なんやかんやで赤龍帝   作:黒鬼

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…およそ三年が過ぎました。
ええ、もはやお忘れになっていたでしょう、このハーメルンきっての汚点であり問題作を。
しかしながらなぜ今投稿というと、PCを買い換えたにあたりデータをあさっていたところ、いつ書いたかも分からない話が出てきたのです。
おバカで有名な作者にしては割としっかり書けていたので加筆修正し、もったいないお化けに負けて出してしまいました…。

しかも閑話かいっていうね…。
ほんとすいません、生きててすいません。
相も変わらず人を選ぶとがった内容ではありますが、お時間があればお付き合いください。

ではでは久々に…、だらっと行ってしまった…。


なんやかんやでゆるふわデート

 

 

 

恋愛なんて面倒くさいだけだ。

 

 

生存本能から発露しただけのまやかしという言葉もあるように、恋愛をしなくても人生を謳歌できるしなんなら結婚も子供もできる。

恋愛の末愛し合った者同士が結ばれると子供が、なんて言葉を信じるバカはこの情報社会において小学生でも居はしまい。

コウノトリだの結婚したらだの、それだとワンナイトラブや一夜の過ちで授かった子供はどうなんだ。

愛は時間と比例しないってか、死ね。

そう、このように愛も恋もなかろうが、別段なにも困らないのである。

 

 

しかし昨今においてリアルの充実とは友達の数が多く、やたらパーティしまくって、恋人がいるということを指す。

金銭や土地、家柄を見ていた時代とは大きく変わり、ステータスとは何を指すのかといえば上記があげられる。

小学生では足が速ければモテて、中学生ではギターが弾けたらモテて、高校生では髪型が良ければモテるなんて俗語がある。

しかしこのSNS社会でリア充アピールをすることが最近のトレンドであり、時代であり流行なのである。

利便性の追求により高度に技術が発展した結果、人間の能力よりも機械の能力の方が活用され始めた現在、

人間が他者へと自身の能力アピールする機会とその能力自身が低下していき、誰かに認められることが少なくなったといえる。

だからこそ自己顕示欲、自己肯定感が肥大化し、SNSという世界中の人間に認知してもらえるツールが普及したのだ。

 

実に俗物的である。

 

 

そしてなによりおかしいのが、それらステータスを持たないものは馬鹿にされ、下に見られるということだ。

友達が百人いても、相手が一騎当千であれば意味がない。

パーティに数多く出席してもピンチには何の役にも立たない。

にも関わらずこのような価値観が蔓延している。

 

 

つまり何が言いたいかというと。

 

 

 

「ほら、行くわよ」

 

 

 

デートなんてめんどくさくてやってらんねぇってことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしどうせデートすることが確定事項なら、その時間は有効活用しなくてはなるまい。

嫌々やったとてこちらも相手も楽しくないし、無駄な時間の浪費となる。

ならば全力で臨もうじゃないか、そしてそのうえで楽しめばいい。

タイムイズマネー、時は金なりである。

金より尊い物はないと思っていたがたしかに時間とは貴重なものだ、無駄遣いするなら謳歌しよう。

 

 

そして何より俺がめいっぱい楽しんでも相手が楽しくなければ、下手するとやり直しを要求されることが考えられる。

それはめんどくさいし、何より「男のくせにデートもエスコートできないの?」などと上から目線で思われるのも業腹だ。

よかろう、ならば俺がデートの際の理想の彼氏(笑)とやらを演じてやろうじゃないか。

 

 

『……どうしてだろうな、良い心がけを聞いた筈が途轍もなく嫌な予感がするんだが』

 

 

お前のポンコツな予感センサーなんぞ知った事か。

俺だってその気になれば余裕でリア充とやらになれることをあの女に知らしめてやるのだ。

 

 

『ついでに縄で絞めてください』

 

『そしてそのうえで辱めて』

 

 

〝しめて〟で韻を踏んだら許されるとでも思ったかゴミ屑共。

ハラワタ引きずり出して己の腸で首括ってやる。

 

 

うっひょー!ご褒美タイムだー!

 

興奮した

 

 

……最近こいつらをどうすればいいのか分かんなくなってきた。

勉強や努力が嫌いな俺だが、そろそろ真剣にこいつらを封じた方がいい気がするので、

封印とかを学んでみようかと思う。

 

 

さて、話を戻そうじゃないか。

今回の議題である、理想の彼氏とはなにか?

 

 

しかしその理想というのは人それぞれであるため一概には言えない。

ならばそう、流行を取り入れればよいのだ。

流行とはその時代に多くの人が憧れ、真似をするほど認知されていることだ。

それをまねれば今現在における世間一般でいうところの理想の平均値に近づくというものだ。

ふむふむ流石俺、良い着眼点ではないかと一人で納得し、ふんすと頷く。

 

 

そういえばなんか恋愛もののドラマとか映画でやってたパワーワードがあったな。

少女漫画雑誌でも表紙になっていた、聞いたことあるようで無いようなあの印象深い言葉。

そうだ、それをロールモデルにしようじゃないか。

ドラマや漫画の議題やコンセプトとして挙げられるくらいの流行り、もしくは定番のジャンルであれば外れなどありはしまい。

そう、たしかあれは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――〝ドSな彼〟――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁはぁと息を荒げながら商店街を走り抜け、俺ことアキラは悪友マサシのところへと向かう。

待ち合わせ場所である商店街を抜けた先の公園入口で、マサシはスマホをいじっていた。

誰かしらからあの情報が奴に入っているのかもしれない。

 

マサシも俺に気付き小走りで俺へと近寄る。

汗で張り付いた前髪が気持ち悪いが、今はそんなことを気にしている余裕はない。

一刻も早く情報交換を行い、協力して例の災害から回避しなければならないのだ。

 

 

 

「おい、聞いたかマサシ! あの話!」

 

「ああ、今日のイッセーくんだろ? 

 目が合ったチンピラやヤクザを半殺しにして、意識朦朧状態の相手カツアゲして回ってるってやつ。

 普段はしねぇのに、泣きながら逃げ惑うチンピラ達を笑いながら追いかけ回してるってよ」

 

「らしいな。しかも自分は女連れらしい。近くで辛うじて聞き取れたが、なんでも今はデート中らしいぞ…」

 

「はぁ!?それがデートのつもりかよ!脳みそどっかに落っことしてんじゃねぇのか!?」

 

 

そう、機嫌は見た目からは悪くは見えないのだが、今日は一段と過激に暴れているイッセーくんのことである。

街の不良をまさかのサーチ&デストロイして回っているらしい。

今更正義感や順法精神に目覚めたというわけではないだろう、そもそもそれならカツアゲなんてしない。

問題は理由と謎の笑顔である。

 

 

「財布や売れそうなアクセサリーは隠しとけよ、目についたら真っ先にむしり取られるぞ」

 

「だな。でも小難しいとこに隠して腹でも立てられたらどうするよ」

 

「……祈ろう」

 

「……まず見つからないことをな」

 

 

今までは面倒くさいことは嫌いということでお礼参りされることすら予防している(させないように潰す)ような性格である。

逃げる者など積極的に追いかけはしないし、尚且つ女連れなら女に労力を割いている分、街の不良たちなど基本的に無視していた。

それがなぜ今、こんな事態が発生しているのか。

 

 

 

 

 

事の発端はそう、不良として有名なあの松田さんがやられたことである。

 

 

坊主頭が特徴的な男、松田。

この町の有名人であり、不良やチーマーどころかヤクザでさえもあまり関わり合いになりたくないと称される猛者である。

性格は単純明快にして苛烈極まる、気に食わなければぶっ飛ばす。

この町での第一種接触禁忌である兵藤家父に通ずるものがあり、琴線に触れれば後先考えずヤクザだろうと友達だろうと殴りかかる。

そして厄介なことにこの男は喧嘩が強い。

生まれ持った身体能力と性格ゆえの喧嘩慣れによってそんじょそこらの不良やヤクザでは相手にならない。

その上しつこく根に持つタイプなので、この男とはだれも事を構えたくないのである。

 

 

普段から松田さんとイッセーくんはよくつるんでおり、仲の良い友達というか悪友として行動を共にすることが多かった。

しかし松田さん、天性とも言うべき女っ気のなさでよく街のカップルに絡んでいくことが多々ある。

例にもれずデート中であるイッセーくんに絡んでいったそうなのであるが…。

 

 

「おうおうおうコラァ!天下の往来で女連れたぁイイ度胸してんなぁイッセーちゃんよぉ!

 テメェちょいと面貸せやゴベェ!」

 

 

なんとイッセーくん、セリフが言い終わる前に見事なアッパーを友人にかましたらしい。

そして白目をむいて昏倒した友人を見てにやりと笑い、

 

 

「カネ出せ」

 

 

と言ってゴソゴソと懐を漁ったらしい。

もちろん連れの女は怒鳴って怒ったらしいのだが、

 

 

「大丈夫、任せて」

 

 

と自信満々の顔でそう返したらしい。

 

 

何が大丈夫なのか全く分からないし、頭がきっと大丈夫ではないとは思うが、彼はそう言い切った。

それを皮切りに彼は目についた不良を追いかけまわし、街の不良やヤクザを恐怖のどん底へと叩き落した。

普段は彼の父に対して行われる兵藤注意報も、今日に限っては彼に関する警報でいっぱいである。

 

 

「結局なんなんだよ、意味わかんねぇよ。あの人デートのことどう考えてんだよ」

 

「んなもん俺にわかるか。つうか松田さん友達だろ?友達シバいて金盗るとかどういう倫理観なんだよ。

 ヤクザでもしねぇよ」

 

「ありゃ極道通り越して外道だな。つうかなんで片っ端からカツアゲしてんだろ?」

 

「味占めたんだろ、松田さんで」

 

「野生の獣みたいだな…っ!」

 

「っ!?」

 

 

そこまで口にすると急激に悪寒が体中を走る。

なんだろう、すごく嫌な予感がする。

背筋に氷を入れられたような…、霊感スポットで何かが見えた時のような…、途轍もなく邪悪な存在に目をつけられたような。

油を差してないブリキのように重たくなった首をギギギと音が鳴りそうな速さで動かして、後ろを振り返ると――。

 

 

「カネよこせ」

 

 

所々返り血のついたほんのり笑顔のイッセーくんが血の滴る拳を振りかぶっていた。

 

 

必死に逃げようとボ〇トも真っ青なロケットスタートで飛び出すも、抵抗虚しく速攻で捕まってビンタされた。

DV夫に叩かれ、よよよと泣き崩れる奥さんのように女座りで地面にへたり込むと、

笑顔のままのイッセーくんが俺たちの胸倉を万力のような握力で掴む。

バタバタと手足を必死に動かし抵抗するも、額にアホみたいな威力の頭突きをカマされ手足が痺れて動かなくなった。

頭突きで手足の神経がイカレたのか、そもそも脳がやられたか、その前に額は陥没してはいないだろうか。

クワンクワンと耳鳴りがして思考がまとまらない。

 

 

俺確かに不良で悪いこともいっぱいしたけど、今日で撲殺されるほどの悪人だっただろうか?

頭の中を今まで犯した悪事が走馬燈のように巡り、

そういや今年先祖の墓参り行かなかったなぁ、まぁもうすぐ会えるかと命を諦めていたら、

イッセーくんが思いっきり蹴り飛ばされ、俺とマサシは投げ出された。

 

 

どうやら連れの女の堪忍袋の緒がとうとう切れたらしい。

着崩した和服にも関わらず、プロレスラーですらお手本にしたい大技。

彼氏の顔にまさかの助走をつけたドロップキックである。

黒髪爆乳和服美女、アクション女優も夢ではなかったそうである。

 

短距離走の選手ですら出せない速度の助走からのドロップキックはさぞ凄い威力だったはずであるが、

ケロッと起き上がったイッセーくん、相も変わらずの化け物っぷりである。

 

 

「もう!なんで今日そんなにおかしいの!? なんでそこら辺の人を突然殴るの!?」

 

「最近はドSが流行りと聞いて」

 

「それじゃあドSじゃなくて頭のおかしい人だよ!ただのサイコパスだよ!

 なんで逃げる人まで追っかけるの!」

 

「男は多少強引な方がいいと…」

 

「どこで強引さ見せてるの! あとなんでお金取るの!?」

 

「いい男は何かしらを奪っていくってテレビで――」

 

「奪うのは心とか唇のことだよ! なんでそんむっ!」

 

「……こういうこと?」

 

「~~~っ!」

 

 

どこか話がかみ合っていない二人ではあったが、イッセーくんが女に張り倒された。

何故俺たちは出会い頭にシバかれた上にラブコメを見せられているのだろうか。

全く分からないが、先程のビンタと頭突きがジワジワと効いてきて俺達は意識を失った。

 

 

 

 

それから二日後。

イッセーくんの所業があの兵藤母にバレたそうで、それはもう凄惨なお仕置きが敢行されたという噂を聞いた。

お仕置きといっても所詮母が一人息子にするレベルだろと呆れながら公園に行くと、

イエス・キリストのように大きな十字架に磔にされている全身血みどろのイッセーくんがいた。

しっかりと腹部にも何かが刺さっている。

なんでもこの二日間その状態らしい。

どう見ても普通の人間なら発狂するか死んでいるかの状態のくせに、普通に俺を見つけ話しかけてきた。

 

 

「あ、この前はごめんねー。なんか勘違いしてた」

 

 

なにをどのように勘違いしていたらあんなことになるのかは分からないがこの男、

現在目を背けたくなるくらいのひどい状態である。

 

 

「い、いえ…、あの、痛くないんすか?」

 

「超痛いよ」

 

「でしょうね…」

 

 

流石にいつも優しい女性陣も許してくれなかったそうで、母のお仕置きが下されたという。

いくら人様に迷惑かけたからといって、普通息子に神話レベルのお仕置きを行う母親がいるだろうか?

なんでもあと一日は死なずにこの状態で我慢しなければ生き返らせてでも殺すと言われているらしい。

 

 

どっちにしろこの状態のイッセーくんに何かしようという気は起きなかったし、

もししたとして、どうせ人間離れした回復量で全快したイッセーくんにどんな仕返しを受けるか考えたくもない。

みんなそう見解が一致したらしく、見て見ぬふりを決め込んでいる。

警察もこの公園付近はパトロールのルートから外しているそうな。

 

 

じゃあ頑張ってくださいとだけ言い残し、俺はその場を後にした。

しかし見覚えのある頭部に包帯を巻いた男とすれ違った。

喧嘩っ早く横暴で、ヤクザからも煙たがられるその男。

カップルや夫婦にアタリが強くよく絡みに行く迷惑な男。

イッセーくんたちとよくつるんでいるその男……。

 

 

 

なんだかとても嫌な予感がする。

ギャンブルなんかはとんと当たりはしないが、こういう勘だけはよく当たる俺である。

知らぬが仏、触らぬ神に祟りなしなのである。

 

 

「やいイッセー!この前はよくもやってくれたな!

 テメェは今そのザマだ、きっちり仕返ししてやるから覚悟しろ!」

 

 

俺は振り返らなかった。

それどころか歩くスピードを速めた。

明日以降またこの街が荒れることは確定しているが、俺は何も聞かなかったことにしよう。

いや、その前に、取り合えず冥福を祈っておこうじゃないか。

 

 

誰のって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろん松田さんのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






はい、安定のオチでございます。
閑話の方が書きやすい…泣
しかし作者がとぼけていた間にいろんな機能が増えたんですね、全く使いこなせませんが。
まぁこの小説も賛否否否否否両論ありますが、読んでいただけただけで幸いです。
また皆さんにこのような形でお会いできるかは分かりませんが、どうか皆さんお元気で。
作者は健康体でございます。
まぁ更新全盛期であったあの混沌とした変態達はおられないとは思いますが、万全の体制である作者の前ではモーマンタイです。

それでは皆様、閲覧いただきありがとうございました。

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