なんやかんやで赤龍帝 作:黒鬼
この感情は何だ。
沸き起こる激情、抑えきれないほどの衝動。
ああ、そうだ。
ここまでのものは久々といってもいいだろう。
抑えようという気持ちすらわかない。
そう、これは――。
怒りだ。
俺は怒っていた。
それはもう、怒髪が天を衝く勢いといってもまだ足りない。
ただただ殺すだけでは到底この怒りをおさめることなどできはしない。
この理不尽に、不条理に、そして目の前の男に。
自らの犯した罪の重さを理解できていないクソ野郎が。
この俺の精神をドス黒く覆う激情、暴れ狂う強烈な殺意。
俺は、怒っているのだ。
なぜこんなことになったのか、いくら考えても答えが出ない。
それはそうだろう、原因などいくつもある。数えるのが億劫なほど。
だがしかし、それでも、こんなことがあっていいものか。
決して許してなるものか。
こうなってしまえば取返しなどつきはしない。
決して許してなるものか。
目の前の業深きこの男に罪過を贖わせるまでは。
この堕天使、
「貴様…、人間如き下等種の分際で…!」
決して許してなるものか。
匙とのお喋りの後、結界を通り抜け校庭に行くとその中央にピカピカと光る四本の西洋剣が浮かび、覆うように大きな大きな魔法陣がこれまた怪しく光っていた。
なんなの? この時代魔法陣書かなきゃ中二を名乗れないの?厳しい審査制度が導入されてるの?
ていうかあれ何してんのさ。
コカなんとかさんも宙に浮いたまんまで魔法陣見てるし。
『あれは…、エクスカリバーを統合しているのか?』
統合? 一本にしてるってこと?
そんな気軽な気分で七つに分けたり一本にしたりしていいの?
かのケルト神話の聖剣も大概雑に扱われているようである。
アーサー王見たら泣いちゃうんじゃないのこの扱い。
てか一本にしたらどうなんのかな、おいしさアップ?
『う○い棒ではないと…、まぁいい。七つに分けられたエクスカリバー一本ごとに異なる能力を持っていたからな。
統合するとなるとそれらの能力も合わさることになるだろうな』
ふーん、なんか便利だね。
かの有名な聖剣はそんなに都合のいいものだったのか。
それなら俺にも一本分けてほしい、物を複製出来たり生み出したりなんて能力があったらいいなぁ。
『何に使うんだ?』
金を複製…、密造…。
『なぜ犯罪以外が思いつかないんだ…』
お金は大事だよ?金で買えないものなんてほぼほぼ無いよ。
お金さえあれば大抵のことは叶うし、手に入る、お金最高。
金に勝る正義なし。
『ではコカビエルが金を積めば相棒は許すのか?』
俺の睡眠時間を邪魔したバカに情状酌量の余地などない、速攻シバく。
ていうか払える金があるんならシバいた後でいただけばいいじゃん。
その方がストレスも発散できるし懐も温かくなるし一石二鳥じゃん。
ついでにそいつを
『発想がもはや山賊かなにかなんだが…』
そんなドライグとの脳内会議に気を取られていると目の前が真っ暗になった。
あれ? さっきまで魔法陣やらなんやらが光ってて明るかったのに。
まさかの夢でしたか?
てかなんか生臭くない?
「イッセーッ!?」
「イッセーさんッ!?」
「イッセーくん!?」
なんかリアスちゃんやアーシアちゃん、イリナの悲鳴がくぐもって聞こえる。
なんだろう、生臭くて生暖かくて…、お腹のとこがチクチクする気がする。
『あ、相棒…、痛くないのか…?』
だから何が?
状況がさっぱりわからんちんですよイッセーくんは。
「ふん、地獄からわざわざ連れてきた俺のペットで遊んでやろうと思ったが興覚めだな。
まぁいい、人間風情が俺に楯突こうなど身の程を知れ、精々ケルベロスの
あ、俺噛まれてんのね。
はいはいはい、暗いのも臭いのも温かいのも納得だ。
チクチクは歯が当たってんだね、なぁるほど。
でもえらくおっきいワンちゃんだねぇ、俺の上半身丸ごとぱっくりハムハム甘噛みしてるよ。
…………いや、デカ過ぎじゃね?
『その前に本噛みだと思うが…』
まぁ本音言うと服汚れるのとか嫌だし、ていうかこのパジャマ結構良い奴なんだけど。
でもね、流石にワンちゃんがジャレてくる程度で怒ったりするほど狭量じゃないさ。
ふふん、俺も大人になったものだ。
しかしリアスちゃんやアーシアちゃん、イリナを心配させるのもあれだし、一応大丈夫って反応しとこう。
そう思った俺は口からはみ出ている両手首をパタパタと動かしみんなに無事を伝えた。
これでみんなも「ああ、戯れてるのか」と理解してくれることだろう。
と、思っていたら…。
「イッセー!今助けるわ!皆行くわよ!」
「「「はい!」」」
「私も手伝うわ!」
仲が悪いはずのリアスちゃん達とイリナが何故だかやる気を出し始めた。
違う違う、そういうことじゃなくて。
「…しぶとい人間だな、生意気な。 ケルベロス!やれ!」
コカなんとかさんの怒号が聞こえたと思っていたらなんだがすごく熱くなってきたかなぁと思った矢先、
俺の視界が急に明るくなって炎に包まれた。
え、待って、この犬火吹けんの? 聞いてないんですけど。
「きゃぁぁぁ!イッセーさんッ!?」
アーシアちゃんの悲鳴が上がる。
やばいそろそろ出よう、あんな悲鳴聞かれたら両親がすっ飛んでくるかもしれない。
死んじゃう、俺が。
轟々と燃え盛る炎の中で、よっこいしょと両手に力を入れようとした時、唐突に炎が止まり、噛む力が弱まったではないか。
「加勢に来たぞ」
青髪メッシュちゃんである。
例の分かたれしうまい棒の一振りで俺を噛んでいた巨犬の首を切り落としたらしい。
力の無くなった顎をつかんで自身の体を引っこ抜くと真ん中の首を失った元三つ首の巨犬が暴れていた。
そしてその首があった場所から真っ黒な血が俺に降り注ぐ。
いや、まさかと思って自分の恰好をよく見ると絶句した。
『まぁケロべロスに噛まれた上、地獄の業火を浴びせられて無傷な人間はそう居ないだろう。
周りを見てみろ、リアス・グレモリ―達や教会の聖剣使い達も驚いているぞ。
流石に相棒でも自身の異常性を理解し――』
俺のパジャマボロボロなんですけど。
『そこなのかッ!?』
よだれでベトベトだしちょっと破れてるしつうか燃えてるとこあるし極め付けには真っ黒な血で汚れまくってるんですけど。
『思わず早口になるほどショックなのか…』
今日着てたパジャマ、俺のお気に入り寝具コレクションの一つなんですけど。
ちょっと意味分かんない、なんで? 寝るの邪魔された上いきなりこれ?
横暴が過ぎるってもんじゃねぇのかおい、躾なってねぇってレベルじゃねぇぞ。
ていうか火ぃ出す時むしろあのおっさん命令してたよね。
計画的犯行だよこれは、流石の俺もちょっとキレるよ。
わなわなと震えながら拳を握りしめる俺。
それを即座に宥めるドライグ。
『まぁ待て相棒、確かにショックなのは分かるが服ならまた買えるだろう。』
いや、にしてもだよ?
『ケルベロス如きに怒り散らすのは赤龍帝として些か狭量だ、ほれ、相棒は大人になったのだろう?』
………まぁ?
俺も油断してる節もあったし?
こうして問答している内に青髪メッシュちゃんが残りも狩ったみたいだし?
パ、パジャマくらいでね、うん、俺もそんなブチギレたりはしないよ、…お、大人だし。
『…少し危なかったがまぁいい。相棒がキレれば本当に危ないからな、現実も精神世界も』
『僕を叱って』
『むしろ虐めて』
『ほれみろ、もう湧き出てきやがった』
危ねぇ、こればかりはドライグに感謝しなくては。
俺が寝てる間は精神世界の深層でド変態サミットを行っているはずの
しかし先ほどの俺の怒気を驚異的なドMセンサーで察知して浅層精神に顔を出し始めやがった。
俺とドライグが協力して変態共を無理矢理奥底に沈めて、深層に封印していると目の前に木場ちゃんが現れたではないか。
俺の恰好を見て木場ちゃんは「大丈夫?」と少しだけ眉をひそめて聞いてきた。
肉体にダメージはないけど、精神的にはとんでもないダメージを負わせてくる変態共の封印処置を施してる最中なので、取り敢えず首を横に振っておいた。
この封印って俺が完全に起きてる時は一切効かないからね。
寝起きの現在、まだ奴らの欲望の嵐が浅層に出てくる前にドライグと本気で施してやっと時間稼ぎができる程度である。
いや強すぎだろあいつらの劣情、なんで
そんな俺の葛藤を知らない木場ちゃんは俯き、何かに堪えるような声色で俺にささやく。
「ありがとう、それとごめんね」
連絡してくれてありがとう、でも無理させてごめんね。
大方そんなとこだろう。
今回の俺たちは互いに利用し利用される関係。
木場ちゃんは悲願の復讐の達成の為、俺は保身と予後対策の為。
手段を選ばない覚悟をしていた木場ちゃんに乗っかる体で俺はチャンスを作った。
より正確に、細かくいうのであれば、俺が木場ちゃんの復讐を口実にしたのだ。
どこにもお礼を言われるようなことはしていない。
だが、それでも。
木場ちゃんは俺の身を案じたし、お礼まで述べた。
そして俺を背に庇う様な立ち位置で、魔法陣に浮かぶ聖剣と空に浮かぶ男をにらみつけていた。
ここからは自分がやるべきことだ。
だからもう無茶はしないで、私に任せてと言わんばかりに。
聖剣は悪魔にとっては最悪の武器、そして分かれた七本の内の四本が統合されようとしている。
聞けば木場ちゃんはまだ下級悪魔、そんな奴が相性最悪の伝説とその後ろに控える歴戦の猛者に挑もうとしている。
死にに行くようなものだろう。
それでも彼女は止まらない、止められやしない。
それが、それだけが彼女の生きる意味だったのだから。
「行きなよ」
利用した罪滅ぼしってわけじゃないけど。
少しくらいは、背中を押してもいいだろう。
そう思えた。
「外野に邪魔はさせないから」
そう言ってリアスちゃん達、青髪メッシュちゃんとイリナの教会コンビ、そしてこちらを見下ろすコカなんとかさんを見渡す。
喧嘩はやっぱりサシでしょうよ。
どうせあのフリ…、フリー…、フリーメイソンくんが使うんでしょ?
魔法陣の横に立ってピコピコ動きながら木場ちゃんを見てるし。
俺の意を理解した木場ちゃんは少しびっくりした顔を浮かべた後、少し笑った。
「……うん、ありがとう」
なんとも言えない笑顔と共に手にはいつもの西洋剣。
柄をギュッと握りしめ、木場ちゃんは気丈に構えを取る。
直後、眩い光と共に神々しく、厳かな雰囲気が辺りに張り巡らされる。
大変お久しぶりでございます、スランプや実習、はたまた少数精鋭の変態感想からのダメージからなんとか復帰した愚鈍な作者でありますごめんなさい。
もう内容なんて忘れてしまったと仰る読者様もいらっしゃることでしょう、そして長らく更新を待っていただいた読者様方もいらっしゃることを願いますが、遅ばせながらちんたら返ってきた所存でありますごめんなさい。
今後はこんなに更新を開かないよう誠心誠意努力いたしますので何卒ご容赦ください、すいませんでしたごめんなさい。
…いやもう本当に申し訳ありません、頑張りますから見捨てないで…(泣)。
はい、精神もなんとか持ち直しました。
今回は前書きも使わせていただいて、今話ではありませんが今後の展開を膨らませるための文章を入れさせていただきました。後々あの怒りの意味が分かりますので乞うご期待。
さて、もう読んでる方が残っていらっしゃるのか不安で仕方ありませんが久しぶりに感想を掘り下げてみたいかと思います。
後書きばっかりに力が入ってて本編がカラでつまらないとまで絶賛された感想コーナーです、ダラッと行きましょう。
【一言】
黒鬼様お帰りなさいませ。我々一同、黒鬼様のご帰還首輪を手にしてお待ちしておりました。黒鬼様もう離さない。黒鬼国警護部隊が、我等を取り押さえようと奮闘したようですが、今一歩届かず黒鬼様のご住所の奪取を防ぐことができずと言う結果、悔しい思いをしているであろうが、我等は黒鬼様のご近所に引っ越ししようかな?といったり、どうやって束縛するかなどの話し合いが進んでいます。楽しみにして待っててね?次の更新が遅いと計画が実行されてしまうかも?
可及的速やかに引っ越しをしたい!つーかなんで住所われてんだよ怖ぇよ!
てか、首輪……、え、いや、警備隊なら警備がお仕事だからそんなことしないよね!?冗談だよね!?
段々と警備も近衛も変態化してきている今日この頃、作者は誰もいない未開の地の方が安全な気がしてきました。目指せテラフォーミング!
【一言】
この小説を久しぶり読んで、まず思った事がある。『何故、こんなに偽・変態が多いのか』確かにここ最近はコメントを見る限り減ってるのは理解出来る。よく見れば変態臭いコメントがあるが、それは所詮便乗しているだけ。つまりは偽・変態だ。まぁ、あれだ。今、この小説の感想欄には足りないものがある。そう『真の変態』だたった百文字にも満たない変態コメントに何の価値がある。何の意味がある。某神咒神■神楽というエロゲでもこんな名言があるだろう?『真に愛するなら壊せっ!』つまり、黒鬼様が我らを理解し、その精神が我らに汚され、我らを率いる素晴らしきHE☆N☆TA☆Iになられるようなコメントが必要なのだっ!黒鬼様のパンツが欲しい?ぬかせよ、その程度の愛でどうする。パンツを求めるのは確かに素晴らしい。だが、我らの黒鬼様を変態に覚醒させるのならば、その先を求めろッ!例えば、そう。黒鬼様から出る黄金のエキスッ!黒鬼様ならば既に分かっていらっしゃるだろう。我らは今、進化する時なのだッ!何時までもパンツパンツではならないっ!我らが次に目指すは、かの『聖水』でならねばならんのだッ!聖☆水っ!嗚呼、なんと素晴らしき飲み物ッ!それさえあれば、罵倒、蔑みなど最早、塵屑にも等しいのだ。故に、私は貴様ら『偽・変態』に告げよう。『黒鬼様の聖水こそが至高の飲み物であるとッ!どの高級な食材にも劣らぬ、否。既に黒鬼様の聖水だけで、我ら真・変態は永遠に生きられるのだとっ!』無論、黒鬼様の歩いた足跡ですら至高である。砂浜を黒鬼様が素足で歩き、形が残った後など最早世界一の芸術である。黒鬼様が笑った写真は、ダヴィンチと呼ばれる芸術家の作品よりも価値がある。それこそ、金では払えぬ程に。そして我ら変態は今、黒鬼様の覚醒を常に待ちわびているっ!その覚醒がいつかは知らぬが、その時こそ我ら一同は黒鬼様の元へと参らんぞッ!変態は今……その時までに更なる変態に磨きを掛ける時であるッ!それこそが、真の変態だっ!理解したか、この偽・変態共めッ!その様な軽い変態さで我らの変態を汚すなッ!
汚れてんのはテメェの倫理観だよ馬鹿野郎。
作者自身に興味持ちすぎだろ、なんなの貴方のその飽くなき変態指数。文章だけで胃もたれするレベルは久々だわこんにゃろう、読み進めるたびに白目だよ…。
とまぁ、感想数は減りましたけども変態は未だ消えず…。最近は変態の度合いがすごい…。
現筆頭変態の読者さんには前話の感想はまじめでありがたい感想をいただきましたが。
ま、まぁ真面目、変態問わず感想は大歓迎ですので、一言二言でも頂ければ作者的には励みになります。今後ともどうぞ、『なんやかんやで赤龍帝』をよろしくお願いします。
ではでは、さようなら!