへっ、と舌を出してお茶目な感じを演出させているようだが、これは絶対確信犯だわ。 水着をベースにさせた衣装だと言っているが、ただビキニの上に羽織りモノを1,2枚付けただけのようなもので、にこや海未とかに限ってはもう水着じゃんかと思えるくらいだ。

 

 

 

「でも、蒼くんはこういうの嫌いじゃないもんね?」

「嫌いじゃないんだよなぁ……」

 

 

 多分、こっちが本音だと言うのが残念な話なのだ。 昨日まで見ていたみんなの水着姿だって嫌いじゃないわけだし………

 

 

「ただ、海未はその衣装で大丈夫なのか? きわどくないのか?」

「た、確かに……肌をかなり露出させてしまうことになりますが……」

「なるけど……なんだ?」

「その……蒼一はどう思うのです? 私のこの姿は……?」

「それは………」

 

 

 そう言われて海未の衣装に目をやると、濃淡の青色をしたフリルを腰に巻き、水のように透き通るベールで魅力的な太ももを覆い包ませている。 そして、タオルで包ませたようなブラで胸を覆い隠している。 極め付けが艶めいた色っぽさを前面に押し出した表情が、かつて無いほどに海未を色付かせていたのだ。

 全体を大人の魅力を惹き出すような色で彼女を包み込ませたことで、これまでいろいろな姿を見てきた俺ですらドキッとしてしまうくらいだ。 こんな姿で迫られたりでもしたら堪ったものではない、一瞬にして、俺の理性を殺しに来ること間違いない。

 

 しかし、それは海未だけに限らず、他のみんな全員も同じような感じだ。 というか、どれも確実に俺の理性に訴えかけてくるものばかりで、確信的にことりが仕掛けてきたのだと言うことが明白だった。

 

 

 故にだ―――――

 

 

 

 

「……綺麗だ……今まで見たことが無いくらいにな」

「ありがとうございます……そう言ってもらえると、やはり着た甲斐があったと言うモノです♪」

 

 

 海未がこうも嬉しそうにしているので、俺はこれ以上何も言うことなど出来なかった。 ただ、ビジュアル的には申し分ないだろうし、特に男性諸君代表である明弘が血涙を流しながら喜んでいるので保障はとれた。

 

 というわけで、このまま本番を迎えることとなるのだった。

 

 

 

 

 

 観客席となる場所に移って、撮影が始まるのを待っていようかと思っていると―――――

 

 

 

「あっ! 蒼一さーん! こっちこっち!」

 

 

 千歌たちが手を振ってすでに待っていたのだ。

 

 

「なんだ、千歌たちはもうここに居座っていたのか」

「だってぇ! 蒼一さんと約束したその日からこの日をずぅ~~~っと待ち望んでいましたから!」

「そう言ってもらえると、なんだか嬉しい気持ちになるな。 それに……曜たちもいたのか」

「はいっ! 今日に至るまでずっとスクールアイドルの勉強とかさせてもらいましたから、その分期待大ですよ! どんな衣装が見られるのか楽しみですよ!!」

「あ、あぁ……それは楽しみにしたらいいと思うよ……」

 

 

 ことりが手心を加えて少々過激にはなったが問題はないだろうよ………

 

 

「そんで、向こうにいるのが……ルビィちゃんと……あの2人は?」

「あぁ、あのちょっとほんわかしている子は国木田花丸ちゃんで、奥の長い黒髪の子は津島善子ちゃんだよ。 2人ともルビィちゃんの友達で連れてきたんだって」

 

 

 曜ちゃんにそう説明を聞きながら見ていると、ルビィちゃんのちょうど横に立っているあの子が花丸ちゃんらしい。 見た目は本当にほんわかしてそうで、花陽みたいな雰囲気を感じてしまうのは、同類だからなのだろうか? 多分、マイペースなんだと思う。 それにある特定の部位の成長が著しいのだが………

 そして、花丸ちゃんの横で立っているのが善子ちゃんで、見た目がシュッと整った綺麗な顔立ちで一瞬で美人であると言うことがわかる女の子だ。 確か、ルビィちゃんが中学3年って言ってたから……彼女たちも同学年と言うことか……最近の子たちは中々に将来有望なのでは?

 

 

「へえ~、わざわざ友達まで連れてくるのかぁ……」

「まあ、ここ周辺で面白いことって早々見つからないからね……」

「それは、田舎あるあるってやつなの?」

「そういうこと~」

 

 

 呑気にそうしたことを肯定するとは、いいことなのだろうか? それとも間違っているのだろうか? そこら辺の加減が分からない俺には何とも言えない案件だわコレ。

 

 というより、多分かもしれないが千歌のその考えは違うのではないと思う。 彼女たちも一応花のある女学生たちだ。 女の子らしいかわいく、美しく、新しいモノに惹かれてくるのは当然のことだと思う。 その彼女たちのアンテナが今回のに引き寄せられてきた、そんな感じがする。

 

 まるで、μ’sがファーストライブを行った時に、今のメンバーたちが引き寄せられたみたいにな。

 

 

 ここに集まってくれた8人の子たちは、一体どんな思いでμ’sを見ていくのだろうか? ある意味で、それが気になっている自分がいたりもする。

 

 

 俺たちがみんなに影響を与え続けたように………

 

 

 

 

「さあ、始まるみたいだぞ――――」

 

 

 

 そんな誰かの想いを乗せながら、今日もまた彼女たちは輝きを放ち出す―――――

 

 

 

 

 

「それじゃあ、いくにこ―――――!」

 

 

 

 

 

『夏色えがおで1,2,Jump!』

 

 

 

(次回へ続く)




ドウモ、うp主です。


最近は風邪とかで頭の回転数がかなり落ち込んじゃってて執筆意欲がかなり削られている模様………

次回でようやく夏合宿編は終わるのである……てか、終われ。ねむい。。。。。


次回もよろしくお願いします。


今回の曲は、

μ's/『夏色えがおで1,2,Jump!』

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