なんやかんやで赤龍帝   作:黒鬼

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どうもです、再び帰って参りました。
初めての方は初めまして、久しぶりの方はお久しぶりです。

この小説投稿サイトハーメルンきっての問題作であり、「どこが面白いのかまるで分からない」と大絶賛の嵐を一身に受けている本作の作者、黒鬼です。
どこが面白いかわからないだと?
安心しろ、作者にすら分からん。
取り敢えず自己満足でのんびり投稿させてもらっています、文才の無さはどうぞご容赦を。

さてさて、久々に投稿しますが、更新ペースを上げるためにストックを増やそうと頑張っております。見捨てないで頂けると作者は嬉しいです。

ギャグの書き方なんかはもう忘れちまいましたが、この章はイッセーくん視点以外は割と真面目に書きます。まぁ我らが主人公視点になったらあんぽんたんなことをしてくれるかと思いますのでお楽しみに。
そして今回は久々にリアスちゃん視点です。

ではではダラっと行っちゃったー。





『なんやかんやで一触即発』

 

 

 

 

私はまた失敗した。

 

 

 

今回の対談においては祐希の精神状態が気掛かりなことを筆頭に様々な懸念事項を頭に入れ、対処策を練っていたつもりだった。

だが、蓋を開けてみればこの様だ。 やはり私はまだ詰めが甘い……。教会側の人間からすれば、元〝聖女〟だったアーシアの事は色々と軋轢が生じて当たり前だ。

悪魔を癒した〝魔女〟が、今度は自らも悪魔に転生している。そんな彼女を見れば敬虔な教徒なら怒り狂い襲いかかってくる可能性も考慮できた。

しかし、何処かでそんな事態は起きないだろうと楽観視していた。

 

 

誤算だったのは使者の二人がエクスカリバーの使い手だったことだ。対悪魔用の武器の中でも最も高名かつ性能も最高峰である聖剣エクスカリバー。

それを所持することを許されているということは、ある程度の地位と権力を与えられてるのだろう。名も無い下っ端とは違うのだ、実際会った事はなくともある程度上に立つ者ならアーシアの事を耳にしたのかもしれない。

 

だが、まさかこの対談の場でその事をハッキリ切り出すとは思わなかった。

エクスカリバーと聞いて祐希のことで頭が一杯だった上に、アーシアが危険かもしれない。状況が状況なだけに、朱乃も小猫もいつでも迎撃可能な姿勢をとっているが、相手は天敵であるエクスカリバー持ちが二人。

祐希も精神状態が安定していないし、当事者のアーシアは戦闘要員ですらない。正直に言うと分が悪い、良くて相打ちだろうか。

こちらからアクションを起こすわけにもいかないのだ、向こうの出方を伺うしか出来ない…!自身の至らなさを嘆いてばかりではいられない、どうするか対処法を考えなくては…。

 

 

そう思っていた矢先に、青い髪に緑のメッシュが入ったエクスカリバー使いゼノヴィアがアーシアに問う。

 

 

「『魔女』アーシア・アルジェント、まだ我らの神を信じているのか?」

 

 

先程から震えていたアーシアはピクッとその言葉に反応し、表情にもより影が差していく。

 

酷な質問だ。

 

最終的に彼女の意思で悪魔に転生したとはいえ、身の上を立てるためにはそれしか残されていなかったのだ。孤児である彼女はシスターとして教会で育った、その教会側の庇護下から離れてしまえば彼女には何もない。未成年である彼女は職にはつけない、故に収入が無いため住む場所はおろか食べ物ですら手に入れることは困難。身元を証明してくれる場所も組織も家族も知人もいない、まさに天涯孤独の身。

 

そんな中でようやく自分を拾ってくれた堕天使は自分の中の神器が欲しいだけであり、

命と引き換えに抜き取られる寸前まで事態は進行した。イッセーが彼女と知り合わなければ、助けに行くと言い出さなければ、あのまま不遇の一生でその命を終えたであろう。

そんな彼女の唯一と言ってもいい心の支えとなっていたのが、私達にとっては皮肉なものだが、神への信仰心だ。その身を敵対する悪魔へと転生させたからといって、価値観や思想が急変するわけもない。ましてや生きる上での心の支えとして信仰してきたものなのだ、簡単に捨て置けるはずもないだろう。

 

 

「……捨てきれないだけです、ずっと信じてきたものですから…」

 

 

様々な感情がせめぎ合っているであろう彼女の心から絞り出された声は、今にも消えそうだった。

そのたった一言にどれほどの想いが込められているのだろうか。それは彼女にしか知りえない、分かるはずもない事だった。

 

 

しかし、そうゼノヴィアはアーシアが信仰心を忘れることができずにいることを見越した上での発言だったようだ。

鋭く目を細め、憐れむかのような表情でアーシアを見つめるゼノヴィア。

カツカツと床を鳴らしアーシアに近づいた彼女は、まるで説明するかのように語る。

 

 

「いるんだよ、たまにね。こういう主への背信行為を冒す輩でも、己の言動に罪の意識を抱きながら信仰をやめられない者がさ。

 君もその類だろう、いくつか例を見てきたからね、私には分かるんだ」

 

「だとしても彼女はもう悪魔の身、それでも主を信じてるっていうのもなんだか変な話ね、皮肉だわ」

 

 

もう一人の使徒である紫藤イリナが肩をすくめて目を伏せる。

その間もアーシアはずっと下を向いたままである。肩を僅かに震わせ、膝の上に置かれた握り拳の上に雫が落ちる。ここらで止めなければアーシアの心が保たない、そう思い、立ち上がって声をかけようとした瞬間。

 

 

「これからも主に祈り続けると言うのなら、今此処で斬られるといい。

 このエクスカリバーでその身に背負う罪ごと斬り伏せ、断罪しようではないか。

 その命をもって悔い改めるのならば、君ほど罪深い者でも我らが主はお救い下さるだろう」

 

 

そう言い放つや否や、背負っていた獲物をアーシアに向けて突き出した。

布を巻いているからとは言え、対悪魔用最高峰の武器なのだ、切っ先を向けられ聖なるオーラにあてられたアーシア。体が震え上がり、その翡翠の瞳には涙を溜め込んでいた。

先ほどの震えとは違う、生命の危機に瀕した時の本能的なモノだ。

 

 

私にとって眷属は家族のようなものだ。私は彼女たちの為にあり、彼女たちは私の為にある。その大切な眷属が脅かされている、ましてやアーシアは戦えない。

相手がエクスカリバー使い二人というのは分が悪すぎるが、それでもここで動かない理由にはならない。

 

 

「あなたたちがここに来たのは状況説明と不干渉の交渉の為でしょう?

 それなのに私の眷属に剣を向けるというのはどういう了見なのかしら。常識がなってないのではなくて?」

 

 

私の言葉が言い終わる前に私の意思を組んでくれた朱乃と小猫がアーシアを守りやすい位置へさりげなく移動する。祐希は彼女たちが来た時点で既に臨戦態勢に入ってはいたが、一触即発の空気になり次第、その殺気をより濃いものにする。彼女の事情を知っている私にしてみれば、祐希の言動や感情は理解出来る。

決して放っておいていいものではない、一人で抱え込んで無茶をする子だからよく見ておかなければいけない状態だ。

しかし今の状況と相手を見れば、エクスカリバー使いと戦うことになった時少しでも全員の生存率を上げるためには戦力は多い方がいい。

どう立ち回れば祐希を抑えつつアーシアを守れるか……。

 

こちらの臨戦態勢を見て、使徒の二人の目が細まる。

紫藤イリナは懐から紐のようなモノを取り出し、ゼノヴィアは柄を握る手に力を込めた。

 

 

「彼女の為を想ってのことだ。 真に主を想うのならばこそ、彼女の罪を精算する機会を与えているのさ」

 

「結構、大きなお世話よ。 アーシアはもう私の眷属なの、もうあなたたちには関係ないわ」

 

「そう言われてもね、こちらとしても〝ああ、そうか〟で見過ごせないのさ」

 

 

ゼノヴィアは鋭い眼差しを向け、刀身に巻いてある布に手をかける。

来るのか――。

 

 

「結構聞いてなかったからよく分かんないけど、アーシアちゃんを斬るってこと?」

 

 

一触即発の空気の中、そんな雰囲気を欠片も読んでいない声が非常に軽いトーンで響いた。

 

声の主はもちろんあの子。

お茶請けとして用意していたせんべいを食べ終えたのか、だらりとソファに座ったままお茶をすすって一息ついてからゼノヴィアを見つめていた。

 

悪魔側でも教会側でもない、人間。

しかしどの陣営も無視できない強力な神器にそれを扱う本人の種族の壁を超えている異常な強さ。この子がどう動くのかによって状況はどうとでも転ぶダークホースだ。

一応今回の対談には無関係だし、今までは不干渉だったのでそのままにしておく方がいいかもしれないと思っていたが、今此処で動きを見せたとなると―。

 

 

「…そうだね、神を想うのなら悪魔に堕ちたその身ごと断罪されるべきだろう。

 そうすることで彼女は救われるのだ」

 

「罪だの救うだの、そんな御大層な話はしてないってば」

 

「……では何が言いたい?」

 

 

敵意をイッセーに向け、少しイラついた様子で問いかけるゼノヴィア。

しかし当のイッセーはというと隣で怯えていたアーシアの頭をよしよしと撫でつけ、いつもと変わらぬやる気の無い表情で自身にかかる敵意の元を見返す。

 

 

「アーシアちゃんとは家族になってからさ、ウチの両親には『よく面倒見てあげなさい』って言われてるんだよね」

 

「えっ……」

 

 

いつもと変わらぬのほほんとした調子のイッセーの言葉を聞き、何故か紫藤イリナは顔を青ざめていた。

しかしイッセーの一見要領を得ない言葉に苛立ちが増したのか、眉間に皺を寄せたゼノヴィア。……何故だろう、すごく嫌な予感がする。

 

 

そんな私の危惧など露知らず、イッセーは上を向いてうーんと唸る。

ぽけーっとした様子は抱きしめたくなるほど私の琴線を刺激したが、今はそれどころではない。恐らくこの子は言うべき言葉を考えているのだ。

どう言えば上手く伝わるのか、極度の面倒嫌いのこの子のことだ、出来るだけ短く率直に意味が伝わる言葉を探しているのだろう。

しかしこの場はあくまで対談の場だ、各勢力間の関係もあり争い事は出来うる限り避けなければならない。

その上この子は人間であり、赤龍帝だ。この子の言葉は本人が思っているよりも遥かに重く、影響力がある。

なるべく穏便に終わらせたいという私の想い、どうか届いて!

 

 

グッと目に力を込めて私はイッセーを見つめる。すると私の視線に気付いたのか、こちらを見返しジッと見つめてきた後、こくんと頷いた。

さすがイッセー、私の言いたいことを――!

 

 

「アーシアちゃんに手ェ出すんならブッ殺す」

 

 

まったく分かってなかった!

 

どうだ、啖呵切ってやったぞ、といつもの眠そうな…しかしどこか誇らしげな顔でこちらを見てくるイッセー。可愛いとは思うが今はその顔にビンタをしてやりたいと思う私は悪くないはず。

どうしてあなたは一悶着起こさなければ気が済まないの…!

 

 

「解せないな。人間である君が何故そうまでして彼女の…、悪魔の肩を持つのか。

 いくら信仰心の薄い国に生まれ育ったからといって、悪魔が邪悪なる存在だということぐらい耳にしたことあるだろう?

 その悪魔を庇う、ましてや家族として向かい入れるなど、私からしてみれば正気の沙汰とは思えないね」

 

「他人の言うことを全部〝はいそうですか〟って鵜呑みにする馬鹿(パー)じゃないってだけだよ、あんたらみたいに」

 

「我らの主への信仰心を馬鹿にするのか。この対談は争いを目的としたものではないから見逃すつもりだったが、

 そもそも悪魔と行動を共にしている時点で君も本来なら何らかの措置を施す対象だ。あまり口を荒らさない方が身の為だぞ?」

 

「いいよ、見逃さなくても。そんな上から目線の二極論盲信者におべっか使わなくともこちとら立派に生きていけるから」

 

「……心根まで悪魔に毒されたか? こちらは善意で言っているのだがな」

 

自分(テメェ)の価値観は他人に押し付けるもんじゃないよ」

 

 

相手の半ば脅しの様な言葉にも即答で言い返すイッセー。

一歩も引いてないその態度と胆力は大したものだと思うけど、今この場で発揮して欲しくはなかった!

イッセーの言葉を聞いたゼノヴィアは大きく肩をすくめてため息をついた。

 

 

「口で言っても無駄のようだな。 それに…どうも君からは龍の気配がする、それも強力な…。

 龍は力こそ強大だが、それゆえ傲慢で気性が荒く、自分勝手なモノが多いと聞く。君もその特性を宿しているのかな。

 教会でもドラゴンは危険視されている、その神器を悪魔に下手に利用されるか自分の力に溺れる前に処理するのもアリだな」

 

「ちょ、ちょっとゼノヴィア!」

 

 

まずい、イッセーが今代赤龍帝だと知られればまた事態が複雑になりかねない…!

紫藤イリナが慌ててゼノヴィアを止めようとするが、ゼノヴィアのイッセーを見る目はもはや敵を見ているとしか思えないモノだ。

 

 

使い方次第で神や魔王すら打倒し、世界を覆す可能性すら持つとされる13種の神滅具(ロンギヌス)

その中でも悪名高い二天龍の一体である赤龍帝ドライグの魂が封じられている〝赤龍帝の籠手〟の所有者という肩書きは、各勢力でも動向を常に警戒させるには十分なほど危険視されている。歴代の二天龍の神滅具所有者達は、封じられている二天龍の因縁によって闘いを宿命づけられているのだ。

世界を壊す可能性を持つ者同士が全力で所構わず殺し合えば、周囲の被害は甚大という言葉では表せないほどの事態になるかもしれない。

その片割れが目の前にいると知れば、この二人…特にゼノヴィアはどうするのか…。

しかも赤龍帝を悪魔が取り込んだ、もしくは協力関係にあると見倣されれば教会上層部も黙ってはいないだろう。そうなれば種族間戦争が再発しかねないのだ。

 

 

そんな危機的状況下にあることなど微塵も分かっていないであろうイッセーは、〝龍の気配がする〟という言葉に敏感に反応し「俺からドライグ(アホ)の気配だとっ…」となんだか恐れ(おのの)いていた。

一体何に驚いているのか、恐れているのか分からないが、多分私が感じている危機感とは遠いものだろう。

この子の傍にいて大まかにだがこの子の思考回路が読めてくるようになった。この対談が無事に終わったらこの子の頭をアーシアに治癒してもらった方がいいのかもしれない。

 

 

「彼に剣を向ける前に、僕と戦ってくれないかな?」

 

 

鬼気迫る声色にありったけの憎悪が込められた言葉。

ツカツカと歩いてゼノヴィアの方へ近寄り、右手に魔剣を握り締めて殺気を撒き散らす。よく堪えた方か――。

この場が設けられた意味、各勢力の現状を考慮すれば争うなんて以ての外ではあるのだが、彼女――祐希の事情を知っている私からすればそう思えてしまった。

 

 

「誰だ、キミは?」

 

「君たちの先輩さ。 ――まぁ、失敗だったみたいだけどね」

 

 

暗く陰ったその瞳には目の前のゼノヴィアすら映していない。

ただただ、悲愴と憎悪に縛られた彼女にはもはや、聖剣エクスカリバーしか見えていないのだから――。

 

 

 

 

 

 






非常に真面目なお話でした。
イッセーくんは全く状況を理解していません。取り敢えずアーシアちゃんに危害がないよう立ち回ろうとしているだけです。

さて、二ヶ月ぶりの感想欄です。さぁどんな感想が来てるのか…。
【一言】
以前から読んでいましたが、あの感想欄の雰囲気に気圧されていた(あんな変態性…私には出せないッッッ ので今回が初の感想になります毎回楽しんで読ませていただいてます。私は特にイカレテルイッセー一家が好きです。憧れます。邪神様に弟子入りを請いたいくらいです。どうしたら弟子にして貰えますか?もし邪神様のパワーの1%でも身につけることができたら作者様の身の安全を脅かすクリーチャー、もとい変態共を血の海に沈めて死体の山を築き上げようと思います。安心してください、作者様は邪神様の場所を教えてくれればいいのです。あとは私がなんとかします。私の望みは作者様が安心してこの作品の執筆に集中できる環境を作り上げることですから、汚れ仕事は全て私が請負います。作者様に不安を抱かせた、唯それだけで彼ら彼女らには死よりも重い罰が必要です。その魂ごと粉々に打ち砕いて肉、骨、内臓までキッチリ解体した上で晒しあげてやるのがよいでしょう。その時の事を思うと胸が高鳴ります。アハハハハハハハハハハハハハハハハハレンラクマッテマス


…………いやいやいやいや。
重い重い、これは重すぎるよ…、ヘビー級にも程がある…。
ぶっちゃけ感想は変態的なものはもうほとんどありません、しかし黒鬼教やら邪神教の教徒なる者の生存は確認できました。
なんなんだよこの小説の感想欄……。
まぁ作者のペースでいいよとか、面白かったよとか、次話を楽しみにしてるとか、非常にありがたい感想も多々ありました。
細々とですが頑張っていきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。

ではさようなら!

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