蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~   作:雷電p

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第94話


みつけよう、キミの指標

 

【前回までのあらすじィィィ!!!】

 

 

 俺の大学の先輩である、槇島 沙織(通称:沙織・バジーナ)先輩による突然の招集連絡により、あのメイド喫茶でバイトすることとなった俺。

 嫌々ながらも仕事を始めるも、板に付きかかってきている自分がいて……なんか、怖い………

 

 

 そんなバイトは2日目を迎え、順調に今日の内容をさばき終えようかと思ったその矢先――――

 

 

 

 

 

 

『ぷしゅぅぅぅ………………』

 

「ありゃまぁ、ダメですねぇ……気絶してますよ、これ…………」

「たはは……こいつぁ、とんでもねぇハプニングだな………」

「ホンマに、みんなだらしないなぁ~」

「希ちゃんたち、そんなこと言わないで早くみんなを起こすにゃぁ!」

「おいィィィ!! 店先で意識を飛ばすんじゃぁなぁい!!!」

 

 

 

 μ’sメンバーが来店するも、速攻、意気消沈とか………終わってんなぁ…………

 

 

 

 

 

 

 無論、この物語はここから始まるのだ―――――

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

[ キュアメイドカフェ ]

 

 

「ほ~ら、起きたかバカやろー?」

『は、は――い…………』

「ったく、来店直後に揃いもそろって気絶とか、新手の嫌がらせか何かと思うじゃんよ」

 

「ち、違うよ……! これは蒼君がいけないんだよ!!」

「はぁ?! なんで俺のせいになるんだよ!?」

「それは蒼くんがカッコよすぎるからだよぉ。 もう、昨日からずっとキュンキュンされっぱなしだよぉ~♪」

「ことり、一緒に働いていたのに、どうしてお前まで気絶するんだよ…………」

「そ、蒼一が………従者の姿で………あんなことを…………は、破廉恥です!!」

「俺のすべての行為をいかがわしいモノとして認識するな、海未ィィィ!!」

「ハラショ………おお、ハラショォ…………」

「エリチカ………日本語で、おk……?」

「しかし、ホンマに良く似合うとるよ。 あ! いっその事、それを普段着にしてみたらええんやないの?」

「勘弁してくれよ、希………学院内でこの恰好だけはしたくないぞ!!」

「『人気急上昇中のスクールアイドル・μ’sの召使い』ね………今度のブログの内容が決まったにこ♪」

「や、やめてくれぇ………世間に晒さないでくれぇ…………!」

「わ、私の……蒼一にぃが……セバスチャンに……! でも、悪魔なんだよね………? で、でも、それもいいかも………」

「何を言ってるんだい、花陽? 俺は人間だ、それ以上でもそれ以下でもないぞ……」

「へぇ………なかなか様になっているわよ。 どうかしら、私専属の執事にならない?」

「どこぞの三千院のお嬢様みたいに、人をすぐに雇おうとしないの西木野お嬢様……」

「蒼くんのその格好、とぉ~ってもカッコいいにゃぁ~♪」

「ありがとう、凛。 この中で一番まともな反応をしてくれたと思うよ」

 

 

 

 正気を取り戻させたメンバーたちをそのまま店内の席に座らせると、俺のことについて口ぐちに話し始めた。 その内容を聞いていると、もう言いたい放題のあらしで頭が痛くなりそうだ………

 

 だが、素直な反応で俺のことを褒めてくれる凛が、めちゃめちゃやさしいと感じてしまうのは気のせいだろうか? 出来ることなら、そうでないことを祈りたいな。

 

 

 

「そして、お前たちも同行していたのか………」

 

「そりゃあ、そうですよ!! こんなところに面白いネタが転がっているのに、放っておくバカがどこにいると思います?! 私のジャーナル魂に賭けて、ありえませんよ!!」

「水くさいぜ、兄弟………こんな数々の(女性)客と接することができる環境がここにあるだなんて……なんと言う贅沢ッ!! 是非とも、俺も働かせていただきたいぜ!!」

 

「はぁ……………」

 

 

 ことりたちと一緒にやってきた洋子と明弘も俺に協力的な姿勢とは言い難い感じがする………俺に味方してくれるヤツが誰1人としていないだなんて………悲しすぎるじゃないか!

 

 

 

 

 

 

 絶望的な立ち位置に置かれてしまったことに気持ちを沈ませていると、みんなの注目が俺から離れ出した。 そして、そのすべてがことりに注がれた。

 

 

「ねぇ、ことりちゃん。 どうしてこんなところで働いているの?」

「ふえぇ?! そ、それは…………」

 

 

 穂乃果からの質問にどう答えればいいのか戸惑い始めることり。

 どうすればよいのか分からないと言わんがばかりの視線をこちらに向けて来るので、仕方なくことりの手を引いて、バックヤードに向かった。

 

 

 

 

 

 部屋の中に入っていくと、すぐさま案の定な反応をこちらに向けてきた。

 

 

「ど、ど、どうしよう蒼くん……!! 私、どうしたらいいの……?!」

 

 

 みんなに見られていた時は静かに縮こまっていたのに、俺だけの時になると、あたふたとした行動を取り始めていた。 まあ何だ、みんなに見つかるだなんて思ってもみなかったし、まして、働いている店にまで来てしまうとも考えていなかったのだから当然であろう。

 

 だからと言って、こんなところで手をこまねいても何も始まらない。 いずれはバレてしまうことだったのだ、まずは、そのことを受け入れなくちゃいけないのだ。

 

 

「落ち着けことり、今ここでそんなに焦ってもしょうがないことだぞ」

「で、でも………私がずっと内緒にしていたことが、こんなに簡単に分かっちゃうなんて思わなかったんだもん………それに、みんなになんて話したらいいのか分からないよぉ………」

 

 

 そう言うことりは、肩を小さく震わせていた。

 

 

「怖いのか?」

「うん………ねぇ蒼くん、覚えてる? 前に話したでしょ? 私がここで働いている理由」

「ああ、自分には何も無いって言ってたよな?」

「うん………私にはみんなと比べて何の取り柄もない、ただの女の子なの……そんな自分を少しでも変えるためにこの店で働いていた。

 でもあの時、蒼くんに言われて少しだけ元気になれたの。 私にも何かできることがあったんだなって………」

「だが、変われなかったのか?」

「そうなの………あの後、自分でも頑張って努力してみたの。 私らしいことって何かなって、ずっと考え続けていたの。

 でも……結局見つけられなかった………何を作っても、私にとって本当に納得のいくモノが作れなかったの………

 悔しかった………これまでいろいろなモノ作ってみたけど、納得できて作り上げることができたのって1つもないの………作り上げても、何かが違うって、心の中でそう感じちゃうの………

 私は………どうしたらいいのか分かんなくなっちゃったの…………」

「ことり………」

「それに……絵里ちゃんたち3年生が入って来てから、もっと私の存在が薄くなってきたようにも感じてるの………私がμ’sにいる意味が無くなってきたようにも感じちゃってるの………」

 

 

 唇を強く噛み締めながら、今にも泣きそうな表情をしながらことりは悲嘆の声を上げた。

 これが本当の自分だと言わんがばかりの言葉で語り始める。 それはまるで、自分の限界を知ってしまったかのような思いを抱いているようにも感じたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、俺はそんなことりを否定する――――――

 

 

 

「待てことり……お前は大きな間違いをしているぞ………」

「えっ……? な、何が間違ってるの………?」

「ことりがこれまでに作ってきたものに納得しないのはいい。 それは人それぞれの感覚の差異から生じるものだからそう思うのは仕方ない。

 だがっ! お前がμ’sの中で存在が薄くなったり、いる意味が無くなるなど、まったく持ってありえないことだ!!!」

「そ、蒼くん……な、何を言ってるの………?!」

「いいかことり………俺は今日に至るまでずっとお前を見てきた。 いや、正確に言えば、お前たち全員を見てきた。 その中で、俺はいつも思っているんだ、誰1人として欠けてはいけないんだとな。

 分かるか、この意味が……? お前たちのグループ名がμ’sだからか? 9人の女神だからそう言っていると思うか? いいやそうじゃない、それも含めるがそれだけじゃないんだよ!

 

 いいか、その耳を大きくしてよぉ~く聴いておけよ。 一度しか言わないことだからちゃんと聴いていろよ…………」

 

 

 

 ことりはこの言葉に圧倒されながらも、すかさず頭を縦に振った。

 驚嘆した表情をこちらに向け、戸惑いを隠せないその瞳でジッと俺の目を見た。

 

 

 俺はそれに応えるように、真剣な表情でことりを見た。

 

 

 そして、俺は語り出す――――――――

 

 

 

 

「お前たち9人は――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――俺が選んだ9人だッ!!

 

 

 

 偶然で集めたんじゃない。 必然的に俺が決めて集めた9人なんだ! これで完全なんだと確信した9人なんだよ!! だから誰1人欠けることなんてありえない話だ。 ことりが無意味な存在だなんて、それこそ馬鹿げた話だ!

 俺は、ことりのいいところ知っている。

 ことりの誇れるところをよく知っている!

 ことりの魅力的なところを誰よりも知っている!!

 ことりが今日までにどのように変わったのかだなんて、とっくに分かっているさ。

 

 なぜなら! 俺はここにいる誰よりも早くことりに出会い、誰よりも付き合いが長く、誰よりもことりを見てきた野郎なんだと自負しているからだ!!

 ことりがことり自身を否定するなら、俺はその否定することりを否定してやる!!

 

 囚われるな! うつむいて下ばかり見ようとするんじゃない、前を見ろ! ただひたすらと真っ直ぐ前だけを見つめていろ! そうすれば、自ずと自分が目指す(モノ)が見つかるはずだ。

 

 だが、もし道に迷い、その場に留まるようなことがあれば、俺に頼れ! 俺が導いてやる! そのために、俺はμ’sにいる。 お前の隣にいる。 だから安心して前に進め………

 

 お前は、1人じゃない…………!!」

 

 

 

 

 胸をドンと叩き、俺は俺が抱く想いをすべてことりにぶつけた。

 

 

 その言葉をすべて聴いたことりは、目が飛び出て来てしまいそうなほどに見開き、顎が外れたかのように口をぽっかりと開いていた。

 

 すると、すぐにその目から湧き上がるような涙が零れ始め、その口から空気を振動させるような嗚咽が漏れ始める。 俺は背中をやさしくさすりあげて、ことりの込み上がる感情が治まるまで続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして、流れ落ちるような感情に治まりの兆しが見えると、俺はさらに言葉を付け加える。

 

 

「ことり、今言ったことを穂乃果たちにも話すことはできるか?」

「えっ……? そ、そんなの……無理だよ………」

「大丈夫だって、穂乃果たちはお前の大事な親友だろ? 俺に話すことができたんだ、絶対にできるさ」

「で、でも……言えたとしても、みんなにどう思われるか分からないよ………」

「そこんところだって問題ないさ。 なんせ、アイツらだってことりと同じように迷ってたり、悩んだりしていたんだ。 ことりが話すことを自分のことのように受け止めてくれるはずさ」

「そ、そうなの………?」

「ことりは、ただみんなに話すだけでいいのさ。 どう感じたのかなんて、すぐに答えてくれるさ。 もし、難しかったら俺に助け船を出しな」

「うん………! 私、頑張ってみるよ……!」

「よし、その意気だ!」

 

 

 ことりは顔を拭くと、穏やかな表情をして応えた。

 そして、俺と一緒にみんながいるところへと出て行ったのだった。

 

 

 

「あのね………みんなに聞いてもらいたいことがあるの―――――――」

 

 

 

 

 そう口火を開き、ことりはさっき話したことを穂乃果たちに語り始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 みんな、真剣にことりの話を聴き――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 快く受け入れてくれたのだった――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 ことりは、その胸の内に隠していたことをすべて語った。

 

 ここで働いている理由から自分が思っていたことすべてを語り尽くした。

 

 

 その真剣なことりを見てからなのだろうか、みんなことりのことを快く受け入れてくれたようだった。

 

 

 

 ひとまず安心だなと俺も胸をなでおろしたのだった。

 

 

 

 

 

 すると、ひょいなところから明弘が話し始めた。

 

 

 

「いやぁ~、泣かせてくれるじゃぁないかぁ………。 そうだ! いいこと考えたぞ~、今度のライブの事なんだが、ことりに衣装制作以外に何かを任せたいと思う。 いいと、思わないか~?」

 

『!!!?』

 

 

 

 突然の発言に全員の表情に衝撃が走った!

 

 その発想はなかった、と言わせるような内容に俺は目を見開いてしまった。 しかし、じっくり考えてみれば、それはなかなかいいアイディアなのかもしれないと思ったのだ。

 

 

 だが、俺よりも先に声にあげたのは穂乃果だった。

 

 

 

「それいいね、弘君! 私も賛成だよ!!」

「えぇ!? ほ、穂乃果ちゃん!!?」

「ことりちゃん、これはチャンスなんだよ!」

「チャンス!? ど、どういうことなの?」

「ことりちゃんは、さっき自分らしさって何かなって、言ってたでしょ? だからね、この機会を使って自分らしさを見つけたらどうかなって考えたの。 いいと思わない?」

「えぇっ?! そ、そんな……いきなり言われても………」

「やってみたらよいではないですか?」

「う、海未ちゃんまで…………」

「ことりが意を決してまで語ってくれましたことを私は大変誇らしいことだと感じております。 私はそんなことりを応援したいと思います」

「海未ちゃん………!」

「ことり、私はあなたがどのようなことを求めているのか分かりかねます。 ですが、もしあなたがそれを見つけることができたのなら、私はあなたと同じように喜びますよ。 なぜなら、私はあなたの親友なのですから」

「海未ちゃん……! ありがとう………!」

「穂乃果も同じだよぉー! ことりちゃん、ファイトだよっ!!」

「穂乃果ちゃんもありがと……! えへへ、なんだかちょっとだけ元気が出てきたような気がするよ」

 

「「それじゃあ………!!」」

 

「うん、やらせてもらいます」

 

 

 

 にっこりと微笑みながら応えると、穂乃果がことりに抱きつき喜んでいた。

 その様子を見て、まわりのみんなも同じように喜んでいるようだった。 無論、俺も喜んだわけだ。

 

 

 これでまた、ことりが新たな1歩を踏み出すことができると、そう心の中で感じたのだった。

 

 

 

「それで、私は何をすればいいの?」

「そうだなぁ………そんじゃ! こう言うのはどうだ―――――?」

 

 

 

 明弘はまた何かを閃いたように人差し指を立てて、ことりに何をするのかを教えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 翌日――――

 

 

[ 南家 ]

 

 

 

「う~~~~~ん……………………」

 

 

 

 ことりは自室の机の上にある紙と睨めっこをしていた。

 昨日、明弘から出された注文に応えようと必死になっているところだ。

 

 

 その内容とは―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ………チョコレート…………おいしい…………!」

「それ、ユニットで使ったヤツだからダメだよ」

「ふえぇぇぇん………………何も思い浮かばないよぉぉぉ………………」

 

 

 

 ことりは注文されたのは、今度のライブで披露する新曲の歌詞を考えることだったのだ。

 

 

 ことりにしかできない、ことりの思いがこもった歌詞を作ってみるようにと言うことで、明弘から紙を何枚も手渡されたわけだ。 確かに、衣装以外でやることと言えば、歌詞くらいしか思い浮かばないのは当然のことだ。 それに楽曲のほうをやれと言われても、その知識がない者にとっては酷な話だ。

 

 結局は、消去法で確定されていた歌詞作りとなったわけだ。

 

 

 

 

 だが、現在のことりは何も考えることができずに、机の上に頭をのせて突っ伏している様子。 これでは、完成までに時間がかかりそうだ……………

 

 

 

 

 

 ん? どうして、俺がここにいるのかって? それは、ことりを見守るためさ。 何かあった時に手伝えるようにな。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――という表向きの事情ではなく、本当は―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁ――――!!! メロディが何も思いつかねぇ――――――――!!!」

 

 

 

 

 

 

 ことりの歌詞に付ける楽曲の制作をしていた。

 

 

(次回へ続く)

 




どうも、うp主です。


同時執筆をしていると、どうも内容があやふやになりがちになる今日この頃です。


さて、久しぶりにアニメ基準の話を書いているわけですが、なんだか違和感を感じてしまうのは、俺だけなのだろうか?
ずっと、オリジナルばかり書いていたので、少しだけ変な感じがしますね。
とは言っても、あと1、2話くらいはアニメ基準で書いていくつもりなので、もちとだけ、自分にファイトだよっ!!


次回もよろしくです。



今回の曲は、

原 由美/『オレンジ色の季節』

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