二人のリボンは姉妹の印~騙されてアイドル活動~   作:霞身

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初めまして、霞身というものです。
アニマスは見たけど原作は箱を持ってなかったりPSPが壊れたりPS3が壊れたりともう神に嫌われてるとしか思えない位プレイできていない作者です。
他の方々の良作などを読む傍らの箸休め程度に読んでいただけたら幸いです。
生温かい目で見守りながらゆっくりして行ってください。
あとはるるん今年も16(17)歳の誕生日おめでとう!


プロローグ:騙されてオーディション。

 それは今からおよそ13年前の出来事だった。

 ひとりの不幸な男が、いつものように仕事の合間のお昼休憩中のこと、この会社ではほとんど使用されていない喫煙所で一人でいたのをいいことに、年甲斐もなく全力で某龍球なアニメの伝統的必殺技の練習をしていた時だった。

 なぜそんなことをしていたのかといえば、説明するのにそれはもう小一時間以上かかるような、エベレストより高くマリアナ海溝より深い事情があったのだが、そんなことはどうでもいい。重要なのは全力で『か~め~は~め~波ぁぁああ!』なんてやってるところを見られてしまったことが問題なのだ。

 しかもよりにもよって今年入社したばかりの後輩の女の子に。

 あまりの恥ずかしさにいたたまれなくなったその男……というか俺は、その女性社員の目から逃げるために全力で走り出した。

 そして、階段で足を滑らせて転落死するという、恥ずか死としか言いようのない死に様を晒して人生を終えてしまった……と、ここまでならばまだ普通の人間ならば経験することができる範囲だった。

 しかし、ここで不思議なことが起こった。

 気がつくと子供の姿に戻っていたのだ。

 しかもただ子供に戻っただけではない、男だったらあるべきアレが無くなっていた。何がってナニがだよ。

 つまり生まれ変わっただけにとどまらず、性転換までされてしまっているというわけだ。

 ついこの前まで男として生きていた感覚があるのも手伝って、最初は随分と苦労したが、今では特に苦労はない……問題があるとすれば、あくまでも肉体は女、精神は男であるということだろうか。

 いわゆる性同一性障害と判断されても仕方ないが、あくまでも俺は俺なのだから仕方なかろう。

 うむ、何度現在の状況を整理してもおかしい、一体全体人間の中で何人が、前世の記憶を完全に保持したまま転生などすると思うだろう。

 

 

 

 

 さて、もう考えるだけ無駄な思考に時間を割くのももったいないので、ひとまずパジャマから着替えるとしよう。

 確か昨日の天気予報では、連日の猛暑日続きとなり熱中症患者が続出しているため、出かけるときには注意するようにといっていた。

 だというのに姉さんは、今日は出かけると言って昨日からいつにも増してふわふわしていた。

 

「夏美~そろそろ行くよ~」

「ん、いま準備する」

 

 なんて考えている間に、一階から姉さんが声をかけてくる……ってまだ8時じゃん、どこまで出かけるつもりなんだうちの姉様は。

 ひとまず鏡を見て最低限の身だしなみを整える。

 腰まで届く長い栗色の髪を、姉さんにもらったリボンを使ってポニーテールにまとめる。

 服装は……いつも通りでいいか、無地のTシャツの上からノースリーブのジャンバーを着てジーパンを履く、うむ、シンプルでよろしい。

 こうして鏡を見ても、まだ違和感があって仕方ないのだが、我ながら見事な美少女に生まれ変わったものだ、男物の服が台無しにしてると自分でも思うが。

 さて、とりあえず身だしなみはこれでよし、財布もスマホもポケットに入ってる、これで準備は万端かな。

 姉さんは昨日からやたらそわそわしてたし、さっさと行くとしよう。

 

「お待たせ、姉さん」

「夏美遅いよ~、それにまた今日もそんな男の子みたいな格好して……」

「俺が好きなんだからいいだろ別に……」

 

 階段を下りると、既に玄関で待ち構えていた春香姉さんに、いつものように服装についてつっこまれる。

 学校の制服はルールだから我慢できるが、私服まであんなヒラヒラした(スカート)を着るなんて、まっぴらごめんだ。

 そんな俺とは真逆に、姉さんは春香姉さんらしい薄いピンクを中心に明るい色でまとめられた、女の子らしい格好をしている姉さん。

 俺、本当にこの姉さんと血繋がってるのだろうか。

 

「もう、一人称も俺じゃなくて"私"でしょ!」

「……私が好きなんだからいいだろ」

「いいでしょ!」

「……いいでしょ……って、出なくていいのか?」

 

 姉さんはどうしても俺に女の子らしくして欲しいみたいだが、正直俺自身はそんなつもりは一切ない。

 それに学校では既に俺の一人称は"俺"で浸透してしまっているし、女友達より男友達の方が多いし、男子に告白された事はないが、女子に告白されたことはある。嬉しいやら悲しいやら。

 ただ、体が女だからといって、男と付き合えるかというと、そういうわけではない。

 なにせ精神は男なのだ、野郎とキスをするくらいなら、百合だと思われても女の子とキスする方が断然いい。

 敢えて言うが俺はノーマルだ、体がアブノーマルなだけなのだ。

 

「いっけないそうだった、急ぐよ夏美!」

「ちょっ、走るとまた転ぶぞ姉さん!」

 

 姉さんはやたらとよく転ぶ、というかとてもおっちょこちょいだ。

 何もないところで転ぶのは当たり前、得意なお菓子であるはずのクッキーを焼いていたのに、何故か塩と砂糖を間違える。

 だというのに致命的な失敗はしないのだから不思議だ、怪我も全然しないし。

 ひとまず一人で放置するのは怖いから、追いかけるとしよう、行き先も知らないし。

 

 

 

 

「で、姉さんなにか弁明はあるか?」

「い、いやあのね」

 

 あれから二時間ほどかけて、自転車や電車を使って移動した先にあったのは、ボロっちいビルがあって、その一階には『たるき亭』という定食屋があったのだが、まさかそこじゃないだろうと思って姉さんに聞いたら、そのビルの3階を指を差し、用があるのはそっちだと答えた。

 その3階の窓にはガムテープで『765』と書かれていたのだが、まるで意味がわからない。

 それで、あそこは何かと聞けば、行けばわかるよ、とはぐらかされて、姉さん一人で行かせるのも心配だった俺はついていくことにしたのだが……

 

「言い訳はないということでいいんだな……」

「あ、あのね夏美、私一人で受けるのが心配だったからね」

「いいよ別に……ただ申し込む前にせめて一言いってくれ……」

 

 そこは、765プロダクションという小さな芸能プロダクションであり、今日はそこでアイドルオーディションを受けるために来たのだという。

 しかもご丁寧なことに、勝手に俺の分まで履歴書を送っておいてくれたらしい。

 正直、俺みたいなのが受かるとは思ってないし、アイドルにも興味はないが、姉さんが付き添いが欲しいというのなら、こっちに生まれてからいろいろお世話になったし、言ってくれればそれはそれでよかった。

 

「はぁ……せめて当日には教えておいてくれ、完全に普段着で来ちまったじゃんか」

「う、それはごめん……」

 

 なかに通された俺たちは、音無小鳥さんという事務員さんに社長室に通されて、そこに置いてあったパイプ椅子に座って、面接官なり社長なりが来るのを待っていた。

 アイドルの面接だというのに、おしゃれどころか化粧もしてない俺は、まぁ間違いなく落選だろうし、せめてずっとアイドルに憧れてた姉さんが受かれるように、引き立て役になるようにしますかね。

 そんなことを考えていると、社長室の扉が開いて二人の男女が入ってきた。

 一人は姉さんより少し年上くらいだろうか?眼鏡をかけていて、髪を後ろでパイナップルみたいな感じでまとめている女性、もうひとりはスーツを着ている、中年っぽい男性、多分社長だろうか?

 

「いやぁ、待たせてしまってすまないね」

「い、いえ!」

「いえ、こちらこそ予定より早く来てしまいましたから」

 

 これでも前世では会社員をしていただけあって、ある程度の礼節は弁えている……というか姉さんは面接の練習とかしなかったのか?

 

「うむ、元気があって結構!」

「えーっと、二人がアイドルになりたいと思った理由を聞かせてもらえるかしら?まずは天海春香さんから」

「えっと、あの、私子供の頃公園で──」

 

 姉さんが答えてる間に俺はどうしようかと考えてみたが、そもそも俺はアイドルについて全く詳しくない。

 知ってるのは、俺がこっちに生まれる前に活躍していたらしい、日高舞とかいう何故か教科書に載ってるアイドルくらいだ。

 うーん……やっぱり素直に答えたほうがいいか。

 

「はい、ありがとうございます、次は天海夏美さん」

「はい……」

 

 さて、本当にどうするか……俺が適当なこと言ったせいで姉さんが落ちたら申し訳ないしなぁ……

 

「俺は、正直アイドルに興味はありませんでした」

「アイドルに興味がない?」

「履歴書も姉が勝手に送ったものです、ここに来るまでオーディションだということも知りませんでしたし……」

「ふむ」

 

 実際、俺は今も微塵もアイドルに興味がない。

 歌って踊れるアイドルたちに対して、すごいなと感心することはあるが、それは俺にとってあくまでも画面の向こう、別の世界の出来事なのだ。

 ただ、まあ、チャレンジ精神というのは俺は人一倍あると思っている。

 こうして可能性があるというのなら、選ばれればやってみてもいいと思っているのもまた事実だ。

 だから、それを素直に伝えてみることにした。

 

「でも、今は少し興味が出てきました」

「……理由を聞いてもいいかしら」

「姉が挑戦してみたいと思っていたことは前から知ってましたけど、ここに来てさっき事務所の中にいた何人かの顔を見ました。みんな楽しそうで、すごく輝いてたので俺もアイドルになったら今まで見えなかった何かが見えるかなと思いました」

 

 今日この社長室に来るまでにちらっと見た限り、いろいろな子がいた。

 双子のアイドル。

 俺や姉さんどころか、目の前にいるメガネの人より年上のようなアイドル。

 ずっと譜面を見て、曲を聴いていた髪の長いアイドル。

 誰も彼も、俺の目には楽しそうに輝いて見えた。

 もしかしたら、とても面白い世界なのかもしれない。

 もちろん面白いだけの世界だなどとは思っていない、売れずに辛い思いをしているアイドルもいるのだろうが、成功したらどれだけ楽しそうだろう。

 そういう気持ちを、ひとまず伝えてみた。

 

「……なるほど、そうですか。それでは次の質問ですが──」

 

 なんとなく感じるものがあったのか、社長らしき人はしきりにうんうんと頷き満足げな表情をしていた。

 ひとまず掴みは大丈夫だろうか。

 後は当たり障りの無いように無難に答えていこう。

 

 

 

 

 事務所でのオーディションから数分後、俺たちは近くのハンバーガーショップにいた。

 オーディションは最初の質問の後に、いくらかの質疑応答をしただけで、歌だったりダンスなどはやらず、無事解散となった。

 

「で、姉さん的にはどうだったんだ?」

「お、落ちた……間違いない……」

 

 反省会という名の昼食のために入ったバーガーショップで、俺は高身長筋肉質と燃費の悪い体付きなので、ガッツリ食べていたのだが、姉さんはアイスティーだけ注文して突っ伏していた。

 どうやらあまり手応えはなかったらしい。

 かく言う俺も、アイドルのオーディションなど初めて受けるから、手応えもなにもあったもんじゃない。

 

「そんな落ち込むなって姉さん、他にも事務所はいくらだってあるんだから数撃ちゃ当たるって」

「うー、こんなことならちゃんと練習しとくんだった……」

「いや……んぐ……面接で聞かれそうなことくらいちゃんと考えて練習しておこうぜ」

 

 一体姉さんは何を考えていたのやら、普通書類審査の次は面接と相場が決まっている。

 まあ、俺だけ受かってしまったら、さすがに申し訳ないが、相手の好意を無下に断るのも気が引けるから、ひとまずある程度は続けるつもりだ。

 

「うぅ、夏美だけ受かってたらどうしよう……」

「そんな悲観的なこと言うなって、俺が受かるなら姉さんの方が可愛いから一緒に受かるって」

「でも私って特徴あんまりないし印象に残ってる自信ないよぉ」

「そんなもんかねぇ」

 

 

 

 

 オーディションが全て終わった765プロダクション社長室、そこではさっきまで行っていた、オーディションの結果を決めるため、私と社長が唸っていた。

 

「うぅむ……律子君はどう思うかね?」

「うーん、悩みどころですけど私は最後に受けた天海姉妹ですかね……」

 

 私の中で特に印象に残っていたのは、最後に受けたこともあるが、天海春香とその妹である夏美の二人だ。

 欲を言えば二人共合格にしたいが、既にこの事務所には11人のアイドル達がいる、それに対して現在プロデューサーは私一人。

 それも、最近アイドルからプロデューサーに転向したばかりなのだ。

 一度に13人も受け持つのは流石に厳しく、今日の採用は一人と決めていた。

 

「うむ私もあの二人、特に春香くんは素晴らしかったねぇ……まさに正統派アイドルといった感じがして私の青春時代を思い出したねぇ」

 

 どうやら社長の中では、特に姉の春香が気に入っているらしく、彼女を思い出しながらうんうんと頷いている。

 確かに社長の青春時代ならば、正統派と呼ばれるアイドルが数多くいた。

 春香のその素朴な雰囲気に、彼女たちを重ねているのだろう。

 

「私は妹の夏美ちゃんの方を推したいですかね、中学一年生で165cmとはインパクトありますし、それに一人称も俺なのでかなり個性を前面に押し出していけると思います、特に真とコンビを組ませるのも女の子に人気も出そうですね」

 

 だが私が気に入っていたのは、その妹である夏美の方だ。

 中学一年生にして、身長はあずささんに次ぐ165cmと高身長であり、そして一人称や喋り方に癖があり、今現在でも多くの個性的なアイドルたちを抱える765プロにあっても、埋もれない個性を持っていた。

 服装についても、自分の魅せ方をよく理解しているラフで男っぽい格好がよく似合っており、将来に期待できる。

 お互いの意見がぶつかってしまったが、だがそれだけにどちらを手放すのも惜しい。

 二人して唸っているうちに、社長が唐突に顔を上げた。

 

ピーン(ティン)!と来た!よしっ、二人共採用してしまおう!」

「ちょ、ちょっと待ってください社長!本気ですか?」

 

 今でさえ、11人という大人数を社長と手分けして面倒を見ているというのに、二人も増えればさらに忙しくなってしまう。

 まだ本格的なデビューをしている子がいないからいいが、誰かがデビューしてしまえば、それだけで他の子へかけられる時間が減り、その子達のデビューが遅れてしまう。

 そうなってしまったら、せっかくの候補生たちに申し訳が立たない。

 

「うむ、律子くんはプロデューサー不足について心配しているのだろう?」

「ええ、あまりあの子達を待たせてしまうのも申し訳ないですから」

「それなら安心したまえ!最近街中でピーン(ティン)!と来た好青年を見つけてね、就活中だったらしいから春からうちで働いてもらうことにしたのだよ」

「ということは、あまり芸能について詳しくないということですか?」

 

 プロデューサーを見つけてきてくれたのは嬉しいが、それではあまりにも心配だ。

 この仕事は覚えることも多いし、多くのコネクションを築く必要もある。

 それらを覚えるまで、たとえ居たとしても、仕事は難しいだろう。

 

「うむ、しかし安心してくれたまえ、単位については取得済みらしいからね、私が手ずからこの業界のいろはについて教え込んでおく、それになんとなくだが彼は大物になる気がするのだよ」

「勘、ですか……」

 

 確かに、社長の勘はよく当たる気がするし、最初の頃、私がまだプロデューサーの勉強をしていた時に、アイドルたちを見つけてきたのは社長で、どの子達も才能にあふれた原石たちだった。

 しかし、やはり勘というのはどうにも……

 

「はっはっは、そんなに心配することはないさ、為せば成る!」

「為して成ればいいんですけどね……」

 

 やはり、少し心配だ……

 

 

 

 

 あの面接の日から幾日かが経過した我が家、夏休み真っ只中なのをいいことに、俺は昼前まで自室で惰眠を貪っていたのだが……

 

「やったー!」

 

 なんていう、姉さんの大声が一階から聞こえてきたのが原因で眠気が吹き飛んでしまったから、仕方なく一階へと降りていくことにした。

 そして一階に行くと、玄関で何やら紙を手に固まっている姉さんがつっ立っていた。

 

「どうしたんだよ姉さん朝から大声出して」

「いや、もう10時だよ……ってそんなことはどうでもいいんだよ、受かった、受かったんだよ夏美!」

 

 そう言って抱きついてくる姉さん。

 この時期に受かったってことは、姉さんは無事アイドル候補生というわけか、よかったよかった。

 

「おめでとう姉さん、これから頑張れ」

「うん、一緒に頑張ろうね、夏美!」

 

 うんうん、一緒に……一緒に?

 

「姉さん、俺の聞き間違えじゃなけりゃ一緒にって言ったか?」

「そうだよ!夏美も受かったんだよ!」

「な、なんだってぇー?!」

 

 どういうわけか、あの事務所は俺のことも気に入ったらしい。

 それほど興味があったわけではないが、受かってみれば結構嬉しいものだな。

 姉さんと一緒にアイドル。

 あの輝かしい舞台に俺が立つ。

 果たしてそこから見える景色はどんなものだろうか。

 ちょっとだけ、二週目の人生にスパイスが加わりそうでワクワクしてきたな。

 

 

 

 

「今度歓迎会があるから8時に事務所集合だって!」

「……は?じゃあここを6時前には出なきゃいけねぇじゃん!」

 

 ……やっぱ受けたの間違いだったかな……




ここには落書き程度のデータ的なのでも載せようかと。

現在の天海夏美パーソナルデータ(4/8編集)
年齢:13歳(中学一年生)
誕生日:7月23日
身長:165cm
体重:52kg
3サイズ:79-56-82
血液型:O型
趣味:体を動かすこと
   食べること
イメージカラー:山吹色(サンライトイエロー)
一人称:俺

アイマスのキャラ達に合わせて体重とかサイズ考えてみたけど……
これでもほかのキャラからしたら重いほうだからね!
改めてあの世界の女性の体はどうなってるんでしょうね。
書き溜めしてないのでのんびり更新だと思いますが少々お待ちください。

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