蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

120 / 230
第108話


夜空の流星、地上の星の約束。

 

 

「ふわぁぁぁ~~~……風が気持ちいいにゃぁ~♪」

 

 

 2階のベランダに出て、海の方から吹いてくる気持ちいい風を全身に浴びている。 ちょっぴり、しょっぱいこの味ももう慣れちゃった。

 

 真姫ちゃんの別荘に来て、もう3日も経っちゃった。 気が付けば、明日で帰っちゃうんだよね? うわぁ~~ん……まだまだここにいたいにゃぁ~!!

 

 合宿と言っても、ここに来てやってきたことって言ったら………海で遊んだでしょ? ライブに向けての練習でしょ? そして、今日も海で遊んだ………あれ? よく考えてみれば、遊んだことしか記憶にないにゃ。

 

 でも、凛はそれでいいと思う。

 だってだって、μ’sのみんなと一緒に遊んだり、ご飯を食べたり、寝たりしたのは初めてなんだもん! かよちんとはよくお泊りとかしているよ。 あと、最近は真姫ちゃんも合わせて3人でお泊りすることもあるよ。 でも、凛にとって、みんなとこうやって楽しむことが出来るだけで最高に嬉しいにゃぁ~♪

 だからね…だからなんだと思うの。 とっても寂しいなぁ…なんて思うのはそのせいなんだと思う。 みんながいなくなるわけじゃないっていうことはわかってるよ。 たぶんね、みんなととっても近いところにいたから、それがちょっと離れるだけで落ち込んじゃうの。

 凛はこう見えても寂しがり屋さんだから……誰かといっしょにいたい……誰かとお話がしたいっていう気持ちが強くなってきちゃうの。 今もね、凛のこの気持ちに気が付いて話しかけてくれるのを待っていたりしていたり……にゃはは……そんな都合のいいことなんて起こるわけないよね………

 

 そう思いながら、今日で見納めになっちゃう夜の海を眺めている―――――

 

 

 

「んおっ? 凛か?」

「ふぇ? あっ、弘くん!」

 

 

 ひょこっと顔を出してきて呼びかけてきたのは弘くんだった!

 もぉ~後ろから急に声をかけてきたからびっくりしちゃったぁ……あれ? でも、今確か凛は誰かとお話しした言って思っていたような………ハッ……! こ、これってもしかして………

 

 

「噂をすればほにゃららだにゃぁ!」

「え? ん?? お??? な、なんだそら、まるで意味がわからんぞ?!」

「あれ…? 違ったっけ? 確かこう……何か考え事をしていたらその通りになると言うか……誰かのことを考えてたら現れたと言うか………」

「誰かのことを考えたら現れる……それって『噂をすれば影がさす』じゃねぇのか?」

「ああ!! それだにゃぁ! さっすが弘くんだにゃぁ! 凛の言いたいことを言い当ててくれるなんてすごいにゃぁ!!」

「え、あぁ、うん……そりゃあ、俺は凛よりも長く生きてるんだからよぉ、これくらいの雑学は知ってて当然なのさ」

 

 

 へぇ~やっぱり、弘くんはすごいにゃぁ~。 凛の知らないことをたくさん知っているし、凛のことをよくわかってくれている。 頼りになるなぁ~。

 

 

 

「……ん?…てことはさ、凛はさっきまで俺のことを考えてたってことか?」

「ふえっ――?」

 

 

 弘くんにそう言われると、ちょっとだけ頭の中がスカスカになったみたいな感じになった。 あれ? 凛はさっき弘くんのことを考えていたの……? えっ…で、でも、凛は誰でもって考えてて……あれ? あれあれぇ??? へ、変だにゃぁ……か、顔が急に熱くなってきたにゃぁ………!!

 

 

 

「……おいおい、どうしたよ? 顔が赤くなってるぞ?」

「……!! ち、違うにゃ……! り、凛は誰でもって考えていただけにゃー!!」

「お、おう……そ、そうか……ソイツはちょいと早とちりだったみてぇだな…たはは……」

「あっ………」

 

 

 お、思わず声を張り上げちゃって、弘くんを驚かせちゃったにゃぁ……なんだか、申し訳ないことをしちゃったよぉ………

 跳ね上がってきたテンションが一気に沈んでいくような気分だにゃぁ………

 

 

 

 

 

 ポンッ――――

 

 

 

「……にゃっ……?」

 

 

 しゅんと気分が落ち込んじゃった凛の頭にやわらかな感触が当たったような……それに、なんだかあたたかくって……気持ちがいいにゃぁ……♪

 

 くるりと頭を回してみると、弘くんがとってもやさしい顔をして、凛の頭を撫でてくれていたんだにゃ! わ、わわっ! ひ、弘くんが凛の頭を……! そう考えちゃうと、また顔が熱くなってきたにゃぁ………

 

 

「…ったくよ、どうしたんだよ急にさ。 凛らしくないぞ?」

「そ、そう言われても………」

 

 

 い、言えるわけないよぉ……弘くんのことを考えてたなんて………

 

 

 どうしてなんだろう…最近は弘くんのことをたくさん意識しちゃっている自分がいる。 最初は、凛のお兄ちゃんだったらいいのになぁ、なんて思うくらいだったのに……いつからだろう、こんなに胸がドキドキし始めてきたのは………

 

 たぶん……凛がかよちんに突き飛ばされて階段から落ちそうになったあの時、凛のことをやさしく受け止めてくれた弘くんのことが未だに忘れられないでいるの……

 

 本当に怖かった。

 ダメだと思ってた。

 

 でも、そんな凛のことを助けてくれた弘くんのことを、凛は忘れないかも………

 

 気が付けば弘くんと一緒にいると心臓がすごい音を立てるし、それに弘くんが他の女の子と話しているところを見ていると胸がチクチクして痛かったりするの。 凛、何か悪い病気にでも掛かっちゃったのかなぁ……? 真姫ちゃんに相談してみようかなぁ………

 

 

 

 

 

「おっ! あれは!!」

 

 

 パンッと風船が弾けるような声が耳に入ってくると思ったら、弘くんがあたりをキョロキョロと見回し始めたの。

 

 

「な、なになに? どうしたの?」

 

 

 何が起こったのか全然わからない私は、弘くんに聞いてみた。 そしたらね、目をキラキラ輝かせてこう言ったんだ。

 

 

 

「凛! 今の見たか!? 蛍が飛んでいたんだぜ!!」

「えっ?! 蛍! ホント?!」

 

 

 蛍を生で見たことのない凛にとって、それはとっても気になる言葉だった。 それがここで見られると思おうと、わくわくしてきちゃう!

 

 

「多分、森の中ならいるかもな……凛、行くか?」

「うん! いくいく!」

 

 

 嬉しくなっていた私は、弘くんの言葉にすぐ頷いて応えちゃった。 そして、一緒に階段を下りて行って外へ出かけていったの。

 

 

 

 懐中電灯を片手に前を歩く弘くん。 その後ろを追いかけるように歩くのが凛だよ。

 こんなまっくらな森に入ったのも初めてかも……見るモノすべてがとっても新しく見えて、目がくるくるしそうだにゃぁ………

 

 

「凛」

 

 

 凛のことを呼ばれて、ちょっぴりドキッとしながら前を向いてみると、弘くんの手が凛の前に差し出されていたの! えっ…こ、これって……もしかして………

 

 

「暗いし不慣れな場所だからよ、はぐれないように手を繋ごうと思ってよ」

 

 

 や、やっぱりだ……! こ、このタイミングで手を繋ぐなんて反則だよぉ……まだ、心の準備が整ってないのにぃ~……

 

 

「どうした? もしかして、イヤだったか?」

「そ、そんなことないにゃっ!」

 

 

 と言っちゃって、勢いで弘くんの手を握っちゃったよぉ~……/////

 ふわぁぁぁ……弘くんの手、とってもあったかいにゃぁ~……思わず頬擦りしたくなっちゃうような……だ、ダメだよぉ!! そ、そそそそんな恥ずかしいことできるわけないにゃぁ!! 大体、手を繋ぐことだってこんなに戸惑っちゃってるのにそんなことできないにゃぁー!!

 

 

 

「よし、ちゃんと握ったな? それじゃあ、探しに行くとしますか♪」

「う、うん………/////」

 

 

 凛の手を引っ張って、ゆっくり前に進んで行こうとする弘くん。 それをとってもぎこちなく歩いているんだと思う……足が凛の思ったように動いてくれないの………変だなぁ、いつもだったらちゃんと歩けるのに……

 緊張…しているのかなぁ……? 胸がこんなにも強くドキドキするのは、ライブをやる直前のあの瞬間に似ていた。 でもあれは、ステージの上で歌って踊ることが出来るワクワクする気持ちも一緒にあったからとっても気持ちが良かったの。

 でも……今はちょっと違うの。 なんて言うか、こう…胸が痛くなるっていうのかなぁ…それに、息苦しかったりもするの……どうしてなのかなぁ……?

 

 

「凛、そんなにゆっくり歩いてたら置いて行っちゃうぞ?」

「そ、そんなこと言わないでよぉ!」

 

 

 そんなに急かさなくたっていいじゃない! 凛には凛のペースがあるんだからいいでしょ!?………って、普通だったら言っているかも。 でもね、凛は知っているよ。 弘くんはさっきから凛のペースに合わせて歩いてくれていること、ずっと凛の方を向いて気を遣ってくれていることも全部知っているんだよ。 だからね、凛もちょっとだけ頑張ってみようかってなるの。

 

 でも、この真っ赤になった顔だけは、あまり見られたくないにゃぁ………/////

 

 

 

 あれから数十分くらい経ったのかなぁ?

 結局、弘くんはペースをあげることなくゆっくりと歩いてくれた。 でも一歩一歩ちゃんと踏み込んで歩いているんだってことが感じられるよ。 弘くんって、本当にやさしいよ。 言わなくても分かるよ。 みんなの見てないところでこっそりと手助けをしているところがね、弘くんらしいと思うし、弘くんのいいところだと思うよ。

 蒼くんがいなかった時だって、一生懸命なって頑張っていたもんね。 みんなは弘くんのことをちゃんと分かっていないようだけど、凛はちゃんと知っているんだよ。

 

 

……って、どうして凛はこんなに弘くんのことを考えちゃってるんだろう!? そ、それに、弘くんのことをいろいろ知り過ぎじゃないかにゃ!? ち、違うよ! べ、別に弘くんのことが気になり過ぎちゃって、つい目が追いかけちゃってたり、弘くん何をやっているのかなぁ…なんて言ってこっそり見ていたなんてそんなこと無いんだからね!

 

 はっ、はうぅぅぅぅ……また考えちゃったぁ……気にしないようにしても考えちゃう……凛、やっぱり何か変な病気にかかっちゃったっぽい。 こんなに弘くんのことを考えて苦しくなるなんて変だもん……

 

 

 そう言えば、かよちんも前に同じようなことがあったって言ってたような……あれって、何が原因だって言ってたんだっけ? う~ん……思い出せないにゃぁ……わかればお薬をもらって早く治せると思うのになぁ……

 

 

 

 

「……んしょっと。 おぉ…凛、見てみろよ」

「どうしたの?……うわぁぁぁ……なにこれぇ……!?」

 

 

 森の道を抜けて少し拓けたところにやってくると、今まで見たことのないくらいのすごい景色が広がっていたの!

 

 

「うわぁぁぁ……小さい光がたくさん動いててきれいだにゃぁ……!」

 

 

 凛たちの前に見えたのは、たくさんの小さな光。 それが一つ一つ動いてて、とってもきれいに見えるの。

 

 

「これ全部、蛍みたいだな。 しかし、こんなにたくさんの蛍を見たのは始めてかもなぁ……」

 

 

 弘くんも目の前の景色をとっても嬉しそうに眺めているにゃぁ♪ 凛もね、見れてとっても嬉しいんだよ♪

 

 

 

「本当にきれいだな……まるで、星空みたいだ……」

「えっ……?」

 

 

 急に凛の名字を呼ばれてドキッとしちゃった。

 

 

 

「ひ、弘くん…! い、いま…凛のことを言ったの…?!」

「えっ? 俺はただ星空って言っただけで……あっ……」

 

 

 凛がそう言うと、弘くんは顔を少し赤くし始めだした。 そして、ちょっと慌てたような感じで言ってきた。

 

 

「あ、いや…あれだよ! ほら、夜空に浮かぶ星とさ、とってもよく似てるじゃん?! そ、それを見てそう感じただけさ!」

「そ、そうだよね!! り、凛、ちょっと勘違いしてたみたいだにゃ!」

 

「「あはっ、あはははははははは!!!!!」」

 

 

 2人揃って変な笑い声を上げちゃってる。

 しばらく笑ってそれが止まると、静かな時間がやってきた。 何も言わないこの時間が、なんだかとっても怖い。 変な汗もかいてきたし、胸もね、さっきよりもかなりひどくドキドキしちゃってて苦しいよぉ……

 

 今すぐに、逃げ出したくなるような、そんな気持ちにもなってきたよ………

 

 

 

 

 

「凛……あのな……」

 

 

 凛から顔を逸らしたままの弘くんが、静かに声をかけてきた。

 

 

「あのな……勘違いしてほしくないんだが……これは決して、凛がきれいじゃないって言う意味じゃないぞ……」

「えっ……?」

 

 

 不意にそんなこと言われるなんて……思わず目を見開いちゃった。 すると、弘くんは続けて話だしたの。

 

 

「凛はさ、穂乃果みたいにヤンチャでちょっぴりドジなところがあるけどさ、そんなところがかわいいと思う。 それに、その無邪気に笑う姿や元気いっぱいにはしゃぐ姿が、まるで星のようにキラキラ輝いているようにも見えるんだ。 だからさ、決して凛がきれいじゃないというわけじゃないんだよ……」

「ひ、弘くん………」

 

 

 始めてかも……弘くんからそう言うふうに言われたの……前から凛のことをかわいいと言ってくれていたけど、こんなにも褒めてくれたのは初めてにゃぁ……

 そのせいかなぁ? いまね、とっても嬉しい気持ちになってるの…! 今までに無いくらいにとっても……だから、この気持ちを…"ありがとう"の気持ちを伝えたいの……!

 でも、どうしよう……凛、いますっごくドキドキしちゃってて、何をすればいいのかわからないよぉ………

 

 もじもじしながら、ちょっと考えていると、いま凛の手は弘くんの手と繋がっているんだってことを思い出したの。 それなら……こうしてみてもいいよね?

 

 

 思い立った私は、繋いだ手の方に身体を寄せ始めると弘くんの腕にギュッとしがみついた。 ちょっと恥ずかしいけど、身体に抱き付くよりも恥ずかしくはないの。 弘くんはちょっぴり驚いた顔をしていたけど、これが凛ができる精一杯の気持ちだよ……ちゃんと、受け止めてほしいなぁ………

 

 

 

「ありがとね、弘くん……」

 

 

 小さく、本当に小さな声で弘くんにお礼を言ったの。

 

 

 

 

 そしたら、それに答えるかのように、凛の頭にまた手をおいて撫でてくれたの。 そしてね―――

 

 

「また、いつか2人で見に来ようか……」

 

 

―――ってね、言ってくれたの。

 

 

 

 

「………//////」

 

 

 凛はもう……嬉しすぎるよ……

 凛だけにそう言ってくれたことがとっても嬉しくってね、胸がいっぱいだよ! でもね、苦しくないの。 むしろ、とっても気持ちがいいの! こんな気持ちになったの始めてかもしれないにゃぁ~♪

 

 

 

 

 

 そんな時にね、やっと思い出したんだ。 かよちんが教えてくれた、この胸が苦しくなる病気のことを………

 

 それはね―――

 

 

 

 

 

 

 

『恋』って言うんだって―――

 

 

 

 

 

 そっか、凛は弘くんのことが―――

 

 

 

 

 

―――好きだったんだね

 

 

 

 弘くんは、凛のこと……"好き"なのかなぁ……?

 

 ううん、簡単には教えないで。 凛も心の準備をしたいから……でも、準備ができたらいつでも来て、凛はいつでも待っているからね!

 

 

 約束だよ―――♪

 

 

 

 

 

 その時、小さな流れ星が夜空を駆けて行ったことを、凛は知らなかった―――

 

 

 

(次回へ続く)




ドウモ、うp主です。

さて、みなさんはお忘れしてないでしょうか?
もう一人の主人公とヒロインの存在を?

ちょうど、去年の生誕もこの2人の話をしましたが、今回はそれから発展したようなかたちになりました。

他のメンバーたちが蒼一に靡く中で、1人だけ違う方向に走っていく凛。でも、その先には必ず答えがある。そう信じて、執筆を続けています。

はてさて、どんなエンディングが待っているのか楽しみでしかたないですね。この作品の中で、唯一のピュアですからね!この子だけは、淫らなことはさせないから!!(これはマジで)


では、次回もよろしくです。

今回の曲は、

KOTOKO/『Trust You're Truth~明日を守る約束~』

更新速度は早い方が助かりますか?

  • ちょうどいい
  • もっと早くっ!
  • 遅くても問題ない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。