【前回までのあらすじ】
音ノ木坂学院の理事長(ことりの母)いずみさんの提案により、ひょいなことからμ’s保護者会なるものを開催することとなった俺だが、こうした立場で話すのに少しだが緊張感を抱いていた。 けれど、保護者との意見交換も十分に行い、無事に閉幕させられそうだ。 今後の活動や合宿の件など、ラブライブに向けての道のりなどの説明も十分に行うことも済んだ。
そして、最終的に全員からの了承をいただき、これまでどおりに活動し続けていくことが出来ることとなった。
しかし……次の瞬間、この保護者会は一変する………ッ!!
―
――
―――
――――
[ 広報部部室内 ]
『以上で、自分からの発表を終わりたいと思います―――――』
ほうほう、これで無事に
おおっと、説明が遅れましたね。
私たちは今、ここ広報部の部室に入っていまして、蒼一さんたちの様子を一部始終確認しているところなんですよ。 え? どうしてこんなところにいるのかですって? そりゃあ、蒼一さんの新たな一面が見れそうな気がするからですよぉ~♪
そして、もう一つの目的が………
「へぇ~、蒼君ってお母さんたちの前では、キリッと引き締まっている顔をするんだねぇ~。 何だか、ますます好きになってきちゃった♪」
「ふわぁぁぁ♡ 蒼くんのああいう顔、いつ見ても素敵だよぉ………ことり、ああいう顔をされて見つめられたら10秒も持たないよぉ♪」
「お母様を前にしてあの態度。 やはり、私が見込んだだけのことはありますね、蒼一。 これならば、お母様にも納得していただけますね」
「うふふっ♪ やっぱり蒼一は、カッコいい顔がよく似合うわね。 強引に攻めてきた時のことを思い出すわ♡」
「はわわわ! 蒼一にぃ、すごいよぉぉぉ! かっこいいよぉ!! あの顔で呼ばれたら、花陽は……花陽は………!!」
「にゃにゃにゃぁ~♪ 凛はこっちのかよちんも好きだにゃぁ~♪」
「むぅ~……お母様も来てくださったらよかったのになぁ~………そしたら、蒼一のことを紹介しようかと思ったのに………」
「ウチもなぁ、仕事が忙しい言うて来れないって言われてもうたんや……ちょっと残念やなぁ………」
「まあ、今回来れなかったのならまた次回ってことでいいじゃないのよ。 なぁに、蒼一だって逃げることはしないだろうし」
と言った感じで、μ’sのみなさんがここに集まって様子を伺っているわけなんですよ。 まあ、アレなんでしょう。 自分たちのお母様方に蒼一さんの魅力というモノを直に知ってもらおうとしているのでしょうね。 何ともまあ、大それたことを………
「かっかっかっ! 兄弟のヤツ、
「――――って、何で明弘さんもここにいるのです? 今日は蒼一さんと共にあちらにいる予定では?」
「いやぁ~、ちょっと野暮用でこっちにいるってわけでな………それに頼まれちまったし………」
「へ? それはなんのことです?」
頭をかきむしりながら苦笑気味に話す明弘さんの言葉の中に、何やら意味のありそうな言葉がチラホラと………何やら嫌な予感しかしないのは何故でしょうか………?
『――――って、何を言い出すんですか、いずみさん!!!』
すると、モニターから蒼一さんの大きな声が聞こえまして、すぐさま私の注意はそちらの方に向きました! そして、そこから聞こえてきたのは、予想だにしていなかったことでした!
『何って………蒼一君の将来は、ウチのことりのことを娶ってくれるのよね?』
「……………」
………これには、さすがの私も激震せざるをえませんでした………
その一方で、ことりちゃんが異常なまでに舞い上がっていたのは別の話で…………
―
――
―――
――――
[ 保護者会会場 ]
おいおいおいおいおい………聞いてないぞ、そんなことぉ……!!!
どうしてこうなった? どうしてこうした状況に一変してしまったんだ?
例えるのなら、最も信頼していた弟子に背後からア○ッド剣で刺されて殺されるあの優雅なおじさんみたいな気持ち! そうした行動がわかっていたのなら、すぐさま回避魔法でも使って戦略的撤退でも行っていただろうに、まったくふざけるなよ!!
しかしまあ、あの会心の一撃ともとれるあの発言が、ちょっとした代理正妻戦争になっているのですが………
「ちょっと、いずみ!! そんな大事なことを勝手に決めないでもらえる?! 蒼一くんにはね、真姫ちゃんが一番ふさわしいのよ? それはあなただってわかっているでしょ!?」
「あら美華。 残念だけど、蒼一君とことりの関係は、かなり前から形成されているのよ? そうね、ことりが生まれて数年程度からの付き合いだから………ざっと、14,5年ってとこかしらね?」
「だからどうしたと言うの、いずみ? 付き合いというのであれば、ウチの穂乃果との関係も同じくらい長いよ? それに、こっちは家族ぐるみで付き合いをさせてもらっているのですから、こちらの方が有利だと思うのだけどね?」
「あらあら、御三方はお付き合いの時間ばかりを気にして最も大切なことをお忘れになってますよ? 蒼一さんに必要なのは、支え続けていられるほどの能力を兼ね備えているかですよ? そうした意味で私の海未さんは、文武両道で炊事洗濯などの家事を難無くこなしてみせるまさに良妻賢母となれる素質があるのですよ?」
いや、怖い怖い怖い怖いッ!!! みんな揃ってすんごい笑顔をして見せるんだけど、その面から垣間見える鬼のような形相が俺の背筋を凍らせるッ!! それに、4人ともあまり怒らないイメージが強いからその反動がバカみたいに強くって………もう、全力で帰りたい………!!
「確かに、海未ちゃんならば言いお嫁さんに成れるかもしれませんけど、ウチの穂乃果だって負けてはいませんよ? 穂乃果の蒼一くんに対しての気遣いは素晴らしいのですよ? 一途なその姿に心を惹かれないはずはありません!!」
そうムスッとした顔で言いきるのは、穂乃果の母親であるめぐみさんだ。
確かに、穂乃果の優しさは俺の芯を突いてくることが多かったりするさ。 それに、何やかんや言って俺の中では一番信頼していると言ったら穂乃果だって言えるかもしれないけどさ、逆にその一途っぷりに殺されかけたのですが………
「そんなことだったら、ウチのことりの一途っぷりはすごいモノよ? 何てったって、蒼一君のためなら、自分を犠牲にしてしまうほどなんですもの。 健気だけども一生懸命になっている姿に、私も応援したくなっちゃうんだから♪」
澄まし顔で惚気るように話すのは、ことりの母親であるいずみさん。
いやいや、ことりのそれはすごいとかそういうレベルじゃないから。 あまりにも強すぎて、深夜の時間に俺の家に普通に侵入してきては、俺からナニかを奪おうとしちゃうレベルだったから! 危うく貞操の危機を迎えそうだったから!!
「あらあら、それでしたら海未さんも可憐な女の子ですよ? 蒼一さんに好かれるためにと、日々の稽古が終った後に、1人で己を磨き続けているのですよ。 そしていずれかは、私をも超える素晴らしい女性となってくれるに違いありませんね♪」
圧倒的な清楚な様子で淡々と話しするのは、海未の母親である光里さん。
海未……お前1人でそんなことを…………って、ちょっと待て。 光里さん? その言い方だと、まるでいかがわしい方向性に走っている人にしか聞こえないのですが?! 違うよね? 最近、かなり積極的になってきているのがその特訓の成果じゃないよね!?
「みなさん揃っていろいろ言っておりますけど、ウチの真姫はこれでも蒼一くんと共に過ごしてきた仲なのですよ? しかも、1か月近くも共にしたのですから最早一心一体、これ以上の関係なんて無いと思いますけど?」
そして、とんでもない爆弾発言をまるで当たり前のように口にするのは、真姫の母親である美華さんだ。
おいぃぃぃぃぃ!!! 美華さぁぁぁぁぁん!!!! それ、絶対に言っちゃダメなヤツだよ! なんで寄りによってそんな俺の羞恥すらも曝け出させるような事案を放り投げるんですか!?
………って、何だか急に寒気が……嫌な予感が………
そう考えていたら、3人の視線がこちらに向いて………う、うわあああぁぁぁぁぁ!!??? 怖い怖い怖い!!! 凝視してるんじゃなくって睨みつけてきているじゃないですか、やだァァァァァ!!! それに、こっちに段々と近付いてきてるのですが、来ないで! 一気にこっちに来ないで!!!
そんな俺の願いも儚く、めぐみさん、いずみさん、光里さんの3人は俺の目の前までやってきては、今まで見たこともない満面の笑みを俺の真ん前に近付けてくるのだ! てか、その笑顔が逆に怖いのですが!!!
「へぇ~……蒼一くんは私たちの知らないところでそんなことを………あなたにお似合いなのは、穂乃果よ? 穂乃果のことを悲しませるようなことをしたら………赦さないわよ………♪」
待って、最後の『♪』がとても意味深&鬼胎感をMAXにさせるのですが!! それによく見たら、めぐみさんの瞳孔が開いてるぅぅぅ!! 瞳の水晶体が黒々と濁っていますが、それは正常なのでしょうか? 正常だと言ってよ!!
「そうだったわねぇ……そう言えば、その話を美華にしちゃっていたことを忘れていたわぁ………だったら、それ以上のことを私から提供しないといけないわね………大丈夫よ、ここは私の学校なんだから………」
待って!!! いずみさん、それ絶対にヤバイヤツ!! 1教師が絶対に犯しちゃいけない領域に片足を突っ込んでますよ!!! そして、顔!! それ女性が見せちゃ危ない顔をしてますから今すぐに戻して!!
「そうですか……では、私もみなさんに負けないように一肌脱ぎましょう。 蒼一さんがいつでも御慰めさせることが出来るよう、我が家に代々受け継がれております秘術を伝授させていただきますので、もうしばらく辛抱して下さいね」
いいえ、辛抱とかしておりませんのでご安心して下さい。 というか、もうこれ以上のキャラを崩壊させないでください! てか、やっぱさっきのアレってそういう意味だったの!? やっぱ家元ってそっち系も得手だったりするわけ?! それと、半開きの瞳から垣間見える眼光が怖いのですけどォォォ!!!!
というか、何なんだよこの集会は!? 元々、何をするための集まりだったのかまったく思い出せなくなっているんだけど! もう、よく分からん感じで親が勝手に取り合いを始めているような光景になっているのは、これはいかに!? みんな目が明らかに死んでいるのは、これはいかに!!?
今、3人の身体で阻まれて見えにくくなっているけど、美華さんが勝ち誇ったみたいなドヤ顔を見せているんだが、まだ俺はそう決めちゃいないんだぜ!! というか、この状況で俺に拒否権はあるの? 絶対にないよね? 知ってる、わかってる。 元々、そう言う感じだったからな、ちくしょぉぉぉ!!
そしてさ、みなさんせいで蚊帳の外と化っしてしまった凛の母親の結さんと花陽の母親の美咲さんをどうするのさ。 こんな様子を見せたらドン引きしちゃうじゃないか………
「あ、あのっ………!」
そう声を上げたのは、美咲さんだ。
ほらさ、美咲さんもこの状況に痺れを切らしてしまったじゃないか。 お願いします、この暴走気味の方々をどうか静めてやって下さい。
「そ、蒼一くんには………
………花陽ちゃんがお似合いなんですぅ………!!」
………おい、ちょっと待ってェェェ!!???
美咲さん?! なんであなたもこれに参戦しちゃっているんですか!? やめて下さいよ、これ以上集まったらカオスでしかないから!!
そして、結さんは何かよく分からんけど、そこで爆笑してないで助けて下さいよ!! 美咲さんだけでも取り押さえて! なんか、こっちの方にずいずいと近付いてきているからぁぁぁ!!
何もしなくとも、自然にカオスな展開へと引き込まれてしまうこの状況に、目も当てられない………もういっそのこと、窓を突き破って逃げ出したい。 あっ、だめだ。 ここ3階だから落ちたら死ぬわ。
あっはっはっは………危機一髪とはまさにこのことかぁ!!! 黒ひげよりかマシだと思うが………
ビシャン――――――!!!!
『――――ッ!!!!!???』
只今、カオスワールド展開中となっていたこの状況で、突風が吹き抜けたかのような勢いで扉が開かれた! そのあまりの突然の出来事に、俺を含む全員が息を止めて視線を集中させた。
その視線の先にあったのは――――――――
「………はぁ………いずみの声が聞こえたと思って来て見たが………なんだ? 今からナニか始まる予定だったのか?」
なっ……なんだ、この人は………!?
剣のように鋭く突き刺さる声がこの場の空気を一変させた。
そこからコツコツと床を打ち鳴らして入ってきたその女性に、一瞬、目を奪われた。 日にかざすと光がその糸の間を透き通り輝かしい光のような金髪が俺の視線を弄ぶ。 背中まで伸びるその髪が歩くたびに揺れると、無意識に瞳がその一本一本を凝視してしまうほどだ。
また、女性としてはやや低めのドスの利いた声質が、グッと俺の中での印象を強くさせる。 そして、それに伴う鋭い表情が、その言葉の強さを最大限に引き上げる。
そして、すらりと細く伸びる身体がここにいる誰よりも高くそびえ立つ。 モデル体型とも言えるその美しい身体つきからは、自信と高圧的な雰囲気を漂わせていたのだ。
この女性を一言で例えるのなら、金細工で彩られた鋭利な聖剣――――その全身が人を刺し貫いてしまいそうだったのだ。
「あら、エリーシャ。 ようやく来たのね♪」
「すまない、かなり時間が掛かってしまったようだな」
「いいえ、今から始まったようなモノよ。 それと、またここをヒールで歩いてるわよ?」
「おっと、それは失礼した。 何分、ここ最近は海外にいる方が多くてな、慣れないものだよ」
初めて見るその人に対して、いずみさんは何の躊躇もなく話しかけると、鋭い表情をしていたその人の表情が一瞬で穏やかなモノになった。 その様子は、まるで親友と話し合うかのようなそんな感じだ。
「あ、あのぉ………いずみさん、そちらの女性は?」
「あぁ、蒼一君は始めましてかもしれないわね、彼女は……」
「いや、いずみ。 ここは私に言わせてもらいたい」
いずみさんの言葉を遮り、そのまま俺の方に数歩近付くとキリッとした姿で立った。
「ハジメマシテだ。 私は、絵里と亜里沙の母親、絢瀬・セリーナ・
「えっ?! あ、あなたがエリチ…絵里のお母様……! それに、俺の名前まで……」
「ソウイチのことは娘からよく聞いてるさ。 しかしまあ、絵里も中々の男を気に入ったようだな………」
そう言うと、青い宝石のように煌めかせた瞳で俺のことを凝視し始めた。 強い眼力だ。 まともに見てしまうと、思わず身を竦ませてしまう程の威圧を感じとってしまう。
容姿は確かにエリチカとそっくりのように思える。 だが、やはり肝心の中身が全くの別物だ。 いままで逢ってきた大人の中でも、指折りの存在……正面からぶつかっていったらすぐに打ち倒されかねない、そんなお人だよ。
両手が汗で濡れたぎる中、この人は思わぬ行動をとった。
クイッ―――――
「えっ………?」
『―――――ッ?!!』
絵里沙さんは、すらりと伸びる背中を折ると、俺の顔近くにまで高さを合わせた。 そしてどうしたことか、芸術的な細い指が俺の顎に添え出されると、クイッと顎を持ち上げたのだ! その一連の無駄のない動作が瞬間的に行われたのだ。 目にも留まらない…まるで、時間が凍ってしまったかのようにも思える。
すると、そのすべてに乗せられる
「―――私の、エリーチカの夫となりなさい―――」
『―――――ッ!!!!!???』
稲妻のような衝撃が全身に叩きつけられた――――いや、凍り尽くされてしまったかのようだ!
そして、その冷気を帯びた言葉が吐き出されると、ここにいる全員の時間さえも凍結させてしまった!
先程まで、暴走気味だったいずみさんたちでさえも、目を見開いて呆然と立ち尽くしていたのだった。
「あ………い、いや………そ、それは…………」
呂律が回らない。 舌が凍ったように硬くうまく動いてくれないのだ。
「おや、ナニか問題でもあるか? 安心しろ、私たちのところに来ればソウイチのことも我が子のように優しく扱ってやるぞ?」
ゾッとするような言葉が俺を呑みこもうとしている。 この人が見せるすべてが、俺のことを支配しようと畳み掛けている。 すべてを屈服させようとするその姿は、まさに女帝。
いつしかエリチカが見せたあの姿の
「え、エリーシャ……! 蒼一君が困っているじゃない、もっと穏やかになりましょう?」
「話しかけないでくれ、いずみ。 私は、ソウイチと話をしているのだ。 いまは私が彼に言い寄る番ではないのかな?」
辛うじて動きを見せたいずみさんに目もくれず、俺をひたすら見続けたまま言葉蹴りをしたのだ。
この人は本気だ。
本気で俺のことを落としに掛かってきているッ!! 俺の何がこの人を本気にさせたのか分からない。 エリチカのためか?
多分、それも含まれているだろうが………けど…………!!
両手を強く握りしめる。
今ある力を一気に集中させるんだ。
こんなところで怖じ気ついてはダメだ。
俺のこれからの道のりには、これ以上のモノがあるはずなんだ。
それに、彼女たちを受け入れたあの日に俺は誓った………
だから、負けたりしたくないんだ………!!
口に溜まった唾を一気に飲み込み気持ちを切り替える。 護ったらだめだ、攻め続けていくんだ!
「エリーシャさん………残念ですが、あなたのその言葉に俺は聞き従いませんよ」
「ほぉぉぉ………ナニを言うかと思えば…………」
俺の言葉が伝わると、絵里沙さんはギロリと眼つきをさらに鋭くさせ、険しい顔つきになった。 癇癪に触れただろうか? みるみる眉間にしわが寄り始めているのが見てとれる。 威圧もさらに増していった。
「ソウイチ、残念なのはキミの方だ。 私のクニでは、女の方に交際の決定権が与えられている。 私が『よし』と言えば付き合えることができ、『帰れ』と言えば付き合えないのだ。 だから、私がここで『エリーチカの夫となれ』と言えば、キミは何も言わずとも我が家の者になるのだ。 喜んでもよいのだぞ……?」
言葉が吹雪のように身体に撃ち付けられる……! ミシミシとどこかが軋むような音がする。
くっ……けど、そんなんで負けられないんだって………そんな壁なんて壊してやるんだ……!!
強い意志を持ち直し、俺の顎に伸ばす腕を掴むと、絵里沙さんを凝視した。
「……何度言いましょうが、関係ありません………俺はエリーシャさんの言葉には聞き従いません……!」
「そんな権利、キミには………」
「いやある!! 大アリだ!! そっちの国ではそうかもしれませんが、ここは俺の国です! そしてここでは、俺が誰かを決めることが出来るんです! そこに何者の干渉は赦されることは無い………誰と寄り添い、添い遂げるかのすべては俺に掛かっているんです!! エリーシャさんじゃありません、俺なんです!!! この権利だけは、誰にも譲るわけにはいかないんです!!!」
ギッと目を凝らして絵里沙さんを睨みつけるように見た。
我ながら大胆なことをしたモノだ。 初対面で尚且つ強面のエリチカの母親に対して、ガンッと言っちまったからさ………あーこりゃあ、ドヤされそうな気がするな………
見るからに顔全体に暗い影を落として目を光らせているのだから、かなりのモノなのだろうよ。 ヤバイ、今になって動悸が激しくなってきたわ………一体何をされるのやら…………
諦めるかのように全身の力を抜いたと同時、空気が変わっていたことに身体が理解した。
どうしてだ? その異変に気付いた時には――――――
――――絵里沙さんの表情が綻んでいたのだ
「……ふっ、ハッハッハッハッハッハッ!!!!」
するとどうしたことだろうか、絵里沙さんは顎から手を離してその場で大きな声を上げて笑い出したのだ。 そのあまりの変貌っぷりに、ただ唖然とするほかなかったのだ。
「いや、すまんすまん。 少々手荒な真似をさせてしまったようだな。 これは私なりにキミのことを試させてもらったよ」
「試す………?」
いや、どう見ても本気だったのですが………なんて、この場では言えないな………
「もしキミが私の誘いを喜んで受けたならば、その程度の男として絵里から引き離そうと思ったよ。 だが、キミはそうしなかった。 しかも、それだけじゃなく私に盾突いてきたのだ。 フフッ、久しぶりに血が騒いでしまったよ」
「……ってことは……その……なんですか?」
「ふっ、とぼけたことを。 認めてやろう、絵里との交際をな」
「え?」
「絵里がどうしてソウイチに惚れたのかよくわかった気がする。 それと訂正しよう、キミは“中々の男”ではない“イイ男”だ。 ますます気に入ってしまったようだよ」
そう眉を引き締めつつも緩んだ口で嬉しそうに言葉を交わす様子を見ると、こっちが素の姿なのだろうと判断できる。 それを見ると、こちらも身体の緊張が解けて、肩が急に重くなったように感じられた。
山場は乗り越えたってことなのか?
「さて、ソウイチの想いも分かったことだし………さあいずみ、飲みに行こうじゃないか!」
「えっ?! 今からなの!?」
「当然だろう? なんだ、飲めないとでも言うのか? そうだな……キミたちも一緒に飲むだろう?」
『えっ!????』
「安心しろ、全部私のおごりで構わない。 それならどうだ?」
『御言葉に甘えて!!!!!!』
おい、飲兵衛!! まだ、日があるのにいきなり酒盛りかよ!!! 違う意味で盛んな人たちだな!!!
俺のことを引っ掻き回すわ、いきなり嫁げと言われるわ……もう散々な日だな………今日1日だけで、1週間分の疲れが出てきたみたいだわ。
すると、絵里沙さんが再び近づいてくると、「私のかわいいエリーチカのことを頼むぞ」耳打ちをしたのだ。 その返答に時間は要らない。 すぐに「任せて下さい」と撃ち返したのだった。
ただ―――――
「だが、あまり女を待たせるものではないぞ。 まあ、周りにあんなイイ女がいてしまっては目が眩み難しいことだろうがな――――」
――――と、何か意味ありげな言葉を残し、いずみさんたちを引き連れて行ったのだった。
………アレ……まさか、バレてる………? 俺が、8股かけていることを………?
もしそれが事実なのならば……やっぱ、あの人メッチャ怖ェェェ!!!!
ある意味で、寿命が縮みそうになったのだった。
「いやぁ~、今日は楽しいモノを見させてもらったよ~蒼一くん! まさか、美咲のあんな姿を見るだなんて思いもしなかったわ♪」
「やっ、やめてよぉ~……恥ずかしいよぉ~……」
未だに笑いながら話しかけてくる結さんと、赤面する美咲さんがここに残っていたのだ。
「いや……というか、もういろいろと疲れましたよ………」
「まあまあ、一応御疲れと言っておくよ。 この調子で、凛ちゃんのことも頼んだよ♪」
とても楽しそうに話す姿を見ていると、本当に凛のように思えてきた。 それに、その笑っている様子がやさしく、疲れた俺を癒してくれるのだ。 ありがたいな。
「これで、“茜ちゃん”と“愛ちゃん”にいい報告が出来そうだなぁ~♪」
「あ~、そうだねぇ~。 私も“智成くん”に伝えることが出来そうだよぉ~♪」
「え゛っ?!」
今、雷が落ちてくるような衝撃が、俺の身体を走り抜けた!
聞き間違えか? いや、そんなはずはない………だ、だって、今確かに“あの人たち”の名前が……!
震えだす身体に鞭打って、恐る恐る聞いてみる。
「あ、あのぉ~………その、茜さんたちってどなたのことで………?」
「あぁ、茜はウチの長女。 愛は次女のこと。 2人とも凛ちゃんのお姉ちゃんでねぇ~何と言うか活発なんだよなぁ~……まったく、誰に似たのやら………」
「それは絶対に結ちゃんだと思うよ………あ、智成くんは花陽ちゃんのお兄ちゃんだよ。 とっても頼りになるお兄ちゃんで、花陽ちゃんがベタベタとしちゃうのよぉ~♪」
………ヤバイ、動悸が早くなってきた………それも悪い意味で……!!
俺の考えが正しければ……そう、この人たちが言っているのは、間違い無く“あの人たち”だ!! そ、それじゃあ……確信的なことについて聞いてみるか………
「それでなんですけど………“賢吾”って名前を聞いたことはありますか?」
するとどうだろう。 2人の顔が急に晴れやかになって、まるで知っている素振りを見せ始めたのだ。 あっ、これは…………
「おぉ! 賢吾のこと知ってるの!? いつも茜ちゃんたちと遊んでくれたんだよ~。 今は茜ちゃんたちと同じ大学に通っているんだよ!」
「そうそう、ウチの智成くんも同じ大学なんだよぉ~。 それに、賢吾くんとはずっと仲良しみたいで、よくウチに来てくれていたわ~♪」
あっ………確定だわ。
「すんません………賢吾ってのは………
………俺の兄貴なんです………」
その事実を教えた瞬間、御二方驚きの表情を見せては、確かに似てる! などと口々に言ってくれたのだが、内心穏やかじゃないのだ。
まさか、凛と花陽の兄弟が、俺の先輩たちだったからだ………
―
――
―――
――――
ちなみに―――――
[ 広報部部室内 ]
「だ、誰かぁ――――!!! メディ―――ック!!! あっ、ここにいたか。 でも、ダメだ。 安らかに逝っちゃってる!!!」
何と言うことでしょう………モニターを眺めていただけなのに、8人が次々と悶絶して倒れて行くこの様子を何と言えばよいのでしょうか………?
「洋子ちゃん………これって、カオスって言うのかにゃ?」
「はい、その通りです」
その後、蒼一さんに頼んで蘇生してもらいましたとさ
(次回へ続く)
どうも、うp主です。
カオス成分を原文の3割程度薄めました()
さすがに、もっとカオスにしたら読みにくいので控えめになりました。。。。
そんで、今回までに、希のお母さん以外は全員登場させることが出来ましたわ。ここまでは、予定通りですね。個人的には、海未と絵里のお母様が好きだったりするんです、ハイ。
いつかは、希のお母さんの登場を………
そして次回、あの姉妹とお兄ちゃんが……!!
今回の曲は
田村ゆかり Feat. motsu/『パーティーは終わらない』
更新速度は早い方が助かりますか?
-
ちょうどいい
-
もっと早くっ!
-
遅くても問題ない